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カーボンニュートラルにおける電力会社の取り組みとは?注目されている理由など解説
目次
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることで実質的な二酸化炭素(CO2)排出量をゼロにすることです。カーボンニュートラルは国際的な目標であり、実現のために電力業界が中心的な役割を担っています。
本記事では、カーボンニュートラルに関する電力業界への影響や取り組みなどを解説します。
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量のつり合いを取ることで実質的な二酸化炭素(CO2)の排出量をゼロにすることを指します。電気やガスなど人間の活動によってCO2が排出されますが、このような人間の活動により排出されたCO2を植林や炭素回収技術(CCS)を用いて吸収・除去して、CO2濃度を増加させないことを目指す概念です。
カーボンニュートラルに関する電力業界への影響
カーボンニュートラルは、国際的な目標です。カーボンニュートラルの実現を目指すなかで、電力業界は中心的な役割を担っています。電力業界は、CO2排出の主要な要因であるため、再生可能エネルギー(再エネ)への移行・拡大が必要です。そのため、太陽光や風力発電などの導入が進められており、電力供給構造の根本的な改革が求められます。
なぜ電力業界が注目されているのか
カーボンニュートラルを目指すうえで、なぜ電力業界が注目されているのでしょうか。電力業界に注目が集まる理由としては、CO2排出の主要源であること、再エネ導入、技術革新などが挙げられます。ここでは、各理由について解説します。
エネルギー起源CO2排出の主要源であること
日本の温室効果ガス排出量の約8割は、燃料を燃焼させてエネルギーを作る際に発生するCO2であり、その多くが電力供給に伴うものです。電力部門のCO2排出量の大半が火力発電所からのCO2排出となっており、電力業界の脱炭素化は全体的な温室効果ガス削減に直結します。そのため、太陽光発電や風力発電などを最大限に活用することが求められます。
再生可能エネルギーの導入と電化の推進
電力業界は、再生可能エネルギー(再エネ)の導入拡大と電力を必要とする需要側の電化推進を通じて、カーボンニュートラルの実現に大きく寄与できるという特徴があります。CO2排出量の多くは電力を作る際に発生するため、特に再エネの主要電力化や電化の推進によって産業全体の脱炭素化を進められるでしょう。
技術革新とイノベーションの必要性
2050年のカーボンニュートラル実現は非常に挑戦的な目標であるため、多くの課題や不確実性が存在します。それらの課題を解決するためには、従来の技術のみでは不十分です。2050年までのカーボンニュートラルを実現させるには、電力業界における革新技術の創造や新たなアイデア、イノベーションが必要不可欠とされています。
電力業界が直面する3つの課題
力会社の課題としては、主に以下の3つが挙げられます。
・再生可能エネルギーの導入と供給安定性の確保
・電力需要の増加と再エネ供給のギャップ
・規制対応と投資リスクのバランス
以下では、それぞれの課題を詳しく解説します。
再生可能エネルギーの導入と供給安定性の確保
太陽光は風力など天候や自然条件によって発電量が変動するという特徴があるため、火力発電などのような安定した供給は難しいです。特に、電力需要地と適地が一致しない場合には送電網の設備が必要、災害時に電源が脱落するリスクがあるなど、安定性を保つための対策が不可欠です。
電力需要の増加と再エネ供給のギャップ
電気自動車(EV)の普及や人工知能(AI)などの活用拡大に伴って、電力需要が増加しています。しかし、再エネの成長速度が電力需要の急増に追いついておらず、結果として化石燃料への依存から脱却できない状況が続いています。特に、エアコンの利用増加や産業活動の活発化が電力需要を高めていて、再エネ供給とのギャップが課題です。
規制対応と投資リスクのバランス
電力会社では、増加する電力需要に対応するために、新しい発電所の建設や設備投資などを計画しています。しかし、これらの投資は慎重な対応が必要です。特に化石燃料発電所の新設は長期的な環境リスクや電気料金の上昇などの可能性があり、規制当局の対応や社会、消費者に受け入れられるかなどを考慮することが求められます。
電力業界のカーボンニュートラル事例
電力業界では、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進められています。実際にどのような取り組みを行っているのでしょうか。ここでは、大手電力会社・地域電力会社・新技術に分けてそれぞれの事例を解説します。
大手電力会社の再エネ活用と成果
日本の主要電力会社では、2030年に向けてカーボンニュートラルを宣言しています。具体的には、再生可能エネルギー(再エネ)の導入を進めています。
たとえば、東京電力グループでは「再生可能エネルギーの主力電源化」を目標としており、2030年代前半までに国内外で600~700万kWの新規開発を計画しているようです。具体的には、水力発電での海外進出で200~300万kW、洋上風力の国内開発による200~300万kWを計画として挙げています。
地域電力会社のユニークな取り組み事例
地域密着型の電力供給を行っている「自治体新電力」では、地産地消による電力供給を実現しています。たとえば、滋賀県湖南市では自治体新電力「こなんウルトラパワー」を中心としてエネルギーの地産地消を促進しています。
具体的には、公共施設の省エネ化や「湖南市版シュタットベルケ構想」により地域サービスの一体運営を進め、2020年にはゼロカーボンシティ宣言とSDGs未来都市に選定されました。地元企業や市民などと連携して、カーボンニュートラルによる持続可能なまちづくりを進めています。
新しい技術で排出削減を達成した企業の成功例
阪急電鉄株式会社では京都本線「摂津市駅」の開業に合わせて、駅での活動によって発生するCO2排出量を実質ゼロにする取り組みを行っています。具体的には、太陽光発電やLED照明の活用、雨水利用といった省エネ施設を導入することで、CO2排出量の削減に取り組んでいます。
さらに、車両の外観にもこだわっているのもポイントです。環境をテーマにしたラッピングを施し、社内のポスター枠も環境をテーマに統一するなどして、利用者の環境意識の向上などにも寄与しています。
最新技術が切り拓く電力業界の未来とは
電力業界では、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが必要不可欠です。電力業界の未来を切り拓くために、最新技術を活用するとよいでしょう。ここでは、カーボンニュートラルの実現に向けた最新技術を解説します。
電力貯蔵技術の進化で再エネの活用を最大化
再生可能エネルギー(再エネ)は、天候や時間帯によって発電量が変動します。そのため、安定供給が難しいという点は解決しなければいけない大きな課題です。この課題を解決するには、リチウムイオン電池などの大容量バッテリーや水を高所に汲み上げて発電する揚水発電、フライホイール技術などの活用が進められています。
水素エネルギーがもたらす電力システムの革新
水素は燃焼してもCO2を排出しないクリーンなエネルギー源として、高い注目を集めています。再エネで余った電力を使って水を電気分解し生成される「グリーン水素」は、長期間のエネルギー貯蔵が可能です。季節や需要変動に対応できるだけでなく、燃料電池を利用して水素を貯蔵し電力変換することで電力の安定供給を実現しています。
二酸化炭素を削減するカーボンキャプチャー技術
カーボンキャプチャー・アンド・ストレージ(CCS)とは、発電所や工場などから排出されるCO2を回収して地中深くに貯留する技術です。CCSによって既存の化石燃料発電所を活用しながらも、大量のCO2を削減することができます。さらに、回収したCO2を化学製品や燃料の原料として再利用するカーボンリサイクルも注目されています。
これからの電力業界はどうなる?
これからの電力業界の展望は、一体どうなるのでしょうか。ここでは、政策や規制が電力業界に与える影響や、将来的な電力業界のロードマップと期待について詳しく解説します。
政策や規制が電力業界に与える影響
カーボンニュートラルの達成に向けて政策や規制が整備され、電力業界に大きな影響を与えています。各国では2050年までの脱炭素目標を掲げており、再生可能エネルギーの導入拡大や化石燃料の削減が不可欠です。また、炭素税の導入で化石燃料依存の発電所の経済的負担が重くなり、再エネや低炭素技術への移行が加速化しています。
未来に向けた電力業界のロードマップと期待
電力業界では、再生可能エネルギーを主力電力化するための取り組みが行われています。2030年を目標として、再エネである太陽光や風力発電の設備拡大や送電網の強化や整備なども進められています。蓄電技術を発展させることで再エネの課題である不安定さが補完され、安定したエネルギー供給が期待されているようです。
まとめ
カーボンニュートラルの実現のために、電力会社の取り組みが求められています。電力業界では3つの課題があるため、それらの課題を解決することでカーボンニュートラルの実現に近づきます。電力業界の未来を切り拓くために、再エネの活用や水素エネルギーなどの最新技術を活用していくことが重要です。
ゼロ炭素ポートでは、自社のみならず他社ソリューションとも協力してお客さまのニーズにお応えするサイトです。脱炭素に向けたソリューションや脱炭素に役立つ情報などを提供しているため、カーボンニュートラルの実現をお考えならお気軽にお問い合わせください。
執筆者プロフィール
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA