建築物省エネ法の改正と省エネ適判への影響とは?必要な書類や手続きの流れを解説

目次

カーボンニュートラルや温室効果ガス削減のため、建築物分野でも省エネ基準の強化・推進が行われています。2015年に建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(以下建築物省エネ法という)が制定され、2025年には建築物省エネ法改正が施行される予定です。本記事では、建築物省エネ法改正と改正に伴う省エネ適判への影響について解説します。 

建築物省エネ法とは?

建築物省エネ法は、正式には「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」といい、2015年7月に制定されました。2030年度までに、温室効果ガス排出量を2013年度の水準から26%削減する「パリ協定」の目標達成に向けて制定・施行された法律です。 

2016年4月から段階的に施行され、2021年と2022年に改正されました。日本は2021年に、2050年までのカーボンニュートラル実現と、2030年までに温室効果ガス46%削減(2013年度比)を目指すと表明しています。そのため、エネルギー消費量を減らすことが大きな課題となっています。 

※参考:建築物省エネ法の概要|国土交通省 

2025年4月に施行される建築物省エネ法改正

建築物分野は、国内エネルギー消費の約3割を占めていることから、具体的かつ積極的な省エネ対策が求められています。建築物分野において、省エネ対策を加速させたり、木材利用の促進をしたりすることを目的とし「建築物省エネ法」が改正されました。改正建築物省エネ法の公布は2022年6月、施行は2025年4月です。 

※参考:建築物省エネ法のページ|国土交通省 
※参考:省エネ基準適合義務化|国土交通省 

建築物省エネ法改正の概要 

ここでは、建築物省エネ法改正の概要について、国土交通省の資料を基に対象や基準などのくわしい内容を解説します。 

※参考:建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料|国土交通省 住宅局 建築指導課 
 

省エネ基準とは?

省エネ基準適合性は、以下の2つの基準で判定されます。 

・外皮性能基準:住宅のみに適用される基準で、住宅の窓や外壁などの断熱性能を評価する 
・一次エネルギー消費量基準:設備機器のエネルギー消費量を評価する 

基準適合義務の対象

法改正により、原則的にすべての住宅・建築物を2025年4月以降に着工する場合は、新築・増改築にかかわらず、省エネ基準への適合が義務付けられます。改正前は届出義務や説明義務でよかった住宅・建築物でも、規模に関係なくすべてが適合義務になりました。ただし、以下は適用除外となります。 

1.10平方メートル以下の新築・増改築 

2.居室を有しないこと又は高い開放性を有することにより空気調和設備を設ける必要がないもの 

3.歴史的建造物、文化財等 

4.応急仮設建築物、仮設建築物、仮設興行場等 

※引用:建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料|国土交通省 住宅局 建築指導課 

このうち、2で記載されている空気調和設備には、以下のようなものが挙げられます。 

・自動車車庫 
・自転車駐車場 
・畜舎 
・堆肥舎 
・公共用歩廊 
・観覧場 
・スケート場、水泳場などのスポーツの練習場 
・神社 
・寺院 

増改築も対象 

改正前の制度は、既存部位を含めて建築物全体が省エネ基準適合でした。2025年4月以降の改正後は、増築部分が省エネ基準適合であればよいとされています。なお、増改築にはリフォーム(修繕・模様替え)は含みません。 

4号特例の見直し・縮小

改正では、小規模建築物において建築確認審査の一部を省略できる「4号特例」を廃止し、以下のような「新2号建築物」「新3号建築物」へ再分類されます。なお「新2号建築物」は、現行よりも建築確認申請時の審査項目や提出書類が増えます。 

・新2号建築物:「木造2階建て」または「木造平屋建て(延べ面積200平方メートル超)」のいずれかに該当する建築物 
・新3号建築物:「木造平屋で延べ面積が200平方メートル以下」の建築物 

大規模非住宅の省エネ基準の引き上げ

2024年4月からは、学校・病院などの大規模な非住宅建築物も省エネ基準が引き上げられています。改正前は「一次エネルギー消費量基準」が全用途で1.0でしたが、改正後は以下のように基準値よりも水準が15~25%強化されました。 

用途別一次エネルギー消費量基準(BEI) 

・工場等:0.75 
・事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等:0.8 
・病院等・飲食店等・集会所等:0.85 

建築士から建築主への説明努力義務 

専門家である建築士が建築主の意識向上を図るため、省エネ性能向上の取り組みに関する情報を提供する努力義務も発生しました。建築士は建築主に対して、建築物のエネルギー消費性能などの説明に努めなければなりません。 

省エネ基準適合の具体的条件

2025年4月からは建築物において、2つの条件を満たさなければなりません。1つは、住宅の断熱性を評価する日本基準「断熱等性能」です。もう1つは、住宅の年間エネルギー消費量を数値化した「一次エネルギー消費量」の等級が4以上であることです。基準を満たさない建築物は建築確認が下りないため、着工できなくなります。 

※参考:省エネ基準適合義務制度の解説|国土交通省 

増改築に係る基準適合の考え方

住宅の省エネルギー性能の評価方法は「仕様ルート」と「標準計算ルート」の2種類があります。住宅を増改築する場合は、評価方法の違いによって外皮基準や一次エネルギー基準が異なります。非住宅を増改築する場合の評価方法は、基準計算ルートのみです。一次エネルギー基準は定められています。 

省エネ適合性判定(省エネ適判)とは? 

省エネ適合性判定とは「省エネ適判」とも呼ばれ、建築物が省エネの基準に適合しているかを判定するものです。2017年に「建築物省エネ法改正」で、特定条件の建築物に規制措置が設けられました。新築や増改築をする場合に、建築主は「建築物エネルギー消費性能確保計画」の作成と適合性判定を受けることが、義務化されています。 

※参考:【建築物省エネ法第11・12条】 適合性判定の手続き・審査の合理化について|国土交通省 

2025年の法改正で省エネ適判はどうなる? 

2025年の法改正で「省エネ適判」はどうなるのか、国土交通省の資料を基に解説します。 

※参考:建築基準法・建築物省エネ法 改正法制度説明資料|国土交通省 住宅局 建築指導課 

省エネ適判の有無 

床面積が300平方メートル以上の非住宅においては、2024年1月現在、省エネ基準の適合義務があります。住宅においては、2024年1月現在、300平方メートル以上が届出義務、300平方メートル以下は説明義務に留まっています。 

しかし、2025年4月からは、原則としてすべての建築物に省エネ基準適合が義務化となりました。2025年4月よりも前に工事着手予定であれば、省エネ適判などの対応は不要ですが、着工が2025年4月以降の予定であれば、省エネ適判の対応が必要になります。 

省エネ適判が省略・合理化される建築物 

省エネ基準適合の義務化によって必然的に適合判定対象が増えるため、以下のような建築物は省エネ適判が省略・合理化されます。 

・仕様基準の建築物
 ・都市計画区域 
・平屋かつ200平方メートル以下の準都市計画区域外の建築物 

省エネ適判の申請に必要な書類

省エネ適判の申請には以下の書類が必要です。ただし、所管行政庁や省エネ判定機関によっては、以下の書類のほかに別の提出書類が必要になるケースもあるので、事前に確認しておくとよいでしょう。 

1.計画通知の場合は、省エネ計画書または通知書 
2.設計図書として、以下のようなものも必要になります 
・設計内容説明書 
・各種図面 
・仕様書 
・各種計算書 
・機器表 
・系統図 
・設備図 
・制御図など 
3.委任状兼同意書 
4.その他、連絡用書類 

省エネ適判の手続きの流れ

省エネ適判の手続きの大まかな流れは、以下のとおりです。 

1.建築確認申請(建築主から建築主事または指定確認検査機関へ) 
2.省エネ計画書類提出(建築主から所轄行政庁または登録省エネ判定機関へ) 
3.省エネ適合判定通知書の交付(所轄行政庁または登録省エネ判定機関から建築主へ) 
4.省エネ適合判定通知書の提出(建築主から所轄行政庁または登録省エネ判定機関へ) 
5.確認済証の交付(所轄行政庁または登録省エネ判定機関建築主へ) 

省エネ適判で適合しないと判断された場合はどうなる? 

省エネ適判で適合しないと判断された場合は、確認済証や検査済証の交付が受けられず、着工が遅延する可能性があります。万が一に備えて、必要書類の準備やスケジュール管理は早めに行いましょう。 

改正による増改築時の省エネ適判の注意点 

改正による増改築時の省エネ適判は、以下のようなケースにも注意しましょう。 

修繕や模様替えのケース 

雨漏りによる「修繕」や壁紙を張り替えるなどの「模様替え」は省エネ適判対象外です。ただし、10平方メートル以上の増改築は省エネ適判の対象となります。住宅・非住宅どちらも「増改築を行う部分のみ」が適合対象です。 

減築と増築を同時に行う場合 

減築と増築を同時に行うケースもありますが、減築部分と増築部分の相殺はできません。増築部分が10平方メートル以上であれば、適合判定の対象になります。 

今後の住宅・建築物分野における省エネ対策

世界中でカーボンニュートラルや温室効果ガス削減に向け、さまざまな取り組みを行っています。住宅・建築物分野においても、今後も引き続き省エネ対策を行っていくことが予想されます。遅くとも2030年までには、省エネ基準を「ZEH・ZEB水準」まで引上げる予定です。 

ZEH(ゼッチ=Net Zero Energy House)は住宅に用いる基準で、ZEB(ゼブ=Net Zero Energy Building)は大規模な建築物に用いる基準です。どちらも、建築物の化石燃料や自然エネルギーなどの一次エネルギー消費量が、正味(Net)で「ゼロ」あるいは「概ねゼロ」になる建築物を指します。すでに大手メーカーの注文住宅では、ZEHを達成しているものが多い傾向にあります。 

※参考:ZEHの普及促進に向けた今後の検討の方向性について|経済産業省 

まとめ 

建築物分野は、国内エネルギー消費の多くを占めていることから、具体的かつ積極的な省エネ対策が求められています。今後も引き続きの省エネ対策が必要です。しかし、自社の省エネ対策について、どのように取り組んだらよいかわからないケースも多いでしょう。 

ゼロ炭素ポートは脱炭素の情報発信を行い、脱炭素の悩みを気軽に相談できる場を目指しています。脱炭素やカーボンニュートラルに関する相談や資料のダウンロードも可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。 

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA