ゼロ炭素ポート

サステナブルファイナンスのメリットと課題!企業担当者が知るべきポイント

作成者: 大塚勝臣(おおつかかつおみ)|2025年03月19日

持続可能な社会の実現に向けて、世界中がサステナブルファイナンスに注目しています。サステナブルファイナンスとは、企業が環境問題や社会課題の解決に取り組みながら、経済成長を目指す仕組みです。今後のビジネス戦略の中心的役割を果たす考え方として捉えられています。この記事では、サステナブルファイナンスの基礎知識や具体的な取り組み方を解説します。

サステナブルファイナンスの基礎知識

まずは、サステナブルファイナンスの基礎知識について解説します。

そもそもサステナブルとは

サステナブル(sustainable)は「sustain(持続させる、維持する)」と「-able(〜できる)」を組み合わせた言葉であり、「持続可能な」「ずっと続けられる」といった意味があります。経済発展と環境保護を両立させ、現在と将来の両方のニーズを満たすための考え方です。

サステナブルを実現するには資源の無駄を省き、環境にかかる負荷を抑える必要があります。そのうえで人権や多様性を尊重し、地域社会や従業員の福祉を含む持続可能な生活の維持を目指します。

サステナブルファイナンスとは

サステナブルファイナンスとは、環境問題や社会課題の解決に向けて企業が投資や融資を受ける仕組みです。持続可能な経済活動を支える目的で行われています。

2050年までに脱炭素を達成する目標が立てられており、サステナブルファイナンスの拡大が求められている状況です。特に中小企業が脱炭素の取り組みをする場合は資金が不足しがちなため、サステナブルファイナンスを積極的に活用する必要があります。サステナブルファイナンスにおいては、環境や社会に対する企業の貢献度重要な評価基準となっています。

サステナブルファイナンスとESGの関係性

ESGは「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(統治・管理)」の頭文字をとった言葉です。企業が環境問題や社会課題の解決に取り組み、リスクへの対策やガバナンスの整備を行っているか、評価するための指標とされています。

一方、サステナブルファイナンスは、環境や社会に配慮し、持続可能な社会を実現するために使用する資金の流れ全体を表しています。サステナブルファイナンスで重視されている持続可能な社会を実現するには、企業のESG評価が欠かせません。ESGは、サステナブルファイナンスの基盤や判断基準として活用されています。

サステナブルファイナンスに注目が集まっている背景

なぜ多くの人がサステナブルファイナンスに関心を寄せているのでしょうか。ここでは、その背景を解説します。

社会問題解決への関心が高まっている

気候変動や少子高齢化といった社会問題が深刻になっており、対応が急務になっています。ESGやSDGsの認知度の向上により、企業や投資家がそれぞれの課題解決に取り組む意識が高まってきました。サステナブルファイナンスは、課題の解決に必要な資金調達の手段として活用が広がっています。

持続可能な経済社会を作る必要がある

持続可能な社会の基盤を形成するには、長期的な視点で環境や社会に配慮した投資が必要です。サステナブルファイナンスには、持続可能な経済社会を支える役割があります。サステナブルな事業に対する資金供給を通じ、経済全体の持続可能性を高められるという期待があります。

サステナブルファイナンスの主な種類

サステナブルファイナンスは、サステナブル投資、サステナブル融資、サステナブル債の3種類に大別できます。いずれも環境問題や社会課題の解決に対する貢献を目的としており、対象は環境に配慮した事業や社会貢献事業などです。すでに触れた通り、ESGが重要な判断基準となっています。サステナブルファイナンスの各種類の特徴をまとめると、以下の通りです。

種類 概要 特徴
サステナブル投資 環境や社会に対する影響を考慮し、長期的な視点で企業やプロジェクトに投資する 株式、債券、不動産など投資対象が幅広い(ESG投資が代表的)
サステナブル融資 環境や社会に貢献する事業に対し、金融機関が資金を貸し出す 使用目的に応じた5種類があり、一般的な融資よりも金利が低い
サステナブル債 環境や社会に貢献するプロジェクトの資金調達を目的とし、企業や団体が発行する 使用目的に応じた5種類があり、通常の債券よりも低い金利で資金を調達できる場合が多い

サステナブル投資とは

ここでは、サステナブル投資の種類とそれぞれの概要について解説します。

ESG インテグレーション

ESG インテグレーションとは、投資判断に「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の要素を取り入れる方法です。財務情報と非財務情報の組み合わせにより分析の精度を向上させています。既存のプロセスにESG要素を追加するだけであり、スムーズにサステナブル投資を開始できます。

インパクト投資

インパクト投資とは、収益を得ながら社会や環境によい影響を与える投資です。リスクやリターンに加えてインパクトを重視し、課題の解決と利益の獲得を両立させます。

ネガティブ・スクリーニング

ネガティブ・スクリーニングとは、ESGの観点に基づき、問題のある業種や銘柄を投資対象から除外する方法です。除外対象の例としては、タバコ、ギャンブル、石炭火力発電、化石燃料などが挙げられます。

ポジティブスクリーニング

ポジティブスクリーニングとは、ESG評価が高い業種や企業に投資する方法です。環境先進企業に投資し、リターンの向上やリスクの軽減を目指します。

規範に基づくスクリーニング

規範に基づくスクリーニングとは、OECDガイドラインや国連グローバルコンパクトなど、国際基準を満たさない企業を投資対象から除外する方法です。倫理基準や国際規範に対する準拠を重視する投資家が活用しています。

サステナビリティ・テーマ投資

サステナビリティ・テーマ投資とは、ESGのうち特定のテーマに焦点を当てた投資手法です。テーマの例としては、気候変動、水資源、エネルギー効率性などがあります。持続可能性を推進する企業や事業に投資し、外部環境の変化によるイノベーションや高いリターンを狙います。

議決権・エンゲージメント

議決権・エンゲージメントとは、投資家が議決権行使や経営者との対話を通じ、企業のESGの取り組みを促す行動です。課題の解決に向けた取り組みを通じ、市場全体の健全な成長の実現を目指します。

サステナブル融資とは

ここでは、サステナブル融資の種類とそれぞれの概要について解説します。

グリーンローン

グリーンローンとは、グリーンプロジェクトのための資金調達を支援する融資です。グリーンプロジェクトとは、環境問題の解決を目的とする事業を表しています。借り手は、グリーンプロジェクトに取り組む企業、自治体、投融資を行う金融機関が中心です。グリーンプロジェクトに対する取り組みをアピールでき、企業の社会的信用やブランド価値の向上も期待できます。

トランジションローン

トランジションローンとは、脱炭素社会の実現に向け、温室効果ガス削減に取り組む企業をサポートするためのファイナンス手法です。再生可能エネルギーへの転換、省エネ設備の導入、新しい技術の開発など、脱炭素化に向けたさまざまなプロジェクトに利用できます。

ソーシャルローン

ソーシャルローンとは、社会課題の解決を目指すプロジェクトに必要な資金について、金融機関から借り入れる方法です。資金の使途は、社会的意義のある事業が想定されています。たとえば、医療施設、教育機関、高齢者支援施設などの建設が挙げられます。

サステナビリティローン

サステナビリティローンとは、グリーンローンとソーシャルローンの両方に配慮した事業が対象の融資です。具体的には、再生可能エネルギーの導入や地域社会への貢献などが挙げられます。

サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)

サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)とは、企業のサステナビリティに対する目標の達成を支援する融資です。達成度に応じて条件が変動します。目標の進捗をKPIで測定したうえで、透明性確保のためにレポートを提出する必要があります。

サステナブル債とは

サステナブル債とは、サステナブル融資と同様、環境問題や社会課題の解決を目指す企業が利用できる資金調達の手段です。サステナブル債を利用するには、プロジェクトの詳細な情報の開示、外部評価機関による評価、プロジェクトが環境や社会に与えた影響の測定と報告が求められます。

サステナブル融資は資金を借り入れる方法ですが、サステナブル債は企業が債権を発行して資金を調達する方法です。サステナブル債は、以下の5種類に大別できます。

・グリーンボンド
・トランジションボンド
・ソーシャルボンド
・サステナビリティボンド
・サステナビリティ・リンク・ボンド

債券を発行する場合、国際資本市場協会(ICMA)が公開している各種ガイドラインが参考になります。

サステナブルファイナンスのメリット

サステナブルファイナンスは、事業運営を支える有効な手段です。具体的なメリットを解説します。

社会的影響の向上と持続可能な社会に貢献する

サステナブルファイナンスは、持続可能な社会を実現するための基盤となります。投資家や金融機関が社会課題の解決を優先的に考えると、社会全体の意識改革につながります。

企業価値とブランドイメージが向上しやすい

サステナブルファイナンスの活用によりESG課題の解決を目指せば、企業価値が向上します。規制対応や従業員の満足度の向上などにもつながります。

長期的な利益とリスク低減につながる

サステナブルファイナンスを利用すれば、リスクを低減しながら長期的な利益の獲得を目指せます。投資家は安定したリターンを得やすいため、再投資も期待できます。

サステナブルファイナンスのデメリット

サステナブルファイナンスにはデメリットも存在します。具体的なデメリットを解説します。

人材と情報開示の課題

サステナブルファイナンスには専門知識を備えた人材が必要であり、育成には時間とコストがかかります。また、積極的な情報開示に取り組むと投資を促進させられるものの、人材育成と同じく手間や時間の課題があります。

グリーンウォッシュのリスク

グリーンウォッシュとは、企業が環境や社会問題に取り組んでいると偽装して資金を受け取る行為です。現時点では評価基準が統一されていないため、グリーンウォッシュを行っている企業に投資してしまうリスクもあります。

コスト負担による利益の低下

サステナブルファイナンスの施策として、従業員の福利厚生の改善や地域貢献などに取り組むには、資金に加えて人材や時間も必要です。コストの負担が大きいためにリターンが少なくなると、投資や融資を受けられない恐れもあります。

サステナブルファイナンスの企業事例

日本でも多くの企業がサステナブルファイナンスに取り組んでいます。ここでは、具体的な企業事例を紹介します。

日本生命保険相互会社

日本生命保険相互会社は、グリーンボンドやソーシャルボンドに投資し、環境問題、地域活性化、医療・福祉分野などの課題解決に貢献しています。環境や社会に対する影響を評価・監視し、ESGに基づく情報開示により信頼性を高めています。

大栄不動産株式会社

大栄不動産株式会社は、企業価値の向上と社会課題の解決を目指し、具体的な数値目標の設定のために、サステナビリティ・リンク・ローン(SLL)を利用しています。金融機関や自治体からも支援を受け、取り組みを社内外に示して意識の向上や信頼の強化を目指しています。

サステナブルファイナンスの動向

ここでは、世界と日本のサステナブルファイナンスの動向についてそれぞれ解説します。

世界の動向

欧州や米国では、積極的にサステナブル投資が行われています。サステナビリティ投資商品の透明性を向上させるため、投資商品の分類に応じた開示規制も整備されています。

日本の動向

日本のサステナブル投資の市場規模は欧米に比べて小さいものの、右肩上がりで着実に増加しています。国内の機関投資家の投資対象は債権が最も多く、次に株式が多くなっています。国際原則を踏まえた指針やガイドラインの整備も進められているところです。

まとめ

世界中でサステナブルファイナンスに注目が集まっており、日本でも取り組みを開始する企業が増えています。サステナブルファイナンスにはさまざまな種類があるため、それぞれの特徴を理解したうえで、自社にとって最適な手法を選ぶことが大切です。

ゼロ炭素ポートでは、脱炭素に向けて企業が行える取り組みについて幅広く情報を発信しています。自社だけでなく他社のソリューションとも積極的に協力し、各社のニーズに応えられる手法を提案しています。持続可能な社会の実現に向けた取り組みを進めるために、ぜひご利用ください。

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA