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自動車の脱炭素化で取り組む地球温暖化対策|企業・国・自動車メーカーの施策とは
目次
地球温暖化対策の一環として、企業には自動車の排気ガス削減が強く求められています。本記事では、自動車を通じた地球温暖化対策の重要性、国や自動車メーカーの施策、そして企業が実行できる具体的な対策について解説します。さらに、対策のポイント、メリット、注意点、活用可能な補助金情報についても解説するため、ぜひ最後までお読みください。
自動車の脱炭素化による地球温暖化対策の重要性
脱炭素社会の実現には、自動車関連の脱炭素が必須といわれています。その理由について、自動車の走行や製造による地球環境への影響を解説します。
自動車の排気ガスによる地球温暖化への影響
自動車はガソリンや軽油を燃焼させる際、温室効果ガス、特に二酸化炭素(以降、「CO2」と表記)を多量に排出します。このCO2は地球温暖化を引き起こす大きな要因です。ほかにも、一酸化炭素(CO)や窒素酸化物(NOx)などが含まれ、大気汚染や酸性雨の原因となっています。
自動車によるCO2排出量は、近年一部で減少傾向がみられるものの、依然多くの温室効果ガスを排出しています。温暖化を抑制するためには、自動車の脱炭素化が必要です。
運輸における自動車排気ガスの割合
日本の運輸部門からのCO2排出量は、少しずつですが減少傾向にあますが、2022年度で1億9,180万トンとなり、日本全体の排出量の18.5%を占めました。運輸部門からのCO2排出量の85.8%は自動車からの排出で、日本全体の排出量に占める割合は15.9%です。
自動車の内訳では、旅客自動車が運輸部門の47.8%(全体の8.8%)、貨物自動車が38.0%(全体の7.0%)となっています。
走行時以外の環境負荷もある
自動車は走行時だけでなく、製造過程においても多くのCO2を排出しています。特に、部品の製造や車体の組み立てでは多くのエネルギーを消費します。また、電気自動車(EV)の製造過程では、ガソリン車を上回るCO2排出量が排出されることは、現在の課題の1つです。
さらに、新車を輸送する際、大型船やトラックの燃料消費によりCO2が排出されます。これらの輸送手段は効率化が進められていますが、排出量ゼロには至っていません。
国が実施する自動車の地球温暖化対策
地球環境に大きな影響を与える自動車に対して、国は新たな計画や対策を実施しています。
2035年までに乗用車の新車販売で電動車100%
日本政府は、「2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする」という目標を掲げています。この目標の一環として、2035年までに、国内で販売される乗用車をすべて電動車、すなわち電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)にする計画を実行中です。
ゼロカーボン・ドライブの推奨
ゼロカーボン・ドライブとは、電動車の使用および再エネ発電の電力の活用により、運転によるCO2排出をゼロにすることを目指す取り組みです。
従来のエコドライブは、適切な車間距離や早めの減速など、効率的な運転が中心でした。一方、ゼロカーボン・ドライブはエコドライブをさらに進め、効率的な運転方法や車両の点検整備を通じて、温室効果ガスの削減を推奨しています。
サーキュラーエコノミーの推進
サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、リソースの無駄をなくし、資源の効率的利用と再利用を促進する経済モデルです。使い捨てを基本とする大量生産・大量消費型の経済から、資源を最大限に活用し、廃棄物を最小化する仕組みへの移行を目指します。
自動車分野のサーキュラーエコノミーの代表例は、カーシェアリングです。車を所有するのではなく、必要なときだけ共有することで、資源とエネルギーの無駄を減らします。
自動車メーカーによる地球温暖化対策
自動車メーカーの地球温暖化対策は一般企業の取り組みとも関連するため、動向を知っておくと役立ちます。
エコカーの開発
エコカーとは「エコロジーカー(環境配慮型車両)」の略称で、明確な定義はありませんが、環境負荷の削減を目的に開発された自動車を指します。エコカーは、従来のガソリン車に比べて走行時に排出するCO2を大幅に削減できる自動車です。
このため、自動車メーカー各社は、競ってエコカー開発に取り組んでいます。さらに、消費者の環境意識の高まりに応え、市場競争力を強化するためにも、エコカー開発は重要なテーマです。
エコカーの重要技術
エコカーの重要技術となっているのは、バッテリー技術、水素技術、軽量素材です。それぞれどのような課題があるか、以下に示します。
・バッテリー技術
リチウムイオン電池の性能向上や全固体電池の研究開発が進み、走行距離の延長や充電時間の短縮が期待されています。
・水素技術
燃料電池自動車(FCV)の普及に欠かせない技術で、水素の製造や貯蔵、輸送技術の進化が進められています。
・軽量素材
アルミやカーボンファイバーを用いることで燃費を改善し、環境負荷を減らす試みが進んでいます。
地球温暖化対策に効果的な自動車の種類
自動車メーカーが開発しているエコカーの主な種類は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)に分けられます。以下の表は、クリーンエネルギー自動車導入促進補助金の対象車となる水準のエコカーについてまとめたものです(2024年7月時点)。
| 項目 | 電気自動車(EV) | プラグインハイブリッド車(PHEV) | 燃料電池車(FCV) |
| 概要 | バッテリーに蓄えた電力でモーターを動かし、走行時にCO2を排出しないゼロエミッション車 | エンジンとモーターを併用し、最適な動力源を切り替える車 | 水素をエネルギー源として電力を発生させ、走行中にCO2を排出しない車 |
| メーカー | 30社 | 17社 | 2社 |
| 車種 | 76種 | 60種 | 3種 |
| 金額 | 194万~4,364万円 | 371万~2,364万円 | 660万~783万円 |
大手自動車メーカーの地球温暖化対策
大手自動車メーカーは、意欲的な地球温暖化対策を行っています。トヨタ自動車、本田技研工業株式会社、日産自動車の3社の実例を紹介します。
トヨタ自動車
トヨタ自動車は、2050年までに自社新車のCO2排出量を2010年比で90%削減にすることを目指しています。中間目標としては、2025年までに新車の走行時のCO2排出量を30%削減、電動車販売3,000万台以上といった意欲的な目標を掲げています。また、製造工場から排出するCO2を2050年までにゼロにする目標など、事業全体で脱炭素に取り組んでいるのが特徴です。
日産自動車
日産自動車は、2050年までに車両のライフサイクル全体でのカーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。このライフサイクルでは、車両の製造、使用、廃棄を含むすべての工程が対象です。
一例を挙げると、2030年代早期より、主要市場で販売する新車をすべて電動車両にする計画です。それに向けて、バッテリー技術の革新や車両組み立ての効率化などが進められています。
出典元:環境への取り組み
企業の自動車利用における脱炭素の施策
ここでは、一般企業が実行できる脱炭素および地球温暖化対策を解説します。
エコカーの導入
ガソリン車から電動車(電気自動車、ハイブリッド車、燃料電池車など)への切り替えは、地球温暖化対策の一環となります。例えば、電気自動車は走行中にCO2をほとんど排出しないため、脱炭素社会へ貢献できます。
なお、電動車の導入方法は事業活動によってさまざまです。配送業務に全面的に電動車を導入しCO2の排出量を大幅に削減している企業や、営業車の一部をハイブリッド車に変え、できる範囲で排出量削減に取り組む企業もあります。
ゼロカーボン・ドライブの推進
走行中のCO2排出ゼロを目指すゼロカーボン・ドライブは、大きな効果が見込める対策です。ゼロカーボン・ドライブを推進するには、EV、PHEV、FCVといった電動車の活用とともに、太陽光や風力など再生可能エネルギーの導入が必要になります。例えば、自社敷地内に太陽光パネルを設置して発電し、EVのバッテリーを充電するなどです。
こうした施策に予算を割くのが難しい場合は、減速時は早めにアクセルを離す、無駄なアイドリングをやめるなど、エコドライブの取り組みから始める方法もあります。
カーシェアの利用
車を所有せず、必要なときだけ利用するカーシェアを導入すると、購入費用や維持費を削減できるだけでなく、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の推進に貢献できます。
シェアリングの便益が大きいのは、初期購入価格が高く稼働率が低い製品です。事業内容にもよりますが、自動車の稼働率はワークスペースの機器や空調機器などに比べて低いため、効果が高いとされています。
カーボン・オフセットの活用
カーボン・オフセットは、企業や個人が避けられないCO2排出を、ほかの場所での温室効果ガス削減や吸収活動への投資で埋め合わせる取り組みです。例えば、森林整備や再生可能エネルギープロジェクトへの資金提供を通じて、排出したCO2と同等の削減・吸収を実現します。
こうした投資先は自社で探す必要はありません。例えば、社用車の排出量に応じたカーボン・オフセットを行いたい場合は、J-クレジット(オフセット・クレジット)を購入するだけです。自動車関連での直接的な対策が難しい場合に、活用できるでしょう。
自動車による地球温暖化対策を推進するメリット
自動車関連の地球温暖化対策は、脱炭素化社会実現への貢献だけでなく、経営にもよい影響を与えます。
脱炭素化社会実現に貢献できる
エコカー全般はCO2や有害ガスの排出を抑え、化石燃料の消費削減につながるため、脱炭素化社会実現に貢献できます。特に、自動車の利用が多い事業では、車両単位の排出量削減効果が積み重なり、大きな効果をもたらします。
適用範囲が広がるほど、初期投資の増加や運用効率の低下といった課題が生じる場合がありますが、脱炭素化社会実現に貢献できることは大きなメリットです。
走行コストを削減できる
EVやHVはエネルギー効率が高く、ガソリン車よりも燃費が優れています。特にEVは充電コストが安く、ランニングコストの削減が可能です。
仮に月間走行距離が1,000kmであったとします。燃費12km/Lのガソリン車がガソリン価格166円/Lで給油した場合、「コスト=1,000÷12×166=約13,833円」です。
一方、電費6.8km/kWhのEVの場合、電力料金25円/kWhとすると、「コスト=1,000÷6.8×25=約3,677円」で済みます。
企業価値の向上
気候変動対策を経営戦略に組み込む脱炭素経営は、持続可能な経済活動を推進します。この取り組みは、近年、企業の社会的責任(CSR)を果たす活動として評価されるようになってきました。投資家や取引先から信頼を得たり、顧客から社会的価値を認められてブランド価値が高まったりする効果を期待できます。
自動車による地球温暖化対策を推進する際の注意点
自動車による地球温暖化対策は、それ自体が望ましい施策である一方、事業への影響も考慮する必要があります。
初期費用が高い
エコカーの導入費用は、ガソリン車に比べると高額になる傾向があります。さらに、充電スタンドや充電用の太陽光発電設備などインフラ投資も必要です。短期的なコストが増大する可能性があるため、予算を確保しておく必要があります。投資コスト回収までのシミュレーションも、しっかり行っておくとよいでしょう。
地域によっては充電スポットを見つけにくい
地域によってはEVやPHVの充電インフラが十分に整備されておらず、充電スポットを見つけにくい場合があります。特に、地方都市や郊外では充電インフラが限られており、長距離移動の際に事業に支障が出る可能性があります。充電インフラの整備状況を把握しながら、計画的に導入を進めることが重要です。
長距離走行が難しい
EVはバッテリー容量に限界があり、一回の充電で走行できる距離がガソリン車に比べて短い傾向があります。そのため、長距離や頻繁な移動において、事業に支障が出やすいリスクが高い点がデメリットです。事業に支障が出る場合は、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車を選択する方法があります。
自動車による地球温暖化対策で活用できる補助金
自動車による地球温暖化対策には、経済産業省が管轄する一般社団法人 次世代自動車振興センターが運営している「CEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)」を活用できます。条件を満たした場合、EV購入の補助金は上限85万円、小型・軽EVやPHEVは55万円が支給されます(2024年度の場合)。
さらに、自治体独自の補助金が用意されている場合もあります。通常、国の補助金と併用できるため、地域の最新情報を確認しておくとよいでしょう。
出典元:一般社団法人「CEV補助金」
まとめ
地球温暖化対策のなかで、自動車関連の施策は重要な位置を占めています。すでに国や自動車メーカーは対策を強化しており、一般企業もエコカー導入やカーシェアなどの方法で脱炭素を試みています。
自社で取り組める効果的な脱炭素対策をお探しの際は、「ゼロ炭素ポート」をご利用ください。ゼロ炭素ポートでは、企業向けの脱炭素の情報や、お困りごとを気軽に相談できる場を提供しています。幅広い企業のソリューションを扱っているため、自社ニーズにぴったりの解決策を見つけるためにお役立ていただけます。
執筆者プロフィール
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA