2025年4月より「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律(以下「改正建築物省エネ法」という。)」が施行されます。改正建築物省エネ法は、全ての住宅・建築物と増築・改築が対象です。この記事では、改正建築物省エネ法が増築・改築に与える影響や、省エネ適判対象の増築・改築の条件・フローなどについて解説します。
建築物省エネ法・改正建築物省エネ法は同じ法律であり、改正後のものを「改正建築物省エネ法」と呼びます。概要は、以下のとおりです。
建築物省エネ法とは、2015年に制定されて2016年から段階的に施行された法律です。建築物の省エネ性能の向上を図ることを目的に、制定されました。
改正建築物省エネ法は、建築物省エネ法を改正した後の法律を指します。最新の改正は、2022年6月に公布され、2025年4月に施行されます。建築物分野における「省エネ対策の加速」や「木材利用の促進」を目的として、改正されました。改正後は、全ての住宅・建築物に原則として、省エネ基準適合が義務付けられます。
改正建築物省エネ法において、省エネ基準への適合義務は「建築物を新築する場合」に加え、「増築」「改築」においても適用されます。また、改正前は既存部分を含めた「建築物全体」が省エネ基準適合でしたが、改正後は「増築部分」が省エネ基準に適合していればよいとされています。
改正建築物省エネ法が増築・改築に与える影響について注目しておきたいポイントが、以下の3点です。
改正前の増築・改築では、中規模以上(300㎡以上)の非住宅のみが適合対象でした。改正後は、増築部分の規模が10㎡を超えると省エネ基準適合となるため、ほとんどの増築・改築が対象になります。
改正前は、大規模な非住宅建築物(工場・学校・病院等)の一次エネルギー消費量基準が1.0でした。改正後は、以下のように省エネ基準が用途別に定められるようになり、数値も変更されます。結果的に、省エネ水準が15~25%程度強化されることになりました。
・工場等:0.75
・事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等:0.8
・病院等・飲食店等・集会所等:0.85
改正によって、建築士は建築主に「省エネ意識向上」「建築物の省エネ性能向上」などを促す努力義務が課せられます。建築主に対して、国の温室効果ガス排出削減量の目標や省エネ住宅への支援措置などの情報提供を行わなくてはなりません。
省エネ適合性判定(以下「省エネ適判」という。)とは、建築物が省エネ基準に対して適合・不適合かを判定する措置です。新築はもちろん、増築・改築の際も省エネ適判を受ける必要があります。
改正建築物省エネ法において、増築・改築時の省エネ適判は、以下の3項目で判断されます。以下では、それぞれの項目について詳しく解説します。
増築・改築を行う際に、建築物の非住宅の床面積が「300㎡以上」であるか「300㎡未満」であるかが、見極めのポイントになります。「300㎡以上」の場合は省エネ適判が必要ですが「300㎡未満」の場合は不要です。
次に、増築・改築を行う非住宅部分の増改築の規模が「300㎡以上」であるか「300㎡未満」であるかが、ポイントになります。「300㎡以上」の場合は省エネ適判が必要ですが、「300㎡未満」の場合は不要です。
増築・改築の建築物が建った時期も重要です。「2016年4月1日以前」に建てた建築物は、省エネ適判対象の確率は低いでしょう。しかし、そのほかの条件で対象になるケースもあります。建築物を建てた日付が「2016年4月1日以降」の場合は、省エネ適判対象です。
住宅部分の単位住戸・共用部分や非住宅部分を増築・改築する場合は、以下の届出が必要です。一次エネルギー消費量は全てに届出が必要ですが、外皮性能には届出の要・不要があります。
一次エネルギー消費量とは、住宅や建築物などの室内でどのくらいのエネルギーが消費されるのかという評価です。以下のような設備の合計で評価され、全住戸の合計が基準値以下になることが条件になります。
・風呂
・台所
・給湯設備
・照明設備
・家電
・暖冷房設備
・24時間換気設備
外皮性能とは、住宅(単位住戸)に適用される基準であり、共用部分や非住宅部分においては届出不要です。住宅の窓や外壁などの断熱性能を評価します。増築・改築においては、2016年4月以前に現存しており、一次エネルギー消費量が基準を満たしている場合は、届出不要です。
増築において省エネ適判が必要な場合は、増築後の建物全体で省エネ基準をクリアしなければなりません。既存部分の省エネ計算は、以下の2つの方法から選んで計算します。
1.面積と増築部分を按分し、既存部分のBEIを「1.2」として省エネ計算を省略する方法
2.設計図面などで既存部分の省エネ計算をした後に増築部分と合わせる方法
増築の際の省エネ基準には、以下のような傾向があります。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
新築とは異なり、増築の省エネ基準は既存部分が建てられた時期によって変わります。
・既存部分が「2016年4月1日以前」からある建物は、省エネ基準「BEI 1.1」
・既存部分が「2016年4月1日以降」に建てた建物は、省エネ基準「BEI 1.0」
先述した「既存部分と増築部分の省エネ計算方法」では、面積と増築部分を按分し、既存部分の省エネ計算を省略する方法を解説しました。ただし、この方法で省エネ基準をクリアするには、増築部分の省エネ性能を上げなければなりません。
つまり、増築後の建物全体の面積に対して、増築部分の面積が小さければ小さいほど省エネ基準をクリアするのが難しくなるため、既存部分の省エネ計算が必要になる可能性が高くなります。
届出は、申請対象物件の建設地を管轄する「所管行政庁」または業務範囲としている「登録省エネ判定機関」になります。届出先によって対応が違うことがあるため、省エネ基準をクリアできそうにないとわかった時点で、届出先に相談してみるのもよいでしょう。
増築・改築において、省エネ適判の際に気をつけなければならないポイントがいくつかあります。以下の2点は、特に注意してください。
サッシは壁や天井などに比べて、熱の損失が大きいため、省エネ適判に影響しやすい設備です。特に、単板ガラスを使用したサッシは熱損失が大きいため、注意しましょう。断熱性能を考慮し、必要であれば建築物全体の断熱性能が向上する高断熱サッシに交換または改修することもおすすめです。
古い設備のエネルギー効率は、新しいものに比べて劣ります。増改築の際は、必要であればエアコンや照明器具を最新の高効率な設備に交換しておくとよいでしょう。
増築・改築の際の省エネ適判では、模様替えの場合や減築・改築を同時に行う場合もあるため、チェックしておきましょう。
壁紙を貼り変えるなどの「模様替え」や雨漏りが原因の「修繕」は、リフォームにあたるため省エネ適判対象外です。ただし、リフォームと同時に10㎡以上の増改築を実施するケースは、省エネ適判の対象になります。
減築と増築を同時に行うケースであっても、増築部分が10㎡を越えた場合は適合判定の対象です。なお、減築部分と増築部分の相殺はできません。
この記事では、省エネ適判対象の増築・改築の条件・フローや、増築・改築の届出基準を解説したので、参考にしてください。改正建築物省エネ法では、増築部分の規模が10㎡越えると省エネ基準適合になります。ほとんどの増築・改築が対象となるため、注意が必要です。
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会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA