企業におけるカーボンニュートラルの取り組み事例を紹介!世界の動向も解説 

目次

カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みが、世界的に重要視されています。日本でも2020年に、政府から「2050年カーボンニュートラル宣言」が出されたことにより、企業の積極的な取り組みが求められるようになりました。 

本記事では、カーボンニュートラルが必要とされている理由とともに、日本企業や海外企業の取り組みについても解説します。 

カーボンニュートラルの基礎知識 

カーボンニュートラルは、地球温暖化の原因とされている、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることです。実質ゼロとは、温室効果ガスの排出量と森林などへの吸収量のバランスを取ることを指します。排出量から吸収量を引いた数値がゼロになれば、カーボンニュートラルの達成となります。 

温室効果ガスの排出量増加により、気候変動の多発が懸念されています。温室効果ガスの吸収量を増やすためには、植林活動や森林保全活動への取り組みが必要です。 

※参考:カーボンニュートラルとは|環境省 

カーボンニュートラルが必要な理由

温室効果ガスの発生により地球温暖化が進行し、気温上昇が危惧されています。気象庁によると、2023年の日本の年平均気温偏差は+1.29℃で、1898 年の統計開始以降で最も高い値となりました。 

気温上昇は、自然災害の多発や生態系への影響、海面上昇による伝染病などの健康被害といったリスクが懸念されます。誰もが安心して暮らせる持続可能な社会づくりには、カーボンニュートラルの実現が不可欠です。そのため、世界各国がさまざまな政策や取り組みを表明しています。 

※参考:2.3 気温の変動|気象庁 

世界におけるカーボンニュートラルへの取り組み

カーボンニュートラルへの取り組みは、1992年5月の国連環境開発会議で、「国連気候変動枠組条約(以下UNFCCCという)」が採択されたことにより、本格化しました。1995年以降は、気候変動問題の解決に向けて、「国連気候変動枠組条約締約国会議(以下COPという)」が毎年開催されています。 

その後、2015年12月にパリで開催されたCOP21において、「パリ協定」という新たな法的枠組みが採択されました。2020年以降の温室効果ガス削減について、世界共通の長期目標が掲げられています。 

※参考:気候変動に関する国際枠組み|外務省 

日本におけるカーボンニュートラルへの取り組み 

日本においては2020年10月に、「2050年カーボンニュートラル宣言」がなされました。2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指し、さまざまな取り組みを推進しています。 

その2か月後には、2050年までに成長が期待されている14個の分野において、規制緩和を実施する、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されています。 

また、2024年3月には、「地球温暖化対策の推進に関する法律(以下地球温暖化対策推進法という」)」の改正案が閣議決定され、一部を除き2025年4月1日から施行される予定です。 

※参考:2050年カーボンニュートラルの実現に向けて|環境省 
※参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略|経済産業省 
※参考:地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について|環境省 

日本企業におけるカーボンニュートラルへの取り組み例 

ここでは、カーボンニュートラル実現に向けた日本企業の取り組みについて解説します。 

株式会社東芝 

株式会社東芝では、2020年に長期ビジョンとして、「東芝グループ環境未来ビジョン2050」を策定しました。そのなかでも「気候変動への対応」を重点項目とし、バリューチェーン全体でのカーボンニュートラル実現を目指しています。具体的には、温室効果ガス削減に貢献できるサービスや商品制作、環境保全に関する対策を推進しています。 

2023年6月には内訳の見直しを行い、次のような目標に修正されました。 

・2030年度までに、温室効果ガス排出量を100%削減(2019年度比) 
・2030年度までに、自社グループのバリューチェーンで発生する温室効果ガス排出量を70% 削減(2019年度比) 

トヨタ自動車株式会社 

トヨタ自動車株式会社は、人と自然が共生できる持続的な社会の構築を目指し、2015年に「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表しました。カーボンニュートラルの実現を目指し、3つのテーマで次のような目標を掲げています。 

・ライフサイクルCO2ゼロチャレンジ:2050年までに、ライフサイクルにおいて温室効果ガス排出量をカーボンニュートラル 
・新車CO2ゼロチャレンジ:2050年までに、新車走行において温室効果ガス排出量をカーボンニュートラル 
・工場CO2ゼロチャレンジ:2050年までに、工場生産におけるCO2排出量のゼロ 

株式会社セブン&アイ・ホールディングス 

株式会社セブン&アイ・ホールディングスでは、2019年に環境宣言「GREEN CHALLENGE 2050」を発表しました。カーボンニュートラルにおいては、「温室効果ガスの排出量を2030年までに50%、2050年時点で実質ゼロ実現(2013年比)」を目標としています。 

主な取り組みとして太陽光発電パネルの設置が挙げられ、2024年7月末時点では9,000店舗以上に設置済みです。また、プラスチックや食品廃棄物の削減にも取り組んでおり、環境負荷低減の推進や豊かな地球環境の継承に努めています。 

イオン株式会社 

イオン株式会社は、「買物袋持参運動」「店頭資源回収活動」などを実施し、1991年からいち早く温室効果ガス削減や、資源の再利用に取り組んでいる企業です。2018年に「イオン脱炭素ビジョン」を掲げ、「店舗」「商品・物流」「お客さまとともに」の3分野で、カーボンニュートラルの実現に取り組んでいます。 

中間目標としては、2030年までに店舗使用電力の50%を再生可能エネルギーに切り替え、2040年を目途にCO2などの排出量ゼロ達成を目指しています。 

三井不動産株式会社 

三井不動産株式会社は、2020年に温室効果ガス排出量の削減について、次のような目標を発表しました。 

・2030年までに、温室効果ガス排出量を30%削減(2019年度比) 
・2050年までに、温室効果ガス排出量実質ゼロの実現 

カーボンニュートラルの実現に向けて、物件の環境性能向上や電力グリーン化、再生可能エネルギーの安定的確保、建築時のCO2排出量の削減などに、サプライチェーン全体で取り組んでいます。 

大日本印刷株式会社 

大日本印刷株式会社は、2020年3月に、「DNPグループ環境ビジョン2050」の策定を発表しました。「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に向けた取り組みを実施しており、脱炭素社会の実現においては、次のような目標を掲げています。 

・2030年までに、温室効果ガス排出量を46.2%削減(2019年比) 
・2050年までに、温室効果ガス排出量実質ゼロの実現 

2023年には、OpenXと協力してCO2排出量の可視化、環境負荷の低い広告設計を提案するサービスを実施しています。 

パナソニックグループ 

サステナビリティ経営を実施しているパナソニックグループでは、「Panasonic GREEN IMPACT」をテーマに、2050年までに約1%(3億トン)のCO2排出量の削減を目指しています。具体的な目標は以下の通りです。 

・2030年までに、すべての工場でCO2排出量の実質ゼロを実現 
・2030年までに、サプライチェーンのCO2排出量を26%削減(2023年度比) 

また、100%再生可能エネルギーの活用や調達、省エネ商品の開発なども組み合わせ、カーボンニュートラルの実現を推進しています。 

日本製鉄株式会社 

日本製鉄株式会社は、2021年に「カーボンニュートラルビジョン2050」を発表しました。「2030年までにCO2排出量30%削減(2013年比)」を目標に、カーボンニュートラルの実現を目指しています。 

製鉄の工程において、カーボンニュートラルへの取り組みは高額であり、国家間競争が激しいとされています。同社では、鉄鋼製造プロセスの脱炭素化に向けて、「大型電炉での高級鋼製造」「高炉水素還元」「水素による還元鉄製造」という、3つの技術革新を目指して取り組んでいます。 

海外企業におけるカーボンニュートラルへの取り組み例 

続いて、カーボンニュートラル実現に向けた海外企業の取り組みについても、確認しておきましょう。 

Intel 

Intel は、2022年に「2040年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」と発表しました。2030年までの中間目標は以下の通りです。 

・世界全体の事業拠点で再生可能エネルギーによる電力使用率100%の実現 

・省エネルギーへの投資による、累計40億kWhのエネルギー削減 
・事業拠点における省エネルギーに約3億ドルを投資 

また、サプライヤーとの連携強化や再生可能エネルギーの調達などにも励んでいます。 

Apple

Appleは企業運営において、すでにカーボンニュートラルを達成しています。しかし、新たな目標として、2030年までに事業全体によるカーボンニュートラル達成を設定しました。具体的には2030年までに同社全体の温室効果ガス排出量を75%削減し、残りの25%については、CO2を除去する革新的ソリューションの開発を実施するそうです。 

実現に向けて低炭素の再生材料の使用、エネルギー効率の拡大、サプライチェーン全体での再生可能エネルギーへの切り替えなどに取り組んでいます。 

Patagonia 

Patagoniaは、2025年までのカーボンニュートラル実現を目標とし、これまで所有・運営している場所で100%再生可能エネルギーの使用や、環境に望ましい素材への切り替えなどに取り組んできました。2024年現在は次のような目標を掲げています。 

・2030年度までに、温室効果ガス排出量の絶対値を80%削減(2017年度比) 
・2040年度までに、温室効果ガス排出量の絶対値を90%削減(2017年度比) 
・2040年度までに、バリューチェーン全体で温室効果ガス排出量の実質ゼロを誓約(2017年度比) 

IKEA 

IKEAは、2030年までに2016年度を基準として、温室効果ガスの排出量を少なくとも50%削減、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。また、地球の気温上昇を1.5℃に抑えることを目標としており、実現に向けた主な取り組みが以下の通りです。 

・カーボンオフセットの不使用 
・再生可能エネルギー使用率100% 
・クライメートフットプリントの低い素材と食材の使用 
・2025年までに排出ガスゼロ配送の実現 
・2030年までに循環型ビジネスの実現 

Amazon

AmazonとGlobal Optimismは、2019年に「The Climate Pledge(気候変動対策に関する誓約)」を発表し、2040年までにカーボンニュートラルを達成すると目標を掲げています。長期的な取り組みとして、2024年までに自社おける再生可能エネルギーの電力比率を80%、2030年までに100%達成を宣言しました。 

2023年度版「サステナビリティレポート」では、この目標を達成したと発表しています。また、温室効果ガスの総排出量であるカーボンフットプリントの3%削減、カーボンインテンシティの13%低減も実現させました。 

企業のカーボンニュートラル実現計画は抽象的 

カーボンニュートラル達成に向けた、明確なロードマップを設定している企業はほとんどなく、明確な吸収量や排出削減の根拠となる数字も出せていません。カーボンニュートラルの目標は、バックキャスティングで設定されており、具体策やシナリオ策定が難しいとされています。 

バックキャスティングとは、目標とする未来から現在の課題を考えてシナリオを作成する方法です。実現性や創造性の高さはメリットですが、モチベーション維持が難しく、施策を誤った場合のリスクが大きいなどのデメリットもあります。 

まとめ 

カーボンニュートラル実現に向けて、国内外の企業でさまざまな取り組みが行われています。近年、日本でも大雨や猛暑などの異常気象が発生しており、地球温暖化への対策は必須といえるでしょう。 

まずは、自社でできることを検討することが大切です。カーボンニュートラルへの取り組みに悩んでいるなら、「ゼロ炭素ポート」を活用してみてはいかがでしょうか。ゼロ炭素ポートは、脱炭素・カーボンニュートラルに関する情報を発信しているWebサイトです。他社ソリューションとも協力し、お客さまのニーズにお応えします。 

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA