近年、世界的に脱炭素への取り組みに対する関心が集まっています。多くの企業がCO2削減に向けた取り組みを行っていますが、中小企業ではどのような取り組みができるのか、知りたい人もいるのではないでしょうか。
本記事では、中小企業がCO2削減に向けた取り組める内容を解説します。具体的にCO2削減に向けて取り組んでいる企業の事例も紹介するので、参考にしてください。
地球温暖化による気候変動や資源の枯渇などを防ぐため、日本のみならず、世界でもさまざまな取り組みが行われています。ここでは、なぜ世界や日本でCO2削減に向けた取り組みが必要とされているのかを解説します。
世界的にCO2を含む温室効果ガスの削減に注目が集まったきっかけは、2015年に「国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)」でパリ協定が採択されたことです。パリ協定では、主要排出国を含むすべての国に対し、公平かつ実効的な枠組みが成立しました。
具体的には、気温の上昇を1.5度に抑えるように努めること、温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を保つことなどを、長期的な目標として掲げています。主要排出国を含むすべての国が削減目標を5年ごとに提出・更新する必要があります。
2020年に、日本政府が「カーボンニュートラル宣言」を提唱したことも、理由として挙げられます。「カーボンニュートラル宣言」とは、CO2をはじめとした温室効果ガスの排出量を、実質ゼロにするという宣言です。
「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(グリーン成長戦略)」や、「改正地球温暖化対策の推進に関する法律(改正地球温暖化対策推進法)」などの法整備も行われています。
※参考:カーボンニュートラルとは|環境省
※参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略|経済産業省
※参考:地球温暖化対策推進法と地球温暖化対策計画|環境省
ESGとは、環境・社会・ガバナンスの英語の頭文字を合わせた言葉です。ESG投資において投資家は、ESGの要素を考慮して投資を行うかどうかの意思決定を行います。ESG投資の市場規模は年々拡大傾向にあり、世界全体のESG資産保有残高は、2016年~2018年で1.3倍に増加しています。ESG投資市場の拡大は企業のESG対策の加速や、CO2削減につながるでしょう。
ここでは、大企業に限らず中小企業もCO2削減への取り組みが求められる理由を解説します。
SDGsは、2015年の国連サミットで採択された国際的な目標であり、環境問題を含む17の具体的な目標・169のターゲットを掲げています。SDGsの目標達成に向け、すべての電力を再生可能エネルギーで賄うことを目指す、「RE100」と呼ばれる取り組みが加速しました。「RE100」とは、「Renewable Energy 100%(再生可能エネルギー100%)」の頭文字をとったものです。
文字通り、事業用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す企業が、RE100に加盟しています。
※参考:SDGsとは?|外務省
※参考:RE100とは?|環境省
中長期的な事業リスクの回避につながることも理由の1つです。地球温暖化の進行により生態系が破壊されると、社会活動や経済活動に影響する企業も多いでしょう。事業を行ううえで必要な原材料の確保が厳しくなり、事業の持続性が失われる可能性が高いため、中小企業もCO2削減に取り組む必要があります。
取引先からCO2削減に取り組むことを求められるケースもあります。CO2排出量の算定結果や計画案をすぐに提出できるかどうかで、取引先との連携力が変わってきます。取引の継続にも関わってくるため、あらかじめCO2削減に取り組む中小企業もあるようです。
省エネや再生可能エネルギーを導入して行う環境問題への取り組みは、長期的に見るとコスト削減につながります。
フィンランドでは、炭素排出量に応じて税金を課す「カーボンプライシング」という制度が導入されています。税金を課すことで、CO2の排出量を抑える狙いがある制度です。カーボンプライジングは日本でも導入が検討されており、CO2の削減に取り組んでいれば、税金を支払う必要がありません。
CO2削減をはじめとする環境問題への取り組みは、社会貢献の1つとして評価されています。外部からの信頼を獲得しやすく、企業イメージの向上にもつながります。CO2削減への取り組みが注目されれば、先進的な企業というイメージを得られるため、問い合わせが増える可能性も考えられるでしょう。
これまで企業の信用度は売上や利益、企業規模などで評価される傾向にありました。しかし、先述したESG投資の注目により、環境問題への対策に取り組んでいる企業は、投資家や金融機関から評価されやすいため、資金調達がしやすくなります。
ここでは、中小企業がCO2削減に向けて取り組める、具体的な内容を紹介します。
2050年カーボンニュートラルに向けて、自社の取り組み方針を決めるために、まずは自社のCO2排出量の算出が欠かせません。「実現」と「目標」の間にできたギャップの客観的な把握が重要です。その際、先入観ではなく、データに基づいて判断できるようにしましょう。
算出するための計算式は、以下のとおりです。
| 【算出方法の計算式】 CO2排出量=活動量×排出係数 |
算出が難しい場合は、経済産業省の「エネルギー起源二酸化炭素排出量等計算ツール」の利用を検討するのもおすすめです。
算出したCO2排出量のデータをもとに、長期的な目標を設定します。設定した目標に向けた行動計画の作成も行いましょう。目標設定には、世界の動向や取引先からの要望を考慮して決定するのがおすすめです。目標の達成に向けて、自社のみならず他社からの支援を受けられるケースもあります。
設定した目標に向けて作成した実行計画に基づき、取り組みやすさとインパクトを考慮しながらアクションを起こしましょう。具体的には、省エネや再生可能エネルギーの利用、自家発電などさまざまです。
以下では、CO2削減に向けて中小企業ができる行動を具体的に紹介します。
省エネ対策に取り組むことは、CO2の削減に向けて有効です。こまめな節電や節水、高効率の設備や新品の製品への買い替えも省エネにつながります。具体的には社内の照明を白熱電球からLEDにしたり、電気自動車を利用したりするなどの取り組みが挙げられます。
設備の導入や交換には費用がかかりますが、CO2の削減に加えて、ランニングコストの節約にもつながるでしょう。
再生可能エネルギーの利用も、CO2削減には有効です。従来のエネルギー源として活用されていた化石燃料は、温室効果ガスを発生させますが、太陽や風の力を活用した再生可能エネルギーは、温室効果ガスを排出しなくてもエネルギーを生産・活用できます。
再生可能エネルギーを販売している電力会社に乗り換えることが、取り組みやすい方法といえるでしょう。
カーボン・オフセットとは、省エネや再生可能エネルギーを利用しても削減できないCO2を、さまざまな取り組みを通して実質ゼロにする方法です。具体的な取り組みとして、他の場所でCO2が削減されている証明を購入するカーボンクレジットや、植林・森林管理などが挙げられます。
他にも自己活動オフセット、会議・イベント開催オフセットなどの取り組みが挙げられます。自社に合ったカーボン・オフセットに取り組むとよいでしょう。
※参考:J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて|環境省
※参考:会議・イベントにおけるカーボン・オフセットの現状|環境省
太陽光発電をはじめとする、再生可能エネルギーを自家発電できる設備の導入を検討するのもおすすめです。導入には費用がかかるため負担は大きいですが、長期的に見ると電力会社から電力を極力購入しなくても済むため、コスト削減にもつながります。
初期費用が不安であれば、補助金を利用できるケースがあります。補助金を利用すれば、初期費用を回収しやすくなるでしょう。
CO2削減へ取り組む企業が参加した方がよい国内外の活動を紹介します。ぜひ検討する際の参考にしてください。
RE100は、2014年に国際環境NGOのThe Climate Group(TCG)とCDPにより開始された活動です。自社事業で使用する電力を、100%再生可能エネルギーで賄うという目標を掲げています。日本だけでなく、世界中の企業が参加している活動の1つです。
RE100に取り組むメリットとして、コスト削減や温暖化・コスト上昇のリスク回避、ESG投資における評価向上、世界中の企業とのコネクションなどが挙げられます。
※参考:RE100とは?|環境省
SBT(Science Based Targets)とは、日本語で「科学的根拠に基づく目標」という意味で、企業が設定する5~10年後の温室効果ガス排出削減目標のことを指します。パリ協定が求める水準と整合した、目標を設定しています。
中小企業は「中小企業版SBT」にも参加できます。パリ協定に整合した持続可能な企業であることを、投資家や顧客、ステークホルダーなどに主張できるため、企業評価の向上にもつながり、知名度も上げられるでしょう。
※参考:SBT(Science Based Targets)について|環境省
再エネ100宣言 RE Actionとは、企業や自治体などの電力需要家が使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示す動きのことです。これにより市場や政策を動かし、社会全体における再生可能エネルギー利用100%の促進につながります。
日本独自のイニシアティブであり、日本国内の企業や自治体、教育機関、医療機関などが参加対象となります。
※参考:再エネ100宣言 RE Actionとは|一般社団法人再エネ100宣言 RE Action協議会
中小企業がCO2削減に向けて注意すべき点を押さえてから、取り組みを行いましょう。ここでは、中小企業がCO2削減に取り組む際の注意点を解説します。
CO2削減への取り組みは、効果や利益などが見えにくい傾向にあります。取り組み開始から効果がわかるまで時間がかかるため、短期間での評価は難しいでしょう。
また、取り組みに向けた従業員のモチベーション維持も課題となります。成果が見えるまで従業員のサポートを継続的に行うことが大切です。効果が見え始めれば、CO2削減に取り組んでいる企業としてアピールできるため、外部からの企業イメージ向上にもつながるでしょう。
省エネ設備や、再生可能エネルギー発電設備を導入する場合は、初期費用が高額になる可能性があります。導入に向けて会議や研修など、人的コストがかかる場合もあり注意が必要です。しかし、補助金を受けられるケースや、長期的に見ればコストの節約につながることも考えられるため、導入を検討してもよいでしょう。
ここでは、実際にCO2削減へ向けた取り組みを行っている企業の事例を紹介します。
ヤマトホールディングス株式会社では、配達に使用する車両の見直しを実施しています。具体的には、輸送方法や、距離に合わせた環境対応車両への入れ替え対応を行っています。効率的な物流に向けて業務を見直し、配達エリアによって、自転車や台車を使用して配送するようにしているのが特徴です。
株式会社大川印刷では、環境に配慮する「環境経営」に移行しました。インクや紙など、製造工程で発生している環境負荷の低減を目指しています。また、社屋に太陽光発電パネルを設置し、事業で利用する電力を再生可能エネルギーにしています。
中小企業においてもCO2削減に向けた取り組みが求められています。CO2削減に取り組むことは、地球温暖化の対策にもつながります。省エネや再生可能エネルギーの利用など、さまざまな取り組みがあるため、自社に合った取り組みを検討してみましょう。
中小企業が取り組めるCO2削減の方法を検討している場合は、ゼロ炭素ポートをご活用ください。CO2削減の方法を複数のソリューションからお客さまのニーズに合わせてご案内します。自社にマッチした取り組みがわからない場合は、お気軽にお問い合わせください。
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA