ITによるサステナビリティの基礎知識|必要性・メリット・施策・企業事例など

目次

多くの企業がITを活用したサステナビリティに取り組んでいます。一方で、どのような施策を行うべきか、課題を抱えている企業担当者も少なくありません。

本記事では、企業がサステナビリティに取り組む必要性、メリット、DXやグリーンITと関連した施策、企業の取り組み事例を解説します。ぜひ参考にしてください。

ITを活用したサステナビリティとは

ここでは、企業が取り組む、ITを活用したサステナビリティの概念や基礎知識を解説します。

サステナビリティとは

サステナビリティ(Sustainability)は、「持続可能性」を意味します。環境・経済・社会の3つの要素を調和させながら、将来世代がそのニーズを満たせる状態を保つことを目指す考え方です。

広く知られているSDGs(持続可能な開発目標)は、サステナビリティの取り組みを具体的な目標として示したものです。そのため、SDGsの活動をするにあたっては、サステナビリティの考え方が欠かせません。

企業が取り組むサステナビリティとは

企業が取り組むサステナビリティは、環境や社会、経済に配慮した形の事業活動として現れます。この事業活動の一部は慈善活動や他企業の支援といった形をとりますが、事業と関連付けて行われる部分も多くあります。

そのため、収益性を保ち長期的な成長を実現しながら、サステナビリティを取り入れる必要があります。この点は、個人の取り組みと異なるところです。

ITを活用したサステナビリティとは

ITを活用したサステナビリティは、IT(情報技術)を駆使して環境負荷の削減や社会的課題の解決を図り、持続可能な社会を実現すること、およびその考え方です。例えば、製造業の企業がITシステムを活用して効率的な製造を行い、CO2排出量を削減する取り組みが挙げられます。

ITを活用したサステナビリティは、技術を持ったIT企業が先導しており、新たな製品やシステムを開発・導入しています。しかし、IT企業でなくてもベンダーのシステムやソリューションを導入すれば、サステナビリティの実践が可能です。

サステナビリティが求められる背景

企業にサステナビリティが求められる背景には、何があるのでしょうか。以下では、企業を取り巻く外部要因を解説します。

脱炭素に対する取り組みが強く求められている

サステナビリティが注目される大きな要因は、地球温暖化です。「パリ協定」では、気温上昇を1.5℃以内に抑え、21世紀後半には温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標が掲げられています。

この目標を達成するには、サステナビリティを取り入れた企業活動が必須です。さまざまなアプローチのなかでも、ITやデジタルトランスフォーメーション(以下「DX」という。)による脱炭素の対策は、有効な方法の1つとして注目されています。

※参考:すべての企業が持続的に発展するために- 持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド -【第2版】|環境省

ESG投資の拡大 

ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)に配慮する企業を評価し、投資を行う手法です。企業の価値を計る際、これまでは財務情報が主に用いられてきましたが、現在は非財務情報も重視されるようになりました。

つまり、投資家の関心を引きつけて投資を呼び込むには、サステナビリティの観点から、環境や社会をよくしていく取り組みも必要になっています。

※参考:すべての企業が持続的に発展するために- 持続可能な開発目標(SDGs)活用ガイド -【第2版】|環境省

IT関連が環境に与える影響が大きくなっている

ITを活用したサステナビリティは脱炭素に効果的である一方、IT機器自体のエネルギー負荷が大きくなっている点も見逃せません。特に、AIの活用や学習には大規模な電力を消費し、データセンターのエネルギー需要増加の要因となっています。

そのため、ITが環境問題解決のソリューションとして期待される一方で、IT業界自体の持続可能性への取り組みが求められています。

※参考:電力需要について|資源エネルギー庁

ITを活用したサステナビリティの施策

ITを活用したサステナビリティの代表例が、DXと融合した施策やグリーンITと呼ばれる取り組みです。ここでは、それぞれの概要や特徴を解説します。

DXとサステナビリティの融合

DXとは、データやデジタル技術を使い、顧客目線で新たな価値を創出することです。DXはサステナビリティの概念を含みませんが、結果的に、ITを活用したサステナビリティの施策となる場合が少なくありません。

例えば、ペーパーレス化による省資源化や、テレワーク活用による環境負荷の軽減など、DXの一環とサステナビリティを融合できる場合があります。IT企業の場合、製品やソリューションの開発・提供など、ICTを通じた社会への新たな価値提供がDXと融合できます。

※参考:中堅・中小企業等向け『デジタルガバナンス・コード』実践の手引き2.1|経済産業省

グリーンITの推進

グリーンITとは、ITを活用した環境負荷低減につながる取り組みです。厳密な定義はなく、技術の進歩や時代の考え方に応じて少しずつ変化しています。例えば、省エネシステムの導入によるネットワークの消費電力抑制は、グリーンITの1つです。グリーンITには、情報システムを活用した環境負荷低減と、情報システム自体の環境負荷低減の2種類があります。

※参考:グリーンIT/IoT|国立研究開発法人 国立環境研究所

企業がITを活用したサステナビリティに取り組むメリット

ITを活用したサステナビリティは、企業の社会的責任を果たすだけでなく、事業にもよい影響をもたらします。

脱炭素社会実現に貢献できる

IT技術の進化は、脱炭素社会の実現のために重要な要素とされています。ITはエネルギー効率を高めるだけでなく、全体の稼働を最適化することで無駄を減らし、環境負荷の低減を図れるためです。

例えば、エネルギー使用状況を可視化し一元管理できる、スマートエネルギーマネジメントシステムを導入することで、省エネにつなげる企業が増えています。こうした技術により、リアルタイムで消費量を把握し、効率的な運用が可能となります。

企業価値を向上できる

サステナビリティへの関心が高まる現代では、サステナビリティ推進を事業戦略に組み込む必要性が増しています。従来、サステナビリティ推進は利益追求を妨げる社会的責任として、ネガティブに捉えられる場合もありました。しかし、現在は企業価値を高める方法としてポジティブに捉える企業が増えています。

実際、サステナビリティ推進がブランドイメージの向上や、他社との差別化につながる事例が数多く見られます。

従業員満足度を高められる

IT活用によるサステナビリティの多くは業務効率化を実現し、従業員の負担軽減につながります。作業時間を短縮したり、煩雑な業務をITツールで自動化できたりすれば、長時間作業の是正やストレス緩和につながるでしょう。結果として、従業員満足度を向上できる可能性があります。

サステナビリティの取り組みが、従業員にやりがいや誇りを生む場合もあります。特に若年層のなかには環境問題への関心が高い人が多いため、働く意欲がパフォーマンス向上につながる効果を期待できます。

エネルギーコストの削減につながる

IT活用によるサステナビリティの取り組みは、省エネにつなげやすい傾向があります。世界的なエネルギーの需給のひっ迫と、それに伴う資源・燃料価格の高騰リスクが存在している現代においては、省エネは経営を安定させる対策としても有効です。

ロシアがウクライナに軍事侵攻した2022年2月以降は、エネルギーの安定供給が不透明となり、エネルギーコストの急騰が世界中で大きな問題となりました。このような不測の事態に企業全体で省エネを図っていれば、コスト増の影響を抑えられます。

ITを活用したサステナビリティの企業事例

ITを活用したサステナビリティを推進するにあたっては、先行する取り組みが参考になります。ここでは、3社の成功事例を紹介します。

キヤノン株式会社|ICTを通じた価値提供

キヤノン株式会社は、社会からの要請や期待に応じるために、サステナビリティ活動を体系化する必要がありました。そこで、同社の強みを8つの戦略テーマに落とし込み、そのうちの1つを「ICTを通じた社会への価値提供」に設定しました。

この戦略は、ITライフサイクルのフルサポート、総合的なITソリューションのための強じんで安全なインフラ構築、デジタルサービスを通じた産業基盤の構築などを中核目標に据えたものです。同社は新しい社会的価値の創出に成功し、SDGsの目標である「働きがいも経済成長も」、「産業と技術革新の基盤をつくろう」などに貢献しています。

日本ヒューレット・パッカード合同会社|脱炭素社会を担うリーダーとして活動

日本ヒューレット・パッカード合同会社は、多くの企業に先駆けて、ネットゼロ(温暖化ガス排出量の実質ゼロ)の実現を目指していました。そこで、IT環境から排出されるCO2の要因となる、「製品」「利用」「処分」のすべてのフェーズで低炭素化を徹底しています。

結果として、エネルギー使用量やCO2排出量の30%削減などの成果を得ました。同社は脱炭素化の実現には、IT環境自体のエネルギー効率の改善が重要だと考えています。

ソニーグループ株式会社|環境計画「Road to Zero」

ソニーグループ株式会社は、温室効果ガス(GHG)排出量の削減が、世界規模の差し迫った課題となるなか、環境計画「Road to Zero」を策定しました。「Road to Zero」は2050年までに、気候変動・資源・化学物質・生物多様性の4つの観点で、同社による環境負荷をゼロにするという意欲的な計画です。

同社はすでに、経営戦略にサステナビリティを統合しています。情報開示とステークホルダーとの対話を重視することで、サステナビリティに関する信頼性と透明性を高めている点が特徴です。

まとめ

ITを活用したサステナビリティに取り組む企業が増えています。サステナビリティの取り組みは企業の社会的な責任を果たすだけでなく、ブランド価値の向上やエネルギーコストの削減など、事業にもプラスの影響をもたらします。

ゼロ炭素ポートは、サステナビリティの代表的な取り組みである、脱炭素の情報を発信するサイトです。省エネ対策や再生可能エネルギーへの転換など、企業の抱える課題を解決する手段をお探しの際は、ぜひご活用ください。

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA