企業が太陽光発電を導入するメリットと課題、具体的な導入方法とは?

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執筆者プロフィール

吉田裕美

Yumi Yoshida

金融機関勤務を経て、2016年にフリーライターへ転身。Webコンテンツや書籍、メールマガジン、キャッチコピーなど、様々なジャンルの執筆に携わる。近年はSDGs、サスティナビリティ関連のコンテンツ制作も多数担当。

企業の温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けた有効な取り組みのひとつが、発電時のGHG排出量がゼロ、もしくは非常に少ない「再生可能エネルギー」(以下:再エネ)の活用です。中でも太陽光発電は、太陽光という身近な資源を使用した比較的取り入れやすい再エネであり、近年は様々な導入方法が登場し、脱炭素経営を目指す企業から注目されています。しかし、太陽光発電設備の導入には初期コストなどの障壁もあり、頭を悩ませる企業も少なくありません。本記事では、企業が太陽光発電の導入で得られるメリット、導入方法の選択肢や導入においての課題、導入前に考えておくべき3つのポイント、そして導入時に活用したい補助金制度などを解説します。

1. 脱炭素経営の鍵となる太陽光発電

企業の脱炭素経営を実現するための有効な対策として、環境省は『中小規模事業者向けの脱炭素経営導入ハンドブック』において、「①知る」→「②測る」→「③減らす」の3つのステップを段階的に実行することを推奨しています。

詳細はこちら:知っておきたい脱炭素|「脱炭素経営を実践するために重要な3つのステップ

「③減らす」の取り組みには様々な施策がありますが、中でも日本をはじめ世界的に推進されているのが「再エネ」の活用です。再エネとは、太陽光、風力、地熱、バイオマスなど自然界に常に存在し、永続的に利用できるエネルギーです。発電時に発生するGHG排出量がゼロ、もしくは非常に少ないため、例えば「使用する電力を、化石燃料由来の電力から再エネ由来の電力に置き換える」といった取り組みで、自社のGHG排出量を削減できます。

現在、企業が事業活動で使用するエネルギーについて100%再エネでの調達を目指す『RE100(Renewable Energy 100%の略称)』という国際的な環境イニシアチブが世界中で広がりをみせています。日本でも86社(2024年3月現在)が参加しており、企業における再エネ活用は今後さらに拡大していくことが予測されます。

出典:RE 100|RE100 Members(https://www.there100.org/re100-members?items_per_page=All)を参照。

(2024年3月14日時点)

再エネのうち、特に企業の導入が活発化しているのが「太陽光発電」です。ここでは、太陽光発電にはどのような特徴があるのか、企業における活用方法、また活用によって得られるメリットについても紹介します。

太陽光発電の特徴とは?

太陽光発電は、太陽光のエネルギーを電力に変換する太陽電池が埋め込まれた太陽光パネル(ソーラーパネル)を、建物の屋根などに取り付けることで電気を作り出す仕組みです。

エネルギー源となる太陽光は、化石燃料のように枯渇せず、永続的に使用できると考えられています。また発電にともなうGHG排出量が非常に少ないことも大きな特徴です。

熱源によっても異なりますが、火力発電により排出されるGHG排出量は二酸化炭素(CO2)に換算すると、1kWh(キロワットアワー・電力量の単位で1kW(1,000W)の電力を1時間使用した場合の電力量)あたり平均約690gに対して、太陽光発電により排出されるCO2排出量は1kWhあたり17〜48gといわれ、その差は歴然です。

出典:クールネット東京:東京都地球温暖化防止活動推進センターホームページ|「太陽光発電システム(太陽光発電システムとは)」、
https://www.tokyo-co2down.jp/re-energy/efforts-renewable/taiyoko-system
国立研究開発法人産業技術総合研究所ホームページ|太陽光発電技術「太陽光発電の特徴1」(https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/about_pv/feature/feature_1.html
を参照。

(2024年3月14日時点)

では太陽光発電を導入すると、どのくらいのCO2排出量を削減できるのでしょうか。

太陽光発電の年間発電量は季節や天候、時間帯、日射状況などにより異なりますが、太陽光発電設備の出力容量1kWあたり約1,000kWhの電力を生み出すといわれています。 例えば、出力容量10kWの太陽光発電装置を使って、年間約10,000kWhの発電をすると仮定します。

出典:国立研究開発法人産業技術総合研究所ホームページ|太陽光発電技術「実環境における発電量」
https://unit.aist.go.jp/rpd-envene/PV/ja/about_pv/output/irradiance.html

(2024年3月14日時点)

もしこれまで使っていた火力発電による電力のうち、10,000kWhを太陽光発電による電力に置き換えた場合、仮に太陽光発電の発電時に排出されるCO2が1kWhあたり40gとすると、「40g×10,000kWh=400kg」のCO2が年間で排出されることになります。

一方で、火力発電の1kWhあたりの平均GHG排出量は約690gなので、太陽光発電に置き換えなかった場合、年間のCO2排出量は「690g×10,000kWh=6,900kg」です。したがって、太陽光発電の導入により火力発電の電力から太陽光発電の電力に切り替えた場合、年間で「6,900kg-400kg=6,500kg」のCO2排出量を削減できると考えられます。

企業における太陽光発電の活用方法

企業が太陽光発電を活用する場合、いくつかの方法があります。一例として4つの選択肢を紹介します。

●太陽光発電設備の導入
太陽光発電設備を設置して発電する方法です。太陽光発電設備の導入方法には、複数の選択肢があります。詳しくは後述しますが、まず太陽光発電設備を取り付ける場所は、社屋の屋根など企業の敷地内に設置する場合と、敷地外に設置して企業へ送電する場合があります。

また太陽光発電設備の調達方法としては、購入、リースのほか、国内では2020年から始まったPPA(Power Purchase Agreement/電力購入契約)という手法もあり、それぞれ必要なコストや設置条件などが異なります。

●電力の契約プランを切り替える
多くの小売電気事業者には、太陽光を含む再エネによって発電された電力を提供する契約プランがあります。プランにより再エネの使用割合は異なりますが、再エネ使用100%の契約プランを選択すれば、実質的に電力の使用に伴うGHG排出量をゼロにすることも可能です。太陽光発電設備を設置しなくても再エネが調達できるため、短期的に取り組みやすい方法です。

●リバースオークションに参加する
再エネ電力を購入したい企業(買い手)が、オンライン上でのオークションにおいて最低入札価格を提示する小売電気事業者(売り手)を選ぶ方法です。一般的なオークションとは逆に、売り手によって入札価格が繰り下げられることで、買い手がより安価に購入できるため「リバースオークション」といわれます。より低廉な価格の再エネ電力契約を結べることが特徴で、申し込みの際は過去12か月分の電力使用量明細が必要となります。

●再エネ電力証書を購入する
再エネにより電力を生産している発電事業者などが発行する「再エネ電力証書」を購入することで、再エネ電力由来の環境価値(GHG排出量削減効果など)を得られる方法です。例えば、努力をしても削減困難なGHG排出量がある場合、購入した再エネ電力証書によってその全部、または一部を埋め合わせするといったカーボン・オフセットの取り組みにも活用できます。現在、国内で購入できるのは「J-クレジット」「グリーン電力証書」「非化石証書」の3種類です。

企業が太陽光発電の活用で得られるメリット

では、企業が太陽光発電を活用することによってどのようなメリットが得られるのでしょうか。

●GHG排出量の削減

まず最も大きなメリットとして「GHG排出量の削減」があります。前述の通り、太陽光発電で排出されるGHG排出量は、火力発電と比べてわずか6%程度です。したがって化石燃料由来の電力を太陽光発電による電力に置き換えることで、GHG排出量を減らすことができます。特に工場など多くの電力を使用する施設では、大幅な削減が見込めるでしょう。

●企業価値の向上

日本は2020年に「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までにGHG排出量を全体としてゼロにすることを目指しています。脱炭素化の意識が高まる中で、太陽光発電を活用しGHG排出量の削減に取り組む姿勢を示し、成果を上げることは、企業・団体にとって顧客や取引先、投資家、サプライヤーなど様々なステークホルダーからの評価を高める重要な要素となっています。また、2023年度から上場企業に対して義務化された非財務情報開示においても、太陽光発電によるGHG排出量削減はサステナビリティ課題への取り組みとして活かせます。

●資金調達が有利になる

太陽光発電をはじめGHG排出量削減に向けた取り組みを活発に実施しているかどうかは、企業の成長度合いを長期的に観察するにあたり重要な指標になっています。例えば、金融機関によっては脱炭素経営を行う企業に限定した融資商品が用意されていますし、融資を受ける企業が自社の掲げるGHG排出量削減目標を達成すると金利が優遇される「サステナビリティ・リンク・ローン」も広まりつつあります。また投資家が投資を行う際の判断基準として、環境や社会に配慮し適切な企業統治がなされていることに重きを置く「ESG投資」は世界的に活発化しています。太陽光発電の活用は、資金調達の局面でも有利に働くといえます。

●環境イニシアチブ参加による取引先・営業先へのアピール

前述した『RE100』のほかにも、電力の再エネ転換を認定要件とする環境イニシアチブは存在します。『再エネ100宣言RE Action』は、国内の中小企業も含めた幅広い企業・団体が参加できるもので「2050年までに使用する電力を100%再エネに転換する目標を設定し、対外的に公表すること」などが認定要件となっています。こうしたイニシアチブへの参加は、ステークホルダーに対してGHG排出量削減に取り組む企業であることをアピールする手段となり、競合他社との差別化にもつながります。

●災害時の電力確保

太陽光発電設備を設置している場合、製品によっては自然災害などで大規模な停電が発生した際、非常用電源として活用できます。そのため企業のBCP(事業継続計画)対策としても有効です。また蓄電池を併設している場合は、日中に発電した電力を貯めておき、夜間に使用することが可能です。

2.  太陽光発電設備の具体的な導入方法と課題

太陽光発電を活用する方法をお伝えしましたが、ここではその中でもGHG排出量の削減を目指す多くの企業から注目される、太陽光発電設備の導入方法について解説していきます。

太陽光発電設備を新たに導入するとなると、初期費用に不安を持つ企業もあるかと思いますが、現在は自社で設備を購入する方法のほか、「PPA方式」や「リース方式」といったいわゆる“0円ソーラー”と呼ばれる、初期費用なしで導入可能な方法も登場しています。

様々な導入方法がある中で注意しなければならないのは、自社に適した方法、方式を選ぶことです。導入方法によって、必要なコストや設置条件などが異なります。そのため、様々な太陽光発電の導入方法の特徴や事前に考慮すると良いポイント、また導入に際しての課題に対する理解を深めることが大切です。

導入方法ごとの特徴やメリット、デメリット

太陽光発電設備の導入方法は、大きく分けると「敷地内に導入する」「敷地外に導入する」の2パターンに区分されます。また敷地内の導入・敷地外の導入ともに、発電設備や電力の調達方法に複数の選択肢があります。ここからはそれぞれの選択肢について特徴を説明しながら、それぞれのメリットおよびデメリットを紹介します。

●企業の敷地内に導入する方法
企業が所有もしくは借用する敷地内にある建物の屋根や空き地などに太陽光発電設備を設置し、その設備で発電した電力を同一敷地内にある建物で使用する方法です。敷地内に設備を設置できるスペースを確保できることが条件となります。確保できるスペースの広さによっては、導入した太陽光発電設備のみでは企業が必要とする電力量を賄えない場合もあります。

企業の敷地内に太陽光発電設備を導入する場合、具体的な調達方法として「購入方式」、「リース方式」、「オンサイトPPA方式」の3つが挙げられます。

・購入方式
自社で太陽光発電設備を購入し、発電した電力を使用する方式です。電力の使用にサービス料などがかからず、余剰電力が発生した場合は電力会社に買い取ってもらうこと(売電)も可能です。

デメリットとしては、購入のための初期費用がかかること、長期的な維持管理・メンテナンスに手間や費用が必要となることが挙げられます。また売電を行う際には、電力会社との協議や申請手続きが必要で、承認までには時間を要する場合があります。

・リース方式
企業・団体がリース事業者に太陽光発電設備の設置を依頼し、月々のリース費用を支払うことで発電した電力を使用できる方式です。購入方式と同様に余剰電力は売電可能です。設備の購入費用が不要なため初期費用0円で導入でき、基本的には設備の維持管理・メンテナンスもリース事業者が行うため費用はかかりません(契約形態による)。リースした太陽光発電設備は、リース資産として管理・計上が必要です。

デメリットは、リース契約が10〜20年と長期間にわたる場合が多く、また基本的に契約中の設備交換や移転はできないことが挙げられます。またもし設備交換や移転を行う場合も、違約金が発生する場合があります。加えて仮に日照量が少なく、設備で発電ができなかった月でも固定のリース費用を支払わなければならないため、注意が必要です。

・オンサイトPPA方式
PPAとは、発電事業者が太陽光発電設備を設置し、所有と維持管理を行いながら、発電した電力を企業へ供給する方式です。その中でも敷地内に設備を設置するものは「オンサイトPPA」といいます。初期費用0円で導入可能で、設備の維持管理、メンテナンスも発電事業者が行い費用を負担します。企業は、発電事業者に電力利用料を支払い、発電した電力を使用します。余剰電力が発生した際は、発電事業者が売電を行います。太陽光発電設備は発電事業者が所有するため「第三者所有モデル」とも呼ばれ、一般的に設備の資産計上は不要です。契約期間が終了すると、太陽光発電設備は企業に譲渡され、引き続き自社での運用が可能です。

デメリットとして、リース方式と同様に契約期間が10〜20年と長期間にわたること、契約内容によっては設置場所の移転ができないこと、もし移転する場合は違約金が発生する場合があることなどが挙げられます。

●企業の敷地外に導入する方法

企業の敷地外に太陽光発電設備を設置し、発電した電力を使用したい場所に送電して使用する方法です。費用は敷地内に設置するよりも高い傾向にありますが、自社に設置スペースがない企業でも太陽光発電を導入できるのが大きな特徴です。

企業の敷地外に太陽光発電設備を導入する場合、具体的な調達方法として「自営線方式」、「自己託送方式」、「オフサイトPPA方式」の3つが挙げられます。

・自営線方式
企業もしくは発電事業者が太陽光発電設備を設置し、企業が自ら設けた送電線(自営線)を経由して電力を送る方式です。太陽光発電設備を運用するのが別企業でも、グループ企業同士や親会社と子会社のように「密接な関係」が認められる場合は自営線を通じて電力の共有を受けられる可能性があります。

デメリットは、自営線の整備に発電設備と送電先との距離などに応じた費用がかかること、また自営線が通る道路の許認可手続きが必要となることなど、設備の仕組みや導入手続きが複雑な点です。

・自己託送方式
企業もしくは発電事業者が太陽光発電設備を設置し、経済産業大臣から許可を受けた全国10社の一般送配電事業者の送配電網(発電所でつくられた電力を消費地まで運ぶ設備)を経由して電力を送る方式です。自営線方式よりは導入コストが少ない傾向にあり、自己託送方式の場合も「密接な関係」が認められる場合は、発電する企業と電力を使用する企業が異なるケースがあります。

デメリットは、送配電網を利用するための託送料金が発生すること、また発電計画や需要計画などを電力広域的運営推進機関(オクト・OCCTO)に日々提出する必要があることなどが挙げられます。

・オフサイトPPA方式
発電事業者が敷地外に設置した太陽光発電設備で行うPPAを「オフサイトPPA」といいます。オンサイトPPAと異なる点は、設備で発電された電力が小売電気事業者を介して企業に供給されることです。企業は、小売電気事業者を介して発電事業者に電力利用料を支払い、電力を使用します。オンサイトPPAと同様に、太陽光発電設備の所有者は発電事業者であり、設備の維持管理・メンテナンスも発電事業者が行うため費用はかかりません。自社の敷地面積にとらわれず、必要な電力を調達できます。

デメリットは、契約期間が10〜20年と長期間にわたり、契約期間中の解約には違約金が発生する可能性があることです。またオンサイトPPAに比べると電力利用料が割高になる傾向があるほか、小売電気事業者を介して供給されるオフサイトPPAの電力には、使用量に応じて「再エネ賦課金」という負担金が発生します。

太陽光発電導入前に考えるべき3つのポイント

太陽光発電の導入方法は複数あり、その種類や設置する太陽光パネルの出力容量などによっても設置できる場所や初期費用などは異なります。自社に適した導入方法を検討するためには、まず社内で以下の3つのポイントを明らかにしておくことが重要です。

■ポイント① 導入の目的
最初に、なぜ太陽光発電を導入したいのかを明確にしましょう。
例えば、

「GHG排出量の削減目標を達成するための施策として導入したい」
「企業価値向上のために導入したい」
「エネルギーコストを削減するために導入したい」

など、目的を明確にすることで、太陽光発電の導入において何を重要視すべきかが見えてきます。

GHG排出量削減が目的ならば、できるだけ多くの電力を発電することに着目するのも一案です。敷地内に広いスペースを確保できるなら、そこに可能な限りの太陽光発電設備を設置し、さらに多くの発電量を求める場合、オフサイトPPAを積極的に利用するという選択肢もあります。いずれにしても、現在のGHG排出量と目標値のギャップを測り、その数値を達成できる導入方法を検討する必要があります。

企業価値向上が目的の場合、太陽光発電によるGHG排出量削減の取り組みを対外的にPRすることが重要となります。例えば、環境イニシアチブへの参加はステークホルダーにわかりやすくアピールするのに効果的です。その場合、イニシアチブ参加要件を念頭においた導入方法の検討が必要です。

エネルギーコストの削減が主目的である場合、初期費用がかからないオンサイトPPAやリース方式を選択するのも一案です。その場合は、電力利用料やリース料といったランニングコストまで視野に入れて検討することも重要です。

■ポイント② 制約条件
次に、設置場所とファイナンスなど導入にあたっての制約条件を考えます。いくら太陽光発電を導入したくても、肝心の太陽光発電設備を設置できる場所や費用がなければ実現できません。

設置場所として一般的なのは建物の屋根で、近年は壁や窓に設置するケースもあります。設置したい場所の面積や形状、強度や耐荷重、太陽光が十分に当たるかどうかを確認した上で、対応可能な導入方法を検討することが大切です。

また太陽光発電は導入方法によって初期費用やランニングコストに違いがあり、確保したい発電量によっても必要な費用は変わってきます。導入を検討するにあたり、用意できる自己資金、受けられる融資や補助金などファイナンスについても考えておく必要があります。

■ポイント③ 運用方法
太陽光発電設備の導入前に、その運用方法について考えておくのも大切です。特に、敷地内の太陽光発電設備の場合、設置期間は10〜20年と長期間が見込まれます。太陽光パネルの耐用年数は20〜30年程度といわれますが、屋外で長く使用する中では運転状況の管理、点検などのメンテナンスは欠かせません。実際に設備を設置してから「運用はどうすれば……」という事態に陥らないよう、太陽光設備の運用は誰が行うのか、どれだけ費用がかかるのか、長期的な視点で検討しておくことが重要です。

3つのポイントを考える際、生じる課題とは?

前述の3つのポイントを考える際に、生じる課題として以下が挙げられます。

・多額の初期費用(購入方式の場合)
・運転状況の管理やメンテナンスなど長期的な運用の難しさ
・設置場所や面積の適合性

経済産業省が発行する資料によると、事業用に該当する10kW以上の太陽光発電設備の場合、導入にかかるシステム費用の平均値は1kWあたり23.6万円で、もし10kWの設備を購入する場合はおよそ236万円の初期費用が発生します(工事費も含む)。発電容量や規模によっては、さらに費用が高くなることもあります。購入方式は使用する電力に料金がかからないことが魅力である一方で、この初期費用が導入の障壁となりえます。

出典:経済産業省|調達価格等算定委員会「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」について(https://www.meti.go.jp/shingikai/santeii/20230208_report.html)内『令和5年度以降の調達価格等に関する意見』11Pを参照。

(2024年3月10日時点)

また、メンテナンスや故障時の長期的な対応が難しいことで悩む企業もあります。人手不足で新たに太陽光発電の運用部署を作るのが難しかったり、外部に委託する場合は長期的なコストが気になったりといったこともあるでしょう。この場合は、運用やメンテナンスをリース事業者や発電事業者にまかせられるオンサイトPPAやリース方式を選択することが、解決策となる可能性があります。

そして「設置場所や面積の不適合」で太陽光発電の導入が進まないケースもよく発生します。特にオンサイトPPAは、2020年のサービス開始から多くの発電事業者が参入した今、業界が再編の局面を迎えています。採算性確保のため、設置にあたり大規模な面積の確保を必須とする発電事業者が増加しており、「PPAで太陽光発電を導入したいが、条件に合わなかった」というケースも増えています。

しかし中には、狭い面積における設置にも対応できる技術力を持ち合わせた発電事業者もあります。そうした事業者を選ぶことで、この課題を解決できる場合もあります。

太陽光発電導入に関する補助金制度

前述した初期費用に関する課題の解決方法としては、補助金制度を利用する手もあります。一例として、太陽光発電の導入に際して活用できる制度を2つ紹介します。

補助金制度には適用条件が細かく定められており、同じ制度でも年度によって内容が変わる場合もあるため、活用にあたっては最新情報をよく確認する必要があります。特に、初期費用がかからないオンサイトPPAやリース方式に関しては、紹介する補助金制度の適用が難しいため注意が必要です。

●需要家主導太陽光発電導入促進事業(経済産業省)
企業が自ら設置した太陽光発電設備、再エネ併設型の蓄電池を導入するための、機器購入等の費用を対象とした補助制度です。一定規模以上の新規設置案件であること、固定価格買取制度(FIT)・FIP制度※や自己託送ではないことなどが適用要件に定められています。

※固定価格買取制度(FIT):太陽光発電などの再エネで発電した電力を電力会社が固定価格で買い取る制度、FIP制度:卸市場などで再エネ発電電力を売電する際、売電価格にプレミアム(補助額)を上乗せする制度

出典:経済産業省ホームページ|令和6年度経済産業省概算要求のPR資料一覧:エネルギー対策特別会計(https://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2024/pr/energy.html)内「需要家主導太陽光発電導入促進事業」を参照。

(2024年3月10日時点)

●新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業(農林水産省、経済産業省連携事業)
地域との共生を前提とした新たな手法による再エネ導入、価格低減促進を図るための事業で、この事業では駐車場を活用した太陽光発電(ソーラーカーポート)の導入支援である「建物における太陽光発電の新たな設置手法活用事業」、太陽光発電設備の新規導入にともない自営線の導入を支援する「オフサイトからの自営線による再エネ調達促進事業」などの補助金制度があります。

出典:農林水産省ホームページ|農山漁村における再生可能エネルギーの導入促進のための予算措置等(https://www.maff.go.jp/j/shokusan/renewable/energy/yosan.html)内「新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業」を参照。

(2024年3月10日時点)

3.  まとめ

社会全体が脱炭素社会の実現に向けて動きを早める中、企業は各方面のステークホルダーからGHG排出量削減に対して具体的な取り組みを求められています。脱炭素経営はすべての企業にとって喫緊の課題です。その中で太陽光発電の導入・活用はGHG排出量削減への取り組みを加速させるとともに、企業価値の向上など企業としてのメリットも享受できる大きな一歩となります。太陽光発電導入の効果を最大化するためにも、脱炭素経営の方向性を明確にした上で、自社に適した導入方法を選ぶことが重要です。

執筆者:吉田裕美