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省エネ性能を表すBEIとは?建築物の価値向上につながるBELSについても解説
目次
企業が建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(以下「建築物省エネ法」という。)を遵守するには、BEIに関する知識を深めておく必要があります。建築物の省エネ制度を可視化するBELSについても知っておくと、不動産の価値を高めることも可能です。
本記事では、省エネ法と建築物省エネ法の関係、省エネの取り組みで知っておきたいBEI・BELSの概要、BEI・BELSとZEB・ZEHの関係性、導入のメリット、省エネ基準などを解説します。
省エネ法と建築物省エネ法の関係
1979年に制定された、エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(以下「省エネ法」という。)とは、一定規模以上の企業にエネルギー使用状況を定期的に報告してもらい、再生可能エネルギーや非化石転換などへの見直しなどを求める法律です。その後、基準の強化などが行われ、2015年に制定されたのが建築物省エネ法になります。
建築物省エネ法は、省エネ法で建築物に係わる部分が独立した法律です。建築物のエネルギー消費性能の向上を目的として、建築物のエネルギー消費性能基準への適合義務などの措置が講じられています。建築物省エネ法の詳細については後述します。
※参考:省エネ法とは|経済産業省
※参考:建築物省エネ法のページ|国土交通省
※参考:建築物省エネ法の概要|一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター
BEI・BELSとZEB・ZEHの関係
建築物省エネ法では、住宅や建築物の一次エネルギー消費量の基準の水準として、「BEI」と呼ばれる指標が用いられます。
「BELS」は、建築物省エネ法に基づく「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度ガイドライン」によって定められた第三者評価制度の1つです。BEIの値によって、建築物の省エネルギー性能を評価します。
さらにBEIは、優れた省エネ性能をもつ住宅や建築物であることを示す、「ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)」や、「ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の判定にも用いられます。
BEIの値を用いたBELSの評価を上げ、ZEBやZEH認定マークを取得・表示することによって、消費者などからの客観性・信頼性の向上が見込めます。
BEI、BELS、ZEB、ZEHの詳細については後述します。
※参考:BELSについてのQ&A 一般公開用|一般社団法人住宅性能評価・表示協会
※参考:ZEBに関する用語集|環境省
※参考:ZEBに関連する評価・認証・表示制度|環境省
※参考:建築物省エネ法に基づく省エネ性能表示制度事業者向け概要資料|国土交通省
建築物省エネ法のBEIとは?
企業が建築物省エネ法を遵守するための取り組みを行う際は、事前にBEIについて理解を深めておくことが大切です。
BEIは一次エネルギー消費量の指標
BEIは、Building Energy Indexの頭文字を略した言葉で、住宅や建築物のエネルギー効率を示すための指標です。建築物省エネ法では、住宅・建築物の一次エネルギー消費量の基準や指標として用いられています。BEI値が低くなるほど、エネルギー効率に優れている住宅や建築物といえます。
一次エネルギー消費量とは、住宅や建築物で使用されている年間エネルギー消費量のことです。大きく分けて、設計一次エネルギー消費量と基準一次エネルギー消費量の2種類があります。
※参考:建築物省エネ法の表示制度|国土交通省
※参考:ZEBに関する用語集|環境省
設計一次エネルギー消費量
設計一次エネルギー消費量は、住宅・建築物の設計や仕様を基準に算出した、一次エネルギー消費量を指します。主に、住宅・建築物の外皮性能をはじめ、冷暖房・換気・照明・給湯などの設備機器で決まります。
※参考:省エネ基準の概要|国土交通省
基準一次エネルギー消費量
基準一次エネルギー消費量は、省エネ基準における、住宅・建築物の標準的な年間エネルギー消費量を指します。主に、住宅・建築物の床面積や所在地がある地域などによって決まります。
※参考:省エネ基準の概要|国土交通省
建築物省エネ法・省エネ基準とは?
建築物省エネ法とは、住宅・建築物のエネルギー消費性能の向上を促進させるための法律です。建築物省エネ法が制定された背景は、パリ協定で2030年度のCO2排出量の削減に向けて、目標値が設定されたためです。新築を建てる際は、建築物省エネ法で定められた省エネ基準を満たす必要があります。省エネ基準のBEI値を満たさなければ、建築物は建てられません。
※参考:日本の排出削減目標|外務省
※参考:建築物省エネ法のページ|国土交通省
BEI値の基準
本章では、新築を建てる際に求められる省エネ基準と、BEI値に応じた該当基準について解説します。
求められるBEI値の水準
2025年以降に新築を建てる際は、「BEI≦1.0以下」の省エネ基準が求められます。「BEI≦1.0以下」は、住宅・建築物を新築する場合に設計一次エネルギー消費量が、基準一次エネルギー消費量を下回る必要があることを指します。
BEI値が0.9の場合は10%、0.8の場合は20%というように、基準となる住宅・建築物と比べて、エネルギー消費量が削減されていなければなりません。
※参考:省エネ基準の概要|国土交通省
BEI値に応じた該当基準
BEI値に応じた該当基準は、以下のとおりです。
・BEI値≦1.0:省エネ基準
・BEI値≦0.9:誘導基準
・BEI値≦0.8:ZEH基準
・BEI値≦0.75:ZEH+基準
「BEI値≦0.9」は誘導基準で、省エネ基準の10%削減になります。「BEI値≦0.8」はZEH基準となり、削減率は省エネ基準の20%です。ZEH基準については、後ほど解説します。
※参考:省エネ基準の概要|国土交通省
BEI値を下げる方法
BEI値を下げるためには省エネ設備や機器を導入したり、住宅・建築物の外皮性能を向上させたりする方法があります。
省エネ設備・機器を導入する
エアコンは住宅・建築物に設置する機器のなかでも消費電力が多いため、省エネ性能が高い機器を導入すれば高い省エネ効果を得ることができます。給湯器にはガスやエコキュートなど、さまざまな種類が展開されており、選ぶ種類によって省エネ性能に差が出ることがあります。
効率的に省エネできる換気設備を導入した場合は、室内の熱損失を抑えることも可能です。照明は省エネ効果が高いLEDを選ぶことをおすすめします。
外皮性能を向上させる
外皮とは、住宅・建築物の内部と外部の境界にあたる部分のことです。外皮の主な例は、以下のとおりです。
・壁
・床
・屋根
・天井
・窓
・その他の開口部分
外皮の断熱性・気密性・遮音性・耐久性の性能を総称して、外皮性能といいます。外皮性能を向上させられれば、建物内部は外気温の影響を受けづらくなるうえに、エアコンで温度調整された空気が屋外に漏れ出す心配がなく、省エネ効果が高まります。サッシは高断熱で高性能なものを採用し、床や壁、天井には高性能な断熱材を充填しましょう。
再生可能エネルギーを活用する
再生可能エネルギーとは、太陽光・水力・風力・地熱などの自然エネルギーを活用した電力のことです。再生可能エネルギーを活用すれば、一次エネルギー消費量の大幅な削減が可能です。例えば、屋根の上に太陽光発電パネルを設置し、創出した電力を建物内部で消費することで光熱費の削減につながります。
BEIに関連する法令・補助金
以下では、BEIに関連する用語や法律、補助金制度について分かりやすく解説します。
ZEH・ZEB
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、再生可能エネルギー活用による一次エネルギー消費量の削減を目指す住宅です。ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング)は、再生可能エネルギーを活用し、一次エネルギー消費量を抑えたビル・学校・工場などです。
補助金制度の基準は、以下のとおりです。
・ZEH基準:BEI値≦0.80
・ZEH+基準:BEI値≦0.75
・ZEB基準:BEI値≦0.50
※参考:ZEBに関する用語集|環境省
長期優良住宅
長期優良住宅とは、長期間にわたって良好な状態を維持できる住宅のことです。具体的には、住宅の建築や維持保全のための計画を作成したうえで、所管の行政庁から認定を受ける必要があります。長期優良住宅の認定を受ける条件の1つに挙げられるのが、省エネ性能です。BEI値の基準は、「BEI値≦0.80」です。
※参考:長期優良住宅のページ|国土交通省
住宅トップランナー制度
住宅トップランナー制度は住宅事業建築主基準の1つで、2017年4月に施行されました。住宅事業者を対象に、販売する住宅の省エネ性能の向上を促し、エネルギー消費量の削減を目指すことを目的とする制度です。具体的には、一定の条件に該当する事業者に対し、達成すべき目標としてBEI値を定めています。
BEI・BELSの関係性
ここでは、住宅・建築物の一次エネルギー消費量の削減に重要な指標であるBEIと、BELSとの関係性を解説します。
BELSとは?
BELSとは、Building-housing Energy-efficiency Labeling Systemの頭文字の略語で、正式名称は建築物省エネルギー性能表示制度のことです。BELSは建築物の省エネ性能を適切かつ公正に評価し、認定を表示するための制度で、事業者や消費者が省エネ性能の高い建物を識別するために制定されました。BELSの認定は、一般社団法人住宅性能評価・表示協会が行っています。
※参考:建築物省エネルギー性能表示制度|一般社団法人住宅性能評価・表示協会
BEIとの関係
BELSではBEI値を基準に、星の数で評価のレベルを表しています。星の数は、一次エネルギー消費量と外皮性能を総合的に評価することで決まります。BEI値に基づいた星の数は、以下のとおりです。
・星5つ:BEI≧0.8
・星4つ:BEI≧0.85
・星3つ:BEI≧0.9
・星2つ:BEI≧1.0
・星1つ:BEI≧1.1
BELSで表示される項目
BELSでは、BEI値の他にも表示される項目が複数あります。ここでは、BELSで表示される項目を解説します。
基準値と比較した削減率
BELSでは、一次エネルギー消費量の基準値と、比較した場合の減少幅を示す削減率が表示項目にあります。削減率を表示することで建築物のエネルギー効率が数値化され、建築物のエネルギー効率を把握しやすくなります。
削減率の計算式は、「基準値からの削減率(%)=BEI値×100」です。
設計一次エネルギー消費量
BELSには設計一次エネルギー消費量の項目もあり、数値が低いほど高く評価されます。設計一次エネルギー消費量はエアコンや照明など、設備・機器の消費エネルギーを合計することで算出できます。設計一次エネルギー消費量が明確であれば、設計段階での改善点の発見に役立てることも可能です。また、BELSは消費者が建物選びをするうえで参考にできます。
省エネ基準への適合可否
BELSには、建築物が地域の省エネ基準を満たしているかを表示する項目もあります。省エネ基準への適合の可否が表示されることで、消費者はエネルギー効率に優れた建物を選びやすくなるでしょう。一方で、不動産業者や建物のオーナーは省エネ基準に適合していると示せるため、建物の不動産価値が高まり競争力を高められます。
UA値・ηAC値
UA値とηAC値は、建物のエネルギー効率や室内環境の快適さを表す指標です。UA値とは外皮平均貫流率の数値のことで、数値が低いほど建物内部の熱を屋外へ逃がしにくいことを示します。ηAC値は冷房機の平均日射熱取得率の数値を指しており、数値が低いほど日射熱が建物内部へ入りやすいことを表しています。
※参考:断熱性能とは?|国土交通省
ZEHマーク
BELSはZEHマークの表示を行えます。ZEHは再生可能エネルギーの活用によって、一次エネルギー消費量を実質的にゼロに抑えられる住宅です。ZEHの基準を満たした住宅に表示されるマークのことを、ZEHマークといいます。ZEHに該当する住宅は光熱費の削減はもちろん、環境負荷の軽減や災害時の備えなどが期待されています。
※参考:ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)|経済産業省
BELS導入のメリット
BELSは導入することで、省エネ性能の可視化や建築物の資産価値の向上、補助金制度の活用などのメリットがあります。
省エネ性能が可視化される
BELSを導入するメリットは、建築物の省エネ性能を可視化できることです。建築物の省エネ性能が一目で分かるようになれば、複数の建築物の一次エネルギー消費量やエネルギー効率を比べるのに便利です。BELSは明確な基準が定められているうえに透明性や信頼性があるため、建物の販売促進の事業に役立てられます。
建築物の資産価値が上がる
BELSの導入は、建築物の資産価値の向上に有効な手段です。BELSを導入することで省エネ性能を証明できれば、建築物の資産価値を高められます。近年、環境保全に対する社会的な関心が高まっていることから、BELSの導入はブランドイメージの向上につながります。保有する建築物におけるBELSの評価が高まれば、売買や賃貸の価格を上げることも可能です。
室内が快適に保たれる
BELSを導入するメリットは、室内環境が快適に保ちやすくなることです。BELSには、エネルギー効率や遮熱性、断熱性などの性能を評価するための項目が表示されています。
BELSの評価が高い建築物ほど快適に過ごしやすく、ランニングコストがかかりにくいといわれています。快適な室内環境を保つことができれば、従業員の生産性が高まるうえに健康を維持しやすくなるでしょう。
補助金を受けられる
BELSを導入するメリットは補助金制度を活用できることです。国や自治体では省エネ性能が高い建築物を対象に、補助金制度や優遇制度が設けられています。BELSの評価が高い建築物ほど補助金制度の要件を満たしやすく、受け取れる可能性が高まります。補助金を受け取った事実は、建築物の品質や性能の高さの証明となるため、信頼性をさらに高めることも可能です。
まとめ
BEIは、住宅や建築物の一次エネルギー消費量の基準や指標として用いられています。BEIやBELSの基準を満たした建築物はエネルギー効率がよく、一次エネルギー消費量を大幅に削減できることの証明になり、自社の脱炭素への取り組みにつなげられます。
「ゼロ炭素ポート」は、東京ガス株式会社と他社のソリューションとも協力し、お客さまのニーズにお応えするためのWebサイトです。脱炭素を中心に、省エネやCO2排出量に関する情報を発信しています。脱炭素ソリューションの詳細資料を配布しているため、自社の課題解決への足掛かりや企業価値の創出にお役立てください。
執筆者プロフィール
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA