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温室効果ガス排出量の算定方法を解説!数値を把握するべき理由も紹介

作成者: 大塚勝臣(おおつかかつおみ)|2025年03月21日

世界的に、温室効果ガスの排出量を減らす取り組みが注目されるようになり、各国で促進されています。温室効果ガスの排出量を減らすためには、排出量を把握することが欠かせません。日本においても、特定排出者に対し、温室効果ガス排出量の算定と国への報告が義務付けられています。

本記事では、温室効果ガス排出量の算定方法を紹介します。算定方法を活用して、自社の目標設定に役立ててください。

温室効果ガスの排出量削減に向けた取り組みが行われている

地球温暖化が進む大きな原因として、人間による温室効果ガスの排出が挙げられています。地球温暖化の対策として、温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みが世界各国で実施されており、日本もその1つです。

温室効果ガスとは

温室効果ガスとは、太陽から放出された熱を地球上にとどめ、地球表面を温める働きがあるガスのことです。英語ではGreenhouse Gasと表記され、日本でも頭文字を取って「GHG」と呼ばれています。

温室効果ガスがあることで、地球の気温は生き物が住みやすい状態を保てているため、地球上の生き物にとっては欠かせない要素の1つです。温室効果ガスは1つではなく、以下のように複数種類があります。

・二酸化炭素
・メタン
・一酸化二窒素
・ハイドロフルオロカーボン類
・パーフルオロカーボン類
・六フッ化硫黄
・三フッ化窒素

温室効果ガス排出量の分類

温室効果ガスの算出には「GHGプロトコル」と呼ばれる、温室効果ガスに関する国際的なガイドラインが用いられるケースが多い傾向にあります。GHGプロトコルでは、事業活動を行ううえで発生する温室効果ガス排出量を3つのScopeへ分類し、区別しています。

・Scope1:事業者による温室効果ガスの直接排出
・Scope2:他社から供給された電気・熱・蒸気の生産段階で生じる間接排出
・Scope3:Scope1とScope2に含まれない、他社による間接排出

この3つのScopeを合算すると、事業活動におけるサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の算出が可能です。

温室効果ガス排出量の算定が求められる理由

以下では、温室効果ガス排出量の算出が、多くの企業に対しても求められる主な理由をご紹介します。

パリ協定で排出量の報告義務が課せられた

パリ協定において日本は、2013年度比で2030年までに温室効果ガスを26%削減、2050年までに80%削減と目標を掲げています。パリ協定の締結によって設定された温室効果ガスの削減目標は、国際社会との約束といえます。

約束を果たすため、日本ではさまざまな法律を制定し、実現に向けて取り組んでいます。具体的には、地球温暖化対策の推進に関する法律(以下「地球温暖化対策推進法」という。)や、エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(以下「省エネ法」という。)を制定しました。

温対法では、一定以上の温室効果ガスを排出している事業者に対して、国に対しScope1とScope2の算出結果を報告する義務があります。また、改正省エネ法では、特定の事業を行い、一定以上の温室効果ガスを排出する事業者に対して、エネルギー使用量の報告を義務付けています。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)により情報開示が求められている

G20の要請により設立された気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)では、気候変動が企業経営と金融機関のリスクになるとして、気候変動に関する情報開示を各企業に求めています。

情報開示しているかどうかで、融資判断を行う投資家も多いため、企業としても投融資を受ける上で気候変動に関する情報開示は不可欠といえるでしょう。また、投融資を求める目的で情報開示に取り組んでいる企業もあります。

サプライチェーン全体での排出量削減が進められている

自社のみではなく、事業活動に関わっているサプライチェーン全体の温室効果ガス排出量を報告し、削減に向けて取り組む必要があります。企業によっては、各事業者に温室効果ガス排出量の報告・削減を求めている場合もあるため、各事業者においても排出量の算出と報告が欠かせません。

自社の温室効果ガス排出量削減目標の設定に役立つ

脱炭素化を目指す際に大切なのは、自社がどの程度の温室効果ガスを排出しているかを把握することです。自社の現状を知らなければ、効果に結びつかない対策を行う可能性もあるため、事業活動を行う過程で「どこから」「どの程度」排出されているのか特定し、把握しておかなければなりません。

温室効果ガスの排出量と排出原因を明確にすれば、自社に最適かつ効率的な排出量削減の目標と戦略を設定し、取り組むことが可能です。

温室効果ガス排出量算定の対象となる範囲

温室効果ガス排出量を算定する際に対象となるのは、主に2種類です。ここでは、それぞれの方法について解説します。

サプライチェーン排出量

サプライチェーン排出量では、自社から排出される温室効果ガスの算定だけではなく、事業活動に関連するサプライチェーン全体での温室効果ガス排出量を算定します。

排出源に応じて、温室効果ガスに関する国際的なガイドラインに基づき、Scope1・2・3に区分します。Scope1・2・3の合計が、サプライチェーン排出量です。原材料の調達・製造・使用・廃棄の一連の流れにおける排出量を、事業所単位で算出します。

LCA(ライフサイクルアセスメント)/カーボンフットプリント

LCA(ライフサイクルアセスメント)では、製品・サービスのライフサイクル全体や、ある段階での環境にかかる負荷を評価します。環境負荷を温室効果ガス全体ではなく、CO2に限定した場合は、カーボンフットプリントと呼ばれることが、一般的です。

LCA(ライフサイクルアセスメント)は、ガイドラインや算出方法が明確化されておらず、実施するには専門家のサポートが必要になるケースがあります。また、カーボンフットプリントは算出したあと、CO2排出量を消費者にも分かりやすく公開しておくことで、消費者へのグリーン購入の促進にもつながります。

温室効果ガス排出量の算定方法

簡易的に温室効果ガスの排出量を算出する計算式は、「温室効果ガス排出量=活動量×排出原単位」です。計算に使用する「活動量」と「排出原単位」を算出したうえで、計算を行う必要があります。

・活動量:原材料の使用量・生産時のエネルギー使用量・燃料の焼却量・輸送量・廃棄量など
・排出原単位:各原料やエネルギーにそれぞれ定められた単位あたりの排出量

より正確に計算するには「排出原単位」を求める

一般的に上述した簡易的な計算式では、IDEAや環境負荷原単位データブック(3EID)などで公開されている排出原単位から選び出して使用します。

しかし、より正確に温室効果ガス排出量を求める場合は、排出原単位を測定した実測値の活用がおすすめです。排出原単位で数値は変わるため、正確な数値を求めるには数値を調整しなければなりません。ただし、実測値を使う方法は、データ収集の難易度が上がるため、簡易的に計算する方法から取り組むことが推奨されています。

サプライチェーン排出量の算定方法

サプライチェーンは、原材料の調達・製造・使用・廃棄に至る一連の流れを指します。一般的に、サプライチェーンのなかで排出される温室効果ガスを、サプライチェーン排出量と定義します。

サプライチェーン排出量を求める計算式は、以下のとおりです。

「サプライチェーン排出量=Scope1+Scope2+Scope3」

そのためサプライチェーン排出量の計算には、Scope1・2・3を明確にしてから算出しなければなりません。

Scope1・Scope2

Scope1は自社における燃料の燃焼によって直接的に排出されたものを指します。一方、Scope2は他者から供給された電気や熱、蒸気などのエネルギーの使用によって間接的に排出されたものです。

Scope1・2は両方とも、温室効果ガス排出量の算定と同様に、以下の計算式を使います。

「Scope1またはScope2=活動量×排出原単位」
(Scope2は事業所単体の排出量)

Scope3

Scope3は、Scope1と2以外で間接的に排出されたものを指します。サプライチェーン全体で関わる他社からの排出が、Scope3に該当します。

Scope3は、15のカテゴリに分けられており、1~8は購入に関わる「上流」、9~15は販売に関わる「下流」に分類されています。

1.購入した製品・サービス
2.資本財
3.Scope1・2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動
4.輸送、配送(上流)
5.事業活動から出る廃棄物
6.出張
7.雇用者の通勤
8.リース資産(上流)
9.輸送、配送(下流)
10.販売した製品の加工
11.販売した製品の使用
12.販売した製品の廃棄
13.リース資産(下流)
14.フランチャイズ
15.投資

Scope3においては、目的を明確にして体系的に進めることが重要です。計算式は基本的にScope1・2と同様の計算式である「Scope3=活動量×排出原単位」を活用して算出します。

サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量を算定するメリット

以下では、サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量を算定して得られるメリットについて解説します。

現状を把握して対策を講じられる

サプライチェーン全体で排出量を算出すると、サプライチェーンの「どの時点で」「どのくらい」温室効果ガスが排出されているのかを把握できます。改善するべき箇所が明確になることで、必要な対策を講じられるようになるでしょう。効率的に地球温暖化に向けた対策を行うためにも、温室効果ガス排出量を削減すべき場所を把握することが大切です。

ステークホルダーからの信頼を獲得できる

サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量を算出すると、数値が明確になるため投資家や顧客、従業員などのステークホルダーからの質問に対して、適切に対応できます。また、真摯に取り組む姿勢がステークホルダーから評価され、好評を得られることもあるでしょう。投資家から投融資を得られやすくなるケースも期待できます。

取引先との関係性を強化できる

サプライチェーン全体で温室効果ガス排出量削減に取り組むには、サプライチェーンに関わっている企業との協力が欠かせません。サプライチェーン排出量を算定すれば、同じ目標に向けて情報共有や意見交換を行うことが可能になり、企業間における関係性の強化が期待できます。

まとめ

温室効果ガス排出量の算出は、世界的な課題である地球温暖化対策に企業が取り組む上で欠かせません。自社の現状把握につながり、取り組むべき課題が明確になり、戦略を策定しやすくなるでしょう。

温室効果ガスの算出方法をはじめ、削減に向けた取り組みでお悩みの方は、ゼロ炭素ポートの活用をご検討ください。自社のみならず、他社と協力しお客さまの抱えるお悩みに対する最適なソリューションをご提案いたします。温室効果ガス排出量削減に取り組みたいとお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA