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農業でも地球温暖化対策が必要?脱炭素化への取り組み、対策を解説
目次
地球温暖化対策は、農業にとっても非常に重要です。地球温暖化が農業に与える影響が大きい一方で、農業が地球温暖化の原因ともなっており、2つの意味で温暖化対策が欠かせません。
本記事では、農業における地球温暖化対策の必要性について解説します。農業における温暖化対策を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。
地球温暖化が農業に与えるデメリット
地球温暖化は、異常気象を引き起こすことから農業に多くのデメリットを与えています。野菜の生育に関する影響は、その最たるものです。結球・着色・着花・着果不良が起こるため、思うような収穫をあげられなかったり、規格外のものができてしまったりすることもあります。果樹の場合、着色・発芽不良が起これば販売は難しいでしょう。
花卉も例外ではなく、退色・奇形が起こりがちです。野菜も花も、収穫・開花期の前進あるいは遅延が発生し、収穫すべきときにできないケースも発生しています。
地球温暖化が農業に与えるメリット
デメリットが多いように見える地球温暖化も、農業にメリットをもたらしている側面があります。ここでは、地球温暖化が農業に与えるメリットを解説します。
CO2の濃度上昇
地球温暖化によるCO2の濃度上昇で光合成が促進された結果、一部の作物では収穫量が増える可能性があると報告されています。
また、気温の変化によって栽培適地が拡大する場合もあり、地球温暖化が農業にとってすべてデメリットであるとはいえません。一方で、地球温暖化により自然災害が拡大するといった問題もあり、どこまでも温暖化してよいということではありません。
降水量の増加・温度の調整
降水量の増加によって、農作物が成長しやすくなるケースも見られています。温暖な地域の作物など、高温の活用で育てられる農作物もあるでしょう。
近年は、高温耐性の品種改良が進んでおり、過去には高温下で栽培できなかった作物も育てられるようになっています。天候に合わせて農業技術が発展することは、温暖化によって得られるメリットです。
地球温暖化による農業への影響を抑える対策
現在では、地球温暖化が農業に与えるさまざまな影響を抑えるために、以下のような対策が取られています。
水管理・刈り取り時期の調整
地球温暖化による課題の1つが、水稲の収穫量・品質の低下です。現在は、高温耐性があり、かつ味の優れた品種が開発されており、今後の収量および品質の改善が期待できるでしょう。また、水稲を高温にさらさないため水管理の工夫もなされている他、遅植えする、収穫時期を早めるなどの対策が講じられています。
品種選定・冷却技術の導入
農業全体を通して、高温障害による野菜・果物の品質悪化が問題となっています。気温上昇に対応するためには、高温に強い品種を選定し、育てることが求められるでしょう。
高温下でも強靱な植物を育てるためには、適切な堆肥投入、地力向上、水管理が重要です。見た目や感覚ではなく、データによって植物の適度な環境が保たれるよう、スマート農業技術の導入が進んでいることにも注目するとよいでしょう。
地下水位制御システムを活用
現在、大豆や麦の干ばつによる収穫量減少が懸念されています。干ばつ下でも必要な作物を育てていくためには、水の適切な管理が不可欠です。
例えば米作の場合、地下水位制御システムを導入することで、水田の水位を維持できます。畑で試みられているのは、排水対策と保水対策を兼ねて深耕するという方法です。近年では短時間に大量の降雨があるため、深耕によって地下排水を促し、不必要に水が溜まるのを防ぐ必要が生じています。
新しい栽培技術の開発・導入
近年はさまざまな作物において、高温下での栽培を実現するための新たな栽培技術が開発・導入されています。例えば果物の栽培で課題となっているのが高温障害です。栽培の現場では、高温に適した品種の導入、摘果法の改善などが行われ、徐々に改善が見られています。
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構では、農業に関連する研究開発を行っており、こうした研究結果が多くの作物の育成状況を改善に導いているのが現状です。
農業が地球温暖化の原因となり得る
農業は地球温暖化の影響を受けるだけではなく、地球温暖化の原因にもなっています。ここでは、農業による温暖化への影響を解説します。
農林業の温室効果ガス排出状況
農業を実施すると、水田や農地土壌、肥料などから温室効果ガスが発生することがわかっています。温室効果ガスとは、CO2やメタンなど、太陽からの熱エネルギーを閉じ込める作用があるガスのことです。農業では土壌中の有機物が分解されることなどから、温室効果ガスが常に発生しているものの、現在ではガスを抑制する技術の研究も進められています。
農業の脱炭素化が必要
現在では、フランス・オーストラリアなど世界各国で、農業の脱炭素化への取り組みが進められています。日本でも農林水産省によって、2050年までのCO2ゼロエミッション化実現を目指すことが示されました。この指針では、農業機械の利用における電化・水素化や、化石燃料を使用しないハイブリッド型の園芸システムの確立などが掲げられています。
農業における地球温暖化対策
農業における地球温暖化対策では、現在、次のような取り組みが行われています。
みどりの食料システム戦略
みどりの食料システム戦略は、農林水産省によって策定された施策で、食料の生産力向上とともに農業の持続性を目指すものです。温室効果ガス削減のみならず、環境保全や食品産業の持続性といった部分にも、調達・生産・消費・加工・流通の面から総合的な取り組みを示しています。さまざまな支援や融資の利用も可能です。
サプライチェーンの脱炭素化
消費者に届くまでのフードサプライチェーンを脱炭素化し、持続可能なものにすることも課題の1つです。生産過程における脱炭素の取り組みを可視化し、食の安全について消費者の理解を得ることも積極的に行われています。例えば農業生産品の一部には、商品生産・流通における温室効果ガス削減効果を、星の数で示したシールなどが貼られています。
有機農業の促進
持続可能な農業の実現に向け、有機農業の技術促進が重視されています。食の安全性やサステナビリティに消費者の興味が集まりつつあることも受け、オーガニック市場拡大が目指されているのです。みどりの食料システム戦略では、地球の環境保全を支える戦略の1つとして、化学肥料の使用低減が目標とされています。
省エネルギー設備の導入
CO2排出削減のためには、農業に使われる設備の省エネルギー化が求められます。農林水産省では、農林⽔産省地球温暖化対策計画を策定しており、これによれば2030年度での温室効果ガスの削減目標は、2013年度比でマイナス46%です。
目標達成には、園芸施設および農業機械のCO2削減が欠かせません。ヒートポンプなどの省エネ設備、省エネ農機の普及が目指されます。
農業でも再生可能エネルギーが活用できる
温室効果ガス削減に寄与する再生可能エネルギーは、農業でも活用が可能です。具体的には、次のような活用方法があります。
農業における再生可能エネルギーの活用
農業の脱炭素化のため、再生可能エネルギーの活用に注目が集まっています。例えば、バイオマス発電は、生物資源そのものや、資源から生じるガスを燃焼して発電する方法です。また、農地で太陽エネルギーから発電を行い、再生可能エネルギーを農業に利用しながら農業資金の調達にも役立てる、ソーラーシェアリングの取り組みも推進されています。
RE100実現に向けた農業の取り組み
RE100(Renewable Energy 100%:再生可能エネルギー100%)とは、エネルギーを100%再生可能エネルギーで賄うことです。現在はRE100を目指し、農村の豊富な資源を活用しつつ、再生可能エネルギー推進に取り組む動きが活発化しています。
具体的な方法は、使用する設備の電源を再生可能エネルギーに転換することです。現在のエネルギー源を見直し、再生可能エネルギーの導入を検討しましょう。
農業における地球温暖化対策の技術開発
ここでは、農業分野で行われている、地球温暖化対策を視野に入れた技術開発について解説します。
農地土壌炭素貯留技術
農地土壌炭素貯留技術は、カーボンファーミングとも呼ばれています。土壌内の有機物の量を増やすことで大気中のCO2を土壌に取り込み、温室効果ガスの減少と土壌の品質向上を目指す方法です。
土壌の炭素吸収・貯留を促すには、肥料・堆肥を適切に使用し、植生管理などを行います。土壌を改善するため、痩せた土地の修復方法としても期待されています。
省エネ型施設・設備の導入
省エネ型施設や設備を導入し、農業におけるエネルギー消費を抑えることも大切です。例えば、節水型の灌漑設備を導入したり、農業機械をエネルギー効率が高いものに切り替えたりすることが考えられます。使用されるエネルギーが少なくなれば、CO2排出量が減るとともに経費もかからなくなるのが利点です。
農業用機械の電動化
電動の農業用機械を導入することで、化石燃料の消費を減少させることができます。
農業用機械のうち、軽油・ガソリンといった化石燃料で動くものが多数存在しており、使うたびにCO2が発生するのが難点です。これらを電動のものに切り替えると、エネルギー効率がよくなるだけでなく、さまざまな自動化機能などを利用できます。したがって作業効率もアップするでしょう。
カーボン・クレジットと農業の脱炭素化
カーボン・クレジットは、削減した温室効果ガスを「排出権」として企業へ売れる仕組みです。農業においては、バイオ炭利用・有機農業の推進・再生可能エネルギーの活用などによる温室効果ガス削減量のクレジット化が実践されており、新たな農業の財源として期待されています。
地域再生と農業の脱炭素化
地域資源の活用で農業の脱炭素化を進め、かつ地域の再生につなげるという方法も、注目を集めつつあります。
具体的には、農業分野で再生可能エネルギーによる発電を推進し、余ったエネルギーを近隣の都市部へ提供し、都市部から対価や投資を得る方法などです。現在取り組みが行われているのはごく一部の地域に留まるため、今後、地域企業と農業の連携がいっそう期待されています。
農業における脱炭素の見える化
消費者がより環境負荷の低い農産物を選択・購入していくために、農産物の脱炭素を見える化する取り組みが求められています。CO2削減効果を見える化すると、商品に等級ラベルなどで表示されるため、消費者が選びやすくなるのがメリットです。
見える化には専用の計算ツールが必要となるものの、消費者に選ばれる機会を拡大できるため、生産者が環境に配慮するきっかけになるでしょう。農林水産省もツールの導入を推進しており、今後の導入拡大が見込まれます。
まとめ
地球温暖化対策は、農業においても欠かせない視点です。とりわけ農業は地球温暖化の影響をダイレクトに受ける分野であり、かつ温室効果ガスを発生させることで、地球温暖化を促進している側面もあります。先を見据えた地球温暖化対策こそが、持続可能な農業を実現するともいえるでしょう。
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執筆者プロフィール
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA