執筆者プロフィール
高牟礼昇
Noboru Takamure
オーストラリア最古の大学であるシドニー大学のSchool of Physicsで研究員として勤務し、ガラスや次世代太陽電池と言われているペロブスカイト太陽電池、水素の電気分解などカーボンニュートラルに関係する分野の研究を行う。現在はシドニー大学の客員研究員として研究を行う傍ら、山梨県で研究開発サービスを行う株式会社マッケンジー研究所を設立し研究開発サービス及び脱炭素コンサルティングなどを行っている。
業界ごとの温室効果ガス(GHG)排出量の特徴および傾向を分析する記事の第三弾となる今回、食品業界にスポットを当て、傾向を分析します。この他にも、食品業界ならではの各Scopeおよび各カテゴリのGHG排出量の削減方法や、脱炭素に伴う将来的なビジネスの方針なども解説していきます。
人為的な気候変動が進むと食品業界もほかの業界と同様に様々なリスクに直面します。ここでは、食品業界が気候変動により受ける直接リスクおよび移行リスクについて解説します。さらに、食品関連企業のGHGの排出量削減目標を定めるSBTへの申請数の推移を紹介しつつ、食品業界を取り巻く現状についても説明します。
気候変動の進行に伴い、食品業界では様々な直接リスクに直面すると懸念されています。その一つに気候変動による作物生産量の変化があります。気候変動により作物生産量が減少すると、調達コストのアップや調達先の変更などのリスクが顕在化すると共に、コストアップによるレピュテーションリスクが発生する恐れがあります。他にも異常気象の多発や大型化により、工場や農地が被災してしまうリスクも高くなる恐れがあります。
他方、脱炭素社会への移行に伴うカーボンプライシングにより、GHGを排出することのコストが増加すると共に、包装資材の原価の上昇による調達コストが増加するなど、移行リスクも懸念されています。
国内の食品関連企業のSBT申請件数の推移を以下のグラフにまとめました。SBTイニシアチブでは、2024年2月時点で「従業員数が250人未満」、「売上5000万ユーロ未満」、「総資産2500万ユーロ未満」、「森林、土地、農業に係るFLAG企業以外」の条件の内、2つ以上が該当する企業が中小企業(SMEs)とされており、食品業界もこの基準に従い判断されます。
食品業界全体では、2023年までに26社がSBT申請を行っています。最初に申請が行われた2018年以降、申請件数は年々増加傾向にあることがわかります。また、2022年からは中小企業の申請が見られており、2023年には申請件数が大手企業の2件に対して中小企業は10件と多くなっていました。
| 年度 | 大手企業 | 中小企業 | 年度合計 |
| 2018 | 1 | 0 | 1 |
| 2019 | 0 | 0 | 0 |
| 2020 | 3 | 0 | 3 |
| 2021 | 3 | 0 | 3 |
| 2022 | 4 | 3 | 7 |
| 2023 | 2 | 10 | 12 |
食品業界の大手企業で初めてSBT申請を行ったのはアサヒグループホールディングス株式会社でした。SBT発足からわずか3年後の2018年に申請しており、気候変動対策に非常に敏感に反応していたことがわかります。その後、アサヒに続くようにサントリーホールディングス株式会社、キリンホールディングス株式会社、サッポロホールディングス株式会社とビールメーカーの大手3社も申請を行っています。
食品業界の大手企業は2023年まで13社がSBT申請を行っており、株式会社ロッテや明治ホールディングス株式会社といった製菓業から即席麵で有名な日清食品ホールディングス株式会社、調味料や冷凍食品などを手掛ける味の素株式会社まで、様々なタイプの企業が申請を行っています。
| 社名 | 申請年度 | NEAR TERM | NET-ZERO |
| アサヒグループホールディングス株式会社 | 2018年 | 1.5℃ by 2030 | COMMITTED |
| 味の素株式会社 | 2020年 | 1.5℃ by 2030 | COMMITTED |
| 不二製油グループ本社株式会社 | 2020年 | Well-below 2℃ by 2030 | ― |
| 日清食品ホールディングス株式会社 | 2020年 | Well-below 2℃ by 2030 | ― |
| キッコーマン株式会社 | 2021年 | COMMITTED | ― |
| サントリー食品インターナショナル株式会社 | 2021年 | 1.5℃ by 2030 | COMMITTED |
| サントリーホールディングス株式会社 | 2021年 | 1.5℃ by 2030 | COMMITTED |
| カゴメ株式会社 | 2022年 | 1.5℃ by 2030 | ― |
| キリンホールディングス株式会社 | 2022年 | Near term 1.5℃ by 2030/Long term 1.5℃ by 2050 | Committed by 2050 |
| 株式会社ロッテ | 2022年 | Well-below 2℃ by 2028 | ― |
| サッポロホールディングス株式会社 | 2022年 | COMMITTED | ― |
| フジパングループ本社株式会社 | 2023年 | 1.5℃ by FY2030 | ― |
| 明治ホールディングス株式会社 | 2023年 | 1.5℃ by FY2030/2031 |
出典:SBT COMPANIES TAKING ACTION
(https://sciencebasedtargets.org/companies-taking-action)
(2024年1月30日時点)
ここからは食品業界のGHG排出量の傾向を分析していきます。サプライチェーンのGHG排出量はScope 1から3に分かれており、またScope 3は15のカテゴリに区分されています。今回は食品業界のGHG排出量のScope 1〜3の内訳をグラフ化し、その傾向を分析します。
まずはScope 1から3のGHG排出量の内訳を示すグラフを見ていきます。Scope 1およびScope 2のGHG排出量の割合はどちらも8%程度でした。Scope 1およびScope 2の合計は自社排出ですので、食品業界における自社排出の割合は約16%でした。
一方で、サプライチェーンを構成する他社からのGHG排出量であるScope 3は約84%を占めており、食品業界では自社による製品製造時のGHG排出量よりも、原料生産や輸送などに伴う自社以外のGHG排出量の方が多いことがわかります。
続いてScope 3のカテゴリごとのGHG排出量の割合を確認しながら、どのカテゴリからの排出が多いかを示します。以下がScope 3のカテゴリごとのGHG排出量の割合を示したグラフです。GHG排出量の割合がScope 3全体の3%を超えるカテゴリが7つあります。食品業界ではGHGの排出が特定のカテゴリに集中するわけではなく、排出源が分散する傾向にあるようです。この7つのカテゴリについて、考えられるGHG排出の要因を詳細に確認していきます。
カテゴリ1は「購入した製品・サービスの排出」であり、食品業界では食品の原材料および容器や包装などの生産時のGHG排出がカテゴリ1に該当します。加工食品の原料には小麦やジャガイモ、野菜や肉がよく使用されていますが、これらを生産する際に使用する飼料や肥料、農薬などから排出されるGHGが多い傾向にあります。また、容器や包装の多くはプラスチックから作られているためGHG排出量が多いのも特徴です。このカテゴリ1からのGHG排出量が全体のGHG排出量の約50%を占めています。このため、食品業界ではこのカテゴリ1の排出量を下げることが非常に重要と言えそうです。
カテゴリ2の「資本財の排出」は工場や生産設備、車両など固定資産にあたる資本財の建設や製造時のGHG排出量を示します。食品業界ではカテゴリ2のGHG排出量の割合は3.5%でした。
カテゴリ3はScope 1,2に含まれないエネルギーの生産および輸送に伴うGHG排出を指しています。食品業界では食品の原材料の生産に燃料や電気を多く使用しているため、カテゴリ3のGHG排出量の割合も3.2%と高くなっています。
カテゴリ4は原材料の輸送、カテゴリ9は完成した製品の輸送に伴う排出を指しています。食品業界では特にカテゴリ4は9.6%とカテゴリ1に次いで高くなっていますが、これは食品の原材料を海外から輸送しているためと考えられます。一方で、カテゴリ9は完成品が主に国内で流通しているため、3.8%とカテゴリ4よりも低くなっています。
カテゴリ11は販売した製品をユーザーが使用した際のGHG排出を指しています。食品業界の場合、加工食品は家庭や店舗でプロパンガスや電子レンジなどで調理する場合があるため、このカテゴリ11の割合が5.2%と高くなっています。
カテゴリ13の「リース資産(下流)」はリース資産の使用に伴うGHG排出を指しています。食品業界の中には自動販売機をリースしている会社があり、リースを行っている会社はこのカテゴリ13からのGHG排出量が多くなっています。一方で、リースを行っていない会社に関してはカテゴリ13のGHG排出量は0%になります。今回使用したデータの平均値は5.2%でした。
| 食品業 | 排出源 | 排出割合 | 標準偏差 |
| Scope 1 | 自社直接排出 | 7.9% | 2.2% |
| Scope 2 | 自社間接排出 | 8.4% | 4.0% |
| Scope 3 カテゴリ1 | 購⼊した製品・サービス | 50.3% | 11.1% |
| Scope 3 カテゴリ2 | 資本財 | 3.5% | 2.8% |
| Scope 3 カテゴリ3 | Scope1,2に含まれない 燃料及びエネルギー活動 | 3.2% | 1.2% |
| Scope 3 カテゴリ4 | 輸送、配送(上流) | 9.6% | 7.1% |
| Scope 3 カテゴリ5 | 事業から出る廃棄物 | 1.0% | 0.7% |
| Scope 3 カテゴリ6 | 出張 | 0.0% | 0.0% |
| Scope 3 カテゴリ7 | 雇⽤者の通勤 | 0.1% | 0.2% |
| Scope 3 カテゴリ8 | リース資産(上流) | 0.0% | 0.0% |
| Scope 3 カテゴリ9 | 輸送、配送(下流) | 3.8% | 9.6% |
| Scope 3 カテゴリ10 | 販売した製品の加⼯ | 0.7% | 1.5% |
| Scope 3 カテゴリ11 | 販売した製品の使⽤ | 5.2% | 4.4% |
| Scope 3 カテゴリ12 | 販売した製品の廃棄 | 2.1% | 1.2% |
| Scope 3 カテゴリ13 | リース資産(下流) | 4.3% | 7.4% |
| Scope 3 カテゴリ14 | フランチャイズ | 0.0% | 0.0% |
| Scope 3 カテゴリ15 | 投資 | 0.0% | 0.0% |
出典:環境省 グリーン・バリューチェーンプラットフォーム|取組事例|業種別取組事例一覧(https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/case_smpl.html)ページ内算定事例資料を編集し、作成。
(2024年1月30日時点)
GHG排出量削減の第一歩としてGHG排出量の算出を通して、削減ポテンシャルを知る必要があります。一方で、削減ポテンシャルが把握できても企業の業務形態により最適な削減方法は異なるため、自社に最も適した削減戦略を企業ごとに立案する必要があります。ここでは、食品業界が共通して実践するGHG排出削減方法を自社排出であるScope 1および2、そして自社以外の間接排出であるScope 3に分けて解説します。
自社排出であるScope 1および2のGHG排出量の削減には化石燃料の消費削減と節電が効果的です。このため食品業界では、Scope 1および2のGHG排出量削減の手段として生産設備の安定稼働による生産性向上を図ることに加え、トップランナー設備や最新技術を取り入れた高効率機器の導入が進められています。これにより、燃料消費量と電力消費量の両方を下げることができる上、エネルギーコストを削減することにも繋がります。また、このような脱炭素に繋がる投資には自治体などから補助金が支給される場合があるため、補助金を上手く使いながら高効率設備の導入を進めている企業も見られています。
補助金に関してはこちらの記事:https://sol.tokyo-gas.co.jp/column/1084
電気に関しては再生可能エネルギーの導入も進んでおり、多くの食品製造工場で太陽光パネルの設置が行われています。この再エネ由来の電力を積極的に取り入れることでScope 2の排出量削減が行われています。この他にも発電の際のCO2排出係数の低い電力会社への切り替えも考えられます。また様々な電力販売会社から再生可能エネルギーを利用した低排出係数の電気契約プランが出されており、中にはCO2フリープランも登場しつつあります。
Scope 3は自社以外の間接排出であるため、Scope 3のGHG排出量の削減には自社だけでなく、提携企業等の協力が必要になります。将来的には、食品業界のサプライチェーンを構成する提携企業にも、自社のGHG排出量削減戦略に足並みを合わせたGHG排出量の削減対策への協力を要請する必要性が出てくることも予想されます。また今後はGHG排出量の削減対策を実施していない取引先企業から、積極的に削減対策に取り組む企業へのシフトも検討していかなければなりません。
一方で、食品業界のサプライチェーンを構成する提携企業側としては、GHG排出量削減戦略を策定する取引先企業の要望に応えるため、自社においてGHG排出量を削減する企業努力が求められる可能性もあります。以上を踏まえて、食品業界のサプライチェーンを構成する各企業で取り組まれているScope 3のGHG排出量の削減方法の一部を紹介します。
食品業界における購入した製品には、原材料となる食材と加工食品を入れるための容器や包装が挙げられます。食品メーカーではカテゴリ1のGHG排出量を抑えるために、これらのGHG排出量の削減に積極的な企業への取引先のシフトが少しずつ進んでいます。原材料の生産に関してはロボット技術やAIを駆使したスマート農業といった最新テクノロジーを導入することによりGHG排出量の削減を行う取り組みが徐々に増えています。また、飼育の際にGHGを多く排出する家畜よりも、よりGHG排出量の少ない大豆などを利用した植物代替肉や培養肉の開発も進んでいます。
容器及び包装に関しては、小型化や軽量化により原料の使用量を少なくすることや、バイオマス原料の使用、さらに容器及び包装の生産工程を効率化することによりGHG排出量の削減が行われています。
資本財のGHG排出量の削減には建築資材や生産設備に低炭素の素材を使用することが考えられます。例えば、工場や生産設備には鉄やセメントが大量に使用されますので、これらの資材を低炭素のものに切り替えることが挙げられます。実際に食品メーカーでは、工場の食品製造ラインで低炭素の設備を導入する企業も増えています。
カテゴリ4と9は輸送と配送の際のGHG排出です。輸送にはトラックなど車両が使用されていますが、車両の代わりによりGHG排出量の少ない鉄道を使用するモーダルシフトを行うことで排出量を下げることが可能です。また、車両を電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)へシフトすることでも排出量の削減が行われつつあります。食品メーカーはこうしたGHG排出量の削減努力を実践する輸送・配送業者へ取引先をシフトすることが重要です。加えて食品業界では、複数メーカー同士が協力し、貨物を共同で運ぶという取り組みも行われています。
食品業界における主なリース資産は自動販売機です。自動販売機は電気を使用しますので、この自動販売機によるGHG排出量の削減を行うには、熱を逃がさない断熱性の高い製品の使用や自動販売機の上に太陽光パネルを設置して発電を行う製品の使用などが挙げられます。食品メーカーでは、実際に太陽光パネルを搭載した自動販売機や、CO2だけを集める吸収材入りの自動販売機のリースが進められています。
ここではGHG排出量削減に積極的に取り組む食品業界の先進企業による事例を紹介します。食品業界ではScope 1および2はもちろん、Scope 3のGHG排出量の削減にも取り組んでいる企業が多数存在します。
日清食品では「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」が推進されており、様々な削減方法が取り入れられています。Scope 3 カテゴリ1のGHG排出量削減のためにバイオマス原料を用いた「バイオマスECOカップ」への置き換えが進んでいます。
また、カップラーメンのカップなど汚れてリサイクルできないゴミを燃やして発電を行い、得られた電力を有効に活用するなど、Scope 3 カテゴリ12「販売した製品の廃棄」による排出の削減にも取り組んでいます。
さらに、排出するCO2に価格を付けるカーボンプライシングも社内で独自に行っており、社内炭素価格を定めています。このインターナルカーボンプライシング(ICP)を設備投資の判断材料にしており、Scope 3カテゴリ1やScope 1および2の削減に繋がると考えられます。
出典:日清食品ホールディングス 公式企業サイト|サステナビリティ|特集|「EARTH FOOD CHALLENGE2030始動」、
日清食品ホールディングス 公式企業サイト|ニュース|すべて|日清食品ホールディングス|「CO2排出量の削減目標引き上げおよび「インターナルカーボンプライシング制度」導入について」、「日清食品ホールディングス、ごみの再資源化に向けて焼却施設から生まれた「ごみ発電電力」を東京本社で使用」を参照。
(https://www.nissin.com/)
(2024年1月30日時点)
カルビー株式会社では、栃木県宇都宮市清原工業団地内の3事業所にて、東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社から再生可能エネルギー由来のJ-クレジットを購入することで、生産工程で使用する熱エネルギーのカーボンオフセットを行う試みも行われています。これによりScope 1の内、自社が購入した熱によるGHG排出量をゼロにできることになります。
また生産している加工食品の主原料として馬鈴薯が使用されていますが、この馬鈴薯の栽培プロセスでのGHG排出量の見える化への取り組みが進められています。これは、プロセスごとのGHG排出量の削減ポテンシャルを把握するための取り組みであることが考えられます。削減の取り組みとして実践することが難しいScope 3 カテゴリ1のGHG排出量を今後削減していくための食品メーカーとしての企業努力と言えます。
さらにScope 3におけるGHG排出量の削減は提携企業の協力が必須ですが、カルビー株式会社は環境省の支援事業である「サプライチェーンの脱炭素化推進モデル事業」へ参画してサプライヤーエンゲージメントを強めており、Scope 3のGHG排出量の削減に向けて、提携企業と協働で取り組みを進めています。
出典:カルビー株式会社 公式企業サイト|サステナビリティ|地球環境への配慮|「カーボンニュートラルの達成」(https://www.calbee.co.jp/sustainability/environment/carbon-netural.php)、
ニュース|「清原工業団地のカルビー3事業所へ再生可能エネルギー由来のJクレジット導入
~カルビー初、熱エネルギーのカーボンオフセット~」(https://www.calbee.co.jp/newsrelease/231019.php)を参照。(2024年1月30日時点)
食品業界でも直接リスクと移行リスクを回避しながら、脱炭素社会に沿った新たなビジネスを創出することが重要です。ここでは、食品業界における脱炭素の現状を踏まえつつ、脱炭素から派生しうるビジネスチャンスを紹介します。
現在、脱炭素の流れに伴い生産の効率化などによる省エネ化が進められています。この省エネは将来に渡りエネルギーコストを下げることができるので、長い目で見ると脱炭素設備への設備投資に価値があると考えられます。また、自社で太陽光発電システムを導入することもGHG排出量の削減と共にエネルギーコストを下げることができるので有効な手段になり得ます。この省エネや創エネを自社のみではなく、取引先を含むサプライチェーン全体で行えば、サプライチェーン全体の生産コストの低下が見込まれます。
また、気候変動による自然災害の頻発や強大化などのリスクを考慮して工場内への浸水を防ぐ耐水性の高いシャッターや防水シートの設置、強風による破損を防ぐために耐風強度の強化など、耐水、耐風性の高い設備への投資が必要となるでしょう。さらに、日照りや渇水などのリスクを考慮して幅広い地域からサプライヤー選定を行うことで、安定供給対策や製品供給体制の強化に繋がります。
脱炭素化が進むと一般消費者の消費マインドの中にもGHG排出量の削減に価値が出てくると考えられます。つまり、製造時にGHG排出量が多い商品は一般消費者から敬遠され、少ない商品は多少値段が高くても購入される傾向が出てくるでしょう。このため、低炭素商品の需要増加が見込まれ、低炭素商品の開発が重要になります。環境負荷の低い植物代替肉や培養肉などに加えて容器にリサイクル品やバイオマス原料を使用することにより、製品のライフサイクルにおけるGHG排出量を下げることが考えられます。
脱炭素は世界的な流れであるため、この流れを見極めて新しいビジネスチャンスを掴むことが脱炭素社会を生き残るために大切と言えます。
食品業界のGHG排出量を分析した結果、一つのカテゴリに集中しているのではなく様々なカテゴリから排出されていることがわかりました。その中でもScope 3 カテゴリ1からのGHG排出量が50%程度あるため、原材料の生産および容器や包装の生産の際のGHG排出量を削減することが課題となりそうです。このカテゴリのGHG排出量削減のためには、自社だけではなく取引先を含むサプライチェーンが一体となって削減努力を尽くす必要があります。
執筆者:高牟礼昇