ゼロ炭素ポート

工場におけるCO2削減施策|国内工場の取り組み事例も紹介 

作成者: 大塚勝臣(おおつかかつおみ)|2025年02月21日

エネルギーを使って「モノ」を生み出す工場にとって、CO2削減は重要な課題の1つです。しかし、具体的にどのような施策を打てばよいか分からず、困っている関係者は多いでしょう。 

本記事では、工場におけるCO2削減のアプローチごとに、具体的な施策のアイデアを紹介します。工場のCO2削減に取り組む際は、ぜひ参考にしてください。 

CO2削減は世界共通の課題 

CO2(二酸化炭素)は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの1種です。CO2は化石燃料の使用などにより排出され、産業革命以降は大気中の濃度が著しいスピードで増加しているとされています。CO2削減は、世界が一丸となって取り組むべき重要な課題といえるでしょう。 

企業にCO2削減が求められる背景 

企業に対してCO2削減が求められる背景には、次の2つの理由があります。 

・国際社会からの要請 
・サプライチェーン排出量の重要性の高まり 

それぞれ、以下で詳しく解説します。 

国際社会からの要請 

地球温暖化により、世界中で気候変動による問題が深刻化しています。気温の上昇や海洋の変化などのリスクが高まりを見せるなか、この流れを止めるため、世界的にCO2削減の取り組みが強化されています。 

サプライチェーン排出量の重要性の高まり 

日本でも大企業を中心にCO2削減の取り組みが進むなか、サプライチェーン排出量の重要性が指摘されるようになりました。 

サプライチェーン排出量とは、モノが生まれて廃棄されるまでの一連の流れのなかで排出される、CO2の総量のことです。近年は、自社のCO2排出量だけでなく、このサプライチェーン排出量にも責任を持つべきという考えが広まり、大企業を中心に取引先の中小企業にもCO2削減を求める動きが活発化しています。 

工場におけるCO2排出量の動向 

ここでは、工場におけるCO2排出量の動向について解説します。 

産業部門(工場など)のCO2排出量は全部門中最多 

国立研究開発法人 国立環境研究所の調査によると、2021年度における部門別のCO2排出量は工場を含む産業部門が最多でした。調査開始以降の推移を見ると、減少傾向ではあるものの、依然として排出量は多く、削減に向けた積極的取り組みが求められます。 

※参考:2021年度温室効果ガス排出・吸収量(確報値)概要|国立研究開発法人 国立環境研究所 

産業部門(工場など)のCO2削減目標に向けた進捗状況 

日本では、産業部門(工場など)におけるCO2排出量を、2030年までに38%削減するという目標を立てています。2021年度の実績では、削減率は約20%でした。 

▼エネルギー起源CO2排出量 

部門  2013年度  2021年度 (2013年度比)  2023年度の目標・目安 (2013年度比) 
全体  1,235  988 (−20%)  677 (−45%) 
産業  464  373 (約−20%)  289 (−38%) 
業務その他  237  190 (約−20%)  116 (−51%) 
家庭  208  156 (約−25%)  70 (−66%) 
運輸  224  185 (約−18%)  146 (−35%) 
エネルギー転換  106  89.5 (約−16%)  56 (−47%) 

出典:2021年度における地球温暖化対策計画の進捗状況(環境省 地球温暖化対策推進本部) 

企業がCO2削減に取り組むメリット 

企業がCO2削減に取り組むと、次のようなメリットを期待できます。 

社会的評価が高まる 

CO2削減により地球温暖化対策に貢献することで、企業イメージがアップします。顧客だけでなく求職者からの印象もアップし、人材の確保にもつながるでしょう。また、近年はESG投資が活発になり、投資家も企業の環境問題への対応に注目しています。 

コストを削減できる 

CO2削減の一環として節電に取り組めば、燃料費や光熱費を削減することが可能です。事業活動におけるコストカットにつながる点も、CO2削減に取り組むメリットといえます。 

取引先の拡大につながる 

近年は多くの大企業がSDGsへの取り組みを進めており、前述のとおりサプライチェーンを構成する企業にも環境問題への対応を求め、何らかの基準や指針を設けるケースが多くあります。CO2削減は環境問題やSDGsとの関連が深いため、CO2削減に取り組むと大企業の取引先として選ばれやすくなるでしょう。 

補助金や助成金を利用できる 

CO2削減の取り組みは、補助金や助成金の対象となります。国や自治体がさまざまな制度を設けており、中小規模な企業も設備導入にかかる負担を軽減することが可能です。 

たとえば、環境省の「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)」は、CO2削減計画の策定や設備更新などに対して補助金を支給する制度です。補助上限は最大5億円にのぼり、企業におけるCO2削減の取り組みを力強くサポートしています。 

工場がCO2削減に取り組む方法 

工場がCO2削減に取り組む方法としては、主に以下のようなものがあります。 

1.再生可能エネルギーの導入  ・太陽光発電設備の設置 
2.ボイラに関する施策  ・高効率ボイラの導入 ・燃焼空気比を基準値以下に設定 ・排熱回収装置の導入 ・省エネ燃焼システムの導入 
3.工場炉に関する施策  ・リジェネレイティブバーナーの導入 ・高断熱材による断熱効果の向上 ・排ガス熱の再利用 ・天然ガスや電気への燃料転換 
4.コンプレッサに関する施策  ・吐出圧力の低下 ・台数制御システムの導入 ・吸気温度の低温化 ・インバータ制御 
5.照明に関する施策  ・LED照明の導入 ・照明制御機器の導入 ・こまめなオン・オフ 
6.空調設備に関する施策  ・フィルターや熱交換器の清掃 ・室外機周辺の環境の見直し ・空調制御システムの導入 
7.キュービクル・変圧器に関する施策  ・高効率変圧器の導入 ・台数制御装置の導入 
8.カーボンオフセット  ・温室効果ガスの削減活動への投資など 

それぞれの施策について、以下で詳しく解説します。 

1.再生可能エネルギーの導入 

再生可能エネルギーとは、自然界に存在し枯渇せず、CO2を排出しないエネルギーのことです。 

再生エネルギーの代表例といえば、太陽光発電です。具体的には、太陽光発電設備を設置し、工場で使用する電気を太陽光発電でまかなうといった方法が考えられます。 

導入にはコストがかかりますが、設置後約10年で費用を回収できるとされています。工場は屋根面積が広いので多くのソーラーパネルを設置でき、太陽光発電によるメリットを得やすいでしょう。 

2.ボイラに関する施策

次に、工場のボイラに関するCO2削減施策を紹介します。 

高効率ボイラの導入

燃焼効率の高い、高効率ボイラを導入する施策です。設備の一部を更新し、高効率のボイラを優先的に運転させるという方法でも効果を期待できます。 

燃焼空気比を基準値以下に設定

ボイラのバーナーの空気比(実空気量/理論空気量)が大きくなると、燃焼効率が低下し、燃料を余分に消費してしまいます。空気比は法律により目標値が定められているので、その値以下になるよう設定しましょう。 

排熱回収装置の導入

排熱回収装置とは、ボイラから出る温まった排水や空気の熱エネルギーを回収し、利用する装置です。温水加熱や殺菌・滅菌工程に利用するなど、捨てられていた熱エネルギーを有効活用できます。 

省エネ燃焼システムの導入 

蒸気ドラム内の圧力を保つための燃焼用空気の量を、最適化するシステムを導入する施策です。必要な動力が最適になるよう調整することで、電気の使用量を減らせます。 

3.工場炉に関する施策 

ここでは、工場炉に関するCO2削減施策を紹介します。 

リジェネレイティブバーナーの導入 

リジェネレイティブバーナーとは、2つのバーナーを交互に使用することで、一方から放出される炎の排ガスによりもう一方が予熱されるバーナーのことです。蓄熱と燃焼を交互に行いながら運転することで、燃料の節約につながります。 

高断熱材による断熱効果の向上 

断熱材が工場炉の熱損失に与える影響は大きく、省エネを図るうえで重要な要素の1つです。セラミックファイバなどの高断熱材を使用すれば、熱の放出を抑制できます。 

排ガス熱の再利用 

ボイラと同様、工場炉で排出された熱エネルギーを有効活用する施策です。排ガスの熱を再利用するための熱回収設備を導入します。 

天然ガスや電気への燃料転換

工場炉で使用する燃料を、石油・石炭から天然ガス・電気などに転換する施策です。CO2削減につながりますが、コストバランスも考慮することが大切です。 

4.コンプレッサに関する施策 

次に、コンプレッサに関するCO2削減施策を紹介します。 

吐出圧力の低下 

コンプレッサの吐出量が大きくなると、必要な電力も増加してしまいます。吐出圧力を低下させ、吐出量が過剰にならないよう調整すると、電力の消費を抑えることが可能です。 

台数制御システムの導入 

その名のとおり、コンプレッサの運転台数を制御するシステムです。高効率のコンプレッサの優先使用や、コンプレッサの組み合わせにより効率を高めることで、運転台数を必要最低限に制御します。 

吸気温度の低温化 

コンプレッサが吸い込む空気の温度を下げると、空気密度が上がります。すると、より多くの空気を処理できるようになり、省エネにつなげることが可能です。 

インバータ制御 

コンプレッサの負荷を制御する仕組みにはさまざまな種類がありますが、なかには電力を無駄に消費してしまう方式も存在します。インバータ制御なら動力の無駄を軽減し、省エネ化を実現可能です。 

5.照明に関する施策 

ここでは、工場内の照明に関する施策を紹介します。 

LED照明の導入 

LED照明は、白熱灯や蛍光灯のような従来照明と比べて、省エネ性能が高いことで知られています。従来照明よりも高額ではありますが、消費電力が抑えられることで電気料金を削減できるので、長い目で見ればコストカットにつながるでしょう。 

照明制御機器の導入 

人感センサー制御やスケジュール制御などにより、照明の使用量を最適化する機器です。なかには、照明の集中管理や、遠隔操作が可能なシステムもあります。 

こまめなオン・オフ 

使っていない照明は、こまめに消すことが大切です。また、明るさが十分な場所では照明の数を減らすことも検討してみましょう。 

6.空調設備に関する施策 

次に、工場内の空調設備に関する施策を紹介します。 

フィルターや熱交換器の清掃 

フィルターや熱交換器をきれいに保つことで、空調設備の効率を維持できます。とくに、フィルターの詰まりは空調効率への影響が大きいので、頻度を決めてこまめに清掃するとよいでしょう。 

室外機周辺の環境の見直し 

室外機が温まりすぎたり、冷えすぎたりしていると空調効率が下がってしまうので注意が必要です。また、冷却効果が低下しないよう、吹き出し口の近くに障害物がないか定期的にチェックしましょう。 

空調制御システムの導入 

空調制御システムとは、外気温に合わせて温度設定を最適化してくれるシステムです。空調機器を更新する場合と比べてコストを抑えながら、省エネ効果を得られます。 

7.キュービクル・変圧器に関する施策

高効率変圧器を導入すると、電力の消費を抑えることができます。また、台数制御装置により、夜間や休日など稼働率が下がる時間帯の台数を制御することも有効です。これにより、負荷に関係なく発生する無負荷損を低減できます。 

8.カーボンオフセット 

カーボンオフセットとは、さまざまな施策を講じたうえで、どうしても避けられない温室効果ガスの排出がある場合に、温室効果ガスの削減活動への投資などを通じて埋め合わせをすることです。日本では、排出削減活動や排出削減・吸収量を認証する「オフセット・クレジット(J-VER)制度」を創設し、国内の資金循環を促しています。 

CO2削減に取り組む工場の事例 

近年は、日本国内のさまざまな工場がCO2削減に取り組んでいます。一例として、以下の2つの事例を紹介します。 

トヨタ自動車株式会社 

トヨタ自動車株式会社では「工場CO2ゼロチャレンジ」と題して、エネルギーの効率改善や再生可能エネルギーの活用などに取り組んでいます。高効率熱交換器の開発による蒸気の高温空気化や、地中熱を活用するシステムなど、CO2削減につながる多彩な技術を導入しているのが特徴です。そのほか、製造工程の短縮や作り方の見直しなども行っています。 

大松工業株式会社 

大松工業株式会社では、ボイラから排出されるCO2を削減するため、計測器を用いて運転状況をデマンド管理し、エネルギーの使用状況を可視化しています。ほかにも循環加温ヒートポンプの並列導入や、100%再生可能エネルギー由来の電力を使用するなど、多彩な取り組みを行っている企業です。 

まとめ 

工場を含む産業部門は、そのほかの部門と比べてCO2の排出量が多く、CO2削減の取り組みが求められています。CO2削減の取り組みはコストカットや社会的評価の向上につながるので、企業にとっても多くのメリットを得られるでしょう。 

CO2削減に取り組むなら、ぜひ「ゼロ炭素ポート」をご活用ください。ゼロ炭素ポートは、脱炭素の未来を作る人々をサポートすることを目的としたポータルサイトです。脱炭素に関するコラム記事やCO2排出量の計算ツールなど、さまざまなコンテンツを提供しています。自社のみならず他社ソリューションとも協力し、脱炭素に取り組むお客さまのニーズにお応えするサイトです。 

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執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA