再生可能エネルギー×水素エネルギー|次世代エネルギーの基礎知識を解説

目次

水素エネルギーは、燃焼時に二酸化炭素を排出しない特性があり、再生可能エネルギーとの連携によって、持続可能なエネルギー社会の実現につなげられる可能性があります。本記事では、水素エネルギーの概要、再生可能エネルギーとの関係や可能性、さらに水素エネルギーの課題について解説します。ぜひ参考にしてください。

水素の基礎知識

まずここでは、水素について基本的な特性を解説します。

物理的特性

水素は、宇宙のなかで最も軽い物質です。重量は空気の約14分の1しかありません。宇宙で最も多く存在する物質であり、地球上では水や化石燃料の形で存在しています。気体としての水素分子は軽い一方で、特定の条件下において液体化や固体化することも可能です。なお、空気中において、水素の濃度は約0.00005%です。

化学的特性

水素ガスは無色・無臭・無毒です。酸素と反応して高い燃焼エネルギーを発生し、水を生成できます。水素が燃えることを学校で習い、危険だと感じている人もいるかもしれませんが、本来は適切な環境下であれば安全な取扱いが可能な物質です。

また、水素は製造方法によって複数の水素に分類されます。製造過程や環境負荷にそれぞれ特性がありますが、これについては後述します。

エネルギー特性

水素はエネルギー密度の高い物質で、燃焼時に二酸化炭素をほとんど排出しません。したがって燃料電池の電力供給、ロケット燃料など、高効率なエネルギー利用に適しているといえます。

また、再生可能エネルギーによる発電量が余ったときなど、水素を利用すれば再生可能エネルギーの貯蔵・運搬が可能です。これらの理由から、水素は脱炭素社会の実現に向けた次世代エネルギーとして期待されています。

水素の主な種類

水素には、特性によってさまざまな種類があります。ここでは、水素のなかでも代表的とされるグリーン水素、グレー水素、ブルー水素について解説します。

グリーン水素

グリーン水素は、再生可能エネルギーを利用して生成するタイプの水素です。太陽光発電や風力発電による電力を使って水を電気分解することで、製造過程で二酸化炭素を排出せずに環境負荷の低い水素を生成できます。持続可能な社会の実現に向けた、最も理想的な水素とされている水素です。

グレー水素

グレー水素は、化石資源(石炭、石油、天然ガスなど)を原料として生成される水素です。この場合、製造過程で二酸化炭素が発生してしまいますが、特に回収や処理は行われていないものをグレー水素と呼びます。通常使われないような、低品質で安価な石炭などの燃料が使えるため、一般的で低コストの方法ですが、環境負荷の高さが難点です。

ブルー水素

ブルー水素とは、グレー水素の製造時に発生する二酸化炭素の管理手法を用いた水素です。二酸化炭素の回収・貯留(CCS)技術を活用し、二酸化炭素排出量を削減することで、環境への影響を軽減します。ブルー水素は、化石資源を利用しつつも脱炭素化への移行を目指す、中間的な選択肢といえるでしょう。

注目度の高い水素

グリーン、グレー、ブルーの3種類に属さない、注目度の高い水素もあります。水素のバリエーションを解説します。

ホワイト水素

ホワイト水素は、地中に存在する天然水素のことです。人工的な製造を必要としないため、究極のクリーンエネルギーとして注目されています。水素の採掘は製造よりもエネルギー消費が少ないため、ホワイト水素は環境に優しいという説が一般的です。

イエロー水素

イエロー水素は、原子力発電による電力を用いて、水を電気分解して生成する水素です。製造時に二酸化炭素を排出しない方法であり、環境負荷の少なさが評価されています。一方、原子力発電に伴う放射性廃棄物の管理が課題です。

ターコイズ水素

ターコイズ水素は、天然ガスやバイオガスの主成分であるメタンを熱分解して生成する水素です。製造過程で二酸化炭素を排出せず、固体炭素が副産物として得られます。また、水素とともに生成されるガスは、熱分解の作業に再利用が可能です。グリーンとブルーの中間という意味でターコイズと呼ばれており、生産コストの低さが特徴となっています。

ブラウン水素

ブラウン水素は、褐炭(亜炭) を原料として生成する水素です。製造過程で大量の二酸化炭素と一酸化炭素が大気中に放出されるため、環境負荷が高いとされています。しかし、原材料が安いため、ブラウン水素の市場規模は水素市場のなかでも大きくなりました。

ゴールド水素

ゴールド水素は、枯渇した油井内に存在する微生物の発酵によって生成される天然水素です。人工的に製造する必要のない、安価な水素供給の手段として注目されており、採掘する企業が増えています。ゴールド水素の埋蔵量は膨大といわれており、その可能性は未知数です。

水素と再生可能エネルギーの関係性

水素と再生可能エネルギーは「再生可能エネルギーを利用して水を電気分解することで、水素を生成する」という関係性でつながっています。たとえば、太陽光発電システムで得た電力を用いて水を電気分解し、水素を生成できます。

ここへエネルギーマネジメントシステムを導入すれば、発電量や消費量、水素の蓄積状況をリアルタイムで監視・調整できるため効率的です。再生可能エネルギー由来の水素は、製造から利用に至るまで二酸化炭素をほとんど排出しません。そのため、持続可能なエネルギー社会の実現に大きく貢献する可能性があります。

水素の活用で生み出されるエネルギーの活用方法

現在水素エネルギーは、以下のような方法で活用が進められています。

水素と酸素の反応で生まれる電気エネルギー

水素と酸素を化学反応させると電気エネルギーが生成されます。この原理を利用しているのが燃料電池です。燃料電池のメリットは、発電効率の高さにあります。燃料電池は、燃焼の熱を電力へ変換する化石燃料の仕組みとは違うため、化学エネルギーから電気エネルギーへと無駄なく変換することが可能です。

燃料電池は現在、自動車やバスの動力源、家庭用電源、大型業務用発電機など、さまざまな分野での利用が進んでいます。

水素を燃焼して生まれる熱エネルギー

水素は、燃焼によって熱エネルギーを発生させます。発生した熱エネルギーはタービンの動力源やロケット燃料、水素発電など、幅広い分野で利用可能です。水素の燃焼によって生成されるのは水のみで、二酸化炭素や有害物質を排出しません。したがって、水素は化石燃料を代替し、脱炭素社会の実現につながるクリーンな熱エネルギー源といえます。

水素エネルギー活用のメリット

水素エネルギーの活用によって、以下のようなメリットが得られます。

エネルギー自給率の改善につながる

水素は化石燃料だけでなく、再生可能エネルギーなど複数の資源から製造できます。日本国内で未利用のエネルギー資源や再生可能エネルギーを活用できれば、エネルギー自給率の向上につながります。

経済産業省によると、1960年度時点における日本のエネルギー自給率は58.1%でしたが、2022年度には12.6%と、約5分の1に落ち込んでいます。現状、日本では特定地域からの化石燃料の輸入に頼っているため、世界情勢が変わるとエネルギーの安定供給が難しくなる点は、懸念材料です。

※参考:第2章 国際エネルギー動向|経済産業省

資源が豊富にある

水素は石油や天然ガスなどの化石燃料のみならず、下水汚泥や廃プラスチック、メタノールやエタノールなど、さまざまな資源から生成できます。水を電気分解して水素を生成する方法もあります。

ただし、電気分解による方法は効率が悪いため、開発途上にある状況です。実用レベルにまで技術力を高められれば、生成から排出までの過程において、二酸化炭素を一切排出しないクリーンエネルギーが実現します。

環境に優しい

水素の燃焼時には水のみが生成され、二酸化炭素や有害ガスが発生しないため、地球温暖化防止に役立ちます。前述したように、再生可能エネルギーを利用して水を電気分解するグリーン水素は、製造過程においても二酸化炭素を排出しないエネルギーです。

化石燃料の使用を抑え、水素エネルギーを積極的に利用することで、二酸化炭素、硫黄酸化物、窒素酸化物といった大気汚染物質を削減できます。

水素エネルギー活用のデメリット

水素エネルギーの活用には、以下のようなデメリットも指摘されています。

製造方法によっては二酸化炭素を排出する

水素エネルギーを製造する際に化石燃料を使う場合、製造過程で大量の二酸化炭素を排出します。二酸化炭素回収技術を用いて環境負荷を抑える方法もあるとはいえ、コストがかかるため一般的ではありません。一方、化石燃料を使わないグリーン水素を製造するには、再生可能エネルギーの確保が課題となっています。

輸送・供給にコストがかかる

水素利用にあたってはインフラ整備のコストがかかるため、コスト競争力を向上させる必要があります。水素は軽い物質で、しかも気体です。輸送のためには液化させたり、高圧ガスに圧縮したりすることが欠かせません。加えて、輸送・貯蔵プロセスでエネルギー損失が発生することもあり、コスト問題を解決するには技術力の向上も課題といえます。

安全性に関する懸念がある

水素は引火性が高く、取り扱いには高度な安全管理が必要です。水素の扱いには爆発のリスクが伴うため、関連システムの設計や運用には細心の注意を払わなければなりません。しかし、現状は管理が難しい状態であり、安全な運用にはさらなる研究が必要です。

日本政府の水素エネルギー活用に向けた取り組み

日本政府では、水素エネルギーの活用に向けて次のような取り組みを行っています。

水素の利活用に巨額の先行投資

日本では、2050年のカーボンニュートラル実現に向け、水素を不可欠なエネルギー源と位置づけています。たとえば、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律(GX推進法)」では、水素などへの支援として20兆円規模の先行投資を行う方針を示しました。

水素を広く普及させるためには、技術開発、コスト削減、安全性確保などの課題を克服する必要があり、投資は重要度の高い施策といえるでしょう。

※参考:目前に迫る水素社会の実現に向けて~「水素社会推進法」が成立 (後編)クリーンな水素の利活用へ|経済産業省

事業者向けの支援制度を用意

水素の利活用には高額のコストが必要となるため、水素活用の事業者向け支援として、2024年5月に「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律(以下水素社会推進法という)」が成立しました。

同法では「低炭素水素等」の活用が推奨されており、化石燃料由来の水素よりも、再生可能エネルギー由来の水素の利活用が進む可能性があります。なお「低炭素水素等 」の基準値としては、欧米の「化石燃料由来のグレー水素等から約7割削減」という考え方に基づいて、検討が進んでいます。

※参考:目前に迫る水素社会の実現に向けて~「水素社会推進法」が成立 (後編)クリーンな水素の利活用へ|経済産業省

まとめ

再生可能エネルギーと同様に水素も注目度が高く、利用が促進される分野です。今後、再生可能エネルギーによって多くの水素を作り出せるようになれば、クリーンなエネルギーは気軽に利用できるようになる可能性があります。

脱炭素の取り組みについて迷うことがあれば、ゼロ炭素ポートへご連絡ください。再生可能エネルギーの利用、省エネなどの課題に対し、自社・他社を問わず最適なソリューションをご提案いたします。詳しい資料をご用意しておりますので、ダウンロードしてご覧ください。

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA