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再生可能エネルギーの1つ「風力発電」を徹底解説!風力発電の現状や課題は?

作成者: 大塚勝臣(おおつかかつおみ)|2025年03月07日

再生可能エネルギーの1つである風力発電は、かねてからヨーロッパを中心に導入が進められてきました。近年は日本でも、風力発電のポテンシャルが注目されています。本記事では、風力発電の仕組みや種類、メリット・デメリットを解説します。日本における風力発電導入の現状と具体的な課題も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

再生可能エネルギーとは

再生可能エネルギーとは、太陽光や風力、地熱、水力、バイオマスなどの枯渇する心配のない自然由来のエネルギーのことです。気候変動対策が世界的な課題となるなか、再生可能エネルギーを活用した持続可能な発電方式に期待が高まっています。

かつて主流であった石炭、石油、天然ガスなどの化石エネルギーは、発電時に大量の温室効果ガスを排出するうえに、資源の有限性という課題も抱えています。一方、再生可能エネルギーは、発電時の温室効果ガスの排出がほとんどなく、枯渇するリスクもありません。

風力発電とは

再生可能エネルギーによる発電方式には、太陽光発電や水力発電などさまざまな種類があります。本記事でクローズアップする発電方式は、そのうちの1つである風力発電です。ヨーロッパを中心に導入が進められている風力発電は、近年、日本でも普及が推進されるようになりました。

風力発電は、風の力で風車を回して、電気エネルギーに変換する発電方法です。風が吹いていれば設置場所は問わないため、陸上にも洋上にも風力発電を設置できます。また、環境負荷が少なく、発電コストが低いといったメリットも風力発電の魅力です。

ヨーロッパで風力発電の普及が進んでいる背景

欧州風力協会(Wind Europe)の発表によると、EUにおける2023年の発電電力量の約19%が風力発電によるものでした。

ヨーロッパで風力発電が普及した理由は、地理的・自然的条件が適しているためです。ヨーロッパは安定した風況と遠浅の海底地形を有しており、風力発電の設置に好条件となっています。ほかにも、ヨーロッパで風力発電の普及した理由として以下が挙げられます。

・古くから風車技術の開発に取り組んできた産業基盤
・事業者の開発リスクを低減するルール整備
・大型風車の実用化による発電効率の向上とコスト低減
・発電設備の建設やメンテナンスへの人員投入

※参考:Wind energy in Europe: 2023 Statistics and the outlook for 2024-2030|Wind EUROPE

風力発電の仕組み

風力発電の仕組みについて基本的な機構を述べたうえで、設置場所による違いも含めて解説します。

基本的な仕組み

風力発電は、柱となる「塔体」、増幅機や発電機などを収納する「ナセル」、風車の羽である「ブレード」の3つで構成されています。風を受けたブレードの回転数は、ナセル内の増速機によって引き上げられ、発電設備で電力に変換される仕組みです。

なお、発電した電力は送電時のエネルギー損失を最小限に抑えるため、変圧器で電圧を上昇させてから送電網に供給されます。

設置場所により異なる仕組み

地上に設置する「陸上風力発電機」と、海上・湖上・港湾上などに設置する「洋上風力発電機」は造りが異なります。前述した「基本的な仕組み」は、陸上風力発電機の造りに該当します。

一方、洋上風力発電機の造りは、海底に発電機を埋め込む「着床式」と、海上に発電機を浮かべる「浮体式」の2種類です。ヨーロッパでは着床式が主流ですが、急深な海底地形の日本では、浮体式の開発・導入が有力視されています。

風車の種類

風車は「水平軸風車」と「垂直軸風車」の2つのタイプに分けられます。それぞれの仕組みを解説します。

水平軸風車

水平軸風車は、風車の回転軸を地面および風向きと平行になるように配置しています。ブレードの設計には、オランダ式やプロペラ式、多翼式など複数の形式が見られます。

水平軸風車は、特定方向からの風を受けるよう方位を定めて設置する必要があるため、想定していない方向から吹く風の活用は困難です。一方で、基本構造がシンプルであるため大規模化が容易で、高い発電効率を発揮します。

垂直軸風車

垂直軸風車は、風車の回転軸が地面に対して垂直に配置されています。ブレードの設計には、ダリウス式やバドル式、サボニウム式などがあります。垂直軸風車の特徴は、風向きを問わず、一定の発電量を得られるように設計されている点です。ただし、風況が安定している環境においては、水平軸風車と比較して発電性能が劣る傾向が見られます。

風力発電を導入するメリット

環境負荷の少なさや設置場所の選択肢の広さなどについて、風力発電を導入するメリットを解説します。

環境負荷が少ない

風力発電は環境負荷の少ない発電方式です。風力発電の建設や廃棄時には、温室効果ガスの主な成分である二酸化炭素が排出されます。ただし、風の力でブレードを回して発電するため、発電時に二酸化炭素が排出されません。また、石炭や石油などの化石燃料を使わず発電できるため、排気ガスや燃えカスの排出も防げます。

設置場所の選択肢が広い

風力発電は、陸上だけではなく海上や湖上、港湾地域など、さまざまな場所への設置が可能です。特に洋上は、陸上と比べて安定した強い風が得られる点から、効率的な発電が期待できます。

日本は四方を海に囲まれた地理的特性を活かし、洋上風力発電の導入を積極的に進めています。沿岸部の浅瀬や沖合に風車を建設すると、限られた国土でも十分な設置スペースを確保できるためです。さらに、洋上風力発電は陸上から離れた場所に設置されるため、風車の騒音や景観への影響を抑えられます。

時間を選ばず発電できる

風力発電は、天候や昼夜を問わず稼働できる発電方式です。ほかの再生可能エネルギーで発電量が落ちる状況下で風力発電を活用すると、電力の安定供給を実現できます。

たとえば、再生可能エネルギーの代表格である太陽光発電は、夜間や天候不良時には発電できないという制約があります。一方、風力発電は、一定以上の風速があれば、夜間や曇り、雨天時でも発電を続けることが可能です。

他の再生可能エネルギーより変換効率が高い

風力発電は、エネルギー変換効率の高さが特長です。風の運動エネルギーから電気エネルギーへの平均的な変換効率は、約40%です。太陽光発電の約20%、地熱発電の約8%と比べて、風力発電の変換効率は高水準といえます。ブレードの形状や風向きに対して角度を変える仕組み、発電設備の性能向上などが風力発電の変換効率を引き上げています。

※参考:自然エネルギーの発電効率を比較。風力発電所の効率を解説|エネルギーのまち 能代

コスト低減が見込める

風力発電は、高いエネルギー変換効率により、発電コストを抑えられる特徴があります。風力発電における1kWあたりの発電コストは、水力発電に次ぐ低水準です。

日本の気象条件や地形は風力発電にとって課題となりますが、技術が進歩すれば、より効率的な運用が見込めます。また、沖合の安定した風況を活かせると、風力発電の稼働率向上によるさらなる発電コストの低減が期待できます。

風力発電を導入するデメリット

導入のリスクとして、発電量の不安定さやメンテナンスの課題などが挙げられます。ここでは、風力発電を導入するデメリットを解説します。

発電量が安定しにくい

風力発電は、風の状況によって発電量が上下するという課題があります。天候や時間帯を問わず稼働できるといっても、自然の力を利用する発電方式である以上、風向きや風速はコントロールできないためです。

発電量を安定させるためには、風況のよい場所を選んで風力発電を設置する必要があります。また、可変ピッチ機構や方位制御機構の導入により、風向きなど風の状況に合わせてブレードの状態を調節することでも、発電量の安定が見込めます。

定期的なメンテナンスが必要

定期的なメンテナンスの必要性も風力発電を導入するリスクといえます。風力発電は、常に自然環境にさらされる屋外に設置されるためです。雨風による腐食や部品の摩耗が避けられず、経年劣化のリスクが高くなります。事故防止と性能維持には、定期的なメンテナンスが不可欠です。

風力発電の導入を検討する際は、設備の初期費用だけではなく、長期的なメンテナンス費用も考慮しなくてはいけません。メンテナンス費用は、業者や設置場所、設備の規模によって変動するため事前の十分な検討が重要です。

騒音問題

風力発電のブレード回転時に発生する低周波音や歯車の機械音も、導入リスクの1つです。特に静かな環境では、風力発電から発生する騒音による生活への影響が懸念されます。低周波音の場合は「音」として認識されなくても、窓や家具などの振動や体の違和感を覚える場合があります。

風力発電による騒音トラブルを防ぐには、発電設備の設置場所を居住地域から十分に離すなどの配慮が必要です。また、騒音を抑えられるブレードの開発も求められます。

部品が破損・飛散してしまう

風力発電の部品は、前述のように、屋外環境による経年劣化のリスクにさらされています。強風や突風によりブレードや支持部が破損して飛散する可能性があり、洋上風力発電における塩害も部品の損傷を引き起こす要因となります。地域によっては、積雪による影響から回転数の低下が発生しがちです。部品の破損・飛散に対しては、定期的なメンテナンスが重要です。

落雷や台風で損傷する恐れがある

落雷や台風による被害も、風力発電を導入する際にイメージしておかなくてはなりません。高所に位置し周囲に遮るものがない風力発電は、落雷や台風によって電気系統に深刻なダメージを受ける可能性があります。被害状況によっては、発電停止による収益の損失だけではなく、高額な修理費用も必要となります。

損失を抑えるには、風力発電の設置場所の慎重な検討と、避雷設備の設置や定期的なメンテナンスが欠かせません。

日本における風力発電導入の現状・課題

風力発電の導入状況は芳しくなく、さらなる普及促進が必要です。ここでは、日本における風力発電の現状・課題を解説します。

日本の現状

環境エネルギー政策研究所が発表した資料によると、2022年の再生可能エネルギー(自然エネルギー)による発電量は、国内の全発電量の21.7%となりました。詳細な内訳は、太陽光発電が9.2%、次いで水力が7.6%、バイオマスが3.7%、風力が0.9%、地熱が0.3%です。

風力発電設備の導入量は、2012年度から2022年度にかけて約510万kW増加しました。しかし、太陽光発電設備と比べると導入状況は控えめです。また、導入された設備の多くが陸上風力発電で、洋上風力発電の導入が伸び悩んでいます。

※参考:再生可能エネルギーの導入状況|経済産業省

今後に向けた課題

日本で風力発電の導入が進まない背景には、設置場所を選定する難しさがあります。日本国内では、地形や土地利用の制約により、陸上風力発電を設置できる場所が限られています。また、島国の日本は洋上風力発電を設置しやすい環境ではありますが、水深が深い場所が多い地理的理由により基礎工事が難しい状況です。

ほかにも、風力発電の導入コストの高さも、問題視されています。風力発電を普及させるためには、政府による支援策が必要です。

【日本国内】風力発電の普及に向けた取り組み

風力発電の普及に向けて、日本ではさまざまな取り組みを実施中です。たとえば「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法)」では、洋上風力発電を推進する促進区域が指定されています。指定区域は日本海側を中心に設定され、公募で選ばれた事業者は最大30年間の海域占用許可を得ることが可能です。

洋上風力発電の事業規模は大きく、経済への波及効果も期待されています。2030年度の電源構成を示した「エネルギーミックス」では、風力発電の比率を、2022年度の0.9%から5%まで引き上げるという目標が掲げられました。

※参考:日本の多様な再エネ拡大策で、世界の「3倍」目標にも貢献|経済産業省

まとめ

風力は再生可能エネルギーの1つで、繰り返し使えるエネルギーです。持続可能な電力供給方法として、風力発電への期待が高まっています。ただし、風力発電を活用するためには、発電量の安定や、騒音対策、耐久性の向上といった課題を解決しなくてはいけません。発電設備の設置場所の検討や、技術の進歩が風力発電を普及させる鍵になります。

ゼロ炭素ポートは、自社のサービスだけではなく他社のソリューションも含めて、お客さまの脱炭素への取り組みを総合的にサポートするサイトです。風力発電の導入を検討する際は、ぜひゼロ炭素ポートをご活用ください。

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA