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GHGプロトコルのスコープ3とは?15のカテゴリーや算定手順など解説

作成者: 大塚勝臣(おおつかかつおみ)|2025年03月21日

近年、企業の温室効果ガス排出量の算定・報告において、国際基準であるGHGプロトコルが広く採用されています。GHGプロトコルは、排出量を3つのスコープに分類し、サプライチェーン全体での排出量をトータルで算出・報告するガイドラインです。この記事では、GHGプロトコルの基本的な考え方と、スコープ3について詳しく解説します。ぜひ、参考にしてください。

GHGプロトコルの概要

GHGプロトコルは、世界環境経済人協議会(以下「WBCSD」という。)と、世界資源研究所(以下「WRI」という。)が共同で策定した、温室効果ガス(以下「GHG」という。)排出量の算定・報告に関する国際基準です。

GHGプロトコルに準ずると、サプライチェーン全体でのGHG排出量を対象として、組織の事業活動に関連する直接・間接的な排出を体系的に把握できます。また、統一された基準に基づいて報告を行うことで、異なる組織間や国・地域間でのGHG排出量の比較が容易になります。

※参考:温室効果ガス(GHG)プロトコル~事業者の排出量算定及び報告に関する基準~<仮訳>|環境省

サプライチェーン排出量に着目すべき理由

サプライチェーン全体でのGHG排出量に着目すべき理由は、排出量の多い工程や領域を特定するためです。自社の事業活動による直接的な排出量だけではなく、サプライチェーン全体からの排出量を正確に把握しなければ、効果的な削減施策を実施できません。まずはサプライチェーン全体の状況を把握するところから、GHG排出量削減に取り組みましょう。

気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に賛同する企業・機関の数

気候関連財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」という。)は、企業に対して気候変動関連の取り組みやリスク・機会に関する情報開示を推奨する、国際的なイニシアチブです。開示項目には、GHGプロトコルに準拠したGHG排出量の報告も含まれています。

2023年11月24日時点で、世界全体で4,932の企業・機関が賛同を表明しており、日本からも1,488の企業・機関が参加するなど、気候関連情報の開示に対する関心が高まっています。

※参考:日本のTCFD賛同企業・機関 (METI/経済産業省)
※参考:【簡易版】TCFDシナリオ分析実践ガイド|環境省

GHGプロトコルの3つのスコープとは

ここでは、GHGプロトコルの3つのスコープについて解説します。それぞれのスコープの範囲と概要を解説するため、参考にしてください。

スコープ1

スコープ1は、自社の事業活動に伴う直接的なGHGの排出を指します。例えば、工場での製造過程における燃料の使用や、社用車からの排気ガスなどがスコープ1に該当します。

スコープ2

スコープ2は、他社から購入した電力や熱エネルギーの使用によって生じる、間接的な排出量を指します。オフィスや工場での電力使用、購入した蒸気の利用などが、スコープ2に含まれます。

スコープ3

サプライチェーンにおけるGHG排出量のうち、スコープ1・スコープ2を除いた排出量がスコープ3となります。原材料の調達から製品の使用・廃棄まで、自社の上流・下流のサプライチェーンから排出されるGHGが、スコープ3に相当します。スコープ3は15のカテゴリーに分類されており、スコープ3が全体の排出量の大部分を占める企業も少なくありません。

GHGプロトコルのスコープ3のカテゴリーは?

GHGプロトコルのスコープ3に含まれる15のカテゴリーは、以下のとおりです。

・購入した製品・サービス
・資本財
・スコープ1・スコープ2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動
・輸送、配送(上流)
・事業活動から出る廃棄物
・出張
・雇用者の通勤
・リース資産(上流)
・輸送、配送(下流)
・販売した製品の加工
・販売した製品の使用
・販売した製品の廃棄
・リース資産(下流)
・フランチャイズ
・投資

各カテゴリーの排出量を正確に把握し、データを収集・分析することで、効果的な削減対策の立案が可能となります。

※参考:サプライチェーン排出量の考え方|環境省

GHGプロトコルを意識するメリット・デメリット

以下では、企業の立場から、GHGプロトコルを意識するメリット・デメリットを解説します。

算定・報告するメリット

GHGプロトコルに準拠すると、正確な排出量データに基づく効果的な削減施策により、世界規模で取り組まれている気候変動対策への貢献が可能になります。また、環境への取り組みの可視化は、投資家や取引先、消費者といったステークホルダーからの信頼獲得にもつながります。さらに、エネルギー使用の効率化を通じた、コスト削減も期待可能です。

算定・報告するデメリット

サプライチェーン全体のデータ収集には多大な労力が必要となる上に、専門的な知識や技術が求められます。取引先との関係性や技術的制約により、必要なデータの入手が困難なケースもあります。また、継続的な取り組みには相応の人的・金銭的リソースが必要になるため、企業にとって大きな負担となるかもしれません。

ただし、上記の課題は、外部コンサルタントの活用や、GHG排出量算定ツールの導入、自治体の補助金制度の利用などで、解決できる可能性があります。企業の状況に応じて、適切なサービスや制度を検討しましょう。

GHGプロトコルにおけるスコープ3を含む排出量算定手順

GHGプロトコルにおける、排出量の算定手順を解説します。計画立案からデータの取得・入手、報告書の作成まで段階的に進めましょう。

1.範囲を決める

算定の対象となる範囲を明確に設定しましょう。自社のサプライチェーン全体を俯瞰し、GHGを排出する主要な活動を特定します。それぞれの活動を明確に区分けして算定結果をまとめると、排出量の多い活動を特定でき、効果的な削減計画を立案できます。

2.算定する温室効果ガスを決める

GHGプロトコルでは、算定対象とするGHGの種類を特定する必要があります。一般的な二酸化炭素をはじめ、メタン、一酸化二窒素など、自社の事業活動に関連するGHGを適切に選定しましょう。

3.データを取得・入手する

各活動における具体的なデータ(活動量)を、直接測定や間接測定などの方法で収集します。自社内の電力使用量や燃料消費量などのデータに加え、サプライチェーンの取引先や関係者からも必要なデータを入手してください。サプライチェーン全体における排出量を算出するためには、関係者との連携のもと、正確なデータ収集が求められます。

4.サプライチェーン排出量を算出する

個別の排出量を、活動量に単位当たりの排出量を表す「排出原単位」を掛け合わせて算出しましょう。サプライチェーン全体のGHG排出量は、スコープ1、2、3の排出量を合計して算出されます。このような体系的な算出手順により、GHG排出量を国際基準に沿って可視化できます。

5.報告書を作成する

算定結果をまとめる際は、GHGプロトコルの基準に従い、具体的な測定方法や算定手順、採用した前提条件などを明記します。さらに、第三者機関による検証を受けることで、報告書の信頼性と客観性が高まり、ステークホルダーに対する説得力のある情報開示が可能となります。

GHGプロトコルにおけるスコープ3に関する企業の取り組み

GHGプロトコルにおけるスコープ3に関する企業の取り組みとして、イオン株式会社と住友林業株式会社の事例を紹介します。

イオン株式会社の事例

イオン株式会社の2013年度の報告によると、スコープ3排出量のうち、カテゴリー1「購入した製品・サービス」が最も大きな割合を占めました。カテゴリー1の割合は全体の約55%を占めています。同社は製造委託先との密接な連携を図り、サプライチェーン全体でのGHG排出量削減に向けた取り組みを推進しています。

住友林業株式会社の事例

住友林業は2014年度の方向において、スコープ3排出量のうち、カテゴリー11「販売した製品の使用」による排出が、全体の約半分を占めていたと明らかにしました。同社は住宅の使用時における二酸化炭素排出削減に注力し、ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の普及を進めています。

GHGプロトコルの活用方法

GHGプロトコルは、さまざまな分野で活用されています。ここでは、企業、自治体、投資家の立場からGHGプロトコルの活用方法を解説します。

企業の活用方法

企業はGHGプロトコルを活用すると、自社のサプライチェーン全体におけるGHG排出状況を把握できます。分析結果に基づいて効果的なGHG削減戦略を立案することで、環境に大きく貢献できます。

自治体の活用方法

自治体も、地域全体におけるGHG排出量を把握し、効果的な削減戦略を展開してきました。公共交通機関の整備や再生可能エネルギー発電設備の導入など、地域特性に応じた取り組みを実施しています。

投資家の活用方法

投資家は企業のGHG排出量データを、ESG投資における評価指標として活用しています。気候変動リスクへの対応や環境負荷低減への取り組みを評価する際に、GHGプロトコルに基づく報告は重視されます。

GHGプロトコルについてよくある質問

GHGプロトコルとSDGsの関係性や、地球温暖化対策の推進に関する法律との違いを解説します。

GHGプロトコルとSDGsの関係性

GHGプロトコルとSDGsは、根底に、持続可能な社会の実現という共通の目的があります。特に以下のSDGsの目標は、GHG排出量の把握と削減の取り組みと密接に関連しています。

・目標7:エネルギーをみんなにそしてクリーンに
・目標12:つくる責任つかう責任
・目標13:気候変動に具体的な対策を

GHGプロトコルと地球温暖化対策の推進に関する法律の違い

地球温暖化対策の推進に関する法律(以下「地球温暖化対策推進法」という。)は、GHG排出量の算定・報告・公表に関する日本の法律です。一方、GHGプロトコルは、国際的に認められたGHG排出量の算定・報告基準であり、世界中の企業や組織が活用しています。

両者は、適用範囲や要求事項に違いがあり、いくつかの日本企業は両方の基準に従って報告を行っています。

※参考:地球温暖化対策の推進に関する法律|e-Gov 法令検索

スコープ3に関するGHGプロトコルの改訂内容

スコープ3に関するGHGプロトコルの改訂内容が、2024年6月に公開されました。改訂では、より実態に即した排出量の算定に向け、15のカテゴリー区分の詳細な見直しが行われています。他にも、「生物起源排出と除去」について、土地セクター&除去ガイダンスと整合性を取ることが明記されました。

改訂を機に、企業には環境負荷低減への一層の取り組みと、より詳細な情報開示が求められています。

※参考:GHGプロトコルの改訂に係る論点の概要|経済産業省

まとめ

GHGプロトコルは、GHG排出量の算定・報告に関する国際基準です。GHGプロトコルは、サプライチェーン全体でのGHG排出量の把握と、各活動における排出量の明確化に役立ちます。排出量は3つのスコープに分類され、なかでもスコープ3は、自社の上流・下流のサプライチェーンから排出されるGHGを指します。

ゼロ炭素ポートは、自社のサービスだけではなく他社のソリューションも含めて、お客さまの脱炭素への取り組みを総合的にサポートするサイトです。GHGプロトコルに準拠した算定・報告をお考えでしたら、ぜひゼロ炭素ポートをご活用ください。

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA