車のカーボンニュートラルとは|メリットやデメリット、メーカーの取り組みを紹介 

目次

世界各国では、幅広い産業でカーボンニュートラルを推進する流れが見られます。そのなかでも、自動車に関連するCO2排出量の削減が重要視されています。本記事では、自動車産業におけるカーボンニュートラルの概要や車の種類、メリット・デメリットなどを解説します。各社が実施する取り組み実例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。 

自動車産業におけるカーボンニュートラルとは 

カーボンニュートラルとは、CO2の排出量と吸収量を差し引きした場合に、CO2排出量がゼロになる取り組みのことです。政府は、2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標を立てました。目標達成に向けて、自動車や蓄電池産業では、車の電動化や蓄電池製造に加えて、充電や水素充填のインフラ整備を目的とした取り組みが始動しています。 

自動車産業が取り組むカーボンニュートラルは、製品(車)に対するカーボンニュートラルと、生産活動におけるカーボンニュートラルの2種類です。本章では、それぞれのカーボンニュートラルの取り組みを解説します。 

※参考:カーボンニュートラルとは|環境省 

※参考:モビリティのカーボンニュートラル実現に向けた水素燃料電池車の普及について|経済産業省 

製品(車)のカーボンニュートラル 

製品(車)のカーボンニュートラルは、電気自動車を普及させたり純エンジン車の販売を終了したりして、車によるCO2排出量を削減する取り組みのことです。車の電動化は、世界各国で取り組みが行われています。経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、具体的な目標値が掲げられています。目標値は、以下の通りです。 

・乗用車:2035年までに新車販売で電動車100% 
・商用車(小型車):2030年までに新車販売で電動車20~30%、2040年までに電動車・脱炭素燃料車100% 
・商用車(大型車):2020年代に5,000台の電動車先行導入、2030年までに2040年の電動車の普及目標を設定 

※参考:「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(広報資料)|経済産業省 

生産活動におけるカーボンニュートラル 

CO2を排出するのは、車だけではありません。車の製造から廃棄に至るまでのすべての工程で、CO2が排出されます。他には、発電時や部品メーカーの製造時など、CO2の排出は自動車メーカーに限った話ではありません。 

生産活動におけるカーボンニュートラルでは、車の製造から廃棄までを生産活動の1つと認識し、CO2排出量の削減を目指すことが重要と考えられています。 

また、資源採取から製造・輸送・使用・廃棄・リサイクルまでの、各工程で排出される温室効果ガスや有害物質、資源消費量などが環境負荷の要因とされています。これらを定量的に評価する手法が、LCA(ライフサイクルアセスメント)です。 

※参考:ライフサイクルアセスメント(LCA)|国立研究開発法人 国立環境研究所 

カーボンニュートラル車の種類 

カーボンニュートラル車には電気自動車やハイブリッド車など、さまざまな種類があります。以下では、それぞれの特徴を解説します。 

電気自動車(EV) 

電気自動車(EV)はバッテリーを搭載し、電気をエネルギー源にして走行する自動車です。バッテリーへの充電は、外部の給電設備を利用します。電気で走行するため、走行時はCO2が排出されません。発電時にCO2が排出されるもののエネルギー効率がよいため、全体の排出量の削減が期待されています。 

※参考:電気自動車等の普及に向けた道路環境整備|国土交通省 

ハイブリッド車(HEV/PHEV) 

ハイブリッド車(HEV/PHEV)はモーターとエンジンなど、複数の動力源を搭載した自動車です。ハイブリッド車の種類は大きく分けて、HEVとPHEVの2つがあります。 

HEVはハイブリッド自動車のことで、エンジンから発生するエネルギーでモーターを動かす構造です。一方のPHEVはプラグインハイブリッド自動車のことで、外部の給電設備から充電でき、充電が切れてもエンジンで走行できます。 

※参考:クリーンエネルギー自動車の購入補助金がリニューアル、自動車分野のGXをめざせ|経済産業省 

燃料電池自動車(FCV) 

燃料電池自動車(FCV)は大気中にある水素を使って発電し、そのエネルギーで走行する自動車です。水素は水素ステーションで充填できます。水素は燃焼時にCO2を排出しないため、地球環境にも優しいカーボンニュートラル燃料です。大気中に多く存在しており、枯渇する心配がありません。また、石油や天然ガスなどからも水素を作ることができます。 

合成燃料・e-fuel 

合成燃料・e-fuelは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)で構成された燃料を指します。合成燃料は燃焼させるとCO2が排出されるものの、発電所や工場から排出されたCO2を活用するため、大気中のCO2の総量は変わりません。 

e-fuelはDAC技術を活用したCO2と、再生可能エネルギーで水を電気分解する際に発生した水素が原料です。DAC技術とは、大気中から取り込んだCO2を分解する技術のことです。合成燃料やe-fuelは、既存のガソリン車と同様のエンジンで使用でき、カーボンニュートラルの実現を目指すうえで、電動車以外の選択肢として期待できます。 

※参考:カーボンニュートラルで話題の「合成燃料(e-fuel)」とは?そのメリットから製造方法まで解説!|独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構 
※参考:DACロードマップの策定に向けた検討|経済産業省 

カーボンニュートラル車のメリット 

カーボンニュートラル車の主なメリットは、CO2排出量の削減や補助金の活用などが挙げられます。 

CO2排出量を削減できる 

電動自動車をはじめとするカーボンニュートラル車は、ガソリン車と比べてCO2排出量を大幅に削減できるのと同時に、地球温暖化対策への貢献も可能です。電気自動車のように、CO2をほとんど排出しない車もあります。企業がカーボンニュートラル車を導入し、環境に配慮した取り組みを行えば、企業イメージの向上も期待できます。 

燃料費やメンテナンス費を削減できる 

カーボンニュートラル車のメリットは燃料費だけでなく、メンテナンスにかかる費用も削減できることです。例えば、電気自動車はエネルギー効率が高く、少ない燃料で走行できるため燃料費の節約につながります。また、車体の構造は比較的シンプルなことから、ガソリン車よりもメンテナンスに手間がかかりません。 

補助金を活用できる 

カーボンニュートラル車を導入した企業はエコカー補助金を活用できるため、導入費用の負担を軽減できます。エコカー補助金とは、環境に配慮した自動車を導入する企業を対象にした補助金制度のことです。補助金の対象は、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車、天然ガス自動車、燃料電池自動車です。 

※参考:「エコカー補助金」の概要について|国土交通省 

災害対策につながる 

カーボンニュートラル車のなかには、災害時に役立てることができます。例えば、電気自動車は電力をエネルギー源としているため、災害時の緊急用電源として使えます。使用時間は搭載しているバッテリーの容量によって異なるものの、生活で使える期間の目安は4~5日間が一般的です。ただし、緊急用電源として利用するには、特定の装置やシステムが必要です。 

カーボンニュートラル車のデメリット 

カーボンニュートラル車には初期費用が高額になる、実用化に時間がかかるなど、デメリットも存在します。 

初期費用が高額になる 

カーボンニュートラル車のデメリットはガソリン車よりも販売価格が高く、初期費用が高額になることです。電動自動車の場合は車の購入費用だけでなく、インフラ整備費用として充電設備の導入にも費用がかかります。初期費用を抑えたい場合はCEVに関するエコカー補助金を活用し、初期費用の一部を補助金で補填するとよいでしょう。 

※参考:クリーンエネルギー自動車の購入補助金がリニューアル、自動車分野のGXをめざせ|経済産業省 
※参考:CEV補助金|一般社団法人 次世代自動車振興センター 

充電・充填できるスポットが限られる 

カーボンニュートラル車はCO2排出量の削減に貢献できる車であるものの、充電や水素充填ができる施設が限られており、長距離での移動が難しくなります。特に首都圏以外のエリアでは、インフラ設備が整備されていないところも少なくありません。 

カーボンニュートラル車で長距離を移動する場合は、事前に充電・水素充填スポットを調べておき、計画的に移動しましょう。 

航続距離が限られている 

カーボンニュートラル車のデメリットは航続距離が短いことです。電気自動車とガソリン車を比較した場合、電気自動車の方が航続距離は短くなる傾向があります。また、充電を満タンにするには、ガソリンの給油よりも時間がかかります。電気自動車を使用する場合は、こまめに充電施設で給電する必要があります。 

合成燃料・e-fuelは実用化に時間がかかる 

合成燃料やe-fuelは、ガソリンと同じエンジンを使用できる燃料であるものの、実用化には至っていません。カーボンニュートラル燃料の製造に高額なコストがかかることも含め、解決が必要な課題が多く残されています。現在も商用利用に向けて研究や開発が進められており、実用化にはまだ時間がかかると考えられています。 

カーボンニュートラルに向けた自動車メーカーの取り組み事例 

ここでは、国内大手の自動車メーカーがカーボンニュートラルに向けて、実施している取り組み事例を紹介します。 

トヨタ自動車株式会社 

トヨタ自動車株式会社が販売するカーボンニュートラル車は、カローラやヤリスなどのHEVと、プリウスをはじめとするPHEVです。他には、燃料電池自動車のMIRAIやクラウンセダンの販売も行っています。企業活動におけるカーボンニュートラルの取り組みとして、ライフサイクルにおけるCO2の削減や、工場のカーボンニュートラルの達成などを目標に掲げています。 

日産自動車株式会社 

日産自動車株式会社は、早くからEV開発に取り組んできました。量産型EVのリーフやSUVモデルのEVアリア、軽EVのサクラなどが販売されています。日産独自のパワートレインであるe-POWERのコンセプトは、「電気自動車のまったく新しいかたち」です。e-POWERの搭載車の例はノートやセレナ、キックスです。 

本田技研工業株式会社 

本田技研工業株式会社のカーボンニュートラルの目標は、2040年までに、グローバルでEVとFCEVの販売を100%にすることです。電気自動車のHonda 0シリーズは、「操る喜び」「自由な移動の喜び」を高めることを目指しています。また、先進的な技術を重視しており、EVの生産に不可欠なメガキャストと呼ばれる生産技術を取り入れています。 

株式会社SUBARU

株式会社SUBARUでは、製品使用・素材部品・輸送・廃棄・製造の5つの領域の代表部署が集まり、カーボンニュートラル推進のための会議を毎月行っています。カーボンニュートラル車の例として、トヨタと共同開発したEVのSOLTERRAが挙げられます。今後は、2026年末までにバッテリーEVを4車種、2028年末までに追加で4車種販売する予定です。 

マツダ株式会社 

マツダ株式会社のカーボンニュートラルの取り組みは、省エネルギーの取り組みや再生可能エネルギーの導入、カーボンニュートラル燃料の導入です。3本柱に取り組むことで、サプライチェーン全体のカーボンニュートラルの実現を目指しています。カーボンニュートラル車の例としてMX-30が挙げられ、EVやロータリーEV、ハイブリッドの3車種が販売されています。 

カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの手順 

以下では、カーボンニュートラルの実現に向けて、実際に取り組む際の手順を解説します。 

サプライチェーン全体のCO2排出量を算出する 

カーボンニュートラルを実現するには、現状を把握することから始めます。具体的には自社だけでなく、海外のグループ企業も含めたサプライチェーン全体のCO2排出量を算出し、自社の現状を把握しましょう。次に、他社から供給する電気や燃料などのエネルギーの間接排出量も算定します。算出したCO2排出量は、次項の削減計画を策定する際に役立ちます。 

CO2排出量の削減計画を策定する 

サプライチェーン全体のCO2排出量の算出後は、CO2排出量の削減計画を策定します。削減計画は、パリ協定や「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」など、外部からの要請も踏まえて策定することが重要です。目標値だけでなく、いつまでにどのような対策に取り組むのかが分かるように、期限も決めておきましょう。 

※参考:パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略(令和3年10月22日閣議決定)|環境省 
※参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略|経済産業省 

具体的な施策を策定・実行する 

削減計画の策定後は、現実的に実行可能な施策を策定して実行します。自動車を例にした場合、短期間ですべての社用車をEVに切り替えるのが難しいなら、CO2排出量を減らす運転方法を推進するのも手です。例えば、ゆっくりアクセルを踏む、不要な荷物を減らす、一定の速度で走行するなど、エコな運転をすることでカーボンニュートラルに取り組めます。 

まとめ 

企業がカーボンニュートラルに取り組むうえで、社用車をカーボンニュートラル車に切り替えるのも1つの方法です。自動車以外に発電や部品製造などでもCO2が排出されるため、自社だけでなく、サプライチェーン全体のCO2排出量の削減に取り組むことが重要です。 

「ゼロ炭素ポート」は、自社だけでなく他社のソリューションとも協力して運営している、お客さまのニーズにお答えするWebサイトです。脱炭素やカーボンニュートラルの実現に取り組む企業に向けて、自社の課題解決に役立つさまざまな情報を発信しています。資料配布を行っているため、ぜひご覧ください。 

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA