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カーボンニュートラルな合成燃料|製造方法や活用シーンについても解説
目次
本記事では、カーボンニュートラル燃料についてや、その1種である合成燃料のメリット・デメリットを解説します。合成燃料の活用シーンについても解説するため、ぜひ参考にしてください。
カーボンニュートラル燃料に関する基礎知識
まずは、カーボンニュートラルについての基礎知識を解説します。
カーボンニュートラル燃料とは
カーボンニュートラル燃料は、燃料の生成により消費される二酸化炭素の量と、燃料使用時に排出される二酸化炭素の量が釣り合う、もしくは生成時の消費量が燃焼時の排出量を上回るように設計されている燃料のことです。二酸化炭素の排出量と吸収量を均衡させて、空気中の二酸化炭素量を増やさずに利用できる点が大きな特徴です。
カーボンニュートラル燃料が注目されている背景
現在、世界各国で地球温暖化が問題視されており、さまざまな対策が実施されています。地球温暖化を食い止めるためには、二酸化炭素の排出量の削減が必要です。カーボンニュートラル燃料は、使用しても二酸化炭素の排出量にあまり影響を与えないという点で注目を集めています。
カーボンニュートラル燃料の種類
カーボンニュートラル燃料には、いくつかの種類があります。ここでは、4つの燃料について、それぞれの特徴を詳しく解説します。
合成燃料(e-fuel)
合成燃料とは、二酸化炭素と水素から製造される燃料のことです。合成燃料のみを指して、カーボンニュートラル燃料と呼ぶこともあります。e-fuelは、合成燃料の1種ですが、他の合成燃料とは原料の製造方法が異なります。e-fuelは、空気中の二酸化炭素を取り込み、分解する技術である「DAC技術」が採用されている点が大きな特徴といえるでしょう。
水素
水素を燃焼させると、酸素と結合して水が生成されます。そのため、二酸化炭素を排出しないクリーンな燃料といえるでしょう。また、水素は空気中だけでなく、地球上のあらゆる場所に存在します。例えば、化石燃料を燃焼させたり、森林資源や廃材などのバイオマスを活用したりすると生成できます。
バイオ燃料
バイオ燃料は、動植物を原料に製造される燃料です。ただし、化石燃料はバイオ燃料に該当しません。
バイオ燃料には、次の4種類があります。
・バイオエタノール:サトウキビやトウモロコシ、稲わら、不要な木材を材料としており、ガソリンに代わる燃料として活用できる
・バイオディーゼル:バイオマスを原材料とするディーゼルエンジン用の燃料
・バイオジェット燃料:動物や植物由来の油を材料にしている航空機のジェット燃料
・バイオガス:主に廃棄物が原材料の気体燃料
SAF
SAF(Sustainable Aviation Fuel)は、持続可能な航空燃料という意味を持つ燃料です。SAFは、バイオマスを原料として製造され、使用時に二酸化炭素を排出します。しかし、原料となる植物が光合成時に二酸化炭素を吸収するため、空気中の二酸化炭素量に影響を及ぼさないとされています。
合成燃料はカーボンニュートラルを実現する燃料として特に期待されている
政府は、2050年までにカーボンニュートラルを実現するという目標を掲げています。そして、この目標達成のために策定されたグリーン成長戦略で、合成燃料の開発が期待されています。
2050年のカーボンニュートラルの実現には再生可能エネルギーの活用が重要とされる一方で、技術的な課題が多くあるのも現状です。合成燃料は、カーボンニュートラルの実現においてネックとなっている技術的な課題の解決にも役立つとされ、注目が集まっています。
合成燃料の製造方法
合成燃料は、一般的に次の流れで製造されます。まずは、原料である二酸化炭素と水素を用意します。製造した原料の反応によって生成されるのが、合成ガスです。そして、合成ガスをFT(フィッシャー・トロプシュ)合成して、合成粗油を製造します。この流れでできあがった合成粗油を加工して、ガソリンや灯油にします。
合成燃料の原料の製造方法
合成燃料の生成には、二酸化炭素と水素を使用しますが、これらは次の方法で製造されます。
水素
水素の製造では、まず原油に含まれている炭化水素を水蒸気と反応させます。水蒸気との反応によって、一酸化炭素や二酸化炭素に加えて水素が生まれるため、そこから水素だけを取り出します。また、水の電気分解によって水素を取り出すことも可能です。
二酸化炭素
二酸化炭素の製造には、いくつかの方法があります。
・バイオマスを燃やした際に発生するガスを回収する
・火力発電所や工場から放出される排気ガスを回収する
・DAC法で回収する など
なお、DAC法とは、固体や液体などの触媒を用いて、空気中のCO2を直接分離して回収する方法です。
合成燃料のメリット
合成燃料には多くのメリットがあります。ここでは、合成燃料のメリットについて詳しく解説します。
エネルギー密度が高い
エネルギー密度が低い燃料を使う場合、長距離を移動するには大量に燃料を積む必要があります。そのため、密度の低いエネルギーは、長距離移動を伴う乗り物への活用が難しいという課題がありました。合成燃料は、エネルギー密度が高く、少量でも長距離の移動が可能です。よって、長距離を移動する乗り物にも利用できます。
既存の設備に使用できる
一般的に、新しい燃料を実用化するためには、その燃料に対応した機関による開発が必要です。また、ガソリンスタンドや充電スタンドのように、燃料を供給するためのインフラも整備しなければなりません。合成燃料は、既存の内燃機関や設備を利用できるため、低コストでの導入が可能です。
保存や輸送がしやすい
合成燃料は長期保存が可能なため、備蓄にも適しています。また、既存の設備が使用できることから輸送がしやすいのも特徴です。そのため、停電を伴う災害発生時における、被災地への燃料供給にも適しています。
枯渇や価格高騰のリスクが少ない
合成燃料は、化石燃料の産出国以外でも製造可能です。合成燃料の実用化が進めば、自国のエネルギー供給を化石燃料の産出国に依存することによる、枯渇や価格高騰などのリスクを回避できるでしょう。
環境への負荷が少ない
合成燃料は、化石燃料より環境への負荷が少ないとされています。燃焼による硫黄や重金属といった有害物質の排出が少なく、燃料の産出のために森林伐採や石油採掘をする必要もありません。環境破壊も防げる、地球に優しい燃料といえます。
合成燃料のデメリット
合成燃料は、私たちの生活や環境にとってメリットの大きい燃料として期待されています。その一方で、いくつかのデメリットもあります。
製造にコストがかかる
現在の技術では、合成燃料は化石燃料と比較して製造コストがかかります。国内で、国内の水素を使用して製造する場合、合成燃料1リットル当たりにかかる製造コストは、以下のとおりです。
| 水素 | 634円 |
| 二酸化炭素 | 32円 |
| 製造コスト | 33円 |
| 合計 | 700円 |
製造コストの削減ができなければ、合成燃料を普及させるのは難しいでしょう。
製造効率が悪い
合成燃料は、製造する途中で一部のエネルギーを無駄にしており、現状では製造効率が悪いとされています。製造効率の改善には新たな技術開発を要するため、普及するまでには多くの時間が必要だと考えられるでしょう。
合成燃料の活用シーン
合成燃料は、製造コストや効率の問題から、普及率の伸び悩みが続いています。しかし、その活用シーンは多岐にわたっています。
自動車
政府は、電動車の導入を推進することにより、脱炭素化を目指しています。しかし、電動車の普及には課題が多いのが現状です。特に、大型車両や長距離トラックでは、電動化が難しいとされています。電動化が難しい車両に合成燃料を活用することで、脱炭素化が実現していくでしょう。
航空機
航空機も、ジェット燃料の代替燃料として合成燃料を採用することにより、航空機の利用による二酸化炭素排出量の削減が期待できます。また、合成燃料は大量生産が可能なため、持続可能な供給を実現しやすいというメリットもあるでしょう。
合成燃料と同様に、二酸化炭素排出量の削減に寄与する燃料には、バイオジェット燃料もあります。しかし、バイオジェット燃料は原料不足が懸念されています。
船舶
国際海運・内航海運問わず、長距離を航行する貨物船では燃料を多く使用します。そのため、合成燃料を採用することで、二酸化炭素の排出量を削減できるでしょう。加えて、二酸化炭素排出によって引き起こされる、海洋汚染の抑制にもつながります。
産業機械
合成燃料は、幅広い分野の産業機械にも活用できます。特に、エネルギー消費の激しい分野の産業機械に導入できるようになれば、二酸化炭素の排出量を大幅に削減できるでしょう。
冷暖房
灯油や都市ガスを使う暖房器具は、今後も寒冷地域で一定の需要があるでしょう。そうした暖房器具にも、合成燃料が活用できます。また、ボイラーの燃料としても使用可能です。
まとめ
合成燃料は、自動車だけでなく、航空機や船舶などさまざまな分野での使用が期待できます。合成燃料が普及するようになれば、二酸化炭素の排出量を削減し、地球温暖化を食い止めるために重要な役割を果たすでしょう。
しかし、現在の技術では、製造コストをはじめとする課題を解決できていないため、早急な普及は難しいと考えられています。そのため、合成燃料の活用以外の方法も用いてCO2削減に取り組む必要があるでしょう。
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執筆者プロフィール
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA