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脱炭素で注目される水素エネルギーとは?基礎知識や課題、取り組みを紹介
目次
脱炭素の取り組みが進むなか、注目を集めているのが水素です。水素をエネルギーとして活用すれば、CO2を削減できると期待されています。本記事では、水素エネルギーが注目される理由や課題、水素を活用して脱炭素を目指す企業事例を解説します。自社での取り組みなどに役立ててください。
脱炭素で注目される水素
そもそも、脱炭素とはどのような意味で、一体なぜ水素が関係しているのでしょうか。ここでは、脱炭素と水素について詳しく解説します。
脱炭素とは?
近年、地球温暖化が世界的な問題となっており、世界中でさまざまな取り組みが行われています。脱炭素は地球温暖化防止を目的とした取り組みの1つで、CO2排出を削減することです。
日本でも、2050年までに温室効果ガスの排出ゼロを目指す、脱炭素社会(カーボンニュートラル)の実現を宣言しています。脱炭素には、限りあるエネルギー資源の枯渇を防ぐ目的もあります。
※参考:地域脱炭素とは|環境省
水素の概要
水素は原子番号を「1」、元素記号を「H」と表記する地球上でもっとも軽い気体です。宇宙でもっとも多く存在していて、光る星のエネルギー源でもあります。色や臭い、毒はなく、地球上ではほかの元素と結び付き、水などの化合物として存在しているケースがほとんどです。一般的に水素というと、水素ガスを指します。
※参考:「水素」ってどんなエネルギー?水素をエネルギーとして活用する意義とは?|環境省
水素が注目される理由
水素が注目されているのは、従来のエネルギーに代わると期待されているからです。水素はさまざまなエネルギー源から生成できる燃料であるだけでなく、原料として活用できる可能性もあるとされています。日本政府は2017年に「水素基本戦略」を打ち出しており、世界各国でも水素を活用する計画を続々と発表しています。
※参考:水素基本戦略 |経済産業省
水素によるエネルギーの種類
水素によるエネルギーは2種類あり、それぞれ特徴が異なります。ここでは、それぞれの特徴や活用されているシーンについて解説します。
熱エネルギー
水素は燃焼することで、熱エネルギーを発生させられます。化石燃料を燃焼させるとCO2が発生しますが、水素は燃焼させてもCO2が発生しないことが特徴です。例えば、液化水素がロケットの燃料にされていたり、水素発電として活用されていたりと、タービンやピストンの動力として利用されています。
※参考:「水素エネルギー」は何がどのようにすごいのか?|経済産業省
電気エネルギー
水素が酸素と反応すると、電気エネルギーが発生します。水素と酸素の反応を利用したものが燃料電池です。燃料電池は一般的な使い捨て電池とは異なり、酸化剤と燃料があれば使い続けられることが特徴です。発電効率が高いため、業務用発電機や自動車、バスなどへの導入が進んでいます。
※参考:「水素エネルギー」は何がどのようにすごいのか?|経済産業省
水素エネルギーが注目される理由
なぜ水素はこれほど注目されているのでしょうか。ここでは、水素が注目される理由を解説します。
CO2を排出しない
水素エネルギーの大きな特徴は、CO2を発生させないことです。地球温暖化の原因の1つに、CO2の排出があります。これまで一般的に利用されてきた自動車が排出する排気ガス、火力発電は大量のCO2を排出するため、このまま使用し続ければ地球温暖化を防止できないかもしれません。
そこで、CO2を排出しない水素の活用が脱炭素社会の実現につながると、期待されています。
エネルギー自給率を高められる
現在、日本におけるエネルギー供給は輸入に頼っています。特に石油・石炭・天然ガス(LNG)化石燃料への依存が高く、世界情勢の影響で安定供給ができなくなる可能性もあります。
経済産業省のデータによると、2021年度時点の日本のエネルギー自給率は13.3%でした。世界38か国の先進国が加盟する国際機関「OECD(経済協力開発機構)」のなかでは、37位と低い水準となっています。さまざまな原料から製造できる水素を活用できれば、日本のエネルギー自給率を高めるとともに、安定供給が可能になると考えられています。
参考:安定供給|日本のエネルギー 2023年度版 「エネルギーの今を知る10の質問|経済産業省
日本の競争力が上がる
エネルギー資源に乏しい日本では、長年にわたり水素エネルギーの研究を進めてきました。しかし、水素に期待しているのは日本だけではありません。水素は世界的に注目されており、このまま水素エネルギーが普及すれば、日本の技術的な競争力を高められます。
水素活用が期待される分野
経済産業省の「水素基本戦略」によると、水素活用が特に期待される産業として、以下の分野が挙げられています。
・輸送:重量あたりのエネルギーが高く大型・長距離の輸送に適している
・製鉄:水素還元による製鉄技術が開発されている
・発電:ガスタービン・蒸気タービンの回転に水素エネルギーを利用する
地球温暖化というと、排気ガスや発電によるCO2排出というイメージが強いかもしれませんが、製鉄時に排出される温室効果ガスも課題となっていました。
※参考:水素基本戦略 |経済産業省
水素活用の課題
水素活用はメリットが多いものの、課題もあります。ここでは、水素活用の課題について解説します。
一次エネルギーではない
一次エネルギーとは、自然界から直接得られるエネルギーのことで、加工する必要がありません。例えば石油などの化石燃料、太陽光や風力などの再生可能エネルギー、原子力などが挙げられます。一方、水素をエネルギーとして活用するためには、一次エネルギーを使って加工や転換をする製造過程が必要になります。
※参考:一次エネルギーとは? 二次エネルギー、最終消費エネルギーとの関係性も解説|独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構
輸送・供給のコスト
輸送・供給のコストがかかりやすい点も課題の1つです。化石燃料と比較すると、エネルギー密度が小さい水素を輸送・供給するには工夫が必要だからです。気体のまま輸送する場合は、タンクローリーに入れられる量や輸送できる距離が限られます。また、液化して輸送しようとすると、マイナス253℃まで冷却しなければなりません。
パイプラインや船による輸送にも課題があります。現在、水素の輸送・供給コストの削減に向けた取り組みが行われています。また、水素は自然発火の危険は低いものの、爆発の危険が指摘されています。海外では人為的なミスなどが原因の爆発事故も発生しており、水素を扱うには高度な技術が必要です。
製造方法によってはCO2が生じる
水素の製造方法は、現在研究が進められているものも含めて多岐にわたりますが、製造方法によってはCO2が生じてしまいます。CO2削減のために水素を活用するために、CO2が発生してしまっては本末転倒です。水素は製造過程や環境負荷の観点から、グレー水素・ブルー水素・グリーン水素・イエロー水素の4つに分類されています。
グレー水素
グレー水素は石炭や天然ガスを原料とする水素で、化石燃料改質とも呼ばれています。現在世界で製造されている水素のほとんどがグレー水素です。しかし、製造過程でCO2が発生することから、将来的に減らしていく方向で考えられています。
※参考:目前に迫る水素社会の実現に向けて~「水素社会推進法」が成立 (前編)サプライチェーンの現状は?|経済産業省
ブルー水素
ブルー水素は、グレー水素の製造で発生するCO2を防止する製造方法です。特殊な技術によりCO2が排出されない仕組みですが、現時点では開発途中であり、商用利用できるようになるにはまだまだ時間がかかると考えられています。
※参考:目前に迫る水素社会の実現に向けて~「水素社会推進法」が成立 (前編)サプライチェーンの現状は?|経済産業省
グリーン水素
グリーン水素は再生可能エネルギーを利用して、水を電気分解する製造方法です。化石燃料を消費する必要がなく、CO2を放出することもないため特に注目されています。製造過程で再生エネルギーが必要になる点が課題となっており、普及するまでには時間がかかる可能性があります。
※参考:目前に迫る水素社会の実現に向けて~「水素社会推進法」が成立 (前編)サプライチェーンの現状は?|経済産業省
※参考:再生可能エネルギーの特徴|経済産業省
イエロー水素
イエロー水素は、原子力発電を活用して水を電気分解する方法です。既存の施設を利用できる、CO2は排出しないなどのメリットがある反面、放射性廃棄物が発生してしまう点は課題です。
※参考:2030年温室効果ガス排出量26%削減への道 #22|一般社団法人日本バルブ工業会
水素による脱炭素化に向けた日本の取り組み
日本では、水素による脱炭素化に向けて、どのような取り組みを行っているのでしょうか。
2020年以降の取り組み
2020年からは水素エネルギーの普及推進に取り組んできました。家庭用燃料電池(エネファーム)や燃料電池自動車(FCV)、水素ステーションなど、燃料電池の実装に力が入れられています。一方でコスト面が課題となっており、燃料電池を普及させるためにコストの低減を目標としています。
※参考:水素・燃料電池戦略ロードマップ~水素社会実現に向けた産学官のアクションプラン~(全体)|経済産業省
2020年代半ばから30年代までの取り組み
2020年代半ばまでは、「水素発電の本格導入・大規模な水素供給システム確立」、2030年頃までは、「海外からの供給による水素サプライチェーンの確立」という目標が設定されています。目標達成のために、褐炭ガス化炉の大型化や高効率化、 液化水素タンクの断熱性向上や大型化などに取り組んでいます。
※参考:水素・燃料電池戦略ロードマップ~水素社会実現に向けた産学官のアクションプラン~(全体)|経済産業省
2040年頃に予定される取り組み
2040年代の目標は、「CO2を排出しない水素供給システムの確立」です。環境負荷が低い水素製造技術を確立し、安価で安定した水素エネルギーの普及を目指しています。この目標を達成するためには、環境負荷が低い水素技術の研究を進める必要があります。
※参考:水素・燃料電池戦略ロードマップ~水素社会実現に向けた産学官のアクションプラン~(全体)|経済産業省
水素活用で脱炭素化に取り組む企業事例
国内では、すでに水素活用による脱炭素化に取り組んでいる企業が少なくありません。ここでは、企業事例を3つ紹介します。
岩谷産業株式会社の事例
岩谷産業株式会社は、国内で唯一の液化水素メーカーです。1941年から水素製造・サプライチェーン構築・開発を進めてきました。国内3か所に液化水素製造プラントを保有しており、液体水素市場では100%、圧縮水素とあわせると約70%のトップシェアを誇ります(2022年5月時点)。
高度な技術で気化ロスを抑えるだけでなく、高純度の水素を製造することで需要を伸ばしています。
トヨタ自動車株式会社の事例
トヨタ自動車株式会社では、政府が推進するカーボンニュートラルの実現に貢献すべく、水素を利用した燃料電池自動車を開発しています。2020年には福島県浪江町に世界最大級の水素製造拠点を構築し、水素エネルギーで走行する「MIRAI」も販売しました。
一般に販売されている水素自動車は、MIRAIの他に、韓国のヒョンデ(ヒュンダイ)が販売するNEXOがありますが、世界的にも珍しいといえます。
ENEOS株式会社の事例
ENEOS株式会社といえば石油元売りの大手として有名ですが、水素供給にも力を入れています。福島県から福岡県までの四大都市圏で、35の水素ステーションを展開している他(2024年7月1日時点)、CO2フリー水素サプライチェーンの構築にも取り組んでいます。
水素ステーションは、固定式・移動式、SS一体型・単独型、オンサイト型・オフサイト型など、多様な形態で展開していることも特徴です。
まとめ
地球温暖化問題への対策として、世界中で脱炭素が叫ばれています。日本でも脱炭素化社会(カーボンニュートラル)の実現を目標としており、目標を達成する方法の1つとして注目されているのが、水素エネルギーの活用です。
水素エネルギーが普及すればCO2排出を防止するだけでなく、エネルギー自給率や日本の競争力を高められる可能性があります。脱炭素を目指す取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。
「ゼロ炭素ポート」は、自社のみならず他社ソリューションとも協力し、お客さまのニーズにお応えするWebサイトです。CO2排出量の簡易計算ツールや、脱炭素経営に関するさまざまなコラムを掲載しています。脱炭素に関するお問い合わせ、ご相談も受け付けています。お気軽にお問い合わせください。
執筆者プロフィール
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA