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省エネ法の計算方法を解説!外皮基準・一次エネルギー消費量基準とは?
目次
省エネ計算とは、建築物のエネルギー消費量を数値で表すための方法です。省エネ計算の結果は、建築予定の建物の省エネ性能が適切かどうか判断するために利用されます。
本記事では、省エネ計算の目的や計算方法について解説します。省エネ計算に役立つツールや、省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)の改正点などについても解説するため、ぜひ参考にしてください。
省エネ計算とは?
省エネ計算とは、どのようなものでしょうか。ここでは、省エネ計算の意味や目的などを解説します。
省エネ計算の意味
省エネ計算とは、建築物のエネルギー消費量を算出する手段のことです。断熱性能や設備効率などをもとにし、年間で必要なエネルギーの量を数値化します。省エネ計算の方法は、外皮計算と一次エネルギー消費量計算の2種類です。それぞれの詳細については、後述します。
省エネ計算の目的
省エネ計算の目的は、建築物のエネルギー消費量の把握です。また、計算の結果は省エネ設計の指針にもなります。さらに、省エネ計算は、省エネ適合性判定のためにも必要です。省エネ適合性判定とは、建築物の省エネ性能が法令の基準を満たしているか確認する方法です。
省エネ計算にはこのようにさまざまな目的があります。よって、正しい情報をもとに計算を行う必要があります。
省エネ適合性とは?
2015年7月、建築物の省エネ性能を向上させる目的で、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(以下建築物省エネ法という)が制定されました。2025年4月以降、原則としてすべての新築の建築物に対して、省エネ基準適合が義務付けられる見込みです。これにより、省エネ基準に適合しない建築物は着工や使用開始ができなくなります。
※参考:建築物省エネ法の表示制度|国土交通省
※参考:省エネ基準適合義務化|国土交通省
※参考:住宅の省エネルギー基準と評価方法 2024|国土交通省
外皮計算・一次エネルギー消費量計算とは?
ここでは、外皮計算と一次エネルギー消費量計算の概要について解説します。
外皮計算とは
外皮計算とは、建築物の外皮部分の断熱性能に関する計算です。外皮部分には、屋根・外壁・窓などが該当します。外皮基準は、屋根・外壁・窓における熱損失量を計算したものです。外皮計算は、住宅が対象となっています。省エネ基準を満たすには、外皮計算により外皮平均熱貫流率や冷房期の平均日射熱取得率が、基準値以下であると示す必要があります。
※参考:住宅の省エネルギー基準と評価方法 2024|国土交通省
※参考:省エネ基準の概要|国土交通省
一次エネルギー消費量計算とは
一次エネルギー消費量計算とは、冷暖房・給湯・換気・照明の省エネ性能に関する計算です。非住宅については、昇降機も対象となっています。一次エネルギー性能は、BEIとも呼ばれています。省エネ基準を満たすにはBEIが1.0以下でなければなりません。BEIは、「設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量」で計算できます。
※参考:省エネ基準の概要|国土交通省
省エネ計算方法の流れ
省エネ計算を行う際は、まず建築物の設計情報を入手する必要があります。そのうえで外皮計算を実施し、建築物の断熱性能を算出しましょう。その後、エネルギー使用量明細書に計算の結果を記載します。
次に、一次エネルギー消費量計算を行い、建築物において年間で必要となるエネルギー量を計算します。計算の結果に基づき、省エネ適合性判定を実施してください。省エネ計算の方法の詳細は、以下で解説します。
非住宅建築物の省エネ計算方法
非住宅建築物の省エネ計算の方法には、標準入力法・モデル建物法・小規模版モデル建物法があります。ここでは、それぞれについて解説します。
標準入力法
非住宅建築物における標準入力法では、省エネ計算においてより精密な評価が可能です。ただし、建築物に関する詳細な情報を部屋ごとに入力する必要があります。国立研究開発法人建築研究所が、Web上で公開しているプログラムを利用して計算できます。複合建築物の場合、住宅部のBEIと合算で判定可能です。
※参考:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム プログラム・入力補助ツール|国立研究開発法人建築研究所
モデル建物法
非住宅建築物のモデル建築法は、建築物の用途に応じた省エネ計算の方法です。標準入力法よりも簡単に計算できます。モデル建築法についても、国立研究開発法人建築研究所のプログラムで計算が可能です。ただし、複合建築物については住宅部のBEIと合算できません。
※参考:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム プログラム・入力補助ツール|国立研究開発法人建築研究所
小規模版モデル建物法
非住宅建築物の小規模版モデル建物法は、モデル建物法の入力項目をさらに厳選し、より簡易的に評価するための方法です。ただし、利用できる建築物の面積は、300平方メートル未満とされています。また、利用できる期間は2025 年3 月末までです。他の計算方法と同様、国立研究開発法人建築研究所が計算のプログラムを公開しています。
※参考:非住宅建築物に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム プログラム・入力補助ツール|国立研究開発法人建築研究所
戸建住宅の省エネ計算方法
ここでは、戸建住宅の省エネ計算の方法について解説します。
標準計算
戸建住宅の標準計算は、部位ごとに面積や長さを入力して計算する方法です。詳細な情報を使用するため、精密に評価できます。国立研究開発法人建築研究所は、外皮計算と一次エネルギー計算について、それぞれプログラムを公開しています。
※参考:住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム 現行版のプログラム・簡易計算シート|国立研究開発法人建築研究所
簡易計算
戸建住宅の簡易計算は、より簡単に省エネ計算を行うための方法です。標準計算とは異なり、各部位の面積や長さなどの詳細を入力する必要はありません。標準計算と同様、国立研究開発法人建築研究所が外皮計算と一次エネルギー計算について、プログラムを公開しています。ただし、簡易計算は2024年12月をもって廃止予定です。
※参考:住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム 現行版のプログラム・簡易計算シート|国立研究開発法人建築研究所
モデル住宅法
戸建住宅のモデル住宅法も、省エネ計算を簡易的に実施するための計算方法です。簡易計算と同様、計算する際に各部位の面積や長さなどを入力する必要はありません。国立研究開発法人建築研究所が公開しているプログラムで計算できます。モデル住宅法についても、2024年12月で廃止予定です。
※参考:住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム 簡易計算シートをダウンロードする|国立研究開発法人建築研究所
共同住宅の省エネ計算方法
ここでは、共同住宅の省エネ計算の方法について解説します。
標準計算
共同住宅の標準計算は、住戸ごとに省エネ計算を行う方法です。詳細な計算ができるため、最も精密に評価できます。外皮計算と一次エネルギー計算のいずれについても、国立研究開発法人建築研究所が公開しているプログラムで計算が可能です。
基準値は地域によって異なり、例えば東京はBEIが0.87以下である必要があります。ただし、共同住宅の標準計算は2024年12月で廃止予定です。
※参考:住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム 現行版のプログラム・簡易計算シート|国立研究開発法人建築研究所
フロア入力法
共同住宅のフロア入力法は、フロア(階)ごとに省エネ計算を行う方法です。標準計算よりも簡易的な評価となります。国立研究開発法人建築研究所が公開しているプログラムにより、外皮計算と一次エネルギー計算ができます。例えば、東京の場合、BEIの基準値は0.87以下でなければなりません。フロア入力法についても、2024年12月で廃止予定です。
※参考:住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム 現行版のプログラム・簡易計算シート|国立研究開発法人建築研究所
省エネ計算方法の改正点
省エネ計算の方法は、2022年に改正されています。ここでは、具体的な改正点について解説します。
構造・建て方に応じた基準が設定された
省エネ計算の方法は、構造や建て方に応じた基準に変更されています。改正前は、共同住宅は鉄筋コンクリート(RC)造、戸建住宅は木造または鉄骨造が想定されていました。しかし、現在は建築技術が向上し、木造の共同住宅や鉄筋コンクリート(RC)造の戸建住宅も増えています。そのため、最新の状況に応じた基準に改正されました。
※参考:共同住宅等の外皮性能の評価単位の見直し及び住宅の誘導基準の水準の仕様基準(誘導仕様基準)の新設について|国土交通省
開口部比率が廃止された
改正後の省エネ計算においては、開口部比率が廃止されました。開口部比率とは、外皮面積に占める窓やドアの面積の割合です。改正前は、開口部比率の計算が必須でした。しかし現在では、開口部の熱貫流率や日射遮蔽対策の基準について、開口部比率の区分が廃止されています。
※参考:共同住宅等の外皮性能の評価単位の見直し及び住宅の誘導基準の水準の仕様基準(誘導仕様基準)の新設について|国土交通省
誘導仕様基準が新設された
新しい省エネ計算の方法では、誘導仕様基準が追加されています。省エネ性能に優れたZEH基準の住宅を増やすためです。これにより、省エネ計算をしなくてもZEH水準適合を判定できるようになりました。ただし、誘導仕様基準は住宅のみが対象であり、非住宅は対象外です。
※参考:共同住宅等の外皮性能の評価単位の見直し及び住宅の誘導基準の水準の仕様基準(誘導仕様基準)の新設について|国土交通省
省エネ計算・仕様基準チェックリストの使い方
国土交通省の公式Webサイトでは、省エネ計算に関する仕様基準ガイドブックが公開されています。ガイドブックには、省エネ基準編と誘導基準編があります。
省エネ基準編は、省エネ基準に対する適合を判定するための内容です。対して誘導基準編は、より高性能な住宅を対象としています。建築物が該当するガイドブックを選び、チェックリストに数値を記入して適合判定を行いましょう。
※参考:資料ライブラリー|国土交通省
省エネ計算方法として仕様基準を利用するメリット
省エネ計算の方法として仕様基準を用いると、複数のメリットがあります。以下で、詳しく解説します。
詳細な計算が必要ない
仕様基準を利用すれば、チェックリストに数値を記入するだけで、省エネ基準や誘導基準に適合しているか判定できます。部位や設備について詳細な情報を確認したり、複雑な計算をしたりする必要がありません。また、施主に対しても、チェックリストを活用したスムーズな説明を実現できます。
省エネ適合性判定が不要となる
仕様基準の活用により、建築確認申請において省エネ適合性判定が不要になります。そのため、省エネ適合性判定の申請にかかる費用を削減できます。なお、床面積や開口部面積については、軽微な内容であれば着工後でも変更が可能です。したがって、費用や手間の削減につながります。
さまざまな場面で活用できる
仕様基準を活用できる場面は、さまざまあります。具体的なシーンをまとめると、以下のとおりです。
・住宅ローン減税
・フラット35、BELS、住宅性能評価などの申請(一部)
・長期優良住宅適合性審査の申請(一部)
・建築主への説明時の資料
建築物に関する手続きをより効率的に進めやすくなります。
※参考:省エネ基準適合義務化に関する省エネ仕様基準の解説|住宅金融支援機構
省エネ計算方法として仕様基準を利用するデメリット
仕様基準のチェックリストには、基準を満たしている設備機器の一覧が掲載されています。ただし、すべての設備機器を網羅しているわけではありません。
そのため、基準に適合しているかチェックするには、国立研究開発法人建築研究所の「住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム」で改めて確認する必要があります。断熱材や開口部の数値を入力する際は専門的な知識が必要であるため、要注意です。
なお、仕様基準では精密な計算ができず、省エネ基準の適合判定も行えません。具体的な性能値が必要となる制度を利用する場合は、別途計算が必要です。
省エネ計算方法のポイント
省エネ計算を行う際は、設計情報について正確な情報を収集しましょう。情報に誤りがあれば、正確な評価ができません。また、計算に用いるソフトは適切なものを選ぶ必要があります。さらに、実際に情報を入力するときはミスに注意し、正しい内容で計算しなければなりません。
省エネ計算方法の情報収集先
省エネ計算方法は随時更新されています。正しく計算するには、最新の情報をもとにすることが重要です。こまめに情報収集し、正確な計算を心がけましょう。省エネ計算に関する情報は、国土交通省の「改正建築物省エネ法オンライン講座」や「資料ライブラリー」などで確認できます。
※参考:資料ライブラリー|国土交通省
※参考:改正建築物省エネ法オンライン講座|国土交通省
まとめ
省エネ計算は、建築物のエネルギー消費量を数値で表すために行います。複数の計算方法やルールがあり、基準に沿って正しく計算する必要があります。省エネ計算の方法は現状に合わせて変更されているため、実際に計算する際は最新の情報を確認しましょう。
「ゼロ炭素ポート」では、省エネに取り組む企業向けの情報を発信しています。さまざまな企業の事例やソリューションなどを掲載しており、具体的な施策について検討する際に役立ちます。各種資料も公開しているため、ぜひ活用してください。
執筆者プロフィール
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA