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サステナビリティデザインの必要性は?重視される理由や取り組み・具体例など紹介

作成者: 大塚勝臣(おおつかかつおみ)|2025年03月19日

サステナビリティデザインは、環境・社会・経済の状態をバランスよく保つために、意識すべき取り組みといえます。この記事では、サステナビリティデザインについて、概念や重視される理由などを解説します。デザインに用いられる素材や企業の具体例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

サステナビリティデザインとは

ここでは、サステナビリティデザインについて、サステナビリティの定義から解説します。

そもそもサステナビリティとは

サステナブル(持続可能な)は、持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)「(以下SDGsという。)」の核となる概念です。サステナビリティはサステナブルの名詞形で、「持続可能性」という意味合いで使われます。

2015年9月の国連総会で採択されたSDGsには、2030年までに達成すべき17の具体的な目標が定められました。SDGsは、発展途上国だけではなく先進国も取り組むべき課題です。当然ながら日本も、SDGsを積極的に推進しています。

持続可能性を表現するサステナビリティデザイン

サステナビリティデザインとは、持続可能な社会を実現するために求められるデザインのことです。サステナビリティデザインでは、物の形や色よりも素材が重視される傾向にあり、環境への配慮が設計の段階から組み込まれています。食品や日用品、建築分野など多くの分野でサステナビリティデザインが浸透しつつあります。

サステナビリティデザインで重視される経済的観点

以下では、サステナビリティデザインで重視される経済的観点を、循環型経済とプロダクトスチュワードシップについて解説します。

サステナビリティデザインが貢献する循環型経済

循環型経済は、修理・再利用・リサイクルなどの手法で製品の寿命を延ばし、資源を効率的に活用する経済の仕組みです。サステナビリティデザインは、循環型経済を意識してなされます。

プロダクトスチュワードシップ

循環型経済を実現するためには、プロダクトスチュワードシップの浸透が必要とされています。プロダクトスチュワードシップは、製造者や小売業者、消費者、廃棄・リサイクル関連業者など、製品にかかわる人の全てが環境への影響を考慮すべきという考え方です。関係者それぞれがサステナビリティに配慮した行動を取ることで、循環型経済の実現が可能となります。

サステナビリティデザインのために知っておきたい原則

ここでは、サステナビリティデザインのために知っておきたい、サステナビリティの3要素とサーキュラーエコノミーの3原則について解説します。

サステナビリティの3要素

サステナビリティの3要素は、以下のとおりです。

・Reduce(リデュース)
・Reuse(リユース)
・Recycle(リサイクル)

3要素は「3R」と呼ばれ、環境負荷を低減するための基本原則として認識されています。「Reduce」は資源の使用量削減、「Reuse」は製品の再使用、「Recycle」は製品の資源化による再生利用を意味します。

※参考:【特集】3R徹底宣言!|特集|ecojin(エコジン):環境省

サーキュラーエコノミー(循環型経済)の3原則

イギリスのエレンマッカーサー財団は、サーキュラーエコノミー(循環型経済)の3原則として以下を掲げています。

・廃棄物・汚染などを出さない設計
・製品や資源を使い続ける
・自然のシステムを再生する

サーキュラーエコノミーは3Rの考え方をさらに発展させたものです。3Rでは廃棄物の削減や資源の再利用に重点を置いていますが、サーキュラーエコノミーではより包括的な仕組みが提案されています。

※参考:循環型の事業活動の類型について|環境省

サステナビリティを意識しないデザインの課題

サステナビリティを考慮しないデザインは、大量生産・大量消費をもたらします。近年、過剰に生産された製品が、廃棄物の蓄積や温室効果ガスの大量排出、さらに製造現場における労働環境の悪化などを引き起こしています。

また、ファッション産業における動物性素材の使用も大きな課題です。かねてから毛皮や革製品の製造過程では、多くの動物の命が犠牲になってきました。しかし、近年は動物愛護の観点から、動物性素材からの転換が進んでいます。

近年の限界を超えた資源消費状況と温室効果ガス排出状況

人類は資源をハイペースで消費し、大量の温室効果ガスを発生させています。ここでは、早急な対応が求められる近年の地球環境について解説します。

資源消費状況

アース・オーバーシュート・デイは、地球が1年間で再生できる資源量を、人類が使い切ってしまう日を表します。2024年のアース・オーバーシュート・デイは、8月1日と算出されました。地球が12か月かけて生み出せる資源を、人類はわずか7か月で消費し尽くしてしまう計算になります。

アース・オーバーシュート・デイは、生活様式や消費行動を根本から見直す必要性を示唆しています。

※参考:1076. オーバーシュート回避の必要性 | 国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター | JIRCAS

温室効果ガス排出状況

地球の平均気温は、着実に上昇を続けています。世界全体では、1880年から2012年の間に0.85℃の上昇が記録されました。日本においても、1898年から2008年の期間で、1.11℃という上昇が観測されています。

地球温暖化の主な要因は、人類の活動によって排出される大量の温室効果ガスです。持続可能な未来のためには、大量生産・大量消費から脱却し、温室効果ガスの排出削減に取り組む必要があります。

※参考:地球温暖化の現状と原因、環境への影響|COOL CHOICE 未来のために、いま選ぼう。
※参考:温暖化から日本を守る 適応への挑戦|環境省

サステナビリティデザインが重視される理由

以下では、サステナビリティデザインが重視される理由を、地球環境保全とESGの観点から解説します。

地球環境を守るため

前述のとおり、地球は資源不足に陥っており、温暖化も深刻化しています。サステナビリティデザインを意識することで、人類の活動による地球環境への影響を抑える必要があります。

ESG投資の対策をするため

ESG投資は、財務指標に加え、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)への取り組みを評価基準にして投資する手法です。

企業は、サステナビリティデザインの導入など、具体的なESGへの取り組みを示す必要があります。投資家から持続可能な成長が期待できる企業として評価されると、事業資金調達において有利になると考えられるためです。

サステナビリティデザインで主に用いられる素材

サステナビリティデザインは、素材に重点を置いて設計されます。ここでは、サステナビリティデザインで、主に用いられる素材について解説します。

リサイクル可能な素材

リサイクル可能な素材は、サステナビリティデザインでよく活用されます。ポリエステルや紙は複数回リサイクルでき、アルミニウムに関しては溶かして何度でもリサイクル可能です。リサイクル可能な素材を採用し、製品のリサイクル率を向上させることで、サステナビリティの実現につながります。

バイオマス素材

カーボンニュートラルの実現に向けて注目されているものが、バイオマス素材です。バイオマス素材は動植物など生物由来の資源です。間伐材や植物由来の皮革は、サステナビリティデザインによく活用されています。

植物由来のバイオマス素材は、成長過程で光合成によりCO2を吸収します。吸収したCO2により、使用・廃棄時に排出するCO2が相殺されるため、実質的にカーボンニュートラルを実現可能です。

生分解性素材

生分解性素材は、微生物の働きによって分解され、土に還る特徴を持つ素材です。代表的な例として、綿やウールなどの天然繊維があり、近年では植物由来の原料から作られるバイオマスプラスチックの開発も進んでいます。前述のバイオマス素材にも、生分解性素材に該当するものが含まれます。

素材以外のサステナビリティデザインにつながる取り組み

素材にこだわる以外でも、サステナビリティデザインを実現できます。例えば、以下の取り組みを検討してみましょう。

・長期間の使用やリユース
・アップサイクル
・シェアリング
・フェアトレード

長期間の使用やリユースは、製品寿命を延ばす取り組みです。長期間の使用は同じ人が長く使い続けることで、リユースの場合は別の人が再び使うことを指します。

アップサイクルでは、使用済みの製品や素材に新しい価値を加えて、より魅力的な製品として生まれ変わらせます。カーシェアリングやシェアサイクルなどに見られるシェアリングは、複数人で製品を共有して、必要なときだけ利用する形態です。フェアトレードは、途上国の労働者の権利や生活の質を守りつつ、持続可能な生産を支援する取り組みです。

サステナビリティデザインに取り組む企業のメリット

以下では、サステナビリティデザインに取り組む企業のメリットを解説します。企業の持続的な成長のために、デザインの転換に取り組みましょう。

製品にかかるコストを抑えられる

サステナビリティデザインへの転換は、長期的な視点でコスト削減につながります。製造工程でのエネルギー効率の改善や、流通経路の最適化、販売方法の見直しなどにより、事業活動全体のコストを抑制できるためです。また、打ち合わせ資料のデジタル化やWeb会議の活用といった取り組みも、間接的なコストの削減につながります。

事業を成長させられる

サステナビリティデザインのような環境や社会に配慮した事業活動は、企業のブランドイメージを高め、競合他社との差別化を生み出します。また、サステナビリティを重視する姿勢は多くの求職者にとって魅力的に映るため、人材獲得においても強みとなります。

サステナビリティデザインの具体例

以下では、サステナビリティデザインの具体例として、AppleとPatagoniaの取り組みを紹介します。

Appleの事例

Appleは、2030年までに自社の製品すべてをカーボンニュートラルにすると宣言しました。設計から製造、梱包と輸送、使用、回収まで、製品のライフサイクル全体でカーボンニュートラルにつながる取り組みを実行しています。例えば、Series 5以降のApple Watchのケースや、Mac miniのボディには、100%再生アルミニウムが使用されています。

Patagoniaの事例

Patagoniaは、リサイクル素材やオーガニックコットンなど、環境に配慮した素材の使用を積極的に進めています。2022年には、同社が使用する素材の約88%が環境配慮型となりました。

また、同社は、途上国の労働者の権利を守るための取り組みも展開しています。例えば、フェアトレード認証を受けた製品1点の販売につき、縫製にかかわった労働者に追加の賞与が支払われる仕組みを導入しています。

サステナビリティデザインに役立つ手法

ここでは、サステナビリティデザインに役立つ手法として、バックキャスティングとライフサイクルアセスメントを解説します。

バックキャスティング

バックキャスティングは、理想の姿を定め、逆算して計画を立てていく手法です。SDGsの目標の達成に向け、バックキャスティングにより実現見込みの高い計画が練られています。

ライフサイクルアセスメント

ライフサイクルアセスメントは、原材料の調達から、製造、流通、使用、廃棄に至るまでの全過程における環境への影響を定量的に分析する手法です。製品の環境負荷を適切に評価するために、ライフサイクルアセスメントが重要な役割を果たします。製品のライフサイクル全体での環境負荷の把握が、効果的なサステナビリティデザインを実現するポイントです。

まとめ

サステナビリティデザインは、持続可能な社会を実現するための取り組みです。サステナビリティデザインでは、リサイクル可能な素材やバイオマス素材など、循環型経済に貢献する素材が活用されます。コスト削減や事業の成長に向け、サステナビリティデザインへの転換を進めましょう。

ゼロ炭素ポートは、自社が提供するサービスだけではなく他社のソリューションも含め、お客さまの脱炭素に対する取り組みを総合的に支援するサイトです。サステナビリティデザインをお考えの人は、ぜひゼロ炭素ポートをご活用ください。

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA