- コラム
- 注目されるカーボンニュートラル技術とは?普及が予想される技術・制度も解説
注目されるカーボンニュートラル技術とは?普及が予想される技術・制度も解説
目次
地球温暖化の進行を抑制するため、世界中では脱炭素に向けてさまざまな取り組みが行われています。取り組みのなかでも重要視されているのが、カーボンニュートラルです。この記事では、カーボンニュートラルの概要をはじめ、現状の技術や今後期待される技術・制度について解説します。
カーボンニュートラルの概要
そもそもカーボンニュートラルとは、どのようなことを指すのでしょう。ここでは、カーボンニュートラルの内容や歴史について詳しく解説します。
カーボンニュートラルとは
カーボンニュートラルとは、温室効果ガス排出量をできるだけ削減して、削減できない分は同じ量を吸収または除去して差し引きゼロを目指す取り組みです。日本では、温室効果ガスの多くを占めるCO2だけではなく、メタン、N2O(一酸化二窒素)、フロンガスなどの温室効果ガスも対象にしています。
カーボンニュートラルの歴史
2015年のパリ協定の採択により、多くの国が2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目標にしました。日本は、2020年に「2050年までにカーボンニュートラルを目指す」ことを宣言しています。また、日本では「2030年度には温室効果ガスを2013年度の数値から46%削減する」ことも目指しています。
カーボンニュートラルが重要視される理由
カーボンニュートラルは、気候変動を抑制して、環境、経済、社会全体を安定させるためには欠かせない取り組みです。カーボンニュートラルが実現し、気候変動リスクを抑えることができれば、安定した経済成長が促進され、新たな産業や雇用も生まれます。
企業がカーボンニュートラルに貢献することは、企業のブランド価値を上げることになり、企業価値そのものも向上するでしょう。
日本におけるカーボンニュートラルの技術・取り組み
日本ではカーボンニュートラルに対し、さまざまな技術で多くの取り組みを行っています。
グリーン成長戦略
グリーン成長戦略とは、2020年に発表された産業政策です。経済成長と環境適合を循環させる目的があります。国は期待される14の分野を以下のように特定し、バックアップすることを決定しています。
1.洋上風力・太陽光・地熱産業
2.水素・燃料アンモニア産業
3.次世代熱エネルギー産業
4.原子力産業
5.自動車・蓄電池産業
6.半導体・情報通信産業
7.船舶産業
8.物流・人流・土木インフラ産業
9.食料・農林水産業産業
10.航空機産業
11.カーボンリサイクル・マテリアル産業
12.住宅・建築物・次世代電力マネジメント産業
13.資源循環関連産業
14.ライフスタイル関連産業
出典:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略 (METI/経済産業省)
再生可能エネルギーの導入拡大
再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、地熱などの自然界に常に存在するエネルギーです。化石燃料に比べて、発電時にCO2を排出しない再生可能エネルギーの導入拡大を目指しています。工場や職場での電力を再生可能エネルギーに切り替えれば、CO2を大幅に削減できるでしょう。
省エネルギーの徹底
日本の火力発電所では、火力発電の効率を高めてCO2排出を削減するなどの省エネルギーに取り組んでいます。企業では、自家発電をしたり輸送を一元化したりして、省エネルギーに取り組んでいます。
ただし、国や企業だけの取り組みだけでカーボンニュートラルは加速化しません。資源エネルギー庁では、企業だけではなく家庭エネルギーにも目を向け、国民に対して節電などの省エネルギーを呼び掛けています。
植林の推進
カーボンニュートラルを実現するためには、CO2の排出量削減と共に、吸収作用の保全および強化が必要です。CO2の吸収源としては、森林が重要な役割を果たしています。植林を推進することでCO2吸収量が増やせるため、政府は自治体・森林所有者・民間の事業者などにも協力を求めています。
カーボンオフセットの活用
カーボンオフセットとは、自身で削減しきれない温室効果ガスの排出量に見合う投資をすることで埋め合わせるという考え方です。オフセットの製品やサービスを購入する、オフセットの会議やイベントに参加するなどの方法があります。
世界におけるカーボンニュートラルの取り組み
アメリカは2050年までのカーボンニュートラル達成を表明し、運輸・発電・部門に力を入れています。中国は2030年度までにCO2排出量を削減に転じさせ、2060年度までのカーボンニュートラル達成を宣言しました。EVや再生可能エネルギーなどの普及を目指しています。
EUでは、2040年までに温室効果ガスの排出量90%減(1990年比)を目指し、具体的な法案を提案していくと発表しています。
注目されるカーボンニュートラル技術
日本ではカーボンニュートラル実現のために、さまざまな技術を活用しています。
メタネーション技術
水素と二酸化炭素からメタンを合成する技術です。メタンは燃焼時にCO2を排出しますが、発電所などから回収したCO2を使って新たなメタンを作ることで相殺させ、大気中のCO2量を増加させない仕組みです。
都市ガスの原料である天然ガスの主成分はメタンのため、合成メタンに置き換えても引き続き活用できます。コストを抑えつつ、スムーズに脱炭素化を推進できることで期待が寄せられている技術です。
CCS技術
CCSとは、排出される排気ガスからCO2を分離・回収し、地下の安定した貯留層に圧入・貯留する技術です。製鉄所やごみ処理施設、セメント工場など、CO2の排出量が多い施設に有効とされています。CO2を地中深くに圧入し、大気中に放出されるはずだったCO2放出量を削減できるため、世界的から注目を集めている技術です。
CCUS技術
CCUSは、CO2を分離・回収して地中に貯留する「CCS」と、CO2の回収・有効利用する「CCU」を組み合わせた用語で、分離・貯留したCO2を回収して利用する技術です。CO2が大量発生する火力発電所やゴミ焼却所などの分野での導入が見込まれており、CO2が大幅に削減できる技術として期待されています。
カーボンリサイクル技術
CO2を資源として考え、排出されて回収したCO2を炭素化合物として再利用する技術です。カーボンリサイクルの技術開発は、日本企業がトップシェアを誇っています。2019年に経済産業省は「カーボンリサイクル技術ロードマップ」を策定しました。コンクリート、化学品、燃料などのさまざまな製品として再利用され、大気中へのCO2排出を抑制します。
水素還元製鉄技術
日本の産業部門では、鉄鋼業がCO2排出の約40%を占めています。水素還元製鉄とは、製銑工程で炭素の代わりに水素を用いて鉄鉱石を還元する方法です。作られた鉄はCO2排出量が実質ゼロとみなされるため、カーボンニュートラル実現に大きく貢献できます。
カーボンニュートラルの技術的な課題
太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、気象条件による変動が激しいため、安定供給が難しいのが現状です。電力を安定化させるためにも、蓄電池や大容量のバッテリーなど、エネルギー貯蔵の技術的な進展が求められています。技術的な課題をクリアするには、高い技術と膨大な資金が必要です。
今後普及が予想されるカーボンニュートラルの技術・制度
日本では、さまざまな技術を用いてカーボンニュートラルを目指していますが、今後は以下のような技術や制度が普及すると予測されます。
次世代燃料の開発
次世代の燃料として、水素、アンモニア、合成メタン、合成燃料、バイオ燃料などさまざまな開発が進行中です。運輸分野で次世代燃料を活用できれば、長距離輸送でのCO2削減が可能になります。
再生可能エネルギーの拡大
2023年に開催されたCOP28では、「世界全体で再エネ発電容量を3倍にする」という目標が掲げられました。日本では、以前から再エネ導入拡大施策に取り組んでいますが、今後も太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーの拡大を目指していくでしょう。
カーボンプライシングの取り組み
カーボンプライシングとは、温室効果ガスに価格をつけて排出削減に向けた行動を促す手法です。具体的には、以下のような取り組みがあります。
・炭素税:排出されるCO2の量に応じて課される税金
・排出量取引制度:全体の排出上限を政府が設定し、余剰分は他社に売却、不足分は購入するなど企業が排出枠を売買できる制度
・クレジット取引:CO2の削減を価値として証書化して売買取引を行う取引
電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)の普及
多くの国で、2030年までにガソリン車の販売禁止が計画されています。日本でもEVやFCVの普及に力を入れており、充電インフラや水素ステーションの普及を目指しています。トラックEV化など、運輸分野においてEVなどが普及すれば、多くのCO2を削減できるでしょう。
カーボンニュートラルに対する日本の課題と対策
日本は諸外国に比べて、再生可能エネルギーの発電コストが高いのが現状です。2019年の太陽光発電1kWhあたりの買取価格は、日本、ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、スペインの6か国中、日本は最も高い12.6円で、最も低かったのはドイツの5.5円でした。
2017年には固定価格買取制度(FIT法)を改正するなど、コストを下げる取り組みも行われています。
参考:国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案|資源エネルギー庁
まとめ
カーボンニュートラルは気候変動を抑制するために、多くの国が重要視している取り組みです。この記事では、カーボンニュートラルの内容や歴史をはじめ、注目されている技術や取り組み、今後期待される技術や制度について解説しました。
「ゼロ炭素ポート」は、脱炭素・カーボンニュートラルの実現を目指す「脱炭素の未来をつくる方々」の困りごとを相談できる「場」を目指しています。工場向け太陽光発電や見える化で脱炭素を加速するソフトウェアに関する資料のダウンロードも可能です。ぜひ参考にしてください。
執筆者プロフィール
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA