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サステナビリティには人的資本経営と人的資本開示が不可欠!それぞれを詳細解説

作成者: 大塚勝臣(おおつかかつおみ)|2025年03月19日

サステナビリティを重視する考え方は、国際目標のSDGsとも方向性が一致しています。そのため、多くの企業がサステナビリティを意識した取り組みを実施しています。サステナビリティな取り組みの実践には、人的資本への配慮が不可欠です。また、企業には人的資本経営の実践と人的資本の情報開示が求められます。

本記事では、サステナビリティにおける人的資本経営、人的資本の情報開示について解説します。ぜひ参考にしてください。

サステナビリティ・EGS・SDGsと人的資本経営

サステナビリティ・EGS・SDGsと、人的資本経営の関係性について解説します。

サステナビリティと人的資本経営

サステナビリティと人的資本経営は、切っても切り離せない関係にあります。人的資本の開発や活用は、サステナビリティに向けた取り組みの成果を大きく左右します。人的資本経営とは、従業員のスキルや知識を資本とみなし、人的資本への投資を通じて持続的な企業価値の向上を目指す手法のことです。

サステナビリティを重視した社内環境を整備するためには、人的資本への配慮が欠かせません。人的資本経営を推進するためには、人的資本の情報開示「(以下「人的資本開示」という。)」が強く求められます。人的資本開示については、詳しく後述します。

ESGと人的資本経営

近年、投資や経営において重要性を増しているESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つの観点から、企業の持続可能性を評価する基準です。多くの企業では、サステナビリティ戦略の核としてESGを位置づけ、特にSocial(社会)の領域において、人的資本経営を重要な施策として展開しています。

ESG投資の拡大とともに、ESGを意識した経営は、投資家からの評価に強く影響を及ぼすようになりました。人的資本経営を積極的に推進する企業は、ESGの観点から投資先として選ばれる傾向が強まっています。企業価値の向上を目指すにあたって、人的資本経営の実践はますます重要性を増しているといえます。

SDGsと人的資本経営

人的資本経営は、SDGsへの貢献に向けた取り組みの1つとして注目されています。また、人的資本経営は、SDGsが目指す「誰1人取り残さない」という理念とも合致します。SDGsには17の目標があるなかで、特に人的資本経営の推進と深い関係性のあるものは、以下の通りです。

・目標8「働きがいも経済成長も」
・目標3「すべての人に健康と福祉を」
・目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
・目標10「人や国の不平等をなくそう」

積極的な人材投資を行うことで、能力を高めた従業員は意欲的に働けるようになり、ウェルビーイングの向上も見込めます。従業員1人ひとりへの支援は男女の区別なく提供され、多彩な人材が活躍できるようになります。

※参考:SDGs17の目標|日本ユニセフ協会(ユニセフ日本委員会)

サステナビリティのおさらい

サステナビリティは、sustain(持続する)とable(〜できる)の造語で、「持続可能性」や「持続できる」と和訳できます。

サステナビリティには、以下の3つの柱があります。

・環境保護
・社会発展
・経済発展

企業におけるサステナビリティの重要性は、以下のような社会変化によって、近年ますます高まっています。

・地球温暖化をはじめとする環境問題の深刻化
・環境や社会に配慮した製品・サービスを求める消費者ニーズの拡大
・投資判断にESGを重視する投資家の増加
・国連サミットにおけるSDGsの採択

人的資本経営について

人的資本経営について、人的資本の定義に触れつつ実践する必要性を解説します。

人的資本とは

人的資本は、2001年の経済協力開発機構(OECD)により、以下のように定義されています。

「個人的・社会的・経済的厚生の創出に寄与する知識・技能・能力・属性で、個々人に備わったもの」

つまり、生まれながらの能力や資質に加え、後天的に習得したものも人的資本といえます。また、SDGsの採択を機に、人間らしい働き方がもたらす幸福感や健康なども、人的資本の要素として捉えられるようになりました。

人的資本の概念の普及により、「人材は消費する資源である」という従来の考え方から、「人材は価値が変動する資本である」という新しい考え方への転換が進んでいます。

※参考:The Well-being of Nations | OECD

人的資本経営が必要な理由

近年、主に以下の要因により、企業を取り巻く環境は大きく変化しています。

・産業構造の変化
・少子高齢化
・働き方の多様化

変化に対応するため、企業には時代に即した人材戦略が求められています。時代を反映した人材戦略の中核を担うのが、人的資本経営です。

人的資本経営は、持続可能な社会の実現に向けて、従業員1人ひとりが働きがいを感じられる環境づくりを推進します。人材への投資により、個々の人材が持つ潜在能力を巧みに引き出せると、新たなビジネスチャンスの創出やイノベーションの実現にもつながります。

サステナビリティ経営とESG投資の拡大

サステナビリティ経営の実践とESG投資の拡大に伴い、企業による人的資本経営への関心は一層高まっています。企業には、環境や社会に配慮した取り組みと、その取り組みに関する非財務情報の開示が強く求められるようになりました。

また、ESG投資では、SDGsの目標8「働きがいも経済成長も」に関する取り組みが、重視される傾向にあります。投資家は企業の持続可能性を評価する際に、人的資本に関する取り組みを重要な判断材料としています。そのため、企業には従業員の人権や人間らしい労働環境への配慮が欠かせません。

人的資本経営のメリット

ここでは、従業員1人ひとりのパフォーマンスの向上など、人的資本経営によって企業が得られるメリットについて解説します。

パフォーマンスが向上する

人的資本経営の取り組みにより、従業員1人ひとりのパフォーマンスが向上します。人的資本経営において、人材育成は重要な要素の1つであるためです。

効果的な人材育成を実現するにあたって、育成対象者が備える知識やスキルの可視化を重視しましょう。可視化により、個々の強みや成長機会を的確に把握できると、育成だけではなく、適材適所の人員配置も可能になります。育成によって資本としての価値が高まり、能力を発揮できる環境で働けるようになると、高い業務パフォーマンスを発揮します。

サステナビリティ経営を推進する

世界規模で、サステナビリティ経営の重要性が高まっています。サステナビリティ経営の実現には、人的資本経営が欠かせません。人的資本経営とサステナビリティ経営は密接に関連しており、いずれも企業の長期的な成長を支える重要な要素といえます。

人的資本経営では、従業員の働きがいや健康、社会貢献などの非経済的な価値創造に関する取り組みを重視します。取り組みは、企業の持続可能性を向上させるだけではなく、社会からの信頼性を高め、結果としてブランドイメージの向上にも寄与するでしょう。

ESG投資が増加する

人的資本経営を積極的に推進する企業は、ESG投資の対象として注目を集めています。ESG投資家は、利回りに影響する財務状況だけではなく、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の観点も重視しているためです。

人的資本経営は、Governance(企業統治)を評価するうえで、重要な指標として位置づけられています。従業員の育成や働きやすい環境づくりに取り組み、ESG投資家から評価される組織づくりを目指しましょう。

サステナビリティ情報開示と人的資本

以下では、人的資本経営における、サステナビリティ情報開示の重要性を解説します。

サステナビリティ情報開示とは

サステナビリティ情報開示とは、企業が持続的な価値創造能力を持つことを、ステークホルダーに示す取り組みのことです。かつて、さまざまな機関が独自の情報開示基準を提示してきました。しかし、基準の多様性により企業は参考にする指標の選択に迷い、投資家からは企業間の比較が困難という課題が指摘されてきました。

このような状況を踏まえ、サステナビリティ基準委員会(SSBJ)は2024年3月に、サステナビリティ開示基準の公開草案を公表しています。公開草案は日本独自の基準として開発され、企業のサステナビリティ情報開示における、統一的な指針になると期待されています。

※参考:公開草案「指標の報告のための算定期間に関する再提案」の公表|サステナビリティ基準委員会

人的資本開示は重要

サステナビリティ開示基準の公開草案は、企業から注目されています。特に重視されているのは、人的資本開示です。ESGへの認識の深まりやESG投資の拡大により、人的資本開示の重要度は一層強まっており、法制化を視野に入れた議論も行われています。

2022年8月に、内閣府の非財務情報可視化研究会は「人的資本可視化指針」を公表しました。人的資本可視化指針には、企業が人的資本開示を適切に実施するための情報が掲載されています。以下から、詳細を確認しておきましょう。

※参考:人的資本可視化指針|内閣府非財務情報可視化研究会

人的資本開示のポイント

適切なKPIを設定し、人的資本開示の意義を分かりやすく伝えることが大切です。ここでは、人的資本開示のポイントを解説します。

経営戦略・人材戦略・人事施策・KPIの連動を示す

人的資本開示においては、重要なリスク要因と長期的な業績・競争力との関連性について、明確に示す必要があります。企業が目指すべき方向性と、その達成度を測定するためのKPIを適切に設定し、各指標の定義や重要性を開示します。

KPI選定の際は、経営戦略や人材戦略について、進捗状況を反映する指標をバランスよく取り入れることが重要です。効果的な情報開示となるように、企業統治体制、経営戦略、リスク管理、指標と目標という観点から内容を構築しましょう。

人材投資と財務指標・企業価値向上の関係性を示す

人的資本開示の意義をステークホルダーに明確に伝えるには、人材への投資が財務指標や企業価値の向上にどう影響するかを、相関分析などの具体的なデータで示すことが重要です。

ただし、人材への投資と企業価値の向上などとの関係性は、分析しにくい場合もあります。分析が難しいときは、生産性や従業員エンゲージメントスコアといった、具体的な指標を先行指標として開示するとよいでしょう。また、自社が重視するKPIと人材への投資との関連性を示すことでも、投資効果をより分かりやすく伝えられます。

人的資本開示を含むサステナビリティ情報開示は企業の社会的責任

サステナビリティ情報開示は、有価証券報告書提出企業の法定義務です。ただし、開示が義務ではない企業でも、サステナビリティの実現に向けた取り組みは、社会的責任を果たすうえで重要です。サステナビリティ経営や人的資本経営を推進すると、社会からの信頼が高まり、企業価値の向上につながります。

まとめ

サステナビリティ経営を実現するためには、人的資本経営が欠かせません。また、人的資本経営の取り組み状況は、ステークホルダーに対して人的資本開示する必要があります。

ゼロ炭素ポートは、自社のサービスだけではなく他社のソリューションも含めて、お客さまの脱炭素への取り組みを総合的にサポートするサイトです。サステナビリティ経営、または人的資本経営に関する取り組みを加速させるためにも、ぜひゼロ炭素ポートをご活用ください。

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA