GHG排出量の計算方法を解説!サプライチェーン排出量の把握が重要な理由

目次

脱炭素へ効率的に取り組むためには、自社の現状を把握しておく必要があります。現状を把握するために、温室効果ガス(以下「GHG」という。)排出量をどのように算出すればよいのか分からない人も多いでしょう。

本記事では、GHG排出量の計算方法を紹介します。サプライチェーン全体のGHG排出量を計算する必要性やメリット、具体的な方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。

GHG排出量の計算が求められる理由

GHG排出量の計算により、自社の現状を知ることが可能です。現状把握のためにもGHG排出量の計算は必要ですが、GHGの計算が求められる理由は他にもあります。GHG排出量計算が必要とされる理由を解説します。

脱炭素に向けて国際的に取り組んでいるため

GHGは「Greenhouse Gas」の頭文字を取った言葉で、温室効果ガスを指します。GHGは人間活動によって大量に排出され、気候変動が進む原因とされています。気候変動は国際的な課題であり、要因のひとつであるGHGの排出量削減に向けて多くの国々が取り組んでいます。

2015年に、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)で「パリ協定」が採択され、GHG削減に向けた国際的な取り組みが決定しました。パリ協定では、すべての国に対して5年ごとに温室効果ガスの削減に向けた目標の提出・更新を定めており、日本でもGHG排出量の算出が求められるようになりました。

※参考:2020年以降の枠組み:パリ協定|外務省

日本の脱炭素化に向けた目標達成を目指すため

パリ協定が採択されたことにより、日本でも脱炭素に向けた取り組み目標が設定されました。2013年と比較して2030年までにGHGを46%削減し、さらに50%削減の達成も視野に入れた目標を掲げています。

日本では、目標達成に向けて「地球温暖化対策の推進に関する法律(以下「温対法」という。)」や「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(以下「改正省エネ法」という。) 」を制定しました。

・温対法:国や地方自治体、企業、国民など、対象別に取り組むべき対策を規定
・改正省エネ法:工場や輸送事業者などのうち、一定規模以上の燃料・熱・電気を使用する事業者に、エネルギー使用量の報告義務と再生可能エネルギー活用に向けた取り組みを規定

※参考:地球温暖化対策計画(令和3年10月22日閣議決定)|環境省

GHG排出量の報告義務があるため

温対法では、地球温暖化を人間による大量のGHG排出が原因だと明記されています。そのため、温対法によってGHG排出量が多い企業に対し、GHG排出量を算出し、国に対して報告する義務が課せられました。また、国は各事業者から報告を受けたGHG排出量の総計を、公開しなければならないと定めています。

GHG排出量の計算方法

GHG排出量は、計算式を用いて算出可能です。代表的な計算式は、以下のとおりです。

「GHG排出量=活動量×排出係数」

また、GHGのなかでもCO2排出量を算出する場合は、以下の計算式を使用します。

「CO2排出量=温室効果ガス排出量×地球温暖化係数」

活動量・排出係数について

「活動量」とは、電気の使用量・貨物の輸送量・廃棄物の処理量などを指します。正確なGHG排出量を算出するには、実際に使用や輸送、処理にかかったエネルギー量を測定しておく必要があります。

「排出係数」とは、活動量あたりのCO2排出量を指します。電気を1kWh使用した際に生じたCO2排出量や、貨物を1トン使用した際に生じたCO2排出量などが、排出係数に該当します。日本における代表的な排出係数は、IDEAデータベースや、産業連関表による環境負荷原単位データブックを活用するとよいでしょう。

GHG排出量計算において対象となる範囲

GHG排出量を計算するにあたり、「サプライチェーン排出量」と「ライフサイクルアセスメント(以下「LCA」という。)/カーボンフットプリント(以下「CFP」という。)」の2種類が、算定の対象範囲となっています。

・サプライチェーン排出量:自社に限定せず、事業を行う上で必要なサプライチェーン全体におけるGHG排出量
・LCA/CFP:製品・サービスのライフサイクル全体、またはある時点での環境負荷に対する評価

サプライチェーン排出量は、国際的な基準の「GHGプロトコル」に、LCA/CFPは「ISO」で、それぞれの計算方法におけるガイドラインが定められています。

サプライチェーン全体のGHG排出量も計算する必要がある

サプライチェーン全体におけるGHG排出量の把握が、重要視されています。自社から排出する直接的なGHG排出量に限らず、原材料の調達・製造・使用・廃棄など、事業活動全体を通して発生するGHG排出量の算出を指します。事業全体でGHG削減に向けて取り組むには、サプライチェーン排出量の把握が不可欠です。

サプライチェーン全体のGHG排出量を計算するメリット

サプライチェーン全体から排出されるGHG排出量を計算すると、いくつかのメリットが期待できます。以下では、それぞれのメリットについて解説します。

対策の優先順位が見えやすくなる

自社のみならず、事業全体を通したサプライチェーン排出量を計算すると、GHG排出量削減のポイントが見つけやすくなります。

GHG排出量が多い部分の課題や削減可能なポイントを把握でき、何から優先的に取り組むべきか戦略を順序立てることが可能です。やみくもにGHG排出量削減に取り組む必要がなくなり、環境負荷低減に向けたロードマップが見えやすくなるうえ、新たなアイデアが浮かぶ可能性があるでしょう。

取引先との関係性が深まる

サプライチェーン全体でのGHG排出量を把握することによって、サプライチェーンに関わっている事業者間で話し合いを進められます。サプライチェーン排出量を数値として見える化することで、共通認識のもと話し合いを進められるため、互いに協力し合って環境負荷低減に向けて取り組めるでしょう。

また、共通の目標に向けて事業活動やGHG排出量削減に取り組むことで、さらなる関係性の強化も期待できます。

投資家からの信頼を獲得できる

近年、ESGを考慮した投資が世界的に注目されています。ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った言葉で、ESGそれぞれの要素を重視して取り組んでいる企業への投資を意味します。投資する企業の価値を判定する材料として、財務状況に加えてESGが用いられるようになりました。

ESGに取り組んでいる企業はサステナビリティがあると判断され、中長期的な成長に期待を込めて投資の対象となるケースが多い傾向です。一方ESGに取り組んでいない企業は、環境問題に直面した際に成長を見込めないとして、投資家から投資を受けにくい傾向にあります。

ESG投資を受けるためには、GHG排出量を算出し、事実に基づいた説得力のある説明を行うことが重要です。

サプライチェーン全体におけるGHG排出量の計算方法

サプライチェーン排出量の計算式は、以下のとおりです。

「サプライチェーン排出量 = Scope1 + Scope2 + Scope3」

以下では、より具体的にScopeの意味や計算方法を解説します。

※参考:サプライチェーン排出量算定の考え方|環境省

Scope1

Scope1は、自社における事業活動で、直接的に排出されるGHGを指します。具体的にはCO2やメタンなどをはじめとする燃料の燃焼や、運転時にガソリンを使用する過程で生じるGHGが該当します。

計算式は、以下のとおりです。

「Scope1=活動量×燃料ごとの排出係数」

ガソリンや軽油を燃やすためのボイラー・車両を使用している企業、または化学製品の製造業者でGHGを排出している場合は、Scope1の入念な計算が重要です。

Scope2

Scope2は、他社から供給を受けていたエネルギーから、間接的に排出されるGHGを意味します。自社に向けて電気・熱・蒸気の供給を行う他社が、それらの生産過程で発生したGHGの算出を行います。

計算式は、以下のとおりです。

「Scope2=活動量×供給会社ごとの排出係数」

Scope2は、世界のGHG排出量において多くの割合を占めており、GHGの削減には欠かせない要素だといえます。

Scope3

Scope3は、Scope1・2には該当しない、自社の事業活動に関連する他社の間接的なGHG排出を指します。例えば、自社が提供する商品・サービスの製造に関わっている企業が、原材料の調達や輸送、廃棄などの過程で排出しているGHGがScope3に該当します。

計算式は、以下のとおりです。

「Scope3=活動量×排出係数(カテゴリで異なる)」

排出係数はカテゴリ別に算出する必要があり、以下の15種類にも及びます。

・購入した製品・サービス
・資本財
・Scope1,2 に含まれない燃料及びエネルギー関連活動
・輸送、配送(上流)
・事業から出る廃棄物
・出張
・雇用者の通勤
・リース資産(上流)
・輸送、配送(下流)
・販売した製品の加工
・販売した製品の使用
・販売した製品の廃棄
・リース資産(下流)
・フランチャイズ
・投資

※引用:サプライチェーン排出量の算定方法 基本的な算定手順|環境省

まとめ

地球温暖化による気候変動の対策を行うためには、GHG排出量の算出・把握が欠かせません。数値化しなければ見つからなかった課題の発見や、思わぬヒントを得られる可能性があります。また自社だけではなく、サプライチェーン全体でのGHG排出量を把握しておくことで、各事業者と協力しながら効率的に気候変動対策に取り組むことも可能です。

GHG排出量の算出に関してお困りの場合は、ゼロ炭素ポートをご活用ください。他社ソリューションと協力し、お客さまのニーズにお応えします。

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA