蓄電池が再生可能エネルギー普及の鍵となる理由は?メリットや注意点も解説

目次

脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの活用が世界中で進んでいますが、普及を阻む課題も多いのが現状です。そこで再生可能エネルギーと蓄電池の組み合わせが注目されています。

本記事では、蓄電池・系統用蓄電池とは何か、注目される背景、蓄電池のメリットや注意点を解説します。導入を検討する際に、ぜひお役立てください。

蓄電池とは

蓄電池とは、1回充電することで何度も繰り返し利用できる電池のことです。日常生活のなかでも、スマートフォンやワイヤレスイヤホン、電動自動車など、身近に利用されています。近年では、再生可能エネルギーで発電した電力を蓄電・放電する、大型の蓄電池の重要性が高まっています。

※参考:系統用蓄電池の現状と課題|資源エネルギー庁

系統用蓄電池とは

系統用蓄電池とは、発電から電力消費までの一連の仕組みや設備を指す電力系統に、直接接続して使用される蓄電池です。電力は時期や時間帯、変動する需要に合わせて供給する必要があります。一方で、系統用蓄電池は発電設備単体だけでなく、電力システム全体の需給変動に柔軟に対応することができます。

※参考:系統用蓄電池の現状と課題|資源エネルギー庁

蓄電池の種類

蓄電池には、主に以下の種類があります。

・鉛蓄電池
・ナトリウム硫黄電池
・ニッケル水素電池
・リチウムイオン電池

産業用の蓄電池では、大容量で長期間の使用が期待できるリチウムイオン電池や、ナトリウム硫黄電池が多く使用されています。

産業用蓄電池の目安容量

蓄電池の容量は家庭用と産業用で異なり、産業用の方が大型です。産業用蓄電池の場合、小さいものでは20kWh前後、大きいものでは50kWh~100kWh程度が、一般的な目安となります。

再生可能エネルギーの普及に蓄電池が重要な理由

ここでは、脱炭素社会に向けて再生可能エネルギー活用に取り組む企業が増加するなか、蓄電池が注目を集める理由を解説します。

再生可能エネルギーは供給が不安定

再生可能エネルギーには、供給の安定性に大きな課題があります。例えば、太陽光発電では天候が悪い日や日照時間が短い時期には発電量が減少します。風力発電でもある程度の風がないと発電できません。時間帯や季節によって電力の需要は変動するため、需要が高まる時期・時間帯には適切に電力を供給する必要があります。

このような課題を解消するために、蓄電池が重要視されています。蓄電池は再生可能エネルギーの発電量が多いときに余剰分を蓄え、必要なときに放電できるため、電力供給の安定化が期待できます。

同時同量の原則

同時同量の原則とは、電力の供給量と消費量を「同じとき」に「同じ量」にさせる原則です。このバランスが崩れると周波数が乱れて電力が正常に供給できなくなり、大規模な停電を引き起こすおそれがあります。

再生可能エネルギーは、特に供給が不安定になりやすい発電方法です。電力需給バランスは発電所で調整されているものの、新たな電力安定化の仕組みとしても蓄電池は注目されています。

※参考:電気の安定供給のキーワード「電力需給バランス」とは?ゲームで体験してみよう|経済産業省

蓄電池を活用するメリット

ここでは、再生可能エネルギーと蓄電池を活用するさまざまなメリットを解説します。

さらなるCO2排出量削減が期待できる

蓄電池を使用しないと電気は貯蔵できず、再生可能エネルギーで発電した電力の余剰分は無駄になってしまいます。一方で発電量が少ない夜間や天候の悪い日には、火力発電のようなCO2を排出する発電方法に頼らざるを得ません。

蓄電池を活用すれば発電量が多いときに電力を貯蔵し、不足するときに放電できます。化石燃料に頼る割合を減らせるため、再生可能エネルギー発電によるCO2削減効果の向上が期待できます。

再生可能エネルギーの電力供給を安定化できる

蓄電池を使用すれば発電量が増加するタイミングで蓄電し、需要が増加するときに放電できるため、再生可能エネルギーの弱点である電力供給の不安定さをカバーできます。太陽光発電であれば発電量がピークを迎える日中に蓄電しておき、電力消費が多くなる夕方以降に放電するといった使用方法になるでしょう。

蓄電池に常に電気を蓄えておけば、急な停電にも対応できます。安定して電力を供給する必要がある店舗や工場、倉庫などの施設では収益にも直結するため、蓄電池の必要性はさらに高まるでしょう。

災害対策につながる

地震や台風、豪雨などの大規模な自然災害で発電所からの電力供給が途絶えても、蓄電池があれば非常用電源として活用できます。蓄電池が十分に充電された状態なら、夜間や悪天候などで太陽光発電ができなくても、一定期間は電力を使用できます。そのため、インフラの復旧まで持ちこたえやすくなるでしょう。

一例として、中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」による報告では、首都直下地震が発生した場合に、首都圏全体で電力が復旧するまでには6日間程度かかる見通しです。

※参考:首都直下地震対策専門調査会報告|中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」

制度の利用でより単価が高い時間帯に売電できる

再生可能エネルギーの売電に関する制度には、電力を買い取る価格が一定期間定価になる固定価格買取制度(以下「FIT制度」という。)と、価格が変動するフィードインプレミアム(Feed-in Premium)制度(以下「FIP制度」という。)があります。

どちらの制度を利用している場合でも、ピークカットにより電力消費を抑える効果や、電力供給安定化といった蓄電池のメリットは得られます。さらにFIP制度を利用する場合、発電した電力を蓄電池に貯蔵しておき、単価が高い時間帯に売電すれば利益の増加が見込めます。

蓄電池を活用する際の注意点

蓄電池の活用にあたっては考慮する点もあります。ここでは蓄電池の注意点について解説します。

コストがかかる

蓄電池を導入する際には、本体価格や設置工事費用もかかります。

経済産業省の資料によると、「令和4年度 分散型エネルギーリソースの更なる活用に向けた実証事業等」のデータをもとにした2022年度の蓄電システム価格の総額は、11.2万円/kWh+工事費とされています。産業用の大容量蓄電池を導入する場合、工事費を除いても数百万円以上のコストがかかる計算です。

海外製の蓄電池ならこれよりもコストを抑えられる場合もあるため、機能面や寿命も考慮して検討してみるとよいでしょう。

※参考:定置用蓄電システムの普及拡大策の検討に向けた調査|経済産業省

発電量が少ない状態が続くと蓄電できない

再生可能エネルギーによる発電量は、多くの場合、天候や時間帯といった要因に大きく左右されます。発電量が少ない状態が続くと自家消費で電力を使い切ってしまい、十分に蓄電できません。

例えば太陽光発電の場合、天候の悪い日が続く梅雨や日照時間が短い冬場などは、発電量が少なくなりやすいでしょう。

設置スペースを確保する必要がある

蓄電池を設置するには、太陽光パネルなどの発電装置とは別に、蓄電池用のスペースを用意しなければなりません。蓄電池本体の大きさは容量にもよりますが、一般的な産業用蓄電池であれば幅と高さが数m以上、重量は数百kg程度にもなります。広さがあればよいわけでもなく、温度・湿度・風通しなどの環境条件にも気を配る必要があります。

繰り返しの使用で最大蓄電量が減少する

スマートフォンを長期間使用すると、バッテリーの最大充電量が減っていくように、蓄電池も充電と放電を繰り返すうちに最大蓄電量が徐々に減少します。産業用蓄電池でも、この劣化現象は避けられません。最大蓄電量をモニタリングし、一定以下まで減少した場合には交換を視野に入れる必要があります。

コストが課題なら補助金の活用も検討する

再生可能エネルギーの発電装置や蓄電池の導入には、高額な初期コストがかかります。しかし、国や自治体が設ける補助金制度の活用により、費用負担を軽減できる場合があります。補助金の有無や内容、申請条件は時期や自治体によって異なるため、公式Webサイトなどで最新の情報を確認しましょう。

太陽光発電設備については、一定の条件下において初期投資額0円で導入が可能なPPAモデルや、リースモデルを活用する方法もあります。PPAは、Power Purchase Agreement(電力販売契約)の略称です。

PPAモデルおよびリースモデルの詳細は、以下のリンクご参照ください。

※参考:初期投資0での自家消費型太陽光発電設備の導入について~オンサイトPPAとリース~|環境省

再生可能エネルギーと蓄電池の活用事例

再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせて導入する企業は、近年では珍しくありません。ここでは、いくつかの業種での活用事例を紹介します。

倉庫・工場

CO2排出量や電力コストの削減、災害時の事業継続性確保のために、再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせる倉庫や工場もあります。例えば、食品や冷凍品を扱う倉庫・工場では、停電が発生すると商品の品質にかかわります。また、大規模な倉庫や工場は電力消費量が多いため、再生可能エネルギー発電と蓄電池の活用が重要です。

牧場や養殖場

牧場や養殖場では災害などによる大規模な停電が発生すると、生き物の健康や生死にかかわる場合もあります。このような施設では、厩舎の屋根に設置した太陽光パネルで発電して蓄電池で余剰電力を蓄える、水槽の循環ポンプのバックアップ電源に蓄電池を活用する事例があります。

非常時の備えとしてだけでなく、蓄電池に蓄えた電力で設備を安定稼働させれば、生物にとっての快適な環境の維持と生産量の向上も期待できるでしょう。

店舗・オフィスビル

コンビニエンスストアやドラッグストアなどの店舗、オフィスビルなどで再生可能エネルギーと蓄電池を導入する例もあります。

近年の自然災害により、BCP(事業継続計画)の重要性は高まっています。また、電気料金の高騰に伴い、省エネ対策を検討する企業も少なくないでしょう。再生可能エネルギー発電と蓄電池は、災害対策と省エネを同時に達成し得る手段といえます。

※参考:1.1 BCP(事業継続計画)とは|中小企業庁

まとめ

再生可能エネルギーには発電量が安定しないといった課題があります。しかし、余剰電力を蓄積して、需要が高まるタイミングで放電できる蓄電池との併用により、その弱点を補うことができます。さらに、蓄電池は停電時の非常用電源としても活用できるため、災害対策としても有効です。

再生可能エネルギー発電装置や蓄電池の導入にあたっては、補助金を申請できる場合もあるため、国や自治体からの公式Webサイトなどを確認しましょう。ゼロ炭素ポートは脱炭素の実現に向けて、さまざまな情報やソリューションを提供するWebサイトです。ぜひ以下のリンクから、詳細資料をご覧ください。

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA