- コラム
- 再生可能エネルギーはなぜ普及しない?現状や普及のメリット・関連制度など解説
再生可能エネルギーはなぜ普及しない?現状や普及のメリット・関連制度など解説
目次
脱炭素を達成するためには、世界的に再生可能エネルギーを普及させる必要があります。しかし、近年の日本を見る限りでは、再生可能エネルギーは十分に普及しているとは言えません。
本記事では、再生可能エネルギーの基礎知識や日本での導入状況などを解説します。再生可能エネルギーを普及させるメリットも紹介するので、ぜひ参考にしてください。
再生可能エネルギーの基礎知識
再生可能エネルギーの概念と、法律で指定された7つのエネルギーについて解説します。
再生可能エネルギーとは
再生可能エネルギーは、太陽光や風力、地熱など自然界に無尽蔵に存在し、継続的な利用が可能なエネルギー源です。再生可能エネルギーを活用して得られた電力は、発電時に温室効果ガスを排出せず、環境負荷の少ないクリーンなエネルギーです。また、再生可能エネルギーは自然界のものであるため、輸入に頼る必要がありません。
なお、石炭や石油も自然由来ですが、有限な資源であることから再生可能エネルギーには含まれません。
再生可能エネルギーの定義
「エネルギー供給事業者によるエネルギー源の環境適合利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律施行令」では、以下の7つのエネルギーを再生可能エネルギーとして定義しています。7つのエネルギーは、以下のとおりです。
・太陽光
・風力
・水力
・地熱
・太陽熱
・大気中の熱その他の自然界に存する熱
・バイオマス
※参考:エネルギー供給事業者によるエネルギー源の環境適合利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律施行令|e-Gov 法令検索
主要な5種類の再生可能エネルギー
以下では、前述した7種類のうち、5種類の再生可能エネルギーの概要を解説します。
1.太陽光
太陽光発電は、シリコン系太陽電池などを用いて、太陽の光エネルギーを直接的に電力に変換する発電方式です。太陽光発電は、住宅の屋根や未利用地など、さまざまな場所に設置できます。災害時には非常用電源としても活用できるため、防災面でも重要な役割を果たします。
一方で、太陽光発電は、発電量が天候条件に大きく左右されがちです。安定的な電力供給のためには、蓄電システムとの組み合わせなどで対処しなくてはいけません。また、普及に向けて、発電効率の向上やコスト削減のための技術開発が必要とされています。
※参考:太陽光発電|経済産業省
2.風力
風力発電は、風のエネルギーでタービンを回す発電方式です。風力発電は高いエネルギー変換効率を誇り、天候を問わず発電が可能という特徴があります。特に注目されているのが洋上風力発電で、陸上と比べて騒音や景観への影響が少なく、大規模な発電設備の設置が容易です。
ただし、天候により発電量が変動する点や、低周波音の発生による環境への影響が課題として指摘されています。
※参考:風力発電|経済産業省
3.水力
水力発電は、ダムや河川の流水、農業用水など、さまざまな水のエネルギーを活用して電力を生み出す発電方式です。水力発電の特徴は、太陽光や風力と比べて天候の影響を受けにくく、安定した発電が可能な点です。また、水量の調整により発電量をコントロールでき、一度建設すれば長期間にわたって発電を継続できます。
一方、水力発電所を建設する前には、現地の状況を長期的に調査する必要があります。特に、大規模なダム建設を行う場合は、地域住民の生活環境や自然への影響を慎重に検討しなければなりません。加えて、水力発電所の建設には、多額の初期投資が必要となります。
※参考:水力発電|経済産業省
4.地熱
地熱発電は、地球内部の熱エネルギーを活用して電力を生み出す発電方式です。地熱発電は、天候に影響されることなく、日中・夜間の区別なく安定した発電が可能です。火山国であり地熱資源が豊富に存在する日本は、地熱発電に適した環境といえます。
ただし、地熱発電所の建設には事前調査や深い井戸の掘削が必要となり、多大な時間と費用がかかります。しかも、有望な地熱資源の多くは国立公園内や温泉地などに位置しているため、地域の関係者との調整が必要です。
※参考:地熱発電|経済産業省
5.バイオマス
バイオマスは、動植物由来の生物資源です。バイオマス発電は、原料となるバイオマスを直接燃焼させた熱や、熱分解・発酵によって生じるガスを利用した発電方式です。バイオマス発電の普及は、廃材や生ごみなどの廃棄物を有効活用することにより、循環型社会の実現につながります。天候に左右されず安定した発電が可能な点も、バイオマス発電のメリットです。
一方、各地のバイオマスを回収するためには、収集や運搬のコストが発生します。また、国内での資源確保が難しく、海外からの輸入に依存せざるを得ない現状も、課題として認識されています。
※参考:バイオマス発電|経済産業省
再生可能エネルギーの導入で後れを取る日本の状況
再生可能エネルギーの導入で後れを取る日本の状況を、電源構成における再生可能エネルギーの割合と、エネルギー自給率の観点から解説します。
電源構成のうち再生可能エネルギーが占める割合
2024年に発表された、経済産業省の「今後の再生可能エネルギー政策について」によると、2022年度の国内の電源構成のうち、再生可能エネルギーが占める割合はわずか21.7%しかありませんでした。
一方、ヨーロッパ各国の状況を見ると、ドイツにおける再生可能エネルギーの割合は43.8%、イギリスは42.0%、イタリアは35.7%となっています。ヨーロッパと比べて、日本の再生可能エネルギーの導入率には、さらなる成長の余地があるとわかります。
低水準にある日本のエネルギー自給率
日本はエネルギー自給率が低く、国内の資源だけでは需要に見合う電力を賄うことが困難な状況にあります。経済産業省が発表した、2023年版の「日本のエネルギー」によると、日本のエネルギー自給率は、2021年度で13.3%でした。エネルギー自給率を高めるためにも、再生可能エネルギーの普及が望まれます。
※参考:日本のエネルギー|経済産業省
再生可能エネルギーを普及させるメリット
再生可能エネルギーの普及に成功すれば、環境保護や資源の有効活用などの大きなメリットが見込めます。以下で、詳しく解説します。
温暖化対策に貢献できる
地球温暖化は、世界全体で取り組むべき課題です。再生可能エネルギーの活用は、地球温暖化に対する効果的な解決策といえます。再生可能エネルギーによる発電は、従来の化石燃料による発電と比べると、温室効果ガスの排出を大幅に抑制できるためです。
エネルギー自給率がアップする
前述のように、日本はエネルギー自給率の低さが課題となっています。エネルギー自給率の低さを改善する手段として、再生可能エネルギーの活用が注目されています。
太陽光や風力などの自然由来の再生可能エネルギーは、石炭や石油と異なり、国内で入手でき枯渇する心配もありません。再生可能エネルギーの活用を進めることで、エネルギー自給率の向上につながります。
地域の特性を活かした普及方法を検討できる
各地域の自然条件や環境に応じて最適な発電方式を選択できることも、再生可能エネルギーを普及させるメリットです。例えば、日照に恵まれた地域では太陽光発電、森林資源が豊富な地域では木質バイオマス発電というように、地域特性を活かした発電方式の導入が可能です。また、発電施設の建設や運営に伴う雇用創出は、地域経済の活性化にも貢献します。
再生可能エネルギーの普及を阻む課題
ここでは、再生可能エネルギーの普及を阻む課題について、技術面・コスト面の観点から詳しく解説します。
安定供給が難しい
電力の安定供給の難しさは、再生可能エネルギーの課題といえます。太陽光や風力などの再生可能エネルギーは、天候条件により発電量が大きく変動するためです。安定した電力供給を実現するためには、蓄電池の導入による電力貯蔵や、電力系統の増強・整備といった対策が必要となります。
導入コスト・発電コストが高い
再生可能エネルギーの普及にあたり、高額な導入コストや発電コストも課題となっています。コストがかかる主な理由は、設備に使用される部材の価格や、工事・メンテナンスにおける人件費などです。太陽光発電の場合は、日照条件による発電効率の低下も理由の1つとなっています。
ただし、国や地方自治体が提供する各種支援制度を活用することで、コスト面での課題を軽減できる可能性があります。
再生可能エネルギーの普及に向けた制度やイニシアチブ
ここでは、再生可能エネルギーの普及に向けた取り組みとして、国の制度やイニシアチブを解説します。
固定価格買取制度(FIT制度)
固定価格買取制度(以下「FIT制度」という。)は、再生可能エネルギーにより発電した電力を、電力会社が一定価格で一定期間買い取る制度です。発電事業者はFIT制度により、安定的な売電収入を見込めるようになりました。高額な導入コストの回収が容易になったことで、再生可能エネルギーへの投資が促進されています。
※参考:再生可能エネルギー - FIT・FIP制度 ガイドブック|経済産業省
フィードインプレミアム制度(FIP制度)
フィードインプレミアム(Feed-in Premium)制度(以下「FIP制度」という。)は、2022年度から導入された制度です。FIP制度によって、発電事業者は市場価格に一定のプレミアム(補助額)を上乗せした価格で売電可能です。市場価格の高い時間帯を選んで売電すると、発電事業者はより大きな収益を得られます。
FIP制度が導入された背景には、再生可能エネルギーの普及に伴って増加している、再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ促進賦課金)を抑制する狙いがあります。
※参考:再生可能エネルギー - FIT・FIP制度 ガイドブック|経済産業省
RE100
RE100(Renewable Energy 100%)は、その名のとおり再生可能エネルギーを意味する国際的なイニシアチブです。事業用途の電力の100%を再生可能エネルギーで賄うことを目指す企業が、RE100に加盟しています。
※参考:RE100とは?|環境省
再生可能エネルギー普及に関する企業事例
ここでは、再生可能エネルギー普及に関する企業事例を、エネルギーを供給する側と活用する側に分けて解説します。
再生可能エネルギーの供給にかかわる企業事例
再生可能エネルギーの供給において、三井物産フォーサイト株式会社は、太陽光発電施設とバイオマス発電施設の運転・保守管理に携わっています。太陽光発電施設では、定期的な除草作業や害獣対策といった現場管理に加え、電力会社からの出力抑制要請や、関係官庁への各種手続きや報告などにも対応しています。
再生可能エネルギーを活用する企業の事例
イオン株式会社は2030年を目処に、店舗で使用する電力の50%を、再生可能エネルギーに切り替えると表明しています。同社は目標達成に向け、店舗の屋上スペースを活用した太陽光発電システムの導入や、家庭の卒FIT電力(固定価格買取期間が終了した太陽光発電の電力)の積極的な買い取りなど、さまざまな施策を展開しています。
まとめ
再生可能エネルギーは、脱炭素を達成するために普及が望まれるエネルギーです。自然由来で枯渇することのない再生可能エネルギーは、国内のエネルギー自給率の向上にも貢献します。国や企業、各自治体の協働により、化石燃料から再生可能エネルギーへの切り替えが進行していくでしょう。
ゼロ炭素ポートは、自社のサービスだけではなく他社のソリューションも含めて、お客さまの脱炭素への取り組みを総合的にサポートするサイトです。再生可能エネルギーの普及に向けた取り組みをお考えの人は、ぜひゼロ炭素ポートをご活用ください。
執筆者プロフィール
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA