サステナビリティは、企業としての競争力を高めるための重要な要素として捉えられています。サステナビリティの取り組みの効果を高めるには、DXやSXと組み合わせる必要があります。しかし、サステナビリティとDXやSXをどのように連携させればよいか分からず、 なかなか実践できない企業も多いです。
この記事では、サステナビリティとDXやSXの基本に触れたうえで、それぞれを組み合わせた経営手法や成功事例を解説します。
サステナビリティは、「持続可能性」や「持続できる」という意味を持つ言葉です。1987年に発表された国連報告書のなかで「持続可能な発展」が提唱され、将来の世代に配慮した開発が重視されはじめました。持続可能な発展を実現するには、環境、社会、経済の3つの観点に対する配慮が不可欠です。
企業もサステナビリティを意識し、持続可能な社会の実現に貢献する必要があります。環境や社会にどのような影響を与えるかを考え、短期的な利益ではなく長期的な価値の創造を目指さなければなりません。そのような経営手法は、サステナビリティ経営と呼ばれています。
なお、サステナビリティは地球規模の課題解決に加え、企業の競争力の強化やブランド価値の向上にもつながります。
※参考:我ら共有の未来(Our Common Future)|環境省
DXは、ビジネスのあらゆる場面で注目を集めています。ここでは、DXの概要について解説します。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、「Digital Transformation」を略した表現です。データやデジタル技術などを活用し、企業の製品、業務、組織文化などを変革して競争力を高めるための取り組みです。2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン教授が提唱して以来、生活やビジネスを革新する概念として発展してきました。
日本におけるDXは、「データやデジタル技術を使って、顧客目線で新たな価値を創出していくこと」と、経済産業省が定義しています。ビジネスを取り巻く環境は急速に変化しており、企業の競争力を維持したり、持続可能な成長を目指したりするためにDXが不可欠です。
※参考:デジタルガバナンス・コード実践の手引き(要約版)|経済産業省
デジタル化とは、業務を効率化する目的としたデジタル技術の導入です。たとえば、紙の書類のデータ化があげられます。DX は、単なるデジタル化ではありません。
DXはデジタル化を土台に新しいビジネスモデルを生み出し、新たな収益や競争力を生み出すための考え方です。デジタル化はあくまでもDXの起点であり、デジタル化するだけでDXを達成したと捉えると失敗につながります。
サステナビリティ経営を成功させるには、DXとの連携が重要です。以下で、詳しく解説します。
うまくDXを組み込めば、サステナビリティ経営の取り組みを効率化したり最適化したりできます。それにより、成長の加速を期待できます。
具体的には、DXによりサステナビリティの取り組みをデータで可視化して共有すると、投資家や消費者に対する成果の伝達がスムーズです。また、DXを活用すればサステナビリティに関するデータの収集や分析も容易になり、経営リスクの軽減につながります。
サステナビリティ経営を推進するには、策定した戦略の実行と改善が必要です。そのためにDXが役立ちます。適切にデータを分析してデジタル技術を取り入れると、サステナビリティに関わる課題の解決にも取り組みやすくなります。
たとえば、企業が環境に与える負荷を軽減するには、マンパワーだけでは対応しきれません。デジタル技術の適切な活用が、サステナビリティ経営の成功を後押しします。
SXは、近年になって新しく注目されるようになった考え方です。ここでは、概要やDXとの違いについて解説します。
SX(Sustainability Transformation)は、日本語でサステナビリティトランスフォーメーションと読みます。経済産業省によると、SXとは、社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを「同期化」するための経営や事業変革のことです。環境、社会、経済の3つの観点から持続可能な発展を目指し、中長期的に企業価値を高める目的があります。
SXを実現するには企業と投資家や取引先などが連携し、長期的な視点で対話や協力を続ける必要があります。
※参考:伊藤レポート 3.0 (SX 版伊藤レポート)|経済産業省
DXは、デジタル技術の活用により、業務の効率化や企業としての競争力の強化などを目指す取り組みです。それに対して、SXは社会と企業の持続可能性を両立させたうえで、長期的な価値を生み出すための取り組みといえます。SXを実現するには、DXを含む幅広い施策重要であり、SXとDXを組み合わせによって自社の持続的な成長につながります。
SXを実現するには、企業と社会のサステナビリティが重要です。以下で、それぞれ詳しく解説します。
企業のサステナビリティとは、長期的に収益を維持することです。将来を見据えて事業を見直したり、自社の強みを活かしたイノベーションを目指したりする必要があります。また、サステナビリティの取り組みを示せばステークホルダーからの信頼度も増し、資金調達や利益の確保も実現しやすくなります。
社会のサステナビリティとは、社会課題を解決し、よりよい環境を維持することです。企業が社会課題の解決に取り組めば、新たなビジネスチャンスの創出にもつながります。地域と連携するとさらに取り組みが広がり、企業と社会の持続可能性も向上するでしょう。将来の社会情勢が不確実でも、それを見据えた計画により企業の安定成長を目指せます。
SXは、一体なぜ注目されているのでしょうか。ここでは、その理由を具体的に解説します。
SXは、世の中のさまざまな課題に対応した企業戦略の実現のために、重視されています。新型コロナウイルスの流行、ウクライナ侵攻、気候変動など、予測不能な変化が続いています。社会の不確実性が増している状況で事業の継続や成長を目指すには、SXを意識した取り組みが重要です。
企業がSXの考え方を取り入れて環境や社会の問題解決に取り組めば、消費者からの印象がよくなります。投資家からの評価も上がるため、スムーズに資金調達できる可能性が高いです。持続可能性を重視している企業という認知が広まると、信頼性やブランド力の高まりにより企業価値の向上を期待できます。
ここでは、SXに取り組むうえで重要なポイントについて解説します。
社会課題の解決につながるプロジェクトを立ち上げ、未来の社会の姿を考慮した経営計画を練る必要があります。自社が提供する価値を明らかにし、具体的な目標を設定すべきです。社会によい影響を与えながら、持続可能な企業価値を生み出すための仕組みを作りましょう。
それぞれの事業の収益性、成長性、安全性などを考慮し、競争優位性を強化するための経営を目指すことが大切です。たとえば、デジタル技術やイノベーションを活用した持続可能なエネルギーの利用や、新たなビジネスモデルの導入などを検討しましょう。長期的な目標を達成するためには、リスクを最小化してビジネスチャンスを最大化できる施策が必要です。
投資家を意識して透明性の高いガバナンスを構築し、持続可能性や経営の健全性を示すべきです。中長期にわたる目標や進捗状況などをKPIで共有すると、説得力を高められます。投資家と何度も対話し、企業価値を向上させるための協力関係を構築してください。
SXを推進するには、ダイナミック・ケイパビリティが不可欠です。以下で、詳しく解説します。
ダイナミック・ケイパビリティとは、急速に変化している環境に企業が適応し、自らを変革する力のことです。カリフォルニア大学のデイヴィッド・J・ティース教授が提唱しました。感知力、捕捉力、変容力の3つを軸としています。ダイナミック・ケイパビリティは、現代の不確実な経営環境において、企業が競争力を維持するために不可欠な力です。
※参考:2.企業変革力(ダイナミック・ケイパビリティ)の強化|経済産業省
感知力は、外部環境や社内の状況を分析し、潜在的な脅威や危機を感知する力です。ダイナミック・ケイパビリティの起点となります。社会情勢や市場の変化を的確に捉えられると、変革の必要性についても素早く気づけます。
捕捉力は、資源や技術を再編成して競争力を高め、変革に結びつける力です。将来を考慮して情報収集やデジタル技術などを導入すれば、顧客のニーズも捉えやすくなります。
変容力は、持続的な競争力の確保に向けて、組織全体を再構築したり、社内資源の再配置や再活用をしたりする力です。近年はさまざまな変化が起きており、それに応じて組織を刷新し続けなければなりません。変化に対しては既得権益者が抵抗する可能性があるため、組織全体に大きなメリットをもたらす変化が求められます。
ダイナミック・ケイパビリティを強化するには、データ分析、AI、外部情報ネットワークなどを活用し、市場や技術の変化を捉える必要があります。従業員のリーダーシップの育成や資源の再配分などにも取り組み、ビジネスチャンスをうまく活かしましょう。挑戦を奨励して柔軟な組織を作れば、デジタル技術の浸透を加速させられます。
ここでは、SXの推進に力を入れている企業の事例を紹介します。
株式会社大林組は、環境配慮型社会づくりに取り組んでいます。サステナビリティ委員会を設け、課題の発見、対応方針の策定、実施状況の確認などを行っています。取引先を巻き込んだ取り組みを展開中です。また、脱炭素、廃棄物削減、自然共生社会の実現に向けた全社的な取り組みにも力を入れています。
富士通株式会社は、パーパスを「持続可能な社会の実現」として「Fujitsu Uvance」ブランドで7つの重点分野を掲げています。具体的には、ITの活用による健康改善や信頼性の高い社会基盤の構築などに取り組み、さまざまな面で持続可能性の実現を目指しているところです。社会や顧客の課題を解決し、企業価値の向上とともにSDGsの達成も視野に入れています。
ユニリーバ・ジャパン株式会社は、2039年までにCO2排出量を実質ゼロにするとし、再生可能エネルギーへの完全移行を目指しています。国内事業所と協力工場においては、すでに再生可能エネルギー100%を実現しました。排熱回収や洗浄水の再利用など、エネルギー消費削減の取り組みも推進しています。
日本電気株式会社は、SDGsと方向性が同じ「NEC 2030VISION」を導入し、CO2削減や社会価値の創造に取り組んでいます。リスク管理とコンプライアンスの徹底を最優先し、高い倫理観に基づいた誠実な行動を従業員に求めています。また、専門組織や外部委員会とも連携し、対話と共創を重視してサステナビリティの実現を推進しているところです。
住友商事株式会社は、サステナビリティ推進委員会を中心に、グループ全体の持続可能な活動の実現に取り組んでいます。再生可能エネルギーの導入や蓄電池のリユースなども行っており、注目を集めています。また、対話型教育プログラムの「100SEED」は、サステナビリティに対する意識を向上させるための取り組みです。世界中の従業員が参加しています。
持続可能な社会の実現を目指すサステナビリティは、企業の競争力を高めるために重要な考え方です。サステナビリティに取り組む際は、DXとSXを組み合わせて変化に応じた戦略を立てることが大切です。
ゼロ炭素ポートでは、脱炭素に向けたさまざまな情報を発信しています。自社に限らず他社のソリューションも積極的に紹介しており、企業の幅広いニーズに対応しています。サステナビリティの実現に向けた取り組みにも役立てられるため、ぜひご活用ください。
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA