製造業界の省エネ・CO2削減の取り組み事例を紹介!株式会社朝日ラバー

目次

2020年のカーボンニュートラル宣言を受け、温室効果ガス削減に向けた様々な法整備が進んでおり、日本国内の企業の経営・運営方針にも大きな影響が及んでいます。企業の脱炭素をめぐる動向が目まぐるしく変化する中、なかなか対策が進まず、悩まれている事業者の方々も少なくないはずです。

こうしたお悩みに少しでも寄り添えるよう、ゼロ炭素ポートでは、省エネおよびCO2排出量削減につながる取り組みを進めている事業者様の事例を紹介していきます。課題や成果・メリットなど、取り組みを実施する上での有益な情報や、脱炭素対策に向けて悩みを抱える事業者の皆様へのアドバイスもお聞きしています。

今回はゴム部品の製造・販売を手がけながら、資源エネルギー庁が行う事業者クラス分け評価制度において、Sクラスの評価を受けるなど、省エネおよびCO2排出量の削減につながる取り組みを積極的に推進する株式会社朝日ラバーにお話を伺いました。

1. 株式会社朝日ラバー会社情報

● 業種:製造業

● 事業内容:ゴム部品の製造、販売

● 資本金:516,870,000円(2024年3月31日現在)

● 従業員数:317名(2024年3月31日現在)

● 上場/未上場:東証スタンダード市場へ上場

2. 省エネおよびCO2削減につながる取り組みの概要

 

 

省エネの取り組み

当社では全社委員会の活動として環境・省エネ委員会を年11回開催し、年間活動計画の策定や各工場で実施した活動結果の報告などを行っています。2011年にエネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(以下、省エネ法)の「定期報告書」を初めて報告して以降、省エネ法の努力目標である「エネルギー消費原単位を中長期的にみて年平均1%以上低減させる」という目標を達成できない年が続いていました。

当社では2011年以前より、環境に対する委員会の活動として「環境改善委員会」を開催してまいりましたが、社内協議の結果、省エネ法の努力目標を達成していくためにも、より省エネに注力した活動が必要であるという結論に至り、2015年に「省エネ委員会」を、2016年に「環境・省エネ委員会」を発足しました。

そのため、本委員会では毎年、省エネ活動における使用電力量の削減目標を設けています。2023年度は削減目標として、前期比3%削減を掲げ、無事達成できました。

この目標を達成するため、当社にある4工場それぞれで省エネ分科会を実施しており、4工場合計で年44回開催しております。本分科会では分科会メンバーが作業現場を巡回し、作業担当者から省エネ活動に活かせるアイデアを聞き取り、現場の省エネ活動に役立てる活動も推進しています。

また照明等をこまめに消すといった日々の活動に加え、設備面でも省エネ項目を投資判断の指標に入れたり、古い設備からエネルギー効率のよい新しい設備への入れ替えや、照明を蛍光灯からLEDにするといった投資を行ったりもしています。

社内照明を蛍光灯からLEDに切り替え。

 

 

設備面での具体的な省エネ対策は、設備電源を中心とした不使用時の停止、工場エア用のコンプレッサー吐出圧見直し、エア使用設備運転停止時のエアバルブの閉止、設備の断熱化推進によるヒーター電力削減と周囲温度の上昇抑制によるエアコン電力低減、加湿設備や給排気設備のメンテナンスによる効率の維持など、多岐にわたります。

これらに加え、全社参加型の省エネ活動として「環境省エネ標語」の募集や、日々の業務の中で省エネに繋がる改善活動を募る企画なども行っています。2023年度の省エネ標語の最優秀賞は「ECO活動 やればやるほど いい笑顔」でした。

写真(日) 省エネ標語の掲示

社内での省エネのモチベーションを高めるために、「環境省エネ標語」の募集も実施。

 

 

 

CO2排出量の削減につながる取り組み

当社では2021年12月より、日本国内の全工場(4拠点)で使用する電力のうち外部から購入する全電力を再生可能エネルギー由来の電力(水力発電による属性のある非化石証書付電力)に切り替えました。これにより従来のCO2排出量に比べ、年間約3,000tのCO2排出量が削減されます。

また各工場では自家消費型の太陽光パネル導入も推進しています。現在は日本国内の全工場の屋根に太陽光パネルが設置され、工場稼働に必要な電力として使用しています。

3. 省エネおよびCO2削減につながる取り組み実施のきっかけ

 

省エネの取り組みのきっかけ

当時のCSRに対する意識の高まりが社会全体で広まっていたことを受け、2000年3月に「ISO14001※」を取得しました。この取得に向けて社内で調査を進めているうちに、他業種の企業様と比較して、製造業を生業とする当社の使用電力量が多いことを認識し、省電力化に向けた省エネ活動を推進するに至りました。

※:環境マネジメントシステムに関する国際規格のことを指す。

その後今日に至るまで環境に対する様々な活動を推進しています。その多くは環境・省エネ委員会、省エネ分科会を通した活動です。また2005年からは環境報告書の中で環境負荷低減活動に関するご紹介をしており、現在は当社HP等で社内外の皆様へ情報発信を続けています。

 

 

CO2排出量の削減につながる取り組みのきっかけ

当社ではゴム部品を製造するための様々な設備を保有していることから、CO2排出量を削減していくためには電力使用量の削減が大きな課題であると長年認識しておりました。

省電力化を進める中、よりCO2排出量を抑えられる電力の使用を推進するため、2015年から工場での自家消費型の太陽光パネル導入の検討を開始し、2016年に初めて白河工場へ導入することとなりました。以降、各工場にて導入を推進しています。

2021年には、ESGの視点を経営の軸において事業を通して持続可能な社会に貢献する「サステナビリティビジョン2030」を発表しました。本ビジョンを実現するためにCO2排出量および太陽光発電を除く使用電力量の削減量のKPI※を設定したことが、再生可能エネルギー由来の電力に切り替えるきっかけとなりました。

※2029年度目標(2030年3月期)のCO2排出量削減KPIは「2013年度比30%削減」、太陽光発電を除く使用電力量のKPIは「520万kWh」と設定。

 

 

4. 省エネおよびCO2削減につながる取り組みにおける課題

省エネおよびCO2排出量の削減につながる取り組みを進める中で、製造設備に対しての省電力化は思うように進まず、どのような対策が効果的か模索していました。設備を動かすための電力を”効率よく使う”ための十分な知識を持っていなかったためです。

そこで当社では、まず保有している設備の使用電力量の把握から始めました。現状を把握し問題点を抽出することで、より効率的な改善が見込めるためです。工場ごとに保有している設備が異なるため膨大な数の設備に対して測定を行いました。

2018年には、福島工場で使用電力量を測ることができる測定器を導入し、使用電力量の「見える化」を実現。2022年には白河工場でも同様の測定器を導入し、「見える化」が可能になったことで、省電力化に向けてより効率的な改善を進められております。

「見える化」の実施にあたり、生産設備を約20系統へカテゴリ分けし、分電盤に測定器を取り付けており、この測定器で実際の使用電力量の測定を行っています。

本測定器では24時間常時電力データが測定されています。1ヶ月間分の測定データから使用電力量の多いカテゴリを探り、その結果、コンプレッサーと空調関係の使用電力量が多いことが判明したため、それぞれの設備において省電力化の対策を実施しています。

現在は他工場でも同様に、使用電力量の「見える化」導入を推進しています。

写真(水) 電力測定の様子

電力測定の様子。積極的に使用電力量の「見える化」を推進。

 

 

5. 省エネおよびCO2削減につながる取り組みによる成果・メリット

 

 

省エネの取り組みの成果

電力削減対策実施の結果、2023年度は使用電力量の削減目標として前期比3%削減を掲げ、無事達成いたしました。また太陽光発電を除く購入電力量は、2022年度において前期比0.3%の減少となりました。

こうした取り組みの成果として、資源エネルギー庁が行う事業者クラス分け評価制度において、2019年度から省エネ優良事業者(Sクラス)の評価を得ています。

当社の取引先様には当社よりも事業規模の大きい企業様も多く、中にはサプライチェーンのCO2排出量の調査を積極的に進められている企業様もいらっしゃいます。事業者クラス分け評価制度においてSクラスの評価を獲得できたことで、CO2排出量削減の取り組みに積極的な取引先様にも高く評価いただいております。

 

 

CO2排出量の削減につながる取り組みの成果

2023年度実績として、国内全工場での総使用電力量は約790万kWhで前期比2.5%減を達成しています。また当社で自家消費した太陽光発電量は約97万kWhで、これは総使用電力量のうち12.2%にあたります。

国内全工場の中でも白河地区にある白河工場と白河第二工場では太陽光発電の導入を積極的に進めており、この2工場で使用した電力量のうち25.8%は太陽光発電によるものです。

またCO2排出量についても、2022年度には2013年度比73.8%削減を実現し、当社の「サステナビリティビジョン2030」内で2029年度のKPIとして掲げた「2013年度比でCO2排出量30%削減」を前倒しで達成しております。前倒しでの達成を受け、現在はGHGプロトコルに基づいた各ScopeのCO2排出量の算定に向けて準備を進めており、どのように算定すべきか、体制を整えながら情報収集と協議を重ねています。

写真(木) 白河工場と白河第二工場の太陽光発電パネル設置の様子-3840x2160

太陽光パネルを設置した白河工場と白河第二工場の様子。

 

 

6. 他企業に向けたアドバイス

当社のような製造業界の事業者様は、使用電力量や廃棄物の処理など様々な課題を抱えていらっしゃると思います。当社では全社一丸で省エネ・省CO2に取り組んでおりますが、活動としてご紹介した様々な「見える化」が大きな下支えとなっています。

新しい設備やシステムを導入しても「見える化」されていないと正しく効果を発揮しているかが分からない場合もございます。まずはしっかり「見える化」することから始めることで解決の糸口が見つかるかもしれません。

省エネやCO2排出量の削減への取り組みはすぐに成果が現れる活動ではないかもしれませんが、継続して取り組むことで結果が出てくると思います。

また、一社だけでは効果が少なくても多くの企業の方々が取り組むことで、全体として大きな効果を発揮することができると考えております。当社でも2050年のカーボンニュートラルな社会を目指し、より一層の活動を推進してまいります。