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2050年脱炭素までの見通し
目次
執筆者プロフィール
高牟礼昇
Noboru Takamure
オーストラリア最古の大学であるシドニー大学のSchool of Physicsで研究員として勤務し、ガラスや次世代太陽電池と言われているペロブスカイト太陽電池、水素の電気分解などカーボンニュートラルに関係する分野の研究を行う。現在はシドニー大学の客員研究員として研究を行う傍ら、山梨県で研究開発サービスを行う株式会社マッケンジー研究所を設立し研究開発サービス及び脱炭素コンサルティングなどを行っている。
気候変動対策への世界的な取り組みはパリ協定から始まりました。パリ協定では国連気候変動枠組条約に加盟する 196カ国すべての同意のもと、気候変動対策が行われることになりました。日本ではパリ協定を受けて脱炭素の流れが加速し、2020年にはカーボンニュートラル宣言が行われました。これを受け、国内での企業の脱炭素の取り組みも加速しており、SBT認定やTCFD開示への参加企業は年々増加しています。本記事では、現在の世界の脱炭素の流れと今後の見通しについて解説します。
1. パリ協定の1.5℃目標
2015年にフランスのパリで開催された国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において、パリ協定が採択されました。このパリ協定では地球温暖化を2℃以内、そしてできる限り1.5℃以内に抑えるという具体的な数値目標が定められました。そして、現在Science Based Targets(SBT)国際イニシアチブにより、この目標をもとにした温室効果ガス(GHG)の具体的な排出削減目標が示されています。
1.5℃目標〜2℃目標とは?
以下のグラフは世界の化石燃料の燃焼によるCO2の年間排出量と大気中のCO2濃度の推移を示したグラフです。グラフの通り、CO2の排出量は増加傾向にあり、大気中のCO2濃度も年々増加しています。IPCCの報告書では、温室効果ガスであるCO2の増加に加えて、様々な観測やシミュレーションの結果から地球温暖化が人為的な温室効果ガスの排出に起因しており、人間の活動が地球温暖化を引き起こしていることは「疑う余地がない」と結論付けられています。
全世界の年間CO2排出量及び大気中のCO2濃度の推移。
CO2濃度は岩手県綾里(りょうり)における測定値。
出典:IEA (2023), Greenhouse Gas Emissions from Energy Data Explorer, IEA, Paris(https://www.iea.org/data-and-statistics/data-tools/greenhouse-gas-emissions-from-energy-data-explorer)、
気象庁ホームページ|大気中二酸化炭素濃度の観測結果(https://ds.data.jma.go.jp/ghg/kanshi/obs/co2_yearave.html)を編集、加工し作成。
(2023年12月14日時点)
また地球の平均気温は2017年までに約1℃上昇しているとされ、このまま温室効果ガスの排出が続けば2030年から2052年の間に1.5℃以上に上昇するとされています。一方で、年間どれだけの温室効果ガスを削減し続けると温度上昇が1.5℃以内にとどまるか試算されており、この削減割合はSBTの削減目標として公表されています。その数値は以下の表に示す通りとなっており、2℃水準では年間1.23%〜2.5%、1.5℃水準では年間4.2%以上も温室効果ガスの排出量を削減しなければならないことが明らかになっています。
| SBT | GHG排出量削減割合 |
| 2℃水準 | 1.23%-2.5% / 年 |
| Well below2℃水準 | 2.5%-4.2% / 年 |
| 1.5℃水準 | 4.2% / 年以上 |
出典:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットホーム|排出削減目標設定|SBT全般(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/targets.html)ページ内「(1)SBT 概要資料」を参照。
(2023年12月14日時点)
5つのシナリオ
IPCCで実施しているシミュレーションでは、脱炭素を行わないシナリオから地球の平均気温の上昇を1850~1900年基準で1.5℃以内に抑えるシナリオまで、脱炭素の程度ごとに5つのシナリオを想定しています。
特に、第6次評価報告書(AR6)の第1作業部会(WG1)報告書によると、気温上昇を1.5℃に抑える最善シナリオである「SSP1-1.9」では2050年前後までにカーボンニュートラルを達成する必要があるとされています。
また、気候変動対策を何も行わない最悪のシナリオである「SSP5-8.5」では、地球の平均気温は2081年から2100 年の間に3.3〜5.7℃上昇するとされています。
IPCC AR6の5つのシナリオごとの地球の平均温度上昇シミュレーション結果
エラーバーは90%以上の確率で発生する温度上昇の範囲、
棒グラフの示す数値はエラーバーで表記した温度上昇の範囲の中で最も発生確率の高い数値を示す
出典:気象庁ホームページ|IPCC第6次評価報告書(AR6)(https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/ipcc/ar6/index.html)ページ内IPCC AR6 WG1報告書 政策決定者向け要約(SPM)暫定訳(2022年12月22日版)をもとに編集し、作成。
(2023年12月14日時点)
このように、シミュレーションの結果を鑑みると温室効果ガスの削減は差し迫った課題であることがわかります。日本政府は2030年までに2013年度比で-26%を実現するというパリ協定にて設定していた削減目標から、AR6の報告を受けてその削減目標を-46%に変更し、さらに-50%の努力目標を設定しています。
2. 日本のカーボンニュートラル宣言
現在、パリ協定で批准された地球の気温上昇を2.0℃以内、できる限り1.5℃以内に抑え込むという目標が世界的なコンセンサスとなりつつあります。この目安は2050年前後にカーボンニュートラルを達成することであり、この目標を受けて日本では2020年10月に菅元首相によって2050年の「カーボンニュートラル」が宣言され、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることが日本政府の目標となっています。
この宣言以降、様々な政策が打ち出されており、日本国内での脱炭素の流れが加速しています。
宣言の内容
カーボンニュートラルは、日本国内の温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きして実質的な排出量をゼロにすることを目指しています。温室効果ガスは7種類が指定されていますが、その中でCO2の排出量が圧倒的に多いため、カーボンニュートラルは主としてCO2の排出削減が行われます。
2050年に温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることはIPCCのレポートに即した削減戦略であり、日本政府として気候変動問題に取り組む強い姿勢が表れています。
宣言における削減戦略とは?
CO2をはじめとして、温室効果ガスの排出の多くは化石燃料の燃焼に起因しており、特に発電の際に化石燃料を燃やす火力発電により多くのCO2が排出されています。このため、火力発電から発電の際にCO2を排出しない太陽光や風力といった再生可能エネルギーを利用した電源へのシフトが起こっており、化石燃料の使用量の削減が行われています。
また、2012年に太陽光発電の余剰電力を電力会社が固定価格で買い取る固定価格買取制度(FIT)が開始して以降、太陽光発電システムの普及が加速しました。これにより、日本の電源全体に占める太陽光発電の割合は以下のグラフの通り年々増加傾向しており、2022年には全電源の9.2%に達しています。
出典:経産省資源エネルギー庁ホームページ|集計結果又は推計結果(総合エネルギー統計)(https://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/results.html#headline1)内、時系列表(参考表)を編集し、作成。
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他にも環境省主導で企業にSBT認定を受けるように促すと共に、温室効果ガスの排出削減の努力を促しています。経済産業省からは様々な技術開発へのサポートも盛んに行われており、補助金を通してグリーンスチールや水素燃料など、低炭素の新しい技術開発の支援が行われています。
経産省の削減見通し
現在、経済産業省ではカーボンニュートラルまでのロードマップを策定しており、2030年と2050年にそれぞれマイルストーンを置いています。
最初のマイルストーンが置かれている2030年は温室効果ガスの排出を2013年比の46%削減することを、そして次のマイルストーンである2050年はカーボンニュートラルを達成することを目標としています。この際、CO2排出量と共にCO2吸収量も計算に入れられており、排出量と吸収量を差し引きしてトータルの排出量を算出します。
発電による排出量の削減は、再エネ由来の電力を増やすことで行われると共に、燃焼してもCO2を排出しない水素やアンモニアを燃料として使用する割合を増やしていくことを想定しています。
非電力によるCO2排出ですが、2030年までに省エネや水素化社会による削減が行われ、2030年以降は脱炭素化された電力や水素やアンモニアを燃料として使用することで化石燃料の使用を減らすと共に、植林等で大気中のCO2を吸収することやCO2を捕集する「CCUS技術」によって排出量を下げていく見通しです。
2050年のカーボンニュートラルへのロードマップの図
出典:経産省ホームページ|2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/ggs/index.html)ページ内「「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」(広報資料)」、
環境省ホームページ|報道発表資料|2013年度(平成25年度)の温室効果ガス排出量(確報値)について(お知らせ)(https://www.env.go.jp/press/100862.html)ページ内「2013年度(平成25年度)の温室効果ガス排出量(確報値)<概要>」を編集し、作成。
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3. 現在のCO2排出量
ここまでは世界、そして日本の温室効果ガス削減の見通しを説明してきました。ここからは直近の世界の国々および日本のCO2排出量データを紹介すると共に、日本国内の産業別・部門別のCO2排出量についても解説します。どの業種や部門からの排出が多いかを確認することで、どのCO2排出を重点的に削減していけばいいか理解することができます。
世界のCO2排出量
まずは現在の世界のCO2排出量を確認してみましょう。以下に2020年の国別のエネルギー起源CO21排出量のグラフを示します。圧倒的に排出量が多い国は中国で、世界の31.8%のCO2を排出しています。次に多い国がアメリカで13.4%となっており、この2国で世界全体の約45%のCO2を排出しています。
第3位のインドを加えると世界の半分以上がこの3か国からCO2が排出されており、世界を挙げての気候変動対策にはこの3か国の協力が不可欠であると言えます。日本の排出割合は3.1%で世界第5位のCO2排出量となっています。
上位10位の国別排出割合のグラフ
| 順位 | 国名 | 排出量(億トン) | 割合 |
| 1 | 中国 | 100.8 | 31.8% |
| 2 | アメリカ | 42.6 | 13.4% |
| 3 | インド | 20.8 | 6.6% |
| 4 | ロシア | 15.5 | 4.9% |
| 5 | 日本 | 9.9 | 3.1% |
| 6 | ドイツ | 5.9 | 1.9% |
| 7 | イラン | 5 | 1.6% |
| 8 | 韓国 | 5.5 | 1.7% |
| 9 | インドネシア | 5.3 | 1.7% |
| 10 | カナダ | 5.1 | 1.6% |
| その他 | 100.6 | 31.7% | |
上位10位の国と排出量
出典:環境省ホームページ|地球環境・国際環境協力|世界のエネルギー起源CO2排出量(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/cop/shiryo.html#05)ページ内「世界のエネルギー起源CO2排出量(2020年)」を参照。
(2023年12月14日時点)
中国やインドのCO2排出量が多い理由としては人口が多いことが想定されます。実際、一人当たりのCO2排出量で比較すれば、以下のグラフの通り中国は日本よりもCO2排出量が少ないことが判明しています。一方のアメリカは3億人を超えており、一人当たりのCO2排出量も多いため、全体のCO2排出量も多くなっています。
出典:環境省ホームページ|地球環境・国際環境協力|世界のエネルギー起源CO2排出量(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/cop/shiryo.html#05)ページ内「世界のエネルギー起源CO2排出量(2020年)」を参照。
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日本のCO2排出量
続いて日本のCO2排出量を詳細に見ていきましょう。以下の図に近年の日本のCO2換算※の温室効果ガス排出量の推移を示します。排出のピークは2013年であり14億800万トンでした。この2013年はカーボンニュートラル宣言の基準年とされています。2013年のピーク以降でCO2排出量は年々減少しており、2021年には11億7000万トンと2013年比で16.9%減少しています。
上記の減少率16.9%を年平均に換算した場合、年間の削減率は2.1%となっており、このまま順調に削減できると、2030年には2013年比で36.0%、重さにして5億690万トンの削減が予想されます。削減目標は2030年に2013年比で46%ですので、その目標に到達するにはもう少し努力が必要と言えます。
出典:環境省ホームページ|報道発表資料|2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について(https://www.env.go.jp/press/press_01477.html)ページ内「2021年度(令和3年度)の温室効果ガス排出・吸収量(確報値)について」を参照。
(2023年12月14日時点)
※ 温室効果ガスには地球温暖化係数と言い、温室効果をCO2と比較した値があります。例えば、温暖化係数が2の場合はCO2の2倍の温室効果を持っています。メタンの場合、AR5では地球温暖化係数は28とされています。これは同じ重さのCO2と比較してメタンは28倍の温室効果があると言うことになります。CO2以外の温室効果ガスをCO2排出量に換算する場合は、それぞれの温室効果ガスの排出量に温室効果ガス固有の温暖化係数を掛けて算出します。これを「CO2換算排出量」と呼びます。
国内産業別のCO2排出量割合
最後に国内産業別・部門別のCO2排出量の割合を紹介します。以下に2021年の部門別のエネルギー起源CO2排出割合を示します。最もCO2排出量の多い部門はエネルギー部門で全体の41.8%を占めています。次に製造・建設部門、運輸部門と続き、これらの3部門で全体の82.1%を占めており、これらの部門からのCO2排出削減が目標達成に必要不可欠です。
出典:環境省ホームページ|2023年提出|UNFCCCへの報告及び審査_温室効果ガスインベントリ(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/unfccc/2023unfccc.html)を参照。
(2023年12月14日時点)
以下は製造・建設部門と運輸部門のエネルギー起源CO2の排出割合を業種ごとに分けたグラフです。圧倒的に多いのが道路輸送と鉄鋼業でそれぞれ37.5%、29.2%でした。道路輸送ではガソリンや灯油、軽油などの燃料の燃焼による排出が主であり、鉄鋼業は鉄鉱石を加熱する際に大量の化石燃料が使用されています。
次にCO2排出量が多い業種は化学工業です。例えばプラスチックは原油を精製した際に得られるナフサが用いられています。このナフサを生成する過程で出るメタンを燃料として燃焼させることでCO2が排出されます。
このデータから、製造・建設部門と運輸部門においては鉄鋼の生産の際のCO2排出を抑え、輸送ではガソリンや灯油から電気や水素で走る車両への置き換えが必要になると考えられます。
出典:環境省ホームページ|2023年提出|UNFCCCへの報告及び審査_温室効果ガスインベントリ(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/ghg-mrv/unfccc/2023unfccc.html)を参照。
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4. TCFD開示、SBT認定を進める企業
現在、脱炭素を目的とした様々な国際イニシアチブがあります。特に注目されているのはTCFDとSBTです。これらのイニシアチブに国内企業の多くがすでに参加しており、その数は年々増加傾向にあります。このような取り組みに参加することは、気候変動対策を経営に取り入れていることを企業の内外にアピールできるため、参加のモチベーションになっています。ここでは、これらの国際イニシアチブについて解説します。
TCFD、SBTとは
TCFDはTask Force on Climate-related Financial Disclosuresの略で「気候関連財務情報開示タスクフォース」と訳されています。TCFDは企業に気候関連リスクや機会の開示を勧めており、TCFDの提言内容を支持する企業はTCFDへの賛同企業となります。一方で、2022年に東証のガバナンスコードが改訂され、プライム市場上場企業に気候変動によるリスク情報を開示することが実質的に義務付けられており、今後も企業の気候変動リスク等の情報開示が進んでいくと見られています。
一方のSBTは、パリ協定に基づいた温室効果ガスの排出削減目標です。定めた削減目標をSBTイニシアチブへ提出し、認定を受けることでリストに記載されサイト上で公表されます。削減目標を達成できなくても罰則はありませんが、その場合企業の評価が下がる恐れがあります。
世界・日本のTCFD開示・SBT認定数
ここからはTCFD開示企業とSBTの認定数を見ていきましょう。以下に2023年11月現在の国別のTCFD開示数を示します。TCFDに関しては日本の開示件数が圧倒的に多く、2位のイギリスを3倍近く上回り、世界1位の開示件数を誇っています。3位にアメリカ、4位に韓国がランクインしています。
出典:TCFD Supporters(https://www.fsb-tcfd.org/supporters/)
(2023年12月14日時点)
続いてはSBTについてです。以下のグラフは2023年11月現在の国別のSBT認定申請数を示していますが、申請数が最も多い国はイギリスで1000社を超えています。2位がアメリカで831社、3位が日本で785社が申請しています。
出典:SBT COMPANIES TAKING ACTION(https://sciencebasedtargets.org/companies-taking-action)
(2023年12月14日時点)
国内のSBT認定の申請は以下のグラフの通り年々増加傾向にあります。特に中小企業の申請数が多いことも日本の特徴です。
| 年度 | 大企業 | 金融機関 | 中小企業 |
| 2016 | 0 | 1 | 0 |
| 2017 | 3 | 0 | 0 |
| 2018 | 8 | 2 | 0 |
| 2019 | 13 | 0 | 0 |
| 2020 | 15 | 0 | 4 |
| 2021 | 45 | 0 | 37 |
| 2022 | 64 | 0 | 159 |
| 2023 | 103 | 0 | 331 |
| 合計 | 251 | 3 | 531 |
TCFD開示〜SBT認定を進める上場企業
ここではTCFDへの賛同を表明し、SBTの認定を受けた様々な業種の大手企業のSBT認定年と認定年のCO2排出量を表にまとめて紹介します。
サプライチェーン排出には業種ごとに傾向があります。例えば製造業であればScope 3のカテゴリ1「購入した製品・サービス」からの排出割合が高くなる場合が多く、排出全体の50%前後がこのカテゴリ1からの排出となるケースが多いのが特徴です。小売業になると大量の商品を仕入れるため、カテゴリ1の割合がさらに高くなり、コンビニエンスストア大手の株式会社ファミリーマートでは全体の約75%がカテゴリ1からの排出となっています。
一方で、情報・通信業である株式会社NTTデータはカテゴリ1の排出は全体の約25%と少なく、カテゴリ11の「販売した製品の使用」による排出割合が約60%と高くなっています。加えて、Scope 1の直接排出が全体の0.3%と非常に少ないことも特徴です。これはNTTデータが情報・通信業のため、自社で化石燃料を燃焼させることがほとんどないことを反映しています。
このように、サプライチェーン排出には業種ごとの特徴が見られます。
| 社名 | 業種 | SBT認定年度 | 認定年度の排出量(万トン) |
| 大日本印刷株式会社 | その他製造業 | 2018年 | 592 |
| 株式会社NTTデータ | 情報・通信業 | 2020年 | 282 |
| 株式会社ファミリーマート | 小売業 | 2020年 | 700 |
| YKK AP株式会社 | 製造業(金属製品) | 2021年 | 189 |
| 高砂香料工業株式会社 | 製造業(化学) | 2021年 | 79※ |
| 日新電機株式会社 | 製造業(電気機器) | 2021年 | 141 |
| 花王株式会社 | 製造業(化学) | 2022年 | 1,121※ |
出典:SBT COMPANIES TAKING ACTION (https://sciencebasedtargets.org/companies-taking-action)、
環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム|取組事例(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/case_smpl.html#no00)ページ内「2018年度 大日本印刷株式会社」、「2020年度 株式会社NTTデータ」、「2020年度 株式会社ファミリーマート」、「2021年度 YKK AP株式会社」、「2021年度 高砂香料工業株式会社」、「2021年度 日新電機株式会社」、「2022年度 花王株式会社」を編集し、作成。
(2023年12月14日時点)
SBT認定を進める非上場企業
続いてSBT認定を受けた非上場企業を紹介します。非上場の中小企業のSBT認定申請は上場企業よりも簡単で、申請費用も安くなっています。このため申請しやすく、気候変動対策への意識の高い企業が多く申請し、認定を受けています。
諸外国は大企業の申請が多いですが、日本は中小企業、特に従業員数が100人以下の小規模な企業の申請が多く、気候変動対策に貢献したい気持ちを持った経営者が多いことが伺えます。
| 社名 | 業種 | 従業員数(人) | 資本金(万円) | SBT認定年度 |
| 加山興業株式会社 | サービス業 | 120 | 5,000 | 2021年 |
| 株式会社スザキ工業所 | 自動車部品 | 61 | 4,975 | 2022年 |
| 栄四郎瓦株式会社 | 建築資材 | 185 | 10,000 | 2022年 |
| アサヒ繊維工業株式会社 | 化学 | 45 | 3,500 | 2022年 |
| 株式会社野田クレーン | 建設土木 | 157 | 4,800 | 2022年 |
| 有限会社室中産業 | 電気機器および機械 | 32 | 3,000 | 2022年 |
| マルト株式会社 | 印刷・製菓 | 130 | 5,000 | 2022年 |
| 山一金属株式会社 | 金属リサイクル | 77 | 9,825 | 2022年 |
| 甘強酒造株式会社 | 酒造 | 28 | 1,000 | 2022年 |
| 北米産業株式会社 | 住宅建設 | 50 | 1,000 | 2022年 |
出典:SBT COMPANIES TAKING ACTION(https://sciencebasedtargets.org/companies-taking-action)、
環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム|取組事例(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/case_smpl.html)、
加山興業株式会社 会社案内(https://www.kayama-k.co.jp/about-us/profile)、
株式会社スザキ工業所 会社案内(https://suzaki.bz/74084/%e4%bc%9a%e7%a4%be%e6%a1%88%e5%86%85company/)、
栄四郎瓦株式会社 会社案内(https://www.eishiro.co.jp/about/index.html)、
アサヒ繊維工業株式会社 会社案内(https://www.asahi-fiber.co.jp/company_detail.html)、
株式会社野田クレーン 会社概要(http://www.noda-crane.co.jp/company/profile.html)、
有限会社室中産業 会社案内(https://www.muronaka.com/pages/2/)、
マルト株式会社 会社案内(https://marto.co.jp/company.html)、
山一金属株式会社 会社概要(https://yamaichi-metal.com/about/)、
甘強酒造株式会社 概要・沿革(https://www.kankyo-shuzo.co.jp/company/overview/)、
北米産業株式会社 会社概要(https://hokubei-sangyo.co.jp/company/)を編集し、作成。
(2023年12月14日時点)
5. まとめ
これまで見てきた通り、現在の世界の脱炭素の流れはパリ協定の2℃目標と、SBTイニシアチブの削減目標に従っていると言えます。SBTやTCFDへの参加が脱炭素への取り組みの第一歩と言え、参加企業数は年々増加しています。2050年のカーボンニュートラルへ向けて仕組みができつつあり、実行に移されています。これから脱炭素に取り組む事業者の皆さんも、2050年までの見通しを踏まえて脱炭素経営に臨みましょう。
執筆者:高牟礼昇