カーボンニュートラル燃料とは|種類やメリット、活用方法、事例まで解説 

目次

社会全体で省エネや環境保全への関心が高まるなか、環境負荷の少ないエネルギーが注目されています。「カーボンニュートラル燃料」について、どのような燃料でどのような活用方法があるのか、気になる企業の担当者も多いのではないでしょうか。 

本記事では、カーボンニュートラル燃料の概要や種類、メリット・デメリット、導入に向けたステップや実際の活用事例について解説します。 

カーボンニュートラル燃料とは 

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて、地球全体としてのCO2濃度を増加させない取り組みを指します。これは地球温暖化対策の重要な柱とされ、世界各国でカーボンニュートラルに向けた施策が検討・実施されています。 

カーボンニュートラル燃料は、製造から使用までのすべての段階を総合して、大気中のCO2濃度を増加させない燃料です。原料がCO2を吸収するため排出量が実質ゼロになるものや、燃焼させてもCO2が発生しないものなど、さまざまな種類があります。 

※参考:カーボンニュートラルとは|環境省 
※参考:ガソリンに代わる新燃料の原料は、なんとCO2!?|経済産業省 

カーボンニュートラル燃料が注目される背景

温室効果ガスによる気候変動は、地球規模で深刻な問題となっています。気象庁の報告によると、日本では2023年の平均気温偏差が+1.29℃と、1898年の統計開始以降で最も高い値を記録しました。異常気象は、豪雨などの自然災害とも関連している可能性があると指摘されています。 

このような背景から、代表的な温室効果ガスであるCO2の排出量削減が求められており、化石燃料の代替として、カーボンニュートラル燃料が注目されるようになりました。 

※参考:2.3 気温の変動|気象庁 

カーボンニュートラル燃料の種類 

カーボンニュートラル燃料にはさまざまな種類があり、それぞれ異なる特性があります。ここでは、主要な種類について解説します。 

合成燃料 

合成燃料は、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)を化学的に合成して作られる燃料です。この燃料は燃焼時にCO2を排出しますが、原料としてCO2を使用するため、全体としては大気中のCO2濃度を増加させません。 

原料となるCO2は、主に発電所や工場などから排出されたものを利用します。したがって、既存の排出物を再利用する形でCO2削減を図ることができます。 

※参考:カーボンニュートラルで話題の「合成燃料(e-fuel)」とは?そのメリットから製造方法まで解説!|独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構 
※参考:DACロードマップの策定に向けた検討|経済産業省 

e-fuel 

e-fuelは合成燃料の1種ですが、原料の供給方法に違いがあります。DAC(Direct Air Capture)という技術を使用してCO2を供給します。 

DAC技術は、大気中から直接CO2を取り込み分解して燃料の製造に利用する技術です。もう1つの原料である水素については、水を電気分解して入手します。電気は太陽光や風力で発電されるため、ここでもCO2排出量を抑えられます。 

※参考:カーボンニュートラルで話題の「合成燃料(e-fuel)」とは?そのメリットから製造方法まで解説!|独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構  
※参考:DACロードマップの策定に向けた検討|経済産業省  

水素 

水素は燃焼時にCO2を排出しないクリーンな燃料です。地球環境や人体への悪影響がなく、エネルギー密度が高いため、同じ質量でもたくさんのエネルギーを発生させられます。 

また、液体や水素化合物に変化させれば長期間の保存が可能で、運搬にも適しています。これらの特性から、水素は将来的に有用なエネルギー源の1つとして期待されています。 

※参考:カーボンニュートラルで話題の「合成燃料(e-fuel)」とは?そのメリットから製造方法まで解説!|独立行政法人 エネルギー・金属鉱物資源機構 

バイオ燃料 

バイオ燃料は、動植物を原料として作られる燃料です。例えば、サトウキビやとうもろこしを酵母で発酵させるバイオエタノール、油脂を原料とするバイオディーゼル、廃棄物や排泄物を微生物で発酵させて生成するメタンガスなどがあります。 

バイオ燃料は再生可能な資源を活用しており、原料である植物がCO2を吸収するため、大気中のCO2濃度を増加させません。 

SAF 

SAFはSustainable Aviation Fuelの略称であり、「持続可能な航空燃料」という意味です。廃食油や微細藻類、木くず、サトウキビ、古紙などさまざまな原料から製造されます。 

現在は航空燃料の100%をSAFに置き換えることはできず、従来のジェット燃料と混合して使用されています。 

※参考:飛行機もクリーンな乗り物に!持続可能なジェット燃料「SAF」とは?|経済産業省 

カーボンニュートラル燃料使用のメリット 

カーボンニュートラル燃料には、環境面や経済面でさまざまな利点があります。ここでは、代表的なメリットについて解説します。 

CO2排出量を削減できる 

CO2排出量の削減は、カーボンニュートラル燃料の最大の目的でありメリットでもあります。 

例えば合成燃料は製造過程でCO2を原料として使用しており、バイオ燃料は原料となる植物が成長過程でCO2を吸収するため、総合的に考えればCO2排出量はゼロになります。また、原油と比べると排出ガスに含まれる有害物質も少なく、人体や環境への負荷を軽減できます。 

エネルギー密度が高い 

エネルギー密度は燃料によって異なり、高いほど同じ容量からより多くのエネルギーを生み出せます。カーボンニュートラル燃料のエネルギー密度は石油燃料とほぼ同等で、軽油やガソリンの代替手段として優れています。 

さらに水素には、宇宙ロケットの燃料として使用されるほど高いエネルギー密度があります。 

既存の設備や機器を活用できる 

合成燃料は石油燃料と性質が似ており、現在石油燃料を使用している設備や機器でそのまま利用可能です。 

電気自動車のように専用のインフラや機器を新たに導入する必要がないため、設備投資にかかる金銭的なコストを抑えられます。 

長期的にはコスト削減が見込める 

再生可能エネルギーには費用が高額なイメージがあるかもしれません。しかし、技術の進歩によりコストは年々下がってきています。 

環境負荷の軽減といった他のメリットも総合的に踏まえて、長期的な視点で経済的なコストを考えましょう。 

カーボンニュートラル燃料使用のデメリット

カーボンニュートラル燃料には多くのメリットがありますが、まださまざまな課題が存在しています。 

コストが高い 

2024年現在、カーボンニュートラル燃料は化石燃料に比べて製造コストが高額です。合成燃料の場合、原料となる水素の価格や供給経路にもよりますが、1リットルあたり300円〜700円ほどのコストがかかるとされています。そのため、現時点では大量生産や一般的な普及は困難です。 

原料の確保が困難 

カーボンニュートラル燃料の原料は石油や天然ガスではないため、供給が制限されることがあります。例えば、バイオ燃料やSAFの原料である植物には、燃料だけでなく食料としての需要もあります。廃油も供給量に限りがあり、資源の奪い合いが発生する可能性があります。 

普及に時間がかかる 

カーボンニュートラル燃料の多くは、現段階では実証実験の段階で、実用化には至っていません。技術的なハードルをクリアするべく国内外で研究が進められていますが、消費者や企業が利用できる価格帯での供給が可能になるまでには、まだ時間がかかると考えられています。 

普及に時間がかかる 

カーボンニュートラル燃料の多くは、現段階では実証実験の段階で、実用化には至っていません。技術的なハードルをクリアするべく国内外で研究が進められていますが、消費者や企業が利用できる価格帯での供給が可能になるまでには、まだ時間がかかると考えられています。 

カーボンニュートラル燃料を活用する手段 

カーボンニュートラル燃料は、さまざまな分野で活用できる可能性を持っています。ここでは、具体的な活用手段について解説します。 

自動車の燃料として使用する 

各国で自動車の電動化が推進されているものの、電動自動車の普及には車両の開発・流通だけでなく、充電スポットなどのインフラ整備も必要です。よってエンジン車の需要は今後もしばらく残ると予測されており、石油燃料に代わる燃料が求められます。 

合成燃料やe-fuel、バイオ燃料はその性質が石油燃料に似ているため、既存のガソリン車で使用でき、移動や輸送におけるCO2排出量の削減が期待できます。 

航空機や船舶の燃料として使用する 

航空業界では、SAFや合成燃料を活用する実証実験が世界的に進められています。SAFを使用すると従来の化石燃料と比べてCO2排出量を削減できます。また、船舶の燃料としても水素やアンモニアを代替燃料とする研究が進行中です。 

※参考:飛行機もクリーンな乗り物に!持続可能なジェット燃料「SAF」とは?|経済産業省 

暖房器具の燃料として使用する 

灯油やガスを使用する暖房器具は、エアコンに比べて速やかに部屋を暖めることができ、外気温の影響も受けにくい特徴があります。よって、特に寒冷地では需要が残る可能性が高いと考えられています。合成燃料は灯油の代替として利用できるため、こうした需要にも対応可能です。 

カーボンニュートラル燃料に関する取り組みの現状と展望 

経済産業省の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では、2040年までに合成燃料の自立商用化、2050年までにガソリン価格以下のコストとする目標が掲げられています。 

日本国内では民間企業を巻き込んだ、国産e-fuelの製造プロジェクトが組成されています。海外のプロジェクトへの参画も進行中であり、国際的な連携も通じて技術やノウハウの共有が期待されています。 

※参考:「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(広報資料)|経済産業省 

カーボンニュートラル燃料導入に向けたステップ 

2024年現在、カーボンニュートラル燃料は実用化に向けた段階で、普及には時間がかかります。よって長期的な視点で施策を計画する必要があります。 

ステップ1.人材を教育する 

企業でカーボンニュートラル燃料を導入するには、従業員の理解と協力が欠かせません。省エネ施策や新技術の導入にはコストがかかるため、経営層が従業員に必要性をしっかり伝え、モチベーションを高めることが重要です。 

また、具体的な施策を計画・実行する担当者には、さまざまな専門知識が求められます。時代や技術の発展に合わせて継続的にアップデートするなど、適切な人材教育が必要です。 

ステップ2.自社の現状を洗い出す 

カーボンニュートラル燃料導入の第一歩として、自社のエネルギー使用状況や温室効果ガス排出量を具体的に把握しましょう。どの工場・事業所・設備から、どれだけ温室効果ガスを排出しているのか事業別に把握し、課題を具体的に深堀りすることが重要です。 

ステップ3.自社で実施できる対策を検討・実行する 

次に自社で実行可能な具体的な対策を、短期目標と長期目標に分けて検討しましょう。例えば、化石燃料を使用している装置を段階的に切り替える、燃料の使用量や設備の稼働量を減らすといった対策が考えられます。ただし、カーボンニュートラル燃料の供給量は限られているため、現実的な側面も考慮して無理のない取り組みを進めましょう。 

カーボンニュートラルに向けた取り組み事例 

カーボンニュートラルを実現するためには、政府や企業が一体となった取り組みが求められます。ここでは、先進的な取り組みを行っている企業の例を紹介します。 

トヨタ自動車株式会社 

トヨタ自動車株式会社では、合成燃料の研究・開発を進めています。合成燃料を使用してモータースポーツに参戦したり、同社を含めた民間6社で、次世代グリーンCO2燃料技術研究組合を設立したりと、カーボンニュートラル燃料技術の開発・普及を目指して取り組んでいます。 

出光興産株式会社 

出光興産株式会社は、南米・北米・オーストラリアなどで、合成燃料(e-fuel)の製造を手掛けるHIF Global社と、戦略的パートナーシップを結ぶことを同意しました。合成燃料の調達・供給や国内製造設備への投資、国内で回収したCO2の原料化といった取り組みについて、共同で検討すると発表しています。 

ANAホールディングス株式会社 

ANAホールディングス株式会社は、2021年以降のCO2排出量を増加させない、カーボンニュートラルな成長を目指すと発表しました。航空機から排出されるCO2の量を正確に測定するシステムの構築や、SAFの導入といった取り組みを推進しています。 

日清食品ホールディングス株式会社 

日清食品ホールディングス株式会社は、同社が販売する「カップヌードル」ブランド製品の容器を、カーボンニュートラルな「バイオマスECOカップ」に切り替えました。また、ごみの焼却によるエネルギーを活用する「ごみ発電電力」を本社で導入し、再生可能エネルギーの活用を進めています。 

まとめ 

カーボンニュートラル燃料は、製造から利用までの過程を総合して、大気中のCO2濃度を上昇させない燃料です。実用化に向けてはまだ課題も残されていますが、世界各国で普及に向けて研究・開発が進められており、石油燃料に替わる次世代の燃料として期待されています。 

「ゼロ炭素ポート」は、脱炭素に向けてさまざまな情報発信や、ソリューションの提供を行うWebサイトです。省エネやCO2排出量削減を課題に感じているなら、ぜひ一度資料をダウンロードしてみてください。 

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA