企業の省エネとは|重視される背景・取り組み状況・手法・成功事例などを解説 

目次

企業における省エネの重要性は、脱炭素化への社会的責任の増加や、エネルギーコストの上昇などを背景に高まっています。しかし、具体的な施策に迷う企業担当者も少なくないでしょう。本記事では、企業における省エネの必要性や、具体的な方法、省エネに取り組むメリット、企業事例などを解説します。自社施策の立案にお役立てください。 

企業における省エネとは 

省エネとは、「省エネルギー」の略で、エネルギーを効率的に使うことを指します。身近な例では、空調温度を適切に保つ、不要な照明をこまめに消すなどが挙げられます。エネルギーの過剰使用が地球温暖化を加速している中、企業の省エネ活動は重要です。企業の省エネは、環境保護の社会的責任を果たすだけでなく、長期的なコスト削減や競争力強化にも寄与します。 

※参考:省エネって何?|経済産業省 

一般家庭の省エネとの違い 

一般家庭の省エネは主に光熱費の節約や、個人レベルでの環境保護を目的としています。一方、企業の省エネでは、自主的なコスト削減や温室効果ガスの抑制のみならず、省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)に定められた、報告義務や努力義務の順守が必要です。 

また、家庭に比べて企業のエネルギー使用量は膨大です。そのため、企業の省エネは大きなエネルギー削減効果をもたらします。 

※参考:省エネって何?|経済産業省 
※参考:省エネ法の概要|経済産業省 

省エネと再生可能エネルギーの違い 

省エネがエネルギー消費量を減らすことを指すのに対し、再生可能エネルギーは自然由来で繰り返し利用できるエネルギーを指します。省エネが消費を抑える取り組みであるのに対し、再生可能エネルギーの活用は、環境負荷の低いエネルギーへの代替を進める取り組みといえます。 

しかし、省エネと再生可能エネルギーは、脱炭素化社会の実現に欠かせない取り組みである点で共通しています。 

※参考:再生可能エネルギーの特徴|経済産業省 

企業が省エネに取り組む背景と必要性

近年、企業が省エネに積極的に取り組む事例が増えています。ここでは、その背景や必要性について解説します。 

脱炭素推進における企業責任の高まり

産業革命以降、石油や石炭などの化石燃料が主に利用され、CO2排出量が急増しました。このCO2は大気中に熱を蓄え、温室効果を引き起こし、地球温暖化が進行しています。そのため、企業に対して地球温暖化対策の一環としての脱炭素に向けた行動が、強く求められるようになりました。省エネはCO2削減に有効であり、企業の社会的責任としても重視されています。 

※参考:地域脱炭素とは|環境省 

省エネ法による事業者のクラス分け 

省エネ法は、エネルギー使用状況の定期的な報告や、省エネ計画の策定を義務付けています。これらの内容を基に、S(優良事業者)、A(更なる努力が期待される事業者)、B(停滞事業者)の3段階に評価されます。 

Sクラスは、優れた省エネ活動を実施する事業者として公表の対象です。一方、Bクラスは、省エネが進んでいない事業者として、報告徴収や立入検査などの厳しい措置が取られます。こうした省エネ法の措置が、企業の省エネ推進を促しています。 

※参考:事業者クラス分け評価制度|経済産業省 

エネルギーコストのリスク 

世界的にエネルギー需要は増加しています。例えば電力需要は、2050年までに80~150%増加すると予測されています。一方で、石油や天然ガスなどのエネルギー資源は限られており、将来的な枯渇が懸念されている状況です。 

そのため、エネルギーコストの高騰リスクは、企業に常に付きまとう問題です。このリスクに備えるため、企業は効率的なエネルギー利用を推し進め、経営リスクを抑える必要性が高まっています。 

※参考:第1節 エネルギー需給の概要等|経済産業省 

企業の省エネの取り組み状況 

企業として省エネに取り組む際は、全体の状況を把握しておくことも重要です。ここでは、国の取り組みと中小企業全体の取り組み状況を紹介します。 

国の取り組み状況 

省エネ法は1979年に制定され、エネルギーの使用を効率化し、省エネを推進することを企業に義務付けています。2023年の改正では、エネルギーの使用合理化に加えて、非化石エネルギーの活用が推奨されました。 

日本は2030年までに温室効果ガスを46%削減し、2050年までに脱炭素化を達成する目標を掲げています。これらの目標達成のための政策の柱となっているのが、省エネと再エネ活用です。 

※参考:時代にあわせて変わっていく「省エネ法」|経済産業省 
※参考:2023年4月施行の「改正省エネ法」、何が変わった?|経済産業省 
※参考:第2節 環境制約と成長を両立する省エネルギー・再生可能エネルギー政策」を挿入|経済産業省 
※参考:日本のNDC(国が決定する貢献)|環境省 

日本企業の取り組み状況

経済産業省関東経済産業局の2019年の調査によると、中小企業の65%が省エネに取り組んでいると回答しました。中小企業に比べて大企業で省エネが進んでいることを考えると、企業全般に省エネが浸透してきていると評価できるでしょう。 

一方で、省エネ担当者がいる中小企業は全体の約4割にとどまり、組織的な省エネ体制が十分に整備されていない課題も浮き彫りになりました。また、半数近くの企業が「費用捻出が困難」と答えており、人的・経済的なリソース不足が取り組みの障壁となっています。 

※参考:⼩企業における省エネルギーへの取組に係る実態調査アンケート結果(概要版)|経済産業省 関東経済産業局 

既存設備の見直し・更新による企業の省エネ対策 

多くの企業において、省エネ施策の中心となっているのが電気・空調・照明関連です。そこで、既存設備の見直し・更新による各分野の省エネ施策を、具体例を挙げながら紹介します。 

電気関連の省エネ

電気関連の省エネは、比較的取り組みやすい施策です。 

【施策例】 
・OA機器をスリープモードや省エネモードに設定する 
・不要な機器のコンセントを抜き、待機電力を削減する 
・生産ラインの運用管理を最適化し、機械の稼働を必要なときに限定する(製造業などの場合) 

空調関連の省エネ 

空調関係の省エネも、取り組みやすい分野です。ビル管理会社に空調管理を任せている企業でも、取り組める施策はあります。 

【施策例】 
・作業場を間仕切りして必要な場所にのみ空調を行う 
・既存の窓に遮熱シートを貼り、室内の温度上昇を抑えることで空調負荷を軽減 
・空調停止時間を数十分程度早め、残熱(すでに冷えた・温まった空気)を利用する 

照明関連の省エネ 

照明は業務に欠かせないものですが、省エネの観点からチェックすると改善点がみつかる場合があります。 

【施策例】 
・電球の間引きを行い、必要最低限の照明を確保することで、電力消費を削減 
・空室や不在時にこまめに消灯することを従業員に徹底させる 
・自然光を積極的に取り入れ、日中の照明機器の使用を減らす 

設備投資による企業の省エネ対策 

ここでは、設備投資を伴う企業の省エネ対策を、電気・空調・照明別に紹介します。ここで紹介する内容はあくまで一例であり、企業によって最適な方法は異なります。 

電気関連の省エネ 

電気関連の省エネでは、省エネ機器の導入が効果的です。例えば、蛍光灯や白熱電球をLED照明に置き換えることで、長期的な省エネを図れます。 

また、電力の見える化システムを導入する企業も少なくありません。電力消費をリアルタイムで監視するシステムの導入によって、エネルギー効率を最適化します。電力の見える化は、エネルギー消費の実態を従業員に理解させ、省エネ意識を高めてもらうためにも有効です。 

空調関連の省エネ 

高効率な空調設備に更新することで、エネルギーの無駄を防ぎ、消費エネルギーを大幅に削減できます。さらに、サーキュレーターを活用して室内の空気を循環させれば、空調効率を向上可能です。 

建物を所有している場合は、エネルギー管理システム(EMS)の導入も検討しましょう。自動制御やデマンドコントロールを行うことで、建物全体で運用を最適化するため、大きな省エネ効果が期待できます。 

照明関連の省エネ 

照明関連の省エネでは、電気を使用しない場所や、時間帯における点灯時間を減らすことがポイントです。例えば、人感センサーを導入することで、人の動きを感知し、不要な照明を自動で消灯します。 

また、無駄な照明を防ぐ時間管理システムの導入も効果的です。例えば、曜日ごとに異なる照明の点灯・消灯スケジュールを設定したり、自然光の明るさをセンサーで感知して照明を制御したりすることで、省エネを図れます。このシステムは、ビル管理システム(BMS)の一部として導入される場合もあります。 

企業が省エネに取り組むメリット

企業が省エネに取り組むと、環境や社会によい影響をもたらすだけではなく、企業価値や競争力の向上にもつながります。 

企業価値の向上を図れる 

省エネ活動に取り組むことで、企業は社会的責任を果たしていると認識され、顧客や取引先からの信頼を得やすくなります。特にISO14001などの環境規格を取得することは、環境配慮型の経営を行う企業として社会から認知され、企業価値を高めるうえで効果的です。 

また、省エネ法による優良事業者評価として、経済産業省のWebサイトで公表されると、企業の信頼性が向上します。 

※参考:ISO 14001(環境)|一般社団法人日本品質保証機構 

エネルギーコストを削減できる 

省エネ設備の導入には初期費用がかかりますが、運用後は維持費を削減できます。例えば、蛍光灯からLED照明への交換や、エネルギー消費を最適化するエネルギー管理システム(EMS)の導入で、光熱費を減らすことが可能です。このメリットは、原油価格の高騰による電気料金の値上げなど、エネルギーコストが高騰した際に大きくなります。 

投資を呼び込みやすくなる 

省エネ対策を進めることで、投資を呼び込みやすくなります。ESG(環境・社会・ガバナンス)は、企業評価の新しい基準として重視されており、環境に配慮する企業は投資家から高評価を得やすくなっているからです。 

例えば、企業が省エネ設備を導入して炭素排出量を削減した結果、ESG評価が向上し、年金基金や、国際的なESGファンドが新たに投資するといった事例が出ています。 

※参考:ESG投資|年金積立金管理運用独立行政法人 

企業が省エネに成功するためのポイント 

企業が省エネに成功するためには、自社の課題や問題点を把握し、計画を立てることが重要です。また、補助金の活用や、再生可能エネルギーとの併用など、総合的な施策を検討することも必要です。 

エネルギー消費を可視化する 

エネルギー消費を可視化すると、データに基づいて改善ポイントを発見し、施策の優先順位を決められるため、費用対効果の高い省エネ活動ができるでしょう。 

可視化を進める方法としては、専門家によるエネルギー使用量の測定・分析や、各設備の稼働状況を調査する「省エネ最適化診断」を受ける方法があります。より継続的な方法としては、エネルギー管理システムを導入し、リアルタイムでエネルギー使用量を可視化する方法が効果的です。 

※参考:省エネ最適化診断サービス内容|一般財団法人省エネルギーセンター 

省エネ関連の補助金を活用する 

企業の省エネで活用できる可能性がある代表的な補助金として、以下が挙げられます。 

補助金名  概要 
令和6年度 先進的省エネルギー投資促進支援事業   省エネ機器への更新やエネルギー効率向上を支援する補助金。工場や事業所の設備更新に対する補助が受けられる  ※2024年8月時点で、2024年度は新規事業の公募および採択は実施しておらず、2022年度以前に初年度採択された複数年度事業が対象 
令和6年度 省エネルギー設備投資利子補給金  省エネ設備導入の際に民間金融機関から融資を受ける企業に対し、利子補給を行い、省エネ投資の資金調達を支援する 

上記は、いずれも経済産業省や環境省からの委託を受け、省エネ関連事業を実施している「一般社団法人 環境共創イニシアチブ」で実施されています。他にも、地方自治体の制度を利用できる場合もあります。各補助金や事業は更新される場合があるため、最新情報は公式Webサイトでチェックしてください。 

※参考:令和6年度 先進的省エネルギー投資促進支援事業|一般社団法人 環境共創イニシアチブ 
※参考:省エネ関連情報 各種支援制度|経済産業省 
※参考:令和6年度 省エネルギー設備投資利子補給金|一般社団法人 環境共創イニシアチブ 

再生可能エネルギーを併用する 

再生可能エネルギーを併用することで、省エネ効果をさらに高められます。省エネだけでは削減しきれないエネルギー消費を、再生可能エネルギーで補うことで、総エネルギー使用量を減らせるためです。例えば、太陽光発電設備を導入して自家消費することで、石炭や天然ガスなどの化石燃料で発電された、電力会社の電気利用量を減らせます。 

※参考:再生可能エネルギーの特徴|経済産業省 

企業の省エネの成功事例 

企業の省エネで成果を出すためには、先行事例を知ることも重要です。ここでは、企業の省エネに成功した事例を紹介します。 

新日本理化株式会社|製造設備の制御見直しによる省エネ

新日本理化株式会社では、エネルギー原単位削減の目標を掲げていましたが、計画と実施内容の紐づけが困難で、無駄な燃料消費が続いていたといいます。この課題を解決するために、蒸気ボイラーの制御方法を改善し、最適な圧力設定や運転台数の制御を実施しました。設備の稼働状況に応じたプログラムを導入し、燃料効率の向上を図る取り組みです。 

その結果、蒸気ボイラーの運転が計画的かつ効率的になり、エネルギー使用の無駄が減少しました。現在は、都市ガス使用量の5%以上削減を目標に、さらなる効率改善を進めています。 

参考:製造業界の省エネ・CO2削減の取り組み事例を紹介!新日本理化株式会社 | ゼロ炭素ポート 

株式会社朝日ラバー|照明設備更新と従業員の意識改革による省エネ

株式会社朝日ラバーは、エネルギーコストの削減が課題でした。その解決策として、照明設備を旧式の蛍光灯から、エネルギー効率の高いLEDに全面的に更新しました。さらに、社員への省エネ意識改革を行い、照明のこまめな消灯などを徹底したといいます。 

これらの施策の結果、電力消費量を大幅に削減し、コスト削減と環境負荷の軽減を達成できました。また、持続的な省エネ活動が企業文化として定着しています。 
 

参考:製造業界の省エネ・CO2削減の取り組み事例を紹介!株式会社朝日ラバー | ゼロ炭素ポート 

まとめ 

企業における省エネの取り組みは、地球温暖化やエネルギーコスト高騰などの背景もあり、活発化しています。省エネの取り組みは、電気・空調・照明などさまざまな領域があり、成果を出す方法は企業によって変わります。まずは、自社のエネルギー消費状況を把握し、効果的な対策を立案していくとよいでしょう。 

「ゼロ炭素ポート」は、企業や自治体が脱炭素化を推進する際の情報、相談の場を提供しているWebサイトです。CO2排出量の算出方法や再生可能エネルギーの活用事例、補助金情報など、脱炭素経営に役立つコンテンツを掲載しています。自社のみならず他社のソリューションも紹介しているため、最適な脱炭素施策を立案するためにお役立てください。 

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA