非住宅における省エネ計算の方法を解説!対象となる基準値も紹介 

目次

省エネ基準適合義務化に向けた省エネ計算は、非住宅においても重要です。新築や増築・改築を行う際、一定の基準値を上回る床面積がある建築物は、省エネ性能の申請をしなければいけません。 

本記事では、非住宅における省エネ計算の計算方法を解説します。2025年4月1日より改正される法律についても紹介するので、参考にしてください。 

建築物省エネ法とは

建物省エネ法とは、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」のことで、2015年7月8日に公布されました。建築物の省エネ性能をアップさせる目的で制定されています。建築物省エネ法に記載されている内容として、一定基準を満たしている建築物に対して、エネルギー消費性能基準へ適合の義務化が定められています。 

2025年4月以前は、床面積が300平方メートル以上の中規模住宅と、床面積が2,000平方メートル以上の大規模住宅にのみ義務付けられていました。しかし、2025年4月1日より、床面積を問わず原則的にすべての住宅・非住宅に対して、省エネ基準への適合を義務化しています。基準に適合している建築物の容積率緩和特例に関する基準についても、記載されています。 

2025年4月から省エネ基準適合義務化 

先述の通り、2025年4月1日より改定される建築物省エネ法では、建築物の規模を選ばず、すべての住宅・非住宅に対して、省エネ基準への適合が義務化されています。建築物の施工を行う際は、省エネ計算を実施し、評価を受けなければなりません。増築・改築の場合は「増築・改築を行った箇所に限り、省エネ基準適合の対象となる」という点も、改正後の特徴です。 

なお、詳しくは後述しますが、エネルギー消費性能に対して大きな影響がないと判断されている10平方メートル以下の建築物は、義務化の対象にはなりません。 

対象となる非住宅建築物 

2015年の建築物省エネ法の制定当時から、対象となる建築物の規模は変更されています。非住宅の建築物における対象の基準や適合時期は、以下の通りです。 

  基準  適合時期 
大規模  2,000平方メートル以上  2017年4月~ 
中規模  300平方メートル以上  2021年4月~ 
小規模  300平方メートル未満  2025年4月~ 

これまでは、床面積が300平方メートル以上あるかどうかが基準として設けられていましたが、2025年からは300平方メートル以下の規模が小さい非住宅建築物も、義務化の対象となりました。 

非住宅建築物を建築するときに、省エネ基準に適合していないと判断された場合は、確認・検査を行ったという証書を受け取れません。証書がなければ工事着工や建物の利用が不可能であり、省エネ基準を満たしている証書を受け取れる建物を建築しなければいけません。 

対象から除外される建築物 

2025年4月の改正後は、省エネ基準適合義務化の範囲が拡大することで、すべての住宅・非住宅が対象となりますが、除外されるケースもあります。 

具体的には、以下のような建築物が除外される対象として定められています。 

・開放的で空調設備が不要な建築物(自動車の車庫や倉庫、畜舎など) 
・保存を目的とした建築物(文化財) 
・仮設建築物(災害時に応急的に設置された住宅) 
・10平方メートル以下の建築物 

なお、常温の倉庫は対象外とされていますが、冷凍機能の付いた倉庫の場合は対象に含まれる点にも注意しておきましょう。 

省エネ基準を満たしている非住宅の判断基準

2025年以降は建築確認を行う際、構造安全規制をはじめとする適合性審査と同時に、省エネ基準に適合しているかどうかを確認できます。 

省エネ基準を満たしているかを判断するラインは「一次エネルギー消費量が基準値を下回っているか」「外皮が基準値を下回っているか」です。つまり、エネルギー消費量が基準値よりも少なくなるように設計して建築されるか、熱損失量が基準値よりも少ないかという点が判断の基準となります。 

以下で、それぞれの判断基準をより具体的に解説します。 

一次エネルギーの消費量基準 

一次エネルギーの消費量基準とは、空調や照明、給湯などさまざまな設置機器のエネルギー消費量を評価する基準のことです。一次エネルギー消費量を「BEI」と定め、数値が小さければ小さいほどエネルギー効率が高いとされています。BEIは以下の計算式を用いて算出します。 

BEI=設計一次エネルギー消費量÷基準一次エネルギー消費量 

建築物の計算結果が、以下の基準値を下回っていれば、省エネ基準を満たしているという判断ができます。 

・2016年4月1日前の建築物の場合…BEI≦1.1 
・新築または既存建築物の増築・改築の場合…BEI≦1.0 

外皮基準 

外皮基準とは、建物における外壁や屋根、窓、ドアなど外皮部分の断熱性能を表す基準のことです。一次エネルギー消費量とは異なり、外皮基準は非住宅の建築物における判断基準として適用されません。 

しかし、一次エネルギー消費量を計算するうえで外皮基準は入力が求められる要素であり、建築設計を行う際にも外皮性能への考慮は欠かせません。 

外皮基準を算出するには、ペリメータゾーンにおいて「生じる熱」と「出入りする熱の量」のデータ収集が求められます。ペリメータゾーンとは空調用語であり、建築物の外壁や窓際などの外気や日光による影響を受けやすい箇所を指します。 

2016年4月1日以降の建築物の場合は「外皮基準(UA、ηAC)≦1.0」です。 

非住宅における省エネ基準の計算方法3種

非住宅における省エネ基準の計算方法には、標準入力法・モデル建物法・小規模モデル建物法の3種類があります。計算には、ツールを用いることが一般的です。ここでは、それぞれの計算方法の特徴について解説します。算出する建築物にあわせて選びましょう。 

標準入力法 

標準入力法とは、建築物すべての情報を詳細に入力して計算する、最も正確で詳細なデータを算出できる計算方法です。 

部屋単位で入力するため、用途が複数ある建築物の場合でも簡単に計算できるという特徴があります。しかし、算出には部屋ごとの床面積と設備機器の情報、外皮性能などの情報を入力が必要です。部屋数が多い場合は、入力が煩雑であり算出までに時間がかかるため注意しましょう。 

また、完了検査においてもすべての部屋を確認しなければならないため、所管行政庁や適合判定機関に向けて支払う手数料が高額になるという点も留意しなければいけません。非住宅建築物の省エネ性能を示す「BELS制度」において、高評価を得たい場合は有効な計算方法として定められています。 

モデル建物法 

国が過去の建築物をモデル化し、蓄積したデータを建築物の用途にあわせて活用し、算出するのがモデル建物法です。モデル化された建築物のデータを基に計算するため、入力項目が少なくわかりやすいという特徴があります。 

また、すべての部屋の情報を入力して計算するのではなく、代表的な部屋の床面積や設備機器の情報、外皮性能を入力して計算するため、入力にかかる負担も削減可能です。通常の省エネ適合義務と届出義務だけを行えば十分な建築物の場合は、モデル建物法を活用します。審査に必要な手数料や審査機関、工事管理という点でも標準入力法よりも負担が少なくて済みます。 

BELS制度でも活用可能な計算方法であるため、省エネ基準に達しやすい非住宅であればモデル建物法で十分だといえるでしょう。 

小規模モデル建物法 

小規模モデル建物法とは、90項目程度入力しなければいけないモデル建築法を30項目に削減したコンパクトな算出方法のことです。ほかの2つの計算方法と比較しても入力項目が大幅に少ないため、入力にかかる負担は少ないといえます。入力項目は外皮性能と主な設備の仕様だけであり、評価が高くならないように設定されているのが特徴です。 

小規模モデル建物法は、床面積が300平方メートル未満の建築物の場合に使用可能であり、300平方メートル以上の場合は活用できない点に注意が必要です。また、性能向上計画認定や、BELS制度にも使えません。 

非住宅建築物の省エネ性能を示すBELS制度とは 

BELS制度とは「建築物エネルギー性能表示制度」という意味で、英語の「Building-Housing Energy-efficiency Labeling System」の頭文字を取った言葉です。2014年に国土交通省により制定された評価・表示制度で、省エネ性能に特化しています。 

第三者機関が5段階で評価し、省エネ性能を表示する仕組みです。建築物の一次エネルギー消費量を評価基準として利用するため、数値の算出が必須となっています。第三者機関が基準を基に評価するため、客観性や信頼性の向上が見込めるでしょう。 

なお、BELS制度には非住宅の計算方法として「標準入力法」と「モデル建物法」のみが採用可能な点に留意が必要です。 

非住宅の省エネ計算にツールを使用するメリット 

非住宅の省エネ計算は、多くのケースで国土交通省が開発協力しているツールが使われています。実際にどのようなメリットがあるのかを解説します。 

制度の更新にあわせてリアルタイムに対応 

制度が更新されるタイミングに合わせて、リアルタイムに更新内容が反映されます。建築物の省エネ性能に関する制度の更新や改定は、頻繁に行われています。更新・改定される度にチェックしなくてもよいことは、大きなメリットとなるでしょう。 

また、インストール型のソフトのように、アップデートしたり、最新の制度に対応しているかの確認をこまめに実施したりしなくてよい点でも便利です。 

無料で利用可能

国土交通省が開発協力している非住宅の省エネ計算ツールは、無料で導入できるうえ、年会費や利用料などのランニングコストがかかりません。 

Webツールにアクセスして利用するだけなので、ダウンロードする必要がなく、利用するために複雑な設定も不要です。また、無料で利用できる機能に制限はないため、非住宅の省エネ計算をするうえで安心して使える点もメリットだといえます。 

国土交通省が制作 

建築物省エネ法を管轄している国土交通省がツールの開発に関わっているため、信頼性が高いこともメリットです。建築の技術研究を実施している国立研究開発法人建築研究所と協力して開発を行っているため、建築に関する専門性においても安心して利用できます。 

法律と建築に関する専門機関が政策に関わっているため、建築物の省エネに関する制度や法律に精通しているツールだといえるでしょう。 

非住宅の省エネ計算にツールを使用する際の注意点 

非住宅の省エネ計算にツールを使用する際は、省エネ計算に関するある程度の専門知識がないと、操作が難しい可能性があります。十分にソフトを使いこなせないことに加え、計算間違いが生じるリスクも考えられるでしょう。 

また、設計図や材料の詳細など、各種資料の手配に手間や時間がかかってしまうため、かえって効率が悪くなってしまうこともあります。そのため、省エネ計算について知識を身につけたうえでツールを使用するのがおすすめです。 

非住宅の省エネ計算はプロに任せるのもおすすめ 

省エネ計算の専門知識や自信がない場合は、プロに依頼して計算をしてもらってもよいでしょう。専門知識を有しているプロに依頼することで、計算ミスを回避できるうえ、計算にかかる手間を省くことができます。 

また、煩雑な根拠資料の確認や申請準備に関しても代行してくれるため、自分で行う場合と比べて負担を減らせるでしょう。プロに依頼する場合は、過去の実績や評判を確認し、信頼できる会社を選びましょう。 

まとめ 

2025年4月から省エネ基準適合における義務化の範囲が拡大することにより、すべての住宅・非住宅において省エネ計算が必須となりました。省エネの計算には「標準入力法」「モデル建物法」「小規模モデル建物法」の3種類の方法を用いるのが一般的です。しかし、省エネ計算には、建築や法律に対する専門知識が必要とされるため、プロへの依頼も検討しましょう。 

ゼロ炭素サポートは、自社のみならず他社ソリューションとも協力し、お客さまのニーズにお応えできるようサポートするサイトです。脱炭素をはじめとしたさまざまな取り組みに関する情報を発信しているため、ご興味のある方は脱炭素ソリューションの詳細資料をダウンロードしてご活用ください。 

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA