なぜ脱炭素に取り組む?理由や取り組まないデメリット・企業の事例を紹介

目次

近年、脱炭素は世界規模で取り組むべき重要視されており、脱炭素という言葉を耳にする機会が増えています。しかし、言葉の意味は知っていても、なぜ脱炭素に取り組む必要があるのか、課題の本質を理解していない人も多いのではないでしょうか。 

本記事では、脱炭素の目的や、企業が取り組むべき理由などを解説します。ぜひ、参考にしてください。

脱炭素の定義 

脱炭素は、二酸化炭素に代表される温室効果ガスの排出量を、実質ゼロにする取り組みです。「実質」とは、完全な排出停止を意味するわけではありません。「排出される温室効果ガスの量」に対して、「森林などによる吸収量やテクノロジーの活用による回収量」を均衡させることが、脱炭素の本質です。 

日本における温室効果ガス排出・吸収量

環境省は、2022年度の日本における温室効果ガス排出量が、約11億3,500万トンであったと報告しました。吸収量を差し引いた実質排出量については、約10億8,500万トンとなります。基準年である2013年度の実質排出量約14億700万トンと比較すると、9年間で約3億2,210万トンもの削減を達成したといえます。 

※参考:2022年度の我が国の温室効果ガス排出・吸収量について|環境省 

なぜ脱炭素が必要? 

脱炭素が必要な理由は、以下の2つです。 

・気候変動の影響を抑制するため 
・化石燃料依存度を低下させるため 

気候変動の影響抑制が、脱炭素の主な目的です。詳しくは後述しますが、化石燃料依存度の低下は、脱炭素に向けて化石燃料から新しいエネルギーへと転換する過程で生じる、副次的な効果です。 

脱炭素に取り組まないデメリット

脱炭素に取り組まないデメリットとして、地球温暖化の進行と化石燃料の枯渇という2つの問題に触れつつ解説します。 

地球温暖化による悪影響が深刻化する 

脱炭素に取り組まなければ、温室効果ガスの排出が増え続け地球温暖化が深刻化します。地球温暖化がもたらす主な影響は、以下のとおりです。 

・気温上昇による干ばつの増加 
・海面水位の上昇 
・熱波による健康被害の拡大 
・異常気象や自然災害の頻発化 
・生態系の破壊と生物多様性の損失 
・食料生産への悪影響と供給不安 

上記の問題は、一度進行すると改善が困難です。暮らしと地球環境を守るため、早急に行動する必要があります。 

化石燃料が枯渇し生活やビジネスに悪影響が出る

地球温暖化で問題視されている温室効果ガスは、主に化石燃料を燃焼させる過程で発生してい
ます。化石燃料は限りある資源であり、使い続ければいずれ枯渇します。脱炭素を成功させる
には、温室効果ガスの排出量を抑制するだけではなく、将来の暮らしや企業活動を支える、新
たなエネルギー源を探す取り組みをしなければなりません。

脱炭素に取り組まなかった場合の気候変動予測

温室効果ガスを排出し続けると、将来、深刻な状況に陥るリスクがあります。脱炭素に取り組
まなかった場合の気候変動予測を解説します。

気温の上昇

21世紀末の日本の年平均気温は、20世紀末と比べて約1.4~4.5℃上昇すると予測されています。4.5℃という上昇幅は、暮らしや自然環境に重大な影響をもたらす変化です。 

※参考:将来の気候|気候変動適応情報プラットフォーム(A-PLAT) 

海面水温の上昇

21世紀末の日本近海の平均海面水温は、20世紀末と比べて約1.14~3.58℃上昇すると予測され
ています。海面水温の上昇により、冷水を好む魚が日本近海から減少する可能性や、台風の巨
大化などが懸念されています。

なぜ企業は脱炭素に取り組むのか

企業が脱炭素に取り組む理由について、事業拡大のチャンスと、取り組まないことによる経営リスクに触れつつ解説します。 

ビジネスチャンスのため

脱炭素をはじめとする気候変動対策は、今や世界的に注目される重要なビジネステーマです。参入すると、新たなビジネスチャンスやイノベーションがもたらされる可能性があります。さらに、環境に配慮した経営姿勢を示すと、企業のイメージが良化して競争力の強化につながります。

取り組まないリスクが大きいため

脱炭素への取り組みを怠ると、ESG投資を実践する投資家からの評価が低下する恐れがあります。環境意識が高まるなか、消費者や取引先からの信頼も損なわれかねません。さらに、今後強化が予想される二酸化炭素の排出規制への対応が遅れると、急激なコスト増加を招く恐れもあります。 

脱炭素化を阻む課題 

脱炭素化を阻む課題について、鉄工業や交通・物流における課題、再生可能エネルギーへの切り替え遅延に触れつつ解説します。 

鉄工業における課題 

脱炭素を阻む課題の1つが鉄工業です。鉄工業は、製造過程で膨大な量の二酸化炭素を排出する産業です。製鉄プロセスそのものが二酸化炭素を生み出すため、鉄工業の脱炭素化は容易ではありません。 

2019年度の統計によると、日本の産業部門から排出される二酸化炭素の約48%が鉄工業によるものでした。革新的な製造技術の開発と段階的な設備更新を組み合わせながら、長期的な視点で脱炭素への移行を進める必要があります。 

※参考:第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組|資源エネルギー庁 

交通・物流における課題

交通・物流も、脱炭素化が強く望まれる領域です。2022年度の統計では、国内で排出する二酸化炭素の約18.5%は運輸部門によるものです。運輸部門の脱炭素化に対応するためには、電気自動車への転換や、ガソリン車の販売規制などを推進する必要があります。 

※参考:運輸部門における二酸化炭素排出量|国土交通省 

再生可能エネルギーへの切り替え遅延

再生可能エネルギーを利用した発電への切り替えは、確かに一部では行われています。しかし、火力発電に匹敵する供給量の確保や、コストの安定化には時間を要すると見込まれます。 

1990年度から現在に至るまで、日本の化石燃料への依存度は80%台前半で推移しており、大きな変化は見られていません。再生可能エネルギーを活用するための体制を整えることが、脱炭素を実現するポイントといえます。 

※参考:令和4年度(2022年度)における エネルギー需給実績(確報)|資源エネルギー庁 

脱炭素化を推進する国や企業の取り組み 

脱炭素化は、国を挙げて取り組むべき課題です。脱炭素化を推進する国や企業の取り組みを解説します。 

クリーンエネルギーの推進 

エネルギーの脱炭素化を進めるには、さまざまなクリーンエネルギーを組み合わせて活用することが重要です。太陽光発電や水力発電といった再生可能エネルギーを利用した発電、原子力発電などの割合を増やし、それぞれの特性を生かしたエネルギーミックスを実現する必要があります。 

プラスチックや食品ロスの削減 

プラスチックや食品ロスの削減は、脱炭素に向けた重要な取り組みです。プラスチック製品は、製造から廃棄に至るまで大量の温室効果ガスを排出します。同様に、食品分野でも農作物の生産・加工や輸送、廃棄の各段階でも相当量の温室効果ガスが発生しています。 

新技術の開発・推進

脱炭素社会の実現には、新技術の開発・推進が不可欠です。たとえば、運輸部門では、電気自動車の性能向上と充電設備の拡充が急速に進められています。建築分野では高い省エネ性能を持つ住宅の普及や、太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーの導入などにより、ゼロカーボンシティへの取り組みが各地で始まっています。 

さらに、排出された二酸化炭素を回収し、資源として再利用するカーボンリサイクル技術も開発が進行中です。 

新制度や規制の導入 

脱炭素化を促進するため、さまざまな制度や規制の整備が進められています。代表的な例として、カーボンプライシングがあります。カーボンプライシングには、炭素税や国内排出量取引制度などが含まれ、二酸化炭素の排出者に対して経済的な負担を課し、削減を促す仕組みです。 

国際的な取り組みである、二国間クレジット制度も注目されています。二国間クレジット制度は、脱炭素関連の技術を途上国に提供し、実現した二酸化炭素の削減量を両国で分け合う制度です。二国間クレジット制度を活用すると、国内での直接的な削減だけでなく、国際協力を通じた柔軟な対応が可能です。 

脱炭素に取り組む企業事例 

新日本理化株式会社は、基準年である2013年度と比較して、2023年度の二酸化炭素排出量を約35%も削減することに成功しています。同社は、約1年を費やして全工場のユーティリティ系統図をそろえ、全体のエネルギー使用状況を「見える化」しました。さらに、各部署がそれぞれの業務で脱炭素に貢献できる取り組みを進めることで、企業全体で活動を定着させました。 

脱炭素関連の基礎知識

脱炭素について理解を深めるため、パリ協定や2050年目標などのキーワードを理解しておきましょう。脱炭素関連の基礎知識を解説します。 

パリ協定と2050年目標 

パリ協定は、2015年に世界各国が合意した気候変動対策の国際的枠組みです。パリ協定では「地球の平均気温の上昇を産業革命以前と比較して2℃よりも十分低く抑え、できれば1.5℃未満に抑制する」という具体的な目標が設定されました。 

なお、2050年目標は、パリ協定で掲げられた目標を達成するために、各国が2050年までの長期的な脱炭素化計画を策定したものです。 

※参考:2020年以降の枠組み:パリ協定|外務省 

脱炭素とSDGsの関係 

SDGsは、2015年の国連サミットで採択された、地球規模の課題解決に向けた国際目標です。SDGsの複数の目標と脱炭素は、密接に関連しています。 

たとえば「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」という目標7を実現する方法の1つが、再生可能エネルギーの普及です。また「産業と技術革新の基盤を作ろう」という目標9では、環境に配慮した技術革新の重要性が言及されています。 

脱炭素とカーボンバジェットの関係

カーボンバジェットは、直訳すると「炭素予算」となります。地球温暖化を一定水準に抑えるために許容される二酸化炭素の総排出量が、カーボンバジェットです。カーボンバジェットの考え方は、脱炭素に向けた目標や施策を立てるうえで重要な指標となっています。 

まとめ

なぜ脱炭素が必要かというと、主に気候変動の影響を抑制することと、化石燃料の枯渇に備えるためです。脱炭素は世界的な活動で、環境や暮らしを守るために国や企業が盛んに取り組みを進めています。 

ゼロ炭素ポートは、自社のサービスだけではなく他社のソリューションも含めて、お客さまの脱炭素への取り組みを総合的にサポートするサイトです。脱炭素の実現に向けて、ぜひゼロ炭素ポートをご活用ください。 

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA