製造業の省エネ事例を紹介!取り組むメリットやポイントを解説 

目次

省エネに関する法改正や電気料金・燃料費の変動によって、製造業における省エネの重要性が高まっています。製造業が省エネに取り組むべき理由は、法改正への対応だけでなく、コストカットや機械の安定稼働などにつながるメリットもあるためです。 

本記事では、製造業の省エネの概要、メリット、具体的な事例を解説します。 

製造業における省エネの必要性 

コスト面とCO2削減面から、製造業における省エネの必要性を解説します。 

コスト面

近年、電気料金・燃料費高騰によってエネルギーコストが増加し、製造業にも大きな影響を与えています。特に注意すべきは、電気料金(電気代)です。経済産業省資源エネルギー庁の「令和4年度エネルギー消費統計」によると、製造業では割合が大きい順から電気、蒸気・熱、石油・石炭製品、ガス、再生可能エネルギーで使用されています。 

出典:令和4年度エネルギー消費統計結果概要(経済産業省資源エネルギー庁)資料より加工して作成 

そして、経済産業省資源エネルギー庁の「夏季の省エネ・節電メニュー」「冬季の省エネ・節電メニュー」によると、製造業で利用されている電力消費のうち、80%以上を生産設備が占めています。つまり、電気料金の値上がりが続くと、生産時間に比例して電気関係のコストも大きく増加していくため、企業活動にも大きく関わると言えるでしょう。 

出典:夏季の 省エネ・節電メニュー│経済産業省資源エネルギー庁 
出典:冬季の 省エネ・節電メニュー│経済産業省資源エネルギー庁 

CO2削減面

現在は国際社会全体で、地球温暖化対策を進めている最中です。日本でも、CO2削減に関係する以下の取り組みが進みつつあります。 

・省エネ法・温対法などの法律の成立 

・2050年までのカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量と除去量をゼロにすること)の実現 

CO2削減の取り組みはステークホルダーからの評価にも直結するようになり、ビジネス面でも重要な戦略の一部となってきました。 

経済産業省資源エネルギー庁の「令和4年度(2022年度)エネルギー需給実績」によると、日本の製造業の最終エネルギー消費量は、2022年時点で全体の42.3%を占めています。そのため、製造業の対策は、日本全体のCO2削減面でも大きな効果が見込めます。 

出典:令和4年度(2022年度)エネルギー需給実績を取りまとめました(確報) 

製造業を取り巻くエネルギー事情 

製造業を取り巻くエネルギー価格は値上がりが進んでおり、対策なしでは膨大なランニングコストになります。 

法人の電気料金の推移 

製造業で最も消費量が多い電気の料金は、2000年より値上がり傾向が見られ、2021年以降は特別高圧が18~24円/kWh、高圧が21~27円/kWhあたりです。高圧の料金は2023年1月までと比較すると値下げ傾向が見られる一方で、2021年以前と比べると依然として高い水準にとどまっています。特別高圧も同様の傾向が見られ、法人向け電気料金は全体的に高止まりしている状況です。 

出典:2.経済性|資源エネルギー庁 

電気料金の値上がりの原因は、火力発電に必要な燃料費の高騰、高コストの再生可能エネルギーの利用および再エネ賦課金の高騰などが挙げられます。大手電力会社の電気基本料金も、値上げ傾向です。ただし再生可能エネルギーについては発電コストが減少傾向にあるため、製造業での将来的な活用に期待できるでしょう。 

参考:電気をつくるには、どんなコストがかかる?|エネこれ|資源エネルギー庁 

蒸気や熱を生み出すために必要な燃料費 

電気を生み出すための燃料の価格高騰は、蒸気・熱を生み出すために必要な燃料費の高騰も意味しています。ボイラーや工業炉で使われる天然ガス、石炭、原油などの料金は2000年代から上昇しています。現在は2022年のピーク時よりは値下がりしているものの、今後も値上がりが続く見通しです。 

日本のエネルギーは海外からの輸入に頼っている部分が大きく、燃料費高騰の影響を受けやすくなっています。そのため、世界情勢の変化によって燃料費の価格変動幅も大きくなります。 

参考:天然ガス価格の推移(日本/米国/欧州)|新電力ネット 
参考:石炭価格の推移|新電力ネット 
参考:原油価格の推移(WTI/ブレント/ドバイ/OPECバスケット)|新電力ネット 

製造業が省エネに取り組む具体的なメリット 

製造業が省エネに取り組むことには、コスト削減や企業価値向上といった具体的なメリットが存在します。ここでは、製造業が省エネに取り組むメリットを解説します。 

コスト削減によって利益率の向上が見込める 

製造業の省エネ対策で電気料金・燃料費が削減できれば、企業の利益率の向上が見込めます。 

先述のとおり、製造業の電力消費の約80%は生産設備からです。つまり、省エネによって生産設備の電力をカットできれば、製造業の生産活動全体の経費削減につながります。電力にかかるランニングコストを削減した分を、新設備への投資や電力プラン変更にかかる費用に回せば、より効率的な生産活動につながるでしょう。 

CO2削減の取り組みによって企業の価値が向上する 

CO2削減の取り組みによって、自社の企業価値の向上を見込めます。 

省エネ活動推進や脱酸素活動の実施は、国内外問わず評価を得られるのが昨今の傾向です。CO2削減の取り組みを社外に発信できれば、結果的に企業全体の業績向上やステークホルダーへのアピールにつながります。地球温暖化対策は長期にわたる課題であるため、製造業の省エネ対策も短期ではなく中長期的計画とし、継続的に実行・発信していくのがよいでしょう。 

設備更新・点検による生産の安定稼働につながる

製造業の省エネ対策には、機械設備更新によるエネルギー消費の効率化、部品交換・メンテナンスによる無駄な稼働・停止が原因のエネルギー消費のカットなども含まれます。 

設備更新や定期点検は、生産自体の安定化にもつながります。具体的な例は、次のとおりです。 

・機械設備の異常の早期発見による生産トラブル防止 
・定期の部品交換・メンテナンスによる機械設備の長寿命化および負荷軽減 
・新設備や新品部品での稼働による安定生産・ロス率低下 

省エネの取り組みが、結果的に企業全体の生産性向上になります。 

製造業の省エネのアイディアを生み出す4つのポイント 

ここでは、製造業の省エネ対策で使えるアイディアを生み出すための、4つのポイントを解説します。 

現在のエネルギー使用量を見える化で明確にする 

省エネ対策を進めるうえで大切なのは、「現在のエネルギー使用量はどれくらいか」「無駄なエネルギーはどこで発生しているか」を見える化することです。事前の分析で消費電力が多い設備や異常箇所を発見できれば、ピンポイントで効率的に対応できます。現状、課題、成果が具体的に見えれば、対応する従業員のモチベーションも高く保てます。 

見える化のためには、まず現地調査で設備の状態や運用方法を確認しましょう。次に実際のエネルギー使用量、作業内容、現状の問題点を確認し、問題解決に取り組んでください。 

データに基づいてPDCAサイクルを回す 

省エネ対策を進める際も、現場の改善と同じくPDCAサイクルを回すのが効果的です。 

P:Plan(計画)  目標設定、現場調査、エネルギー使用量の確認など 
D:Do(実行)  収集データ・分析を基にした改善方法の立案 省エネ対策の実行 
C:Check(測定・評価)  進捗・実施状況の確認 効果の測定・検証 新たに発覚した課題の確認・考察 
A:Action(対策・改善)  測定・検証に基づいた見直し、問題解消、改善案の実行 

PDCAサイクルを中長期的に回し、徐々に省エネ対策を進めていきましょう。 

費用対効果を検証して最新設備導入を検討する 

最新設備導入によるプラス効果が大きいときは、設備導入費と現状維持でかかるランニングコストを比較し、どちらがよいかを検討します。中長期的に見れば、高額の設備投資でも早期に回収できるケースも珍しくありません。 

古い設備のままでは、時間あたりのエネルギー使用量、稼働率、停止時間などの負担が新品と比較して大きくなり、生産効率が想像以上に低下している可能性があります。 

省エネ用の補助金・支援制度を活用して資金調達できれば、高額の設備投資も進めやすくなるでしょう。「省エネルギー設備への更新支援」「省エネルギー設備投資利子補給金助成事業費」などがあるため、以下の経済産業省の公式サイトより確認してみてください。 

参考:各種支援制度 | 省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト 

機械設備が稼働していないときの省エネも考える 

製造業における製造現場や工場などにある機械設備・電気設備などは、稼働中の生産運動エネルギーだけではなく、待機電力といった固定エネルギーが存在します。休日や休憩時、機械の立ち上げ、メンテナンス中などにかかるエネルギーも省エネにできれば、省エネ対策の効果をより高められます。 

製造業の省エネの具体例 

ここからは、製造業で実行する省エネの具体例をいくつか紹介します。 

自家消費型太陽光発電・蓄電池の設置 

自社の工場・倉庫などに自家消費型太陽光発電(太陽光パネルなどで作った電気を自社設備に使用すること)や蓄電池を設置することで、「昼間に蓄電池に貯めた電気をピーク時や夜に利用」という運用ができます。電気料金削減・CO2削減の両立が目指せるでしょう。 

例えば、ブラザー工業株式会社では、太陽光発電電力を活用したことで年間約62万円のエネルギーコストと、1tのCO2削減につながっています。 

エネルギーマネジメントシステムの導入 

エネルギーマネジメントシステム(EMS)とは、自社のエネルギー使用状況の測定・データ化や各種設備の制御などを統括するシステムです。EMSなら、CO2排出状況・コストのチェック、異常箇所の特定、自動制御・調整などを一括管理できます。通常生産の管理から省エネ対策のPDCAなど、さまざまな場面で活用できるでしょう。 

ボイラー関係の見直し 

製造業には欠かせないボイラー関係の見直しによって、高い省エネ効果を得られる可能性があります。具体例は、次のとおりです。 

・ボイラー稼働数の削減 
・ボイラーの排熱回収・利用 
・空気比の適正化による排ガスによる放熱ロス回避 
・運転圧力の調整 
・蒸気配管の保温 

株式会社共和では、ボイラーの平均稼働数を4.5台から3台に減らしたことで、ガス使用量93㎥/時間減少、CO2排出削減量1,242t/年、ボイラー燃料経費約3,535万円/年の削減を達成しています。 

電力プランの見直し 

2024年現在では、法人向けの特別高圧・高圧および家庭用の低圧など、電力小売が全面的に自由化されています。そのため、製造業の企業でも電力プランを選べるのが当たり前の時代です。現在の電力プランが高いと感じるときは、今一度自社が利用する電力会社や電力プランの見直しを進めてみてください。 

参考:電力自由化で料金設定はどうなったの?|資源エネルギー庁 

既存の生産設備の動力・状態の見直し 

既存の生産設備の動力・状態を見直すことで、新設備を導入しなくても省エネにつながるケースがあります。 

例えば、生産設備やそのほか機械のインバーターの値を変更するだけで、年間数十万円のコスト削減につながる可能性があります。また、稼働台数の見直しによって不必要な機械設備の稼働を止めることで、年間数十万~数百万円のコスト削減を達成した事例もありました。 

ほかにも簡単にできる見直しの例は、次のとおりです。 

・配管・ホースからの蒸気・エア・水漏れの補修 
・モーターの稼働状況の確認や省エネVベルトへの変更 
・製造現場全体の遮熱・断熱の確認 

電気類・空調・冷蔵・冷凍などの見直し 

電気類・空調・冷蔵・冷凍など長時間稼働する設備は、少しの見直しでエネルギー消費量を削減できれば、中長期的に大きな効果を得られる可能性があります。主な例は、次のとおりです。 

・製造現場・事務室などの設定温度の適正化 
・空調関係のフィルター清掃 
・LED照明への交換 
・電気関係の人感センサ導入 
・冷凍ユニットの更新 

生産設備に直接関わるところ以外にも、省エネ対策できる部分が数多く存在します。 

省エネへの人材的なアプローチ 

機械設備だけでなく、人材教育・業務のルール化といった人材面でのアプローチも省エネ対策の一環です。従業員の省エネ意識が希薄だと、不適切な機械運用や無駄な稼働などで余計なコストが発生します。人材面でのアプローチの具体例は、次のとおりです。 

・弁の締め忘れ、電気の消し忘れ、水の出しっぱなしを避ける 
・設備更新やメンテナンスの重要性と損失内容の共有 
・省エネ対策部の立ち上げ、外部の専門家への分析依頼などによる改善体制整備 

これからの製造業の省エネに関する考察 

脱炭素を含めた省エネ対策が世界的潮流になっていることから、今後も日本でも省エネに法改正や制度新設などが進められると予想されます。製造業における省エネの重要性は、さらに高まるでしょう。 

また、今後も電気料金や燃料費の高騰が続く可能性があるため、利益を確保して事業を継続させるためにも、省エネの取り組みによるコストカット・企業価値向上は経営面でも重要課題になりえます。今後も省エネに関する新技術や事例の登場が予想されるため、省エネ担当者さまは常に最新情報をキャッチしておくことをおすすめします。 

まとめ 

製造業における省エネ対策は、環境面でのメリットに加え、自社のエネルギーコスト削減・企業価値向上などによる売り上げ・利益率アップといった経営面でのメリットがあります。 

脱炭素社会に向けた国際・国内的な流れや、電気料金・燃料費の高騰継続などが予想されるため、今のうちに製造業の省エネを進めておくのがよいでしょう。 

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執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA