ドイツでは再生可能エネルギーが比較的普及しています。一方で、日本では再生可能エネルギーの活用が伸び悩んでいる状況です。本記事では、再生可能エネルギーに関するドイツの状況や、既存のエネルギーに代わって普及した理由、日本でも展開できる取り組みなどを解説します。ぜひ参考にしてください。
2024年に発表された、経済産業省の「今後の再生可能エネルギー政策について」によると、ドイツでは電源構成の43.8%を再生可能エネルギーが占めています。一方、日本における再生可能エネルギーが占める割合は、わずか21.7%でした。ドイツと比べると、日本は再生可能エネルギーの普及が遅れているといえます。
再生可能エネルギーは、太陽光、風力、水力など自然由来の枯渇しないエネルギーです。再生可能エネルギーによる発電は、化石燃料とは異なり、温室効果ガスを排出しないという大きな特徴があります。
近年、深刻化する地球温暖化対策として、世界各国が脱炭素に向けた取り組みを進めています。温室効果ガスの排出量を削減するためには、再生可能エネルギーの普及が不可欠です。
2021年上半期において、ドイツでは4つの再生可能エネルギーの活用が目立ちました。電源構成のなかで再生可能エネルギーが占める割合は、47.9%です。また、再生可能エネルギーの内訳は、以下のとおりです。
・風力:23.4%
・太陽光:11.2%
・バイオマス:8.9%
・水力:4.4%
ドイツでは、特に風力発電が普及しています。
※参考:ドイツの脱炭素戦略:自然エネルギー拡大と脱石炭・脱原発にむけた政策と法整備|自然エネルギー財団
ドイツで活用が進む再生可能エネルギーの特徴について、メリットに触れつつ解説します。
風力発電は、風の力を利用してタービンを回転させ、得られたエネルギーを電気に変換する発電方式です。風力発電は、設置場所により陸上風力発電と洋上風力発電の2種類に分類されます。風さえあれば昼夜を問わず発電できる風力発電は、日照時間に制限がある太陽光発電と比べると高効率な発電が期待できます。
太陽光発電は、太陽の光エネルギーを電気に変換する発電方式です。太陽光発電のメリットは、太陽光パネルの設置しやすさです。一般家庭の屋根や空き地、工場やビルの屋上など、太陽光パネルを設置できる場所はさまざまです。導入のハードルが比較的低い再生可能エネルギーとして、太陽光発電は注目されています。
※参考:PPAモデルの太陽光発電で企業の脱炭素への1歩を後押し|株式会社ヒナタオエナジーインタビュー | ゼロ炭素ポート
バイオマス発電は、木材や生ごみなどの生物由来の資源を活用した発電方式です。資源を直接燃焼して発生させた水蒸気や、発酵処理によって得られたメタンガスなどが、発電に使われます。本来なら価値がないはずの廃棄物を発電の燃料として再利用できる点は、バイオマス発電の特徴でありメリットです。循環型社会の構築に向け、バイオマス発電は評価されています。
水力発電は、河川や貯水池の水の流れを利用してタービンを回転させ、得られたエネルギーを電気に変換する発電方式です。水力発電は他の再生可能エネルギーと比べて天候の影響を受けにくく、安定した発電が可能です。また、水量をコントロールすることで発電量を調整できるため、電力需要の変動に柔軟に対応できる発電方式として評価されています。
ドイツで再生可能エネルギーが普及した理由について、国の支援や国民の環境意識の高さ、特有の設備である国際送電網などに触れつつ解説します。
ドイツが再生可能エネルギーの普及に成功したポイントは、政府、企業、国民の三者が協力したことです。ドイツ政府は、後述する固定価格買取制度(FIT制度)を早期に導入し、再生可能エネルギー関連の事業に投資しやすい環境を整備しています。
企業は政府の支援を受け、再生可能エネルギーの発電効率の向上や、設備コストの低減に向けた技術開発に積極的に取り組みました。さらに、ドイツ国民は環境保護への意識が高く、地域における再生可能エネルギー設備の導入に前向きな姿勢を示しています。多くの地域主体のプロジェクトが展開され、再生可能エネルギーの発展に貢献しています。
国際送電網の存在も、再生可能エネルギーの普及に成功した理由の1つです。国際送電網は、多国間で電力を融通し合えるインフラです。たとえば、ドイツ国内の発電量が不足した際は、近隣国から電力を補填できます。一方、発電量に余剰があれば他国への供給が可能です。
発電量の不安定さに課題がある再生可能エネルギーですが、国際送電網を活用すれば、課題を克服して再生可能エネルギーを普及させられます。
ドイツの固定価格買取制度(以下「FIT制度」という。)は、段階的に発展してきました。以下では、この制度の歴史を解説します。
1991年に施行された電力供給法(StrEG)は、地域の電力事業者に対し、水力・風力・太陽光・一部のバイオマスなどによる電力を、小売価格の平均額の一定割合で買い取るよう義務付けた法律です。電力供給法により、再生可能エネルギーの導入に向けた取り組みが始まりました。
再生可能エネルギー法(EEG)は、2000年に施行されたFIT制度です。ドイツ政府は電力事業者に対し、再生可能エネルギーを一定期間一定の価格で買い取るよう命じました。再生可能エネルギー法は、再生可能エネルギーが普及する足がかりとなっています。
再生可能エネルギー法は2004年に改正されました。再生可能エネルギー法改正法(EEG2004)では、太陽光発電による買取価格の引き上げや、買取対象範囲の拡大などもなされました。再生可能エネルギー法改正法は、再生可能エネルギーの急速な普及に貢献しています。
再生可能エネルギーを普及させる手段として、水素エネルギーが注目されています。再生可能エネルギーの課題は、発電量の不安定さです。再生可能エネルギーで発電した電力を使って水を電気分解し、水素として貯蔵しておくと、必要なときに必要な量のエネルギーを供給できるようになります。
ここでは、再生可能エネルギーと連携させた、ドイツの水素エネルギー活用事例を解説します。
ドイツを含むヨーロッパ全体で、2017年から2023年にかけて、燃料電池バスの導入が推進されました。ドイツとイタリアを中心に88台の燃料電池バスが導入され、環境にやさしい公共交通システムの構築が進められています。
ドイツのザルツギッター社は、再生可能エネルギーで製造したクリーンな水素(グリーン水素)の活用による、鉄鋼生産技術の確立を目指しています。新技術は2033年までの実用化が見込まれており、鉄鋼産業の脱炭素化が大きく前進すると期待されています。
以下では、日本の実情に合わせて、展開できる可能性のあるドイツの再生可能エネルギー推進策を解説します。
ドイツのバイオマス発電設備の多くは、農家が主体となって運営されています。設備メーカーのサポート体制、充実した金融支援制度により、農家による発電事業への参入ハードルが抑えられているためです。日本でもバイオマス発電の普及が進められていますが、さらなる展開に向けて、ドイツの推進策が参考になるでしょう。
日本でも太陽光発電が比較的導入されていますが、導入コストの高さが普及を阻む要因の1つです。ドイツの作業方法を参考にすると、太陽光発電の導入コストを低減できる可能性があります。たとえば、バックホーを使って施工している場合は、杭を地中に直接打ち込むラミング工法に変えると、作業効率の向上により低コスト化が見込めます。
ドイツは再生可能エネルギー法(EEG2023)にて「2035年までにほぼ全ての電力を再生可能エネルギーでまかなう」という目標を掲げました。目標達成に向けた施策として、風力発電および太陽光発電の設備容量を大幅に拡大すると表明しています。
日本と比べると、ドイツは風力、太陽光、バイオマス、水力などの再生可能エネルギーが普及しています。再生可能エネルギーの普及に成功した理由としては、国を挙げてのプロジェクトとして取り組んだことと、国際送電網の効果的な活用などが挙げられます。ドイツの取り組みを参考にすると、日本でも再生可能エネルギーの普及が期待できるでしょう。
ゼロ炭素ポートは、自社のサービスだけではなく他社のソリューションも含めて、お客さまの脱炭素への取り組みを総合的にサポートするWebサイトです。自社で再生可能エネルギーに関する取り組みを進めるためにも、ぜひゼロ炭素ポートをご活用ください。
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA