近年、さまざまな分野でサステナビリティが重視されるようになりました。アパレル産業においても、サステナビリティの取り組みが必要になっています。アパレル産業はさまざまな課題を抱えており、サステナビリティを実現するには消費者を巻き込んだ取り組みが重要です。この記事では、アパレル産業におけるサステナビリティの必要性や課題などを解説します。
アパレル産業にはさまざまな課題があります。ここでは、具体的にどのような課題があるか解説します。
日本では人口減少が続いているうえに、可処分所得も減っている状況です。不景気が続くなかでもアパレルの市場規模は一定の水準を維持していますが、今後の影響が懸念されています。さらなる人口減少や景気の悪化が起きると、アパレルの市場規模も縮小すると考えられます。
インターネットの普及によりEC市場の規模も拡大し、消費者の購買行動は大きく変化しました。インターネットで検索すれば簡単に価格を比較できるため、多くの消費者が最も安い店で商品を購入しようとします。これにより、各社の価格競争が激しくなりました。
近年は「コト消費」の需要が高まっており、モノの価値よりも体験を重視してお金を使いたいと考える人が増えています。さまざまな商品を手軽に購入できるようになり、モノによる購買意欲を簡単に満たせるようになった結果、商品の購入による満足感が薄れています。アパレルについても商品そのものだけでなく、体験を含む総合的な評価が重要になってきました。
どの産業でもサステナビリティが重視されているなか、アパレル産業も例外ではありません。ここでは、アパレル産業において指摘されている問題とその要因について解説します。
アパレル産業は温室効果ガスを多く排出しています。また、アパレル産業に関連する繊維産業では排水が大量に発生しており、環境に対する影響が指摘されています。
さらに、アパレルの生産量が増加しているなかで、1人あたりが購入する衣料品の数も増えている状況です。本来は不要なはずの衣料品も購入され、着用される機会がないまま捨てられるケースも少なくありません。再利用できる衣料品も廃棄されています。
アパレル産業のサプライチェーンには多くの企業や人が関わっており、消費者に届くまでの道のりが長いです。その過程で二酸化炭素が多く排出されています。天然繊維と化学繊維のいずれであっても、生産の過程で環境に多くの負荷をかけています。
また、アパレル産業では季節や流行に応じてさまざまな商品が作られるため、在庫が残りやすいのも特徴です。セールをしてもすべてが売れるわけではなく、リユースされず廃棄される衣料品も多くあります。ファストファッションの台頭による大量生産も、環境に大きな負担をかけています。
日本の衣料品は、9割以上を輸入に頼っている状況です。基本的に、アパレルは人件費が安い国で生産されています。具体的には、中国や東南アジアなどの国々です。衣料品の生産に携わる人々は、劣悪な労働環境を強いられている場合も珍しくありません。
アパレルの生産は、労働力を多く必要とする労働集約型です。生地、染色、縫製などの各工程に人の介在が求められ、人件費がかかります。しかし、企業は低コストで衣料品を生産しようとするため低賃金で働く人も多く、労働環境が劣悪になりがちです。
サステナブルファッションとは、どのようなものでしょうか。以下で、詳しく解説します。
サステナブルファッションとは、持続可能性に配慮しているファッションのことです。生産から消費までのそれぞれにおいて、地球環境に悪影響を及ぼさないようにします。すでに触れた通り、アパレルのサプライチェーンは長いため、サステナブルファッションへの取り組みにより、アパレル産業のさまざまな問題解決につなげることが可能です。
たとえば、再生素材や生分解性素材を利用して衣料品を作る方法があります。また、耐久性が高く、長く着用できる衣料品も、環境に対する影響を考慮しているといえるでしょう。
エシカルファッションとは、倫理的な正しさを意識したファッションのことです。たとえば、フェアトレードで取引された衣料品が該当します。動物に配慮した衣料品、オーガニックの材料を使用した衣料品もエシカルファッションです。
また、スローファッションとは、丁寧に生産されており、トレンドに左右されないファッションのことです。ファストファッションと真逆の意味があります。
SDGsは、国連サミットで採択された、持続可能性に関する世界的な目標です。17の目標が定められており、そのうちの「目標7・9・10・12・13・16・17」の7つがアパレルのサステナビリティに関連しています。具体的な内容は、クリーンなエネルギーの利用や気候変動対策をはじめ、技術革新やパートナーシップ、不平等の解消、生産の責任などです。
アパレル産業のサステナビリティは、どのような状況なのでしょうか。以下で、現状について詳しく解説します。
投資家は、企業の財務情報に加えて、非財務情報も考慮して投資先を選定する傾向が強まり、ESG投資が広がっています。企業が資金を確保するには、環境や社会に対する配慮が不可欠です。アパレル産業は環境に多くの負荷をかけているため、特に積極的にサステナビリティに取り組む必要があります。
消費者庁が公表しているアンケート調査によれば、アパレル産業のサステナビリティに対する消費者意識はあまり高くありません。サステナビリティに取り組んでいる商品であっても、割高なら購入を控えるという意見が目立ちます。このような状況を受け、消費者庁は倫理的消費の普及啓発を進めています。
※参考:「令和6年度消費生活意識調査(第4回)」の結果について|消費者庁
アパレル産業においてサステナビリティを推進するため、さまざまな取り組みが行われています。以下で、詳しく解説します。
ファッション協定は、アパレル企業32社が署名して2019年に作られた協定です。フランスのビアリッツで行われたG7サミットで提出されました。日本企業で初めて参加した企業はアシックスで、2020年に参加しました。
※参考:The Fashion Pact|The Fashion Pact
ファッション業界気候行動憲章は、2050年までにゼロ・エミッションの達成を目指すため、2018年に発表されました。アパレル企業43社が参加しています。参加している日本企業は、アシックス、ファーストリテイリング、YKKなどです。
環境省もアパレル産業のサステナビリティを推進しており、Webサイトを通じてサステナブルファッションを啓蒙しています。具体的には、アパレル業界の現状に関する具体的なデータに加え、衣料品を破棄せず循環させるためのモデルも示されています。
ファッションロス、リサイクル、アップサイクルなど、アパレル産業のサステナビリティについて幅広く学ぶことが可能です。
※参考:サステナブルファッション|環境省
アパレル産業では、サステナビリティを実現するために多様な取り組みが始まっています。
アパレル産業においては、動物の毛皮を使用せず衣料品を作る動きが広がっています。動物の毛皮の代わりとして、フェイクファー、フェイクレザー、ベジタリアンレザーなどが採用されています。アニマルフリーの衣料品の生産は生態系の保護につながり、畜産による温室効果ガスの排出も抑制することが可能です。
リサイクル素材を利用した衣料品の生産も増えています。リサイクルポリエステルを使用すれば石油の消費はもちろん、水の消費や温室効果ガスの排出も抑制が可能です。また、オーガニック素材を活用すると農薬や化学肥料の使用を減らせるため、環境に負担がかかりにくくなります。
フェアトレードは公正な取引という意味です。労働者の権利を保護するため、適正な価格で商品を取引する取り組みを表しています。それにより、労働者は労働に見合った適切な賃金を受け取ることが可能です。フェアトレード取引は、アパレル産業の労働環境の改善につながります。
アパレル産業においては、受注生産に取り組む企業も増えています。一般的に行われている見込み生産では売れ残りが生じやすく、廃棄も多く発生しがちです。衣料品を大量に廃棄すると、環境汚染を引き起す原因になります。受注生産で必要な分だけ衣料品を作る仕組みを確立すれば、資源を無駄にせず済みます。
近年、多くのアパレル企業がサステナビリティに取り組んでいます。ここでは、具体的な事例を紹介します。
ユニクロはグローバル展開しており、世界的に多くの衣料品を供給しています。衣料品の生産で環境に与える影響を抑えるため、さまざまな取り組みをしています。たとえば、ジーンズの仕上げ加工に使用する水の消費を削減する技術を開発しました。コートやジャケットなどに使用した、ダウンやフェザーのリサイクルにも取り組んでいます。
また、ユニクロの衣料品はベーシックなデザインが中心でトレンドに左右されません。長く着られるため、サステナビリティにつながります。
Patagoniaは、アメリカのカリフォルニア州に本社があるアウトドアブランドです。原材料の生産から衣料品の販売まで、一貫して環境や社会に対する配慮に力を入れています。「Worn Wear(ウォーン・ウェア)プロジェクト」も推進し、古くなった衣料品を修理やアップサイクルにより、再び使用できるようにする取り組みも行っています。
サステナビリティに関するさまざまな取り組みが評価され、2019年には国連の地球大賞を受賞しました。
アパレル企業がサステナビリティに貢献するには、商品のライフサイクル全体について、環境に対する負荷を減らす設計を心がけるべきです。そのためには環境に優しい素材を選び、生産の過程で発生する廃棄量も削減しなければなりません。
トレーサビリティを考慮し、情報開示も積極的に行うことが大切です。生産や購入の量を適切にする必要があり、循環利用の促進も求められます。
アパレル産業でサステナビリティを実現するには、消費者も積極的に参加する必要があります。ここでは、消費者に求められる行動について解説します。
消費者がサステナビリティに貢献するには、商品を購入する際に生産者情報を確認し、具体的にどのような取り組みを実施しているかチェックする必要があります。そのため、明確な情報開示を行っている企業の商品を選ぶことが大切です。
第三者認証マークがついている商品なら、客観的な情報も確認できます。たとえば、エコマークや国際フェアトレード認証ラベルなどがあります。
購入した衣料品を着用せず廃棄するパターンに陥らないためには、消費者自身がよく考えて衣料品を購入する必要があります。価格の安さに惑わされず、自分にとって本当に必要か検討したうえで購入しなければなりません。特に、着回しが可能で長持ちするかどうかが重要です。必要ない服は購入しないよう徹底するだけでも、サステナビリティに貢献できます。
レンタルやサブスクなど、シェアリングエコノミーの利用もサステナビリティにつながります。たとえば、特別なイベントで1回しか着ないと分かっている衣料品は、わざわざ購入しなくても事足りる可能性が高いです。
また、古着の購入もサステナビリティの実現のために効果的です。自分が所有している不要な服も、できる限りリユースやリメイクなどで有効活用しましょう。廃棄せざるを得ない場合も、適切にリサイクルすることが大切です。
アパレル産業にはさまざまな問題があり、サステナビリティの実現に向けた取り組みが重視されています。すでにさまざまな取り組みが展開されており、環境や社会に配慮したサプライチェーンの構築が始まっています。アパレル産業のサステナビリティを実現するには、消費者の積極的な参加も不可欠です。
ゼロ炭素ポートは、脱炭素に向けたさまざまな取り組みを紹介しているWebサイトです。自社のソリューションだけでなく、他社の事例も扱っており、さまざまなニーズに対応しています。サステナビリティの実現に役立つ情報を多く発信しているため、ぜひご利用ください。
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA