脱炭素の補助制度について知ろう!

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執筆者プロフィール

高牟礼昇

Noboru Takamure

オーストラリア最古の大学であるシドニー大学のSchool of Physicsで研究員として勤務し、ガラスや次世代太陽電池と言われているペロブスカイト太陽電池、水素の電気分解などカーボンニュートラルに関係する分野の研究を行う。現在はシドニー大学の客員研究員として研究を行う傍ら、山梨県で研究開発サービスを行う株式会社マッケンジー研究所を設立し研究開発サービス及び脱炭素コンサルティングなどを行っている。

事業者の皆さんが脱炭素経営を進める上で気がかりなのは、GHG排出量の削減努力にかかるコスト面ではないでしょうか。脱炭素を目的に省エネ設備や太陽光発電設備を導入しても、コストがかかりすぎるとその分経営を圧迫してしまう可能性もあります。こうした懸念に対応するため、脱炭素経営(CO2排出量の削減)に役立てられる様々な補助制度が準備されており、事業者の方々はこれを上手く利用することでコストを抑えることが可能になります。本記事では脱炭素にかかわる補助制度について、省庁および地方自治体ごとに解説し、その利用方法も紹介します。

1.  脱炭素にまつわる補助制度とは?

2050年のカーボンニュートラル達成へ向けて日本国内の脱炭素の動きが本格化しつつあります。政府は脱炭素を経済成長の機会ととらえており、成長をサポートするための様々な補助制度を制定しています。代表的な補助制度には補助金優遇税制があります。補助金や優遇税制は様々な省庁や地方自治体ごとに制定されており、内容や金額も様々です。ここではその概要について説明します。

補助金について

補助金は大きく分けて低炭素技術の開発のための補助金と、再エネや省エネ設備の導入のための補助金の2種類が存在します。

低炭素技術開発に関する補助金については、経済産業省のグリーン成長戦略で実行計画を策定している14の重点分野、または2023年に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」に基づく今後の道行きが示されている主要分野を支援対象に、2兆円規模のグリーンイノベーション基金が造成されています。この基金は国立研究開発法人の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)に造成されたもので、最長10年間、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援することを目的に補助金が支給されています。

一方、再エネや省エネ施設導入に関する補助金は主に環境省および地方自治体により行われています。特に重点的な分野はZEHZEBZEVです。ZEHとZEBは建物で消費する年間の一次エネルギー収支がゼロとなる建物を指し、ZEVはZero Emission Vehicleの略で使用時に排気ガスを排出しない自動車であるEVとFCVを指します。今後、建物および自動車はこのZEHやZEB、ZEVへと置き換えが進んでいくと見られており、環境省および地方自治体ではこの導入に向けた補助金が数多く設けられています。

また省庁や地方自治体のみではなく、様々な財団法人により基金の管理や公募が行われているケースもあります。これらの財団法人が行う補助金事業の多くは省庁の予算が振り分けられており、省庁の代理で間接補助金として交付されています。こうしたものを含めると脱炭素に関連した補助金は多岐にわたるソリューションや事業分野ごとに設けられているため、入念に調査することで自社に合った補助金を見つけることができるかもしれません。

担当 組織 補助対象業種・部門 目的 補助内容
環境省 省庁 海事分野 エネルギー多消費型の舶用部品に係る省CO2製造プロセス導入支援事業 上限金額・助成額:3億円 補助率:1/2
農林水産省 省庁 製造業 グリーンな栽培体系の転換に向けたバイオマス由来を含む生分解性マルチ導入促進事業 上限金額・助成額:1,400万円 補助率:定額
NEDO 国立研究開発法人 化学工業 CO2リサイクルへ向けた化学品へのCO2利用技術開発 上限金額・助成額:15億円 補助率:2/3
日本自動車輸送技術協会 公益財団法人 運輸業 タクシーの電動化促進 上限金額・助成額:BEV 車両本体価格の1/4、PHEV 車両本体価格の1/5、FCV 車両本体価格の1/3
環境優良車普及機構 一般財団法人 運輸業 低炭素型ディーゼルトラック普及加速化 2015年基準で燃費10%向上した場合、1台につき最大75万円
日本環境衛生センター 一般財団法人 事業者全体 革新的な省CO2実現のための部材(GaN)や素材(CNF)の社会実装・普及展開加速化 上限金額・助成額: 補助対象経費の1/2

出典: 環境省ホームページ|令和5年度海事分野における脱炭素化促進事業(うちエネルギー多消費型の舶用部品に係る省CO2製造プロセス導入支援事業)の公募について

https://www.env.go.jp/earth/ondanka/biz_local/r5_energy.html

農林水産省ホームページ|令和5年度生分解性マルチ導入促進事業の公募について

https://www.maff.go.jp/j/supply/hozyo/nousan/231215_150-1.html

NEDOホームページ|本公募「カーボンリサイクル・次世代火力発電等技術開発/CO2排出削減・有効利用実用化技術開発」に係る公募について

https://www.nedo.go.jp/koubo/EV2_100276.html

環境優良車普及機構ホームページ|令和5年度 二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金

https://www.levo.or.jp/fukyu/hojokin/r5_index.html

日本環境衛生センター|事業紹介|二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(革新的な省CO2実現のための部材(GaN)や素材(CNF)の社会実装・普及展開加速化事業) 

日本自動車輸送技術協会|2023年度(令和5年度)公募環境省 補助金交付商用車の電動化促進事業(タクシー)

(2024年1月22日時点)

優遇税制について

脱炭素経営を実践する上で、補助金と合わせて重要なのが優遇税制です。カーボンニュートラル実現へ向けて脱炭素を行うと、様々な税金の優遇措置を受けることができます。

脱炭素に関わる代表的な優遇税制に「カーボンニュートラル投資促進税制」と「デジタルトランスフォーメーション(DX)投資促進税制」があります。どちらも2021年度(令和3年度)の税制改正で導入されており、脱炭素効果の高い設備導入やデジタル化のためのクラウド導入などの際に税額控除又は特別償却が行われます。他にも生産性向上を行うための設備投資への優遇税制である「中小企業経営強化税制」も脱炭素関係の優遇税制と言えます。

この他に地方自治体によって税制上の優遇措置が設けられている場合もあります。愛知県の豊田市では環境に配慮した住宅および事業用太陽光発電設備、EV等の導入に際して、固定資産税や軽自動車税等の減免措置を行っています。これらの優遇税制には減税内容や実施期間、適用対象などが細かく決められているため、申請の前に内容を確認しておく必要があります。

2. 省庁ごとの脱炭素支援政策

政府内の各省庁のうち、脱炭素支援政策を主導しているのは環境省と経済産業省です。ZEHの促進などのように環境省と経済産業省に加えて国土交通省とも連携する領域は一部ありますが、主に環境省は省エネ設備の実装など脱炭素社会への移行を、経済産業省は低炭素技術の開発を支援するなど、カーボンニュートラルの実現に向けて様々な支援政策を打ち出しています。ここでは、環境省・経済産業省それぞれの補助制度について解説します。

環境省の脱炭素支援

環境省は主に低炭素社会への移行を推進しており、速やかな移行のため「エネルギー対策特別会計」(エネ特)を通して補助金の支給を行っています。2024年度のエネルギー対策特別会計の予算要求は総額4,024億円となっています。2023年度のエネルギー対策特別会計予算が1,910億円でしたので、2024年度予算は大幅にアップしています。

エネルギー対策特別会計は炭素中立型経済社会実現に向けた取り組みとして、第1の柱「脱炭素でレジリエントかつ快適な地域・くらしの創造」、第2の柱「地域・くらしを支えるサプライチェーン全体の脱炭素移行の促進」、第3の柱「地域・くらしとサプライチェーンの脱炭素化の基盤となる先導技術実証等」、第4の柱「世界の脱炭素移行への包括支援による国際展開・国際貢献」の4つの柱を掲げています。この4つの柱ごとに予算要求額が振り分けられており、それぞれの柱を実現していくための事業として位置付けられている補助事業もあります。

補助事業名 令和6年度予算要求額 実施期間
地域脱炭素の推進のための交付金 第1の柱 660億円 令和4年度~令和12年度
民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業 第1の柱 193億円 メニュー別
工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業) 第2の柱 90億円 令和3年度~令和7年度
プラスチック資源・金属資源等のバリューチェーン脱炭素化のための高度化設備導入等促進事業 第2の柱 80億円 令和5年度~令和9年度
脱炭素社会構築に向けた再エネ等由来水素活用推進事業 第3の柱 56億円 令和2年度~令和8年度
地域共創・セクター横断型カーボンニュートラル技術開発・実証事業 第3の柱 50億円 令和4年度~令和10年度
脱炭素移行に向けた二国間クレジット制度(JCM)促進事業 第4の柱 190億円 平成16年度~令和12年度

出典:環境省ホームページ|地球環境・国際環境協力|令和5年度(2023年度)エネルギー対策特別会計予算 全体概要(https://www.env.go.jp/earth/42022_00001.html)ページ内「令和5年度(2023年度)エネルギー対策特別会計予算 全体概要」、

環境省 脱炭素ポータル|令和6年度 環境省予算の概算要求内容について(https://ondankataisaku.env.go.jp/carbon_neutral/topics/20231010-topic-51.html)を編集し作成。

(2024年1月22日時点)

経済産業省の「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」

経済産業省が掲げる「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」はその名の通り、脱炭素を通して経済成長を実現するための戦略です。産業政策およびエネルギー政策の両面から成長が期待される14の重要分野について実行計画を定めて支援を行うことで、温室効果ガスの大きな排出源となっているエネルギーおよび産業部門の構造転換やイノベーションの創出をサポートしています。このグリーン成長戦略を実現するために、 NEDOに設置されたグリーンイノベ―ション基金には2023年度当初予算として2兆7,564億円が割り当てられており、資金面から積極的な支援が行われています。

2050年に向けて成長が期待される、14の重点分野
洋上風力・太陽光・地熱 物流・人流・ 資源循環関連土木インフラ
水素・燃料アンモニア 食料・農林水産業
次世代熱エネルギー 航空機
原子力 カーボンリサイクル・マテリアル
自動車・蓄電池 住宅・建築物・次世代電力マネジメント
半導体・情報通信 資源循環関連
船舶 ライフスタイル関連

出典:経済産業省ホームページ|グリーンイノベーション基金

https://www.meti.go.jp/policy/energy_environment/global_warming/gifund/index.html
(2024年1月22日時点)

グリーン成長戦略でかかげる補助政策

グリーン成長戦略では、先述の通り脱炭素を達成するための新技術の研究開発へのサポートがグリーンイノベーション基金を通して行われています。これに加えて、税制面ではグリーン成長戦略に伴う優遇税制として「カーボンニュートラルに向けた投資促進税制」が導入されています。

この税制では炭素生産性という概念が導入されています。炭素生産性とは製品生産時の付加価値とCO2排出量の割合を指しています。この炭素生産性を向上するには、従来と同じ付加価値を保ちながら省エネ設備導入によりCO2排出量を下げるか、もしくは従来と同じCO2排出量で新たな付加価値を創出することが必要になります。炭素生産性は以下の計算式で算出することができます。


※付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制では、この炭素生産性を向上させる設備を導入した際に最大10%の税額控除又は50%の特別償却が行われます。そうすることで企業に低炭素の設備導入を促しています。

参考:経済産業省ホームページ|令和5年度経済産業省予算案のPR資料一覧:GX支援対策費(https://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2023/pr/gx.html)、

NEDOホームページ|NEDOの予算(2023年度当初予算) (https://www.nedo.go.jp/introducing/yosan.html)、

経済産業省ホームページ|事業適応計画(産業競争力強化法)(https://www.meti.go.jp/policy/economy/kyosoryoku_kyoka/jigyo-tekio.html)ページ内「エネルギー利用環境負荷低減事業適応計画(CN税制)の申請方法・審査のポイント」

(2024年1月22日時点)

3. 地方自治体での取り組みおよび補助制度

これまで見てきた通り、環境省や経済産業省をはじめ、各省庁が脱炭素へ向けて足並みを揃えつつあり、多額の予算を投入して様々な取り組みを始めています。この影響は各地域にも波及しており、多くの地方自治体で脱炭素にかかわる補助制度が開始しています。ここでは、地方自治体での脱炭素へ向けた取り組みや補助制度を解説します。

脱炭素地域づくりとは?

地域の脱炭素の取り組みを進めるために、環境省は「脱炭素ロードマップ」を策定して推進しています。脱炭素ロードマップでは、2030年までに全国で少なくとも100か所の「脱炭素先行地域」を作り、脱炭素の取り組みを加速させることを目標にしています。そして継続的・包括的支援、ライフスタイルイノベーション、制度改革の3つの基盤的施策を実施すると共に、モデルを全国に伝搬することで脱炭素ドミノを起こし、最終的には2050年を待たずに脱炭素を達成するというシナリオが描かれています。そのため、各地域での脱炭素の取り組みは、国を挙げた取り組みの一環としても重要度が高く、こうした背景から各地域では脱炭素に力を入れる自治体が増えてきています。

出典:内閣官房ホームページ|国・地方脱炭素実現会議(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/datsutanso/index.html)ページ内「地域脱炭素ロードマップ 【概要】」を編集し、作成。

(2024年1月22日時点)

各地方自治体の補助金例

地方自治体では都道府県のみではなく、市町村にも脱炭素の補助金が用意されています。また補助金の対象は地域によって差はあるものの、EVやFCV、太陽光発電設備、省エネ設備導入、ZEHやZEBなど多くの種類が見受けられます。

愛媛県では水素ステーションの設置に上限が5,000万円の補助金が設定されており、設置を促しています。水素ステーションの拡充は政府主導で行われており、2030年までに1,000基を設置することが目標となっています。

佐賀県では最近増えつつあるPPA(Power Purchase Agreement)を行う事業者への補助金が支給されており、太陽光発電設備の普及拡大への支援が行われています。

また、EVやFCVへの移行に伴い、充電設備や水素ステーションの設置が必要となっており、関連した補助金も地方自治体から支給されています。

担当 組織 補助対象 目的 補助内容
愛媛県 都道府県 法人/個人事業主/組合・団体等 水素ステーション整備促進事業費補助金 上限金額・助成額: 5,000万円 補助率:新設設備:1/6、中古設備:1/2
福島県 都道府県 法人/個人 燃料電池自動車(FCV)導入補助金 上限金額・助成額:100万円 補助率:1/3
岩手県 都道府県 岩手県内の事業者 EV等普及促進事業費補助金 上限金額・助成額:2,000万円 補助率: 電気バスの導入:1/3、電気タクシー、プラグインハイブリッドタクシーの導入:1/4、電気タクシー等用充放電設備の導入:1/4
神奈川県 都道府県 個人 令和5年度神奈川県ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス導入費補助金 上限金額・助成額: 100万円/戸 補助率:ZEH+:100万円/戸、ZEH:55万円/戸、ZEH Oriented:50万円/戸
佐賀県佐賀市 市町村 佐賀市内のPPA事業者 太陽光発電設備導入事業費補助金(オンサイトPPA太陽光発電設備設置事業) 上限金額・助成額:10万円/件 補助率:定額
埼玉県熊谷市 市町村 中小企業/個人事業主/小規模事業者 中小企業者省エネ設備導入支援補助金 上限金額・助成額:50万円 補助率:1/2
新潟県上越市 市町村 中小企業/個人事業主 脱炭素経営支援補助金 上限金額・助成額:5万円 補助率:1/2

出典:愛媛県ホームページ|令和5年度愛媛県水素ステーション整備促進事業の募集について (https://www.pref.ehime.jp/index.html)、

福島県ホームページ|【補助対象車両(クラウンFCEV)追加】燃料電池自動車(FCV)補助金について、

岩手県ホームページ|令和5年度電気バス、電気タクシー等補助金(EV等普及促進事業費補助金)について、

神奈川県ホームページ|令和5年度神奈川県ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス導入費補助金(https://www.pref.kanagawa.jp/index.html)、

佐賀市ホームページ|【設置事業者向け】太陽光発電設備導入事業費補助金(オンサイトPPA太陽光発電設備設置事業)、

熊谷市ホームページ|熊谷市中小企業者省エネ設備導入支援補助金のお知らせ(https://www.city.kumagaya.lg.jp/index.html)、

上越市ホームページ|脱炭素経営支援補助金 (https://www.city.joetsu.niigata.jp/index2.html

(2024年1月22日時点)

4. 脱炭素の補助制度を利用した事例紹介

ここまで補助金や優遇税制など、様々な脱炭素に伴う補助制度を説明してきましたが、ここでは実際にどのような補助金や優遇税制の利用事例があるかを紹介します。

事業分野ごとの補助金利用事例

ここでは、これまでに環境省で募集が行われた事業分野ごとの補助金利用事例をまとめています。補助金は分野や業種ごとに設定されている場合があり、また省エネ設備の導入を促す補助金などのように、業種を問わず申請できる補助金が設けられていることもあります。

  • 取り組み事例1:ごみ処理センターの高効率化

箕面市は、市が運営するごみ処理センターの設備老朽化に伴い新規に高効率の設備を導入する際、「二酸化炭素排出抑制に貢献する基幹改良事業」として、補助金の採択を受けています。本事業で保守・維持管理を最適化する制御機器類の更新や、ボイラーの清掃作業を削減できる新設備「ショックパルススートブロワ」を導入しており、その結果年間のCO2排出量を約2,430トン削減できています。また可燃ごみの焼却熱を利用した発電の効率もアップしており、年間で約4,400万円もの大幅なエネルギーコストの削減にも成功しています。

出典:環境省ホームページ|地球環境・国際環境協力|エネルギー対策特別会計補助事業 活用事例集(2022年度委託事業成果物)(https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/jirei.html)ページ内「【2021年度委託事業成果物】5.廃棄物・リサイクル分野の脱炭素化推進事業」を参照。

(2024年1月22日時点)

  • 取り組み事例2:太陽光発電による余剰電力を用いた水素製造および貯蔵

株式会社トーエネックは、「脱炭素社会構築に向けた再エネ等由来水素活用推進事業」への採択を受け、自社の太陽光発電の余剰電力から電気分解により水素を製造し、貯蔵するシステムを導入しています。このシステムによって製造された水素はタンクに貯蔵され、夜間や災害時など電気が必要な時に発電に使用されます。これにより、年間のCO2排出量を約2トン削減できると共に、水素社会へ向けたインフラ整備にも貢献しています。

出典: 環境省 エネ特ポータル|活用事例|脱炭素社会構築に向けた再エネ等由来水素活用推進事業 〈脱炭素な地域水素サプライチェーン構築事業(水素を活用した自立・分散型エネルギーシステム構築事業)〉を参照。

https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/case/
(2024年1月22日時点)

  • 取り組み事例3:ESGリース促進事業を利用した低燃費建設機械導入

建設業者の株式会社エンジンは、「脱炭素化社会の構築に向けたESGリース促進事業」への採択を受け、低燃費の建設機械を導入しています。ESGリース促進事業では、環境省が定める基準を満たす脱炭素機器をリースして使用する際、採択を受けたリース事業者に総リース料の4%以下が補助金として支給されます。この補助金採択により、株式会社エンジンは年間のCO2排出量を約21トン削減できたことを発表しています。また副次的効果として、従来に比べ機械運転時の稼働音を軽減することにも成功しています。

出典:環境省 エネ特ポータル|活用事例|脱炭素化社会の構築に向けたESGリース促進事業|低燃費建設機械導入による競争率の向上と騒音低減を参照。

https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/case/
(2024年1月22日時点)

  • 取り組み事例4:水産物流通倉庫におけるモニタリングシステムによる保守点検業務の効率化

冷蔵倉庫業を営む豊海東都水産冷蔵株式会社では、「脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業」への採択を受け、NH3とCO2を冷媒とした省エネ型自然冷媒機器に設備更新したことに加え、モニタリングシステムを採用することにより、年間のCO2排出量を約638トン削減、またエネルギーコストを約3割削減することにも成功しています。

冷蔵倉庫業で使用される従来の冷凍機ユニットの冷媒にはフロン系ガスが使用されていますが、フロン系ガスは温室効果ガスの一種でありCO2と比べて1万倍以上もの温室効果を持っている種類もあります。このフロン系ガスは冷凍機ユニットから少しずつ漏れて大気中へ放出されることが知られているため、使用が中止されつつあります。

出典:環境省 エネ特ポータル|活用事例|脱フロン・低炭素社会の早期実現のための省エネ型自然冷媒機器導入加速化事業|水産物流通倉庫におけるモニタリングシステムによる保守点検業務の効率化を参照。

https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/case/
(2024年1月22日時点)

  • 取り組み事例5:設備更新とエネルギーデータの遠隔確認によるCO2排出量の可視化

「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業」に採択された株式会社タイヘイは、事業場の設備老朽化に伴い冷凍機やショーケース、冷却器、空調設備を高効率の設備に入れ替えることで省エネ化することでCO2排出量とエネルギーコストを同時に下げることに成功しています。さらに、LEDを上手く取り入れることでも省エネの効率を上げており、年間のCO2排出量を約261トン削減しています。加えて、年間約899万円のエネルギーコストの削減にも成功しています。

出典:環境省 エネ特ポータル|活用事例|工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業|設備更新とエネルギーデータの遠隔確認によるCO2排出量の可視化​を参照。

https://www.env.go.jp/earth/earth/ondanka/enetoku/case/
(2024年1月22日時点)

補助対象 業種・部門 補助目的 補助内容 CO2年間削減量
箕面市 廃棄物・リサイクル 設備老朽化に伴う高効率設備の導入 補助金額:約19億4千万円補助率:1/2 約2,430トン
株式会社トーエネック 建設業 余剰太陽光発電電力を用いた水素製造及び貯蔵 補助金額:約3,700万円補助率:2/3 約2トン
株式会社エンジン 建設業 ESGリース促進事業を利用した低燃費建設機械導入 補助金額:約92.3万円補助率:3%(総リース料に対する) 約21トン
豊海東都水産冷蔵株式会社 冷蔵倉庫業 水産物流通倉庫におけるモニタリングシステムによる保守点検業務の効率化 補助金額:約4,166万円補助率:1/3 約638トン
株式会社タイヘイ 商業 設備更新とエネルギーデータの遠隔確認によるCO2排出量の可視化​ 補助金額:約1,500万円補助率:1/3 約261トン

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制認定事例

カーボンニュートラルに向けた投資促進税制はすでに認定事例があり、様々な企業で活用されるようになりつつあります。以下にこれまで認定された事例を表にして示します。

生産性向上およびCO2排出量の削減は炭素生産性により数値化され、目標値として設定されます。多くの場合、太陽光発電設備の導入や省エネ設備の導入により生産性と共に炭素生産性を向上させています。

企業名 業種 炭素生産性目標 取り組み内容
ローム・アポロ株式会社 製造業 18.3%向上 化合物半導体など脱炭素化製品の開発及び従来生産装置を省エネ性能の高い装置へ更新。
⽇亜化学⼯業株式会社 製造業 16.7%向上 リチウムイオン電池の正極材量生産ラインに省エネ設備を導入。
アストラゼネカ株式会社 製造業 91.2%向上 太陽光発電設備を導入。
⽇本ビルコン株式会社 非製造業 14.2%向上 従来の空調設備を⾼効率のガスヒートポンプエアコン)空調装置へ更新。
マックスバリュ⻄⽇本株式会社 非製造業 10.9%向上 冷凍・冷蔵ケースや照明設備を高効率の省エネ設備に更新。
太陽⽣命保険株式会社 非製造業 27.6%向上 再生エネ由来電力への切り替え及び高効率の省エネ設備に更新。

出典:経済産業省ホームページ|事業適応計画(産業競争力強化法)(https://www.meti.go.jp/policy/economy/kyosoryoku_kyoka/jigyo-tekio.html)ページ内「認定事例すべて見せます!(令和4年7月時点:認定全50件)」を編集し、作成。

(2024年1月22日時点)

5. まとめ

本記事では、脱炭素に伴う補助制度について補助金と優遇税制の2側面から見てきました。政府による補助制度は経済産業省のグリーン成長戦略や環境省のエネ特に伴い創設されており、将来的には拡大していくことが予想されます。また、環境省が示す脱炭素ロードマップにより、地方でも活動が活発化しており、脱炭素関係の補助金が増えつつあります。ここで紹介した補助制度は数あるうちの一部ですので、脱炭素経営に取り組む事業者の方々は自社の事業に合った補助制度をぜひ探してみてください。

執筆者:高牟礼昇