日本では、地球温暖化対策に取り組む法律として「地球温暖化対策の推進に関する法律(以下「地球温暖化対策推進法」という。)」を定めています。地球温暖化対策推進法は、制定から改正を繰り返し、近年では2024年に改正されました。この記事では、地球温暖化対策推進法の概要や改正内容について、詳しく解説します。
「地球温暖化対策推進法」の正式名称は、「地球温暖化対策の推進に関する法律」です。官民が一体となり、地球温暖化対策に取り組む具体的な行動指針を定めるため、1998年に作られました。
地球温暖化対策推進法は、海外の動向や時代に合わせて制定・改正されています。1998年から2024年までの26年間で、9回の法改正が行われています。
京都議定書が採択されたことを受け、円滑に実施するために必要な体制の整備を目的として改定されました。京都議定書の目標達成計画、計画実施の推進に必要な体制整備などが定められました。
京都議定書の発効や温室効果ガス排出量の大幅増を受けての改正です。温室効果ガスの算定・報告・公表制度の創設などが定められました。
京都議定書が定める第一約束期間前であること、海外の動向などを踏まえて改正されました。京都メカニズムを活用する際の口座簿の整備、京都メカニズムクレジットの活用などが定められています。
京都議定書の6%削減目標の達成されたことを受けて改正されました。温室効果ガスの算定・報告・公表制度の見直しや排出抑制等指針の策定など、6項目の改正を行っています。
参考:地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について(お知らせ)|環境省
2012年に京都議定書の第一約束期間が終了したことにより、京都議定書目標達成計画に基づく取り組みが終了、代わって地球温暖化対策計画を策定しました。温室効果ガスの種類にNF3(3ふっ化窒素)が追加されたのも、この年の改正からです。
2015年7月に、2030年度に温室効果ガスを26%削減する(2013年度比)目標を柱とした約束草案を国連に提出したことから、国として国民の自発的な行動を促進するために改正されました。地球温暖化対策計画に定める事項の追加、地方公共団体実行計画の共同策定などが行われました。
2020年に宣言された「2050年カーボンニュートラル」を基本理念として、法に位置づけました。地域の再生可能エネルギーを活用した脱炭素化への取り組み、企業の排出量情報をデジタル化し、オープンデータ化を推進する仕組みなどを定めました。
脱炭素をめぐる動きが加速化する流れを受けて、脱炭素社会実現に向けた対策強化のために、株式会社脱炭素化支援機構を設立しました。株式会社脱炭素化支援機構の機関、業務の範囲などを定め、国が地方公共団体への財政上の措置に努める旨を規定しました。
JCMクレジットの実施体制強化、地域脱炭素化促進事業制度の拡充などを定めました。2024年の改正の背景や改正内容については、詳しく後述します。
日本では「2050年カーボンニュートラル」の実現に向けて、さまざまな取り組みを行っています。国際的な観点と国内的な観点の両面において、2024年に規定を整備するとともに、制度の拡充等の措置を講じました。
2024年に地球温暖化対策推進法が改正された内容は、大きく分けて以下の3点です。
二国間クレジット制度(以下「JCM」という。)とは、途上国と協力し合って温室効果ガスの削減に取り組み、削減成果を両国で分け合う制度です。JCMクレジットとは、実現した温室効果ガスの削減・吸収量を定量化・数値化したものを指します。
2024年の改正によって、JCMのクレジット発行、口座簿の管理等に関して、主務大臣が指定する機関に手続きなどの一部を実施できるようになりました。
地域脱炭素化促進事業制度は、再生可能エネルギー事業においての地域トラブルを避けるため、地域経済の活性化や災害対策など、地域共生型の再生可能エネルギー事業を推進する制度です。改正前の再生可能エネルギーの促進区域等は、市町村のみが定められました。2024年の改正によって、都道府県と市町村が共同して定めることができるように改正されています。
日常生活で発生する温室効果ガス排出の削減促進のため、国民にライフスタイルの転換を促すのが目的です。原材料の調達から廃棄に至るまで、ライフサイクル全体で温室効果ガスの排出量が少ない製品を選択するよう、提案していくことを定めました。
2024年に改正された地球温暖化対策推進法の内容がわかったところで、ここからは対象の温室ガスの種類や対象企業を詳しく解説します。対象企業には、温室効果ガスの排出量の報告義務があります。
地球温暖化対策推進法では、以下の7つを温室効果ガスと定めています。
・二酸化炭素(以下「CO2」という。)
・メタン(CH4)
・一酸化二窒素(N2O)
・HFCS(ハイドロフルオロカーボン類)
・PFCS(パーフルオロカーボン類)
・SF6(六フッ化硫黄)
・NF3(三フッ化窒素)
地球温暖化対策推進法では、対象企業を以下のように分類しています。
・エネルギー起源のCO2(燃料の燃焼で発生する温室効果ガス)
・エネルギー起源のCO2以外(化学反応などで発生する温室効果ガス)
具体的に対象企業の例を挙げると、エネルギー起源のCO2は、発電所、産業・運用・商業セクターなどです。エネルギー起源のCO2以外の対象企業は、工場プロセス、産業処理業、農業セクター、製造業などが該当します。対象企業の詳細については、環境省の制度概要で確認可能です。
参考:制度概要|環境省
地球温暖化対策推進法の対象となっている企業には、温室効果ガスの排出量を報告する義務があります。排出量の報告を怠る、虚偽の報告をするなどの場合は、20万円以下の過料の罰則が科せられます。
以下では、地球温暖化対策推進法における温室効果ガス排出量の算定について、流れや計算式を解説します。
温室効果ガスの排出量は、以下の流れで算出します。
1.事業者の排出活動を抽出する
2.抽出した活動ごとの排出量を算定する
3.温室効果ガスの種類別に排出量の合計値を算定する
4.温室効果ガスごとの排出量をCO2の単位に換算する
算定方法の流れで先述した「2.抽出した活動ごとの排出量を算定する」では、以下の式を用います。
・温室効果ガス排出量=活動量×排出係数
排出係数とは、活動量1単位あたりの温室効果ガスの排出量を表す係数です。排出係数の表記は、温室効果ガスの種類によって異なります。
算定方法の流れで先述した「4.温室効果ガスごとの排出量をCO2の単位に換算する」では、以下の式を用います。
・温室効果ガス排出量(tCO2)=温室効果ガス排出量(tガス)×地球温暖化係数(GWP)
GWPとは、CO2を基準にして温室効果ガスがどれくらい地球を温暖化させる能力があるかを示した数字です。
地球温暖化対策推進法と混同されやすい法律に「エネルギーの使用の合理化に関する法律(以下「省エネ法」という。)」があります。両法律の違いは、以下のとおりです。
省エネ法は、1973年と1978年の2回にわたって日本を見舞ったオイルショックを受けて、1979年に成立した法律です。時代や状況に応じて何度も改正され、現在も続いています。化石燃料に依存しているエネルギーの需給構造の改善を目指しています。
地球温暖化対策推進法は、地球温暖化対策の推進を目的とした法律です。一方、省エネ法は地球温暖化対策推進よりも前の、エネルギー使用の効率化を目指すために制定されました。
地球温暖化対策推進法と省エネ法は目的が異なるため、対象となる物質や対象者が異なります。
| 対象物質 | 対象者 | |
| 地球温暖化対策推進法 | 温室効果ガス | 温室効果ガスを排出する事業者 |
| 省エネ法 | 電気・石油・ガスなどのエネルギー | エネルギーを使用する全ての事業者 |
地球温暖化対策推進法は、「温室効果ガスの排出量算定報告義務」があります。省エネ法の義務は、以下とおりです。
・エネルギー管理者などの選任義務
・中長期計画の提出義務
・エネルギー使用状況等の定期報告義務
罰則にも以下のような違いがあります。
| 未提出・虚偽 | エネルギー管理員などの不選任 | 情報漏洩・業務停止命令違反 | |
| 地球温暖化対策推進法 | 20万円以下の罰金 | - | - |
| 省エネ法 | 50万円以下の罰金 | 100万円以下の罰金 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
地球温暖化対策推進法は、海外の動向や時代に合わせて何度も改正が行われてきました。地球温暖化対策推進法の改正内容や対象の温室効果ガスや企業についての解説を、ぜひ参考にしてください。
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会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA