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なぜカーボンニュートラルに水素が重要なのか|メリットや活用方法も解説
目次
カーボンニュートラル燃料とは、生成から利用までの過程で大気中のCO2濃度を上昇させない燃料です。さまざまな種類があり、水素もその1つとして注目されています。
本記事では、水素をカーボンニュートラル燃料として活用するメリットやデメリット、水素の活用方法、実際の取り組み事例について解説します。
カーボンニュートラル燃料として注目される水素とは
水素は、宇宙全体で最も多く存在する元素です。水素原子(H)は水やアンモニア、化石燃料など、地球上のさまざまな物質に含まれています。海水などの水を電気分解することで得られるため、「水の星」とも呼ばれる地球には豊富に存在するエネルギー資源といえるでしょう。
水素を燃焼させても二酸化炭素(CO2)が発生しないため、カーボンニュートラル燃料として注目を集めています。
水素を生成してから利用するまでの流れ
水素は、「つくる」「貯める・運ぶ」「使う」の3ステップを経てエネルギーとして活用されます。
1.つくる:水を電気分解したり化石燃料から生成したりして、化合物から水素を取り出す。
2.貯める・運ぶ:生成した水素は、常温では気体であり体積が大きいため、運搬のために高圧ガスや液体などの状態にする。金属に取り込ませて貯蔵することもある。
3.使う:自動車の燃料や発電のためのエネルギーとして使用する。
水素と同時に注目されるアンモニア
アンモニアも水素と同様、燃焼させてもCO2を排出しない身近なクリーンエネルギーで、カーボンニュートラル燃料として期待されています。アンモニアの化学式はNH3であり、水素原子が含まれているため、同時に開発される場合もあります。また、アンモニアにはCO2を吸収する性質もあります。
水素エネルギーが注目される背景
世界的に環境問題が注目されるなか、日本では国の方針として2050年までのカーボンニュートラル実現が掲げられています。
日本は海に囲まれた島国であり化石燃料などの天然資源に乏しく、従来から活発に脱炭素関連技術の研究・開発が行われてきました。CO2を排出しない持続可能なエネルギー源としては太陽光や風力も挙げられますが、天候や時間帯などの外部要因に左右されるため、供給の安定性が課題です。
このような背景から、安定供給が見込めるクリーンなエネルギー源として水素が注目されています。
水素エネルギーの種類
水素エネルギーは生成方法や環境負荷の違いにより、「グレー水素」「ブルー水素」「グリーン水素」の3種類に分類されま
グレー水素
グレー水素は、化石燃料を原料とする水素です。水素自体は燃焼させてもCO2を発生させないものの、グレー水素は石油や天然ガスを燃焼させたガスから取り出されるため、生成の過程でCO2が発生します。使用時だけでなく、生成や運搬の際に発生するCO2も含めて、トータルで環境負荷を考えることが重要です。
ブルー水素
ブルー水素は、グレー水素と同様に化石燃料を使用して生成されるものの、発生したCO2を回収するか、別の用途で再利用することでトータルの排出量を抑えた水素です。CO2排出量を抑えつつ、すでに確立されている技術を活用できるため、水素エネルギーの普及や供給の安定化を実現する手段として注目されています。
グリーン水素
グリーン水素は、再生可能エネルギーで発電した電気を利用して、水を電気分解して生成される水素です。生成過程でCO2を一切排出しない、理想的な水素エネルギーです。ただし、再生エネルギー由来の電力を大量に必要とするためコストがかかり、普及ハードルの高さが課題となっています。
水素エネルギーを活用するメリット
水素エネルギーの活用にはさまざまなメリットがあります。以下で、詳しく解説します。
燃焼させてもCO2が発生しない
水素を燃焼させても、出るのは水(H2O)だけです。化石燃料と異なり、燃焼させてもCO2を発生させないクリーンなエネルギーといえます。また、水素は既存の火力発電設備を活用して生成できるため、新たな施設を建造するためのCO2排出も抑えられます。
さまざまな調達先がある
水素は、水や石炭、天然ガスなどの化石燃料をはじめとした多くの物質に含まれています。そのため、調達方法が多様で安定した供給が見込めます。製鉄所や化学工場などでは副産物として水素が発生する場合があり、こうした水素を有効活用する技術も開発が進んでいます。
エネルギー密度が高い
水素はエネルギー密度が高い物質です。エネルギー密度が高いほど、同じ質量でも多くのエネルギーを生み出すことができます。水素はロケットの燃料として利用できるほどエネルギー密度が高く、エネルギー需要が高い分野での活用が期待されています。
運搬や長期間の貯蔵ができる
水素は気体の状態のままでもタンクや配管で運搬・貯蔵できますが、冷却して液体化すると体積が小さくなり、効率的に運んだり貯蔵したりできます。また、水素が金属の中に入り込む性質を利用し、「水素吸蔵合金」という金属に水素を取り込ませて長期間貯蔵する方法もあります。
水素エネルギーのデメリット
水素エネルギーには多くのメリットがある一方で、課題も存在します。ここでは、主なデメリットについて解説します。
エネルギー生成・運搬・貯蔵のコストが高い
CO2の排出量を抑えるためには、グリーン水素を普及させることが理想ですが、再生可能エネルギー由来の電力が大量に必要となるため、コストの高さが課題です。また、水素の生成だけでなく、運搬・貯蔵に必要な設備や装置の導入にも相当の費用がかかります。
グレー水素は生成時にCO2が排出される
水素そのものは燃焼時にCO2を排出しませんが、化石燃料を燃焼させて取り出すグレー水素の場合、生成時にCO2が発生します。グレー水素はグリーン水素と比較して安定供給しやすい水素ですが、CO2排出をどう抑えるかが課題です。化石燃料から水素を生成する際のCO2を回収・利用する研究は、国内外で行われています。
まだ一般的に普及していない
消費者や事業者が水素エネルギーを活用しようと思っても、まだ技術的な課題やインフラ整備などの課題があり、一般に普及しているとは言えません。日常生活で本格的に利用できるようになるには、まだ時間がかかると見られています。また、水素は適切に取り扱わないと爆発を起こすリスクがあるため、導入には慎重さが求められます。
水素エネルギーの活用方法
水素エネルギーは産業利用から一般家庭での利用まで、多岐にわたる分野での活用が期待されています。ここでは、活用方法の例を解説します。
発電所や製鉄所での産業利用
火力発電所の燃料として利用するほか、製鉄での利用も進められています。水素を活用してCO2を排出せずに生産された鉄は「グリーンスチール」と呼ばれます。カーボンニュートラル社会が実現されても、鉄は不可欠な素材であり続けると見られており、CO2排出量を抑えた製鉄技術はますます重要となるでしょう。
自動車などの交通手段
水素エネルギーは交通分野での利用も進んでおり、燃料電池自動車をはじめとして水素エネルギーで走行する自動車が流通しています。自家用車だけでなく、バスや電車といった公共交通機関にも水素エネルギーが活用され始めており、さらに普及が進むよう研究が行われています。
家庭用燃料電池(エネファーム)
エネファームは、都市ガスから取り出した水素を利用して電気とお湯を同時につくり出す設備です。一般家庭のカーボンニュートラルを実現する手段として、さらなる普及が期待されています。エネファームは複数社のメーカーにより製造されており、メーカーによって自動省エネ運転機能があったり、既存の給湯器に後付け可能であったりと、それぞれ特徴が異なります。
水素エネルギーの活用事例
環境省では、水素を活用したサプライチェーンの構築に向けた実証事業を全国各地で行っています。ここでは、実証実験には参画した企業の例や、その取り組み内容を紹介します。
トヨタ自動車株式会社
トヨタ自動車株式会社は、2015年度から2020 年度まで京浜臨海部での燃料電池フォークリフト導入と、クリーン水素活用モデル構築の実証実験を行いました。この実証実験では、風力発電を利用したCO2フリー水素の製造や貯蔵・輸送、そして利用まで含めたサプライチェーンを構築し、水素価格やCO2排出量の調査が行われました。
このほかにも、トヨタ自動車株式会社は燃料電池自動車の開発も行っています。
株式会社日立製作所
株式会社日立製作所は、2017年度から2021年度まで宮城県富谷市において既存の物流網と純水素燃料電池を活用した低炭素水素サプライチェーンの実証を行いました。
この事業では、太陽光発電を利用した水素の製造が行われ、既存の物流を利用した低CO2排出量かつ低コストの水素輸送や、太陽光発電量が減少する夜間の利用実証、地産地消型の水素供給体制構築が実施されました。
株式会社NTTデータ経営研究所
株式会社NTTデータ経営研究所は、2018年度から2021年度まで秋田県能代市で風力発電による電解水素の製造と、水素混合ガスの供給利用に関する実証事業を行いました。この事業では、製造した混合ガスを実際に家庭に供給し、一般家庭のガスコンロやヒーター、一部の施設に設置されたエネファームなどで使用されました。
株式会社大林組
株式会社大林組は、2020年度から2022年度まで福島県浪江町で、最適運用管理システムを活用した低コストのグリーン水素サプライチェーンの構築・実証を行いました。
水素は「福島水素エネルギー研究フィールド」で太陽光発電により生成され、町内で活用されました。このシステムは町の停電時に稼働できるよう設計されており、災害に備えるインフラとしての役割も果たしています。
大阪ガス株式会社
大阪ガス株式会社は、2022年度から2025年度まで、大阪府大阪市においてカーボンニュートラルな水素サプライチェーン構築の実証事業に取り組んでいます。
この実証事業では、再生可能エネルギー由来の水素と生ごみ由来のバイオガスを反応させてメタンガスを合成し、給湯器やガスコンロなどの一般的な機器で使用します。2025年度から設備を大阪・関西万博会場へ移設する計画も検討中です。
まとめ
水素は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて注目を集めているエネルギー源です。発電や製鉄、自家用車や公共交通機関、一般家庭など、幅広いシーンでの普及が期待されており、国内でもさまざまな研究や実証事業が行われています。
「ゼロ炭素ポート」では、水素をはじめとしたカーボンニュートラル燃料や再生可能エネルギーの活用など、脱炭素化に向けた取り組みのための情報発信を行っています。脱炭素をめざすソリューションも提供しているため、興味をお持ちの人はぜひ以下のリンクから詳細資料をご覧ください。
執筆者プロフィール
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA