省エネ基準適合は仕様基準で簡単に確認可能|概要や改正内容、メリットを解説 

目次

2025年4月より、新築・増改築をする住宅は建築物省エネ法に基づく「省エネ基準」に適合する必要があります。仕様基準を用いれば、住宅の省エネ基準適合について、計算なしで簡便的に判断することが可能です。本記事では仕様基準の概要、改定内容、メリット、注意点、将来展望について解説します。 

仕様基準とは? 

仕様基準とは、建築物省エネ法(建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律)にて定められた「省エネ基準」に対し、建築物が適合しているかどうかを計算なしで確認する便利な方法です。省エネ基準とは、省エネ性能を満たすために必要な建築物の構造・設備の基準です。 

2025年4月以後の住宅・非住宅の新築・増改築には、省エネ基準への適合が義務化されます。なお、修繕、模様替えといった改修、リフォームは規模を問わず適合義務の対象外です。仕様基準には、建築物の屋根、天井、壁、床、窓、設備機器などについて、基準値や仕様が設けられています。 

仕様基準に定められた基準値や仕様を満たせていれば、省エネ計算によって細かい数値を出さなくても、省エネ基準の適合・不適合が判断できます。2022年11月には、より運用しやすくなるよう、仕様基準の改訂が行われました。 

ただし、現在の仕様基準では、オフィスや工場などの非住宅の適合確認は対象外です。非住宅は、後述する性能基準にて省エネ基準適合を確認します。 

※参考:建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律|e-Gov法令検索 

仕様基準・性能基準・誘導基準の違い 

仕様基準と似たような言葉として、性能基準と誘導基準の詳細とそれぞれの違いを解説します。 

仕様基準と性能基準の違い 

性能基準とは、省エネ基準における「外皮性能」と「一次エネルギー消費量(BEI)」を用いた省エネ計算によって、省エネ基準適合を判断する方法です。外皮性能の数値は外皮基準、一次エネルギー消費量基準の数値は一次エネルギー消費量が基準値以下であることをそれぞれクリアすることで、省エネ基準を満たしたと判断します。 

外皮基準  外皮平均熱貫流率(UA値)や冷房期の平均日射熱取得率(ηAC)などが地域ごとの基準値以下であること 
一次エネルギー消費量基準  一次エネルギー消費量(空調、換気、証明、給湯エネルギーなどから計算した値)が基準値以下であること 

なお、非住宅の省エネ基準適合は、性能基準を指標として判断します。非住宅には外皮基準は適用されないものの、一次エネルギー消費量の計算で外皮性能の入力が必要です。 

仕様基準の「省エネ基準用」と「誘導基準用」について 

仕様基準には「省エネ基準用」と「誘導基準用」の2つの指標が存在します。省エネ基準の数値は、2025年4月時点での最低ラインです。一方で誘導基準は、ZEH水準にまで引き上げられた高レベルのラインが設定されています。 

ZEHとは、家庭で作る太陽光発電などのエネルギーと、家庭で消費するエネルギーの収支をゼロ以下にする家です。2030年には、この誘導基準が新築・増改築の最低ラインとなる予定です。 

2022年に仕様基準が見直された背景とは 

仕様基準は、2025年の省エネ基準適合の義務化に向けて2022年11月に見直されています。ここでは、その背景について解説します。 

省エネ基準適合の義務化 

省エネ基準適合の義務化により、すべての新築住宅に適合確認の必要が出たため、変更に対応する形で仕様基準が改定されました。説明義務や届出で対応できた300平方メートル未満の非住宅・一般戸建ても、義務化によって適合確認の必要性が出てきます。改訂によって、2025年4月以降の新築・増改築に対する仕様基準の運用が簡易化されています。 

※参考:建築物省エネ法改正に関するリーフレット|国土交通省 

建築現場の負担軽減 

省エネ基準適合の義務化が決まったとはいえ、全住宅の確認が発生すると建築や設計現場に大きな負担がかかります。省エネ計算には、複雑かつ時間がかかる作業が必要になるからです。そこで、適合判定をよりシンプルかつスピーディーに進められるよう、2022年の仕様基準の見直しが行われた背景があります。 

2022年11月実施の仕様基準改訂の内容 

ここでは、2022年11月に実施された仕様基準改訂の内容を解説します。 

外皮面積の計算が不要になった 

仕様基準が改定される前は、外皮面積に占める開口部(窓・ドア)面積の比熱の計算が求められていました。熱貫流率、および日射遮蔽対策の基準の確認が必要だったからです。2022年の改訂では、申請側・審査側の負担軽減と合理性の観点から開口部比率の区分が廃止され、断熱材、開口部の仕様・性能値のみで判断できるようになっています。 

※参考:⑥住宅の仕様基準の簡素合理化・誘導仕様基準について|国土交通省 

建物の造り別に外皮仕様基準が設定された 

仕様基準改定前の外皮の仕様基準は、「戸建住宅だと木造・鉄骨造のみ」「共同住宅等だと鉄筋コンクリート(RC)造のみ」しかありませんでした。2022年の改訂では、高性能な断熱材の開発・普及に合わせ、造り別に外皮仕様基準を設定しています。具体的には、「戸建住宅の鉄筋コンクリート造」「共同住宅等の木造・鉄骨造」の外皮基準が設けられています。 

誘導仕様基準が新設された 

誘導仕様基準は、2022年11月の改訂にて新設された指標です。誘導仕様基準の新設によって、これまで性能基準でしか確認できなかったZEH水準も、仕様基準でチェックが簡易化しています。 

※参考:住宅・建築物の省エネルギー対策に係る最近の動向について|国土交通省 

省エネ基準適合で仕様基準を活用するメリット 

ここでは、省エネ基準適合で仕様基準を活用するメリットを解説します。 

省エネ基準適合を確認しやすい 

仕様基準の制定・改訂の目的どおり、仕様基準なら省エネ基準適合の確認が容易です。ガイドブックに記載されているチェックリストへの記入と確認だけで、省エネ基準の適合を判定できます。省エネ計算の必要がない分、建築・設計現場の労力削減、ミスの軽減につながるでしょう。 

建築確認申請がスムーズになる 

仕様基準で省エネ基準適合が確認できた場合は、建築確認手続きにおける「省エネ適合性判定」が不要になります。申請費用も一切かかりません。 

また、着工後に床面積や開口部面積の変更が生じたときも、断熱性能などが基準値を満たす範囲であれば「軽微な変更」として扱われます。設備の省エネ性にかかる変更が生じた場合も同様です。そのため、変更が発生しても完了検査が容易になります。 

各種申請・認定資料として活用できる 

仕様基準をクリアした建築物は、省エネに関する一定の基準を満たしているという客観的な根拠を得られます。そのため、適合の事実を以下の各種申請または説明資料として活用できるメリットがあります。 

・建築主への説明資料 
・住宅性能評価、BELSの評価、長期優良住宅、低炭素住宅などの認定の申請 
・住宅ローン減税の申請時に使用可能な住宅省エネルギー性能証明書への活用 
・フラット35の設計検査の申請 

一次エネルギー消費性能のみ計算で求められる 

外皮性能(断熱材・開口部)を仕様基準で確認することで「エネルギー消費性能計算プログラム」を使い、一次エネルギー消費性能を計算できます。仕様基準に載っていない設備機械を含めた、より多くの省エネ設備の評価が可能です。 

省エネ基準適合の判定に仕様基準を利用する注意点 

省エネ基準適合の判定に仕様基準を利用する場合は、いくつか注意点が存在します。 

すべての設備機器が網羅されていない 

仕様基準が記載されている国土交通省のガイドブックは、すべての設備機器を網羅しているわけではありません。ガイドブックのリストに載っていない設備・仕様は、仕様基準による省エネ基準適合の判定ができないので注意しましょう。仕様一覧にない設備・仕様は、先述したエネルギー性能計算プログラムにて確認してください。 

※参考:住宅に関する省エネルギー基準に準拠したプログラム|一般財団法人住宅・建築 SDGs 推進センター「省エネサポートセンター」 

誘導基準の設定が高レベルで難しい 

仕様基準のうち誘導基準は、設定水準が全体的に高レベルです。誘導基準を満たすためには、設備への投資や構造の工夫などが必要不可欠になります。たとえば「外皮の認定基準は満たしたけど、設備の基準が超えない」といったケースが想定されます。 

具体的な性能値は計算が必要 

仕様基準による省エネ基準適合の判定は、詳細な計算を基にチェックする性能基準と異なり、具体的な数値が出てきません。詳細な数値が求められる制度の申請があるときは、省エネ計算によって各種性能値を算出する必要があります。 

仕様基準を活用するためのチェックリストの見方 

仕様基準のガイドブックやチェックリストは、国土交通省の「資料ライブラリー」にてダウンロードできます。ガイドブック・チェックリストは省エネ基準用・誘導基準用それぞれが用意されており、チェックリストはさらに1~8の地域(都道府県、市区町村)に分かれています。 

※参考:資料ライブラリー|国土交通省 

国土交通省のガイドブックを利用する 

仕様基準のガイドブックやチェックリストは、国土交通省の「資料ライブラリー」にてダウンロードできます。ガイドブック・チェックリストは省エネ基準用・誘導基準用それぞれが用意されており、チェックリストはさらに1~8の地域(都道府県、市区町村)に分かれています。 

※参考:資料ライブラリー|国土交通省 

イドブック・チェックリストを確認する

引用:木造戸建住宅の仕様基準ガイドブック_1~3地域_省エネ基準編_第3版.pdf

ガイドブック・チェックリストを見て、対象地域・新築予定の建物の構造と種類が合っていることを確認します。問題なければ、チェックリストにしたがって断熱材、開口部部分に実際の数値を記入し基準値と比較しましょう。設備機器の仕様部分は、該当箇所にチェックを入れます。 

わからない部分があれば、ガイドブックで記入方法や記入例が確認できます。すべての基準や条件をクリアできれば、省エネ基準に適合したと判定が可能です。 

今後の省エネ計算や仕様基準について 

2030年のZEH水準化、2050年のカーボンニュートラルの実現、その後の太陽光パネル付きの省エネ住宅など、2024年時点でも段階的な省エネ施策の実行が決まっています。そのため、将来的には仕様基準をはじめとする省エネ適合の判定方法が、さらに合理化・簡略化される可能性があるでしょう。 

新制度・新基準が生まれることも予想されるため、担当者は都度改正について確認することを推奨します。今後のオフィスビル、事務所、工場などの新築・増改築計画を適切に進めるには、省エネに関する理解を深めることが大切です。 

まとめ 

仕様基準は、省エネ基準の適合を計算なしで判定できる便利な指標です。2022年の改訂によってより運用の簡易化が進み、2025年4月からの省エネ基準の適合義務化にも対応しやすくなりました。 

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執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA