昨今、地球温暖化対策としてCO2削減に取り組む企業が増えています。そのため、自社でもCO2削減に取り組むことになり、情報収集している人もいるでしょう。
本記事では、CO2削減に関して義務を課している法律を解説します。また、CO2削減についてできる取り組みも解説するため、自社での取り組みの参考にしてください。
現在、CO2削減のはたらきは世界全体で広まっていますが、日本ではどのような動きがあるのでしょうか。
2015年12月に採択され、2016年11月に発効されたパリ協定は、地球温暖化対策を取り決めた国際条約です。この協定には、世界中の国々が参加しており、日本も批准しています。パリ協定で定められている世界共通の長期目標は、以下の通りです。
・世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする
・できるかぎり早く世界の温室効果ガス排出量をピークアウトし、21世紀後半には、温室効果ガス排出量と(森林などによる)吸収量のバランスをとる
日本でもパリ協定に基づき、2030年度までにCO2を含む温室効果ガスを2013年度の排出量の46%分削減することを、目標に掲げています。
出典:経済産業省 資源エネルギー庁 パリ協定における長期目標
2020年、政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すと表明しました。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることです。そのため、カーボンニュートラルの実現には、温室効果ガスの排出量を削減するだけでなく、吸収作用の保全や強化も必要です。
現在、政府はカーボンニュートラルを実現するため、脱炭素に取り組む自治体や企業への支援を強化しています。また、2050年カーボンニュートラルに向けたグリーン成長戦略を策定しています。
CO2削減の取り組みは、企業が自主的に取り組んでいる部分もありますが、現在は法律によって義務化されています。国内では、主に地球温暖化対策の推進に関する法律(以下「地球温暖化対策推進法」という。)と、エネルギー使用の合理化および非化石エネルギーへの転換等に関する法律(以下「改正省エネ法」という。)があり、これにより企業はCO2削減が義務づけられています。
以下では、CO2削減に関連する法律のなかでも、改正省エネ法の基礎知識を解説します。
エネルギーの使用の合理化に関する法律 (以下「省エネ法」という。)とは、企業の事業活動で使用するエネルギーの非化石エネルギーへの転換や、エネルギー使用の合理化を目的とした法律です。この法律は、2022年5月に改正省エネ法が国会で成立し、翌年4月に施行されました。
省エネ法の対象企業は一定規模以上の事業者です。具体的には、原油換算で年間1500キロリットル以上のエネルギーを使用する企業が対象です。なお、企業が使用するエネルギーは、化石エネルギーだけではなく、非化石エネルギーも利用されています。
また、省エネ法の対象となるのは工場の設置企業だけでなく、運輸業や製造業、家電およびエネルギーの小売業も含まれます。
省エネ法による義務の内容には、エネルギー使用状況の定期報告や中長期計画の作成、電気の需要の最適化などが挙げられます。また、エネルギー管理者やエネルギー管理統括者などの選任も必要です。
なお、業種によって義務の内容は異なります。製造業の場合は、品目ごとに設定されたエネルギー消費効率目標の達成が求められ、小売業は消費者への情報提供などが義務づけられています。
以下では、CO2削減に関連する法律のなかでも、温対法の基礎知識を解説します。
温対法は、1998年に京都議定書の採択などを背景にして、地球温暖化対策を官民一体で取り組めるようにするため、制定された法律です。この法律は、制定以降後、地球温暖化対策本部の設置や温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度の導入などを通じて、これまでに7回改正されています。最近の改正は2021年に行われました。
温対法によって整備された制度には、温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度があります。これは、特定排出者という温室効果ガスを大量に排出する企業に、自社の排出量を算出し国に報告することを義務付けています。現在の制度は報告義務にとどまり、削減義務はありません。企業から報告された内容は、政府が取りまとめて公表します。
温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度の対象になるのは、事業内容を問わず大量に温室効果ガスを排出する企業です。温室効果ガスの種類は、次の通りです。
・エネルギー起源二酸化炭素
・非エネルギー起源二酸化炭素(CO2)
・メタン(CH4)
・一酸化二窒素(N2O)
・ハイドロフルオロカーボン類(HFC)
・パーフルオロカーボン類(PFC)
・六ふっ化硫黄(SF6)
・三ふっ化窒素(NF3)
国内排出量取引制度(キャップ・アンド・トレード)は、実質的にCO2削減を義務づけるための規制です。この制度では、企業ごとに温室効果ガスの排出枠を設け、その余剰分を売買します。努力した企業が報われ、通常の経済活動を通じて地球温暖化を防止できます。
CO2削減は企業の義務ですが、取り組むことで多くのメリットがあります。
再生可能エネルギーを導入することで、自家消費する電力を生み出せし、外部から購入する電力の量を減らすことができます。これにより、電気料金を削減できるでしょう。初期投資が必要ですが、長期的な計画と実施により経費削減が実現します。
近年、環境問題に積極的に取り組む企業の価値を重要視する「ESG投資」が注目されています。CO2削減に取り組む企業は、投資家や金融機関からESG投資先として評価されやすく、結果として資金調達が有利になると考えられます。
化石燃料は埋蔵量に限界があるため、現在は主要燃料であるものの、将来的には枯渇するリスクがあります。この問題を解決するため、再生可能エネルギーを導入し、化石燃料への依存を減らすことが重要です。これにより、事業継続性を確保し、将来的に化石燃料の価格が高騰するリスクにも対応可能となります。
ここでは、CO2削減について、企業ができることを紹介します。自社で取り入れられるものがあれば、計画時の参考にしてください。
省エネ対策は、設備を導入しなくても始められるため、「できることから始めたい」と考える企業にとって取り入れやすい対策です。身近な省エネ対策には次のようなものがあります。
・照明をLEDに替える
・壁の高断熱化
・空調の設定温度の見直し
・空調設備のこまめなメンテナンス
・エネルギー管理システムの導入
など
再生可能エネルギーとして、一般的に導入されるのは、太陽光パネルや風力発電設備です。今まで外部から購入していた電力を、再生可能エネルギー由来のプランに切り替えましょう。再生可能エネルギーは、バイオマスエネルギーを活用するため、CO2削減につながります。
製造に必要な設備を見直すだけでなく、商品設計を見直して資源の利用量を減らすことも、CO2削減につながります。例えば、リサイクル素材で商品を製造したり、製品の耐久度を向上させたりすることが考えられます。
企業がCO2削減に取り組む際には、次のような懸念点があります。
CO2削減の取り組みには、設備の更新や導入が必要になる場合があります。そのため、初期投資が必要となり、資金や予算の確保が必要です。また、CO2削減専門の部署を設立する際には人件費もかかります。
CO2削減の取り組みは、短期的には効果が見えにくいため、長期的な取り組みが必要です。また、分かりやすい成果が出にくいため、活動の評価が難しいということもあらかじめ理解しておきましょう。
地球温暖化を食い止めるCO2削減対策は、企業が自主的に取り組む場合もありますが、法律によって義務化もされています。しかし、CO2削減は法律を守るためにだけでなく、企業にとってメリットをもたらし、利益につながるでしょう。
CO2削減について社内での取り組みを検討する際は、東京ガスの「ゼロ炭素ポート」もご活用ください。ゼロ炭素ポートは、脱炭素の情報を発信しているだけでなく、“脱炭素の未来をつくる方々”のお困りごとを気軽に相談できる「場」を目指しています。
サイトでは、知りたい情報をキーワード検索できるほか、コラムCO2排出量計算ツールを活用し、自社に必要な情報を収集できます。また、炭素・カーボンニュートラルに関するご相談も、お気軽にお寄せください。
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA