CO2(二酸化炭素)排出量の削減は、全世界共通の目標です。日本も高い目標を掲げてさまざまな取り組みを実施しており、企業にもCO2削減が求められています。
本記事では、CO2削減に関するトピックスを網羅的に解説します。企業がCO2削減に取り組む方法や、国内事例も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
まず、CO2は環境にどのような影響を与えるのでしょうか。ここでは、CO2が環境に与える影響を解説します。
そもそもCO2とは二酸化炭素のことで、地球の大気中に存在する気体の1つです。産業革命以降、人類は化石燃料をエネルギー源として活用し、社会を発展させてきました。化石燃料には炭素(C)が含まれており、燃焼すると空気中の酸素(O)と結合して二酸化炭素(CO2)が発生します。これにより、大気中のCO2濃度は急激に上昇しています。
また、森林開発もCO2濃度が高まった原因の1つです。植物は、光合成によってCO2を吸収します。森林開発が進み森林面積が減少したことで、吸収できるCO2が減少しています。
CO2は、「温室効果ガス」の1種です。温室効果ガスは、太陽からの熱が宇宙に放出されることを抑え、地球の温度を適度に保つ働きがあります。しかし、温室効果ガスの濃度が高まると、熱が必要以上に蓄積されてしまい、地球温暖化が引き起こされると考えられています。
CO2濃度の上昇により地球温暖化が進行すると、環境にはどのような影響があるのでしょうか?
懸念されている影響としては、以下のようなものがあります。
地球温暖化により大気中の水蒸気が増え、雨の頻度や強さが増すと考えられています。近年では、日本でも記録的な猛暑や大雨などの異常気象が観測されるようになり、各地で影響が出ています。2023年と2024年には、2年連続で7月の平均気温が観測史上最高を記録しました。
気候が変化すると、雨の振らない地域が増えたり、逆に大雨により深刻なダメージを受ける地域が現れたりします。農作物の収穫量にも悪影響が及び、食糧不足に陥りかねません。
平均気温が1度や2度上昇するだけで、絶滅の危機に瀕する動物が現れると考えられています。リスク予測についてはさまざまな報告があり、今後も変わる可能性があります。しかし、生態系への影響は避けられないと考えられるでしょう。
ここでは、CO2削減に関連して、世界の国々がどのような動きを見せているかについて解説します。
2015年のパリ協定では、世界共通の目標として「産業革命以前と比較して、気温上昇を2度以内に抑えること」、そしてさらに高い「1.5度以内」を努力目標に掲げました。また、参加各国に対しては、5年ごとの目標提出義務が課せられました。
2019年に開かれたCOP25では、「パリ協定で掲げた努力目標を達成するためには、2050年付近までにカーボンニュートラルを実現しなければならない」という報告がなされました。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの「削減」と「吸収・除去」の取り組みにより、排出量が差し引きゼロになった状態のことです。
このCOP25の報告を受け、多くの国が「2050年までのカーボンニュートラル実現」を宣言するに至りました。
世界の国々は、温室効果ガスの削減について次のような目標を掲げています。
| 2030年までの目標 | |
| 中国 | GDPあたりのCO2排出を65%以上削減 |
| アメリカ | 温室効果ガス排出量を50〜52%削減 |
| ロシア | 温室効果ガス排出量を30%削減 |
| インド | GDPあたりのCO2排出を45%削減 |
| EU | 温室効果ガス排出量を55%以上削減 |
ここでは、CO2削減に関する日本の動向を解説します。
日本は、2021年に「2030年までに温室効果ガス46%削減(2013年比)」を目指すことを表明しました。これに加えて、さらに高い目標である50%削減を掲げています。
日本では「地球温暖化対策の推進に関する法律(地球温暖化対策推進法)」の改正を繰り返しています。その結果、企業のCO2排出量情報のオープンデータ化が原則とされたり、温室効果ガス排出量削減に取り組む地方公共団体を国が支援する枠組みができたりと、さまざまな動きがありました。また、2025年の改正法施行では、地域脱炭素化促進事業制度の拡大が決定しています。
企業がCO2削減に取り組むことは社会的責任を果たすためでもありますが、同時に以下のようなメリットがあります。
CO2削減の取り組みは、エネルギーコストの削減に直結するものです。例えば、太陽光パネルの設置による電力コストの削減や、省エネ化による消費電力の抑制などに取り組めば、電力会社から購入する電力量が減少するため、電気代を抑えられます。
昨今は、サプライチェーン全体での排出量削減の必要性が高まっています。大企業が取引先に対してCO2削減の取り組みを求めるケースも少なくありません。CO2削減に取り組めば、環境意識の高い取引先からの信頼を得やすくなり、競合優位性を高めることにもつながります。
近年は、金融機関がESG投資を推進し、環境への取り組みに力を入れている企業を優遇する制度を設ける場合も多くあります。CO2削減も判断材料とされる場合があり、積極的に取り組むことで資金調達の可能性が広がるでしょう。
企業がCO2削減に取り組む流れは、おおむね以下のとおりです。
まずは、自社のCO2排出量を把握するところから始めましょう。サプライチェーン全体のCO2排出量を減らす場合は、他社や消費者など、自社の事業活動に関連したCO2排出量も把握する必要があります。現状を把握したうえで、適切な目標を設定することが大切です。
既存の化石燃料から、再生可能エネルギーへの移行に取り組みましょう。CO2をほとんど排出しない再生可能エネルギーを利用すれば、CO2排出量を大幅に削減できます。自社に太陽光発電設備を設置した場合には、電気料金の節約にもつながります。
省エネ対策により、余計なエネルギー消費を抑えることも大切です。使わない照明はこまめに消すといった従業員の意識改革や、エネルギー効率の改善に取り組みましょう。
太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの活用について、具体的な施策を紹介します。
自社ビルや工場の屋上などにソーラーパネルを設置し、太陽光を利用して発電する方法です。導入コストはかかりますが、電気代を節約できるので、長期的な目線で見ればコストカットにつながります。また、国や自治体の補助金や助成金を利用できる場合もあるでしょう。
参考:PPAモデルの太陽光発電で企業の脱炭素への1歩を後押し|株式会社ヒナタオエナジーインタビュー | ゼロ炭素ポート
電力会社のなかには、再生可能エネルギーを使ったプランを取り扱っているところもあります。自社で太陽光発電設備を設置する場合と異なり、導入コストがかからない点がポイントです。プランを切り替えるだけでよいので、手軽に既存エネルギーからの切り替えができます。
省エネ化の主な対象として、「空調」と「照明」の2つが挙げられます。まずは、空調設備の省エネ化から解説していきます。
空調設備のフィルターをこまめに掃除すると、省エネ効果が高まるとされています。2週間に1度や月に1度など、頻度を決めて定期的に掃除することをおすすめします。空調の熱交換器(フィン)の掃除も有効です。熱交換器を清掃する際には、専門業者に頼んだ方がよいでしょう。
室外機が熱くなったり冷えたりすると、空調の効率が低下してしまいます。夏は直射日光が当たらないように、逆に冬は直射日光が当たるようにすると効果的です。また、熱風の吹き出し口をふさがないよう、近くに障害物を置かないことも大切です。
空調の設定温度を1度変えるだけでも、省エネ効果を期待できます。部屋ごとに最適な温度を設定しましょう。
空中制御システムとは、利用状況といったデータに基づき、空調機器の運転を最適化して消費電力を抑えるシステムです。人の手で設定温度を管理する必要がないので、従業員の手間も軽減されます。
ここでは、照明設備の省エネ化について解説します。
照明設備を見直すなら、省エネ効果の高いLED照明がおすすめです。蛍光灯や白熱灯からLED照明に切り替えると、消費電力を抑えられます。寿命が長いため、交換のスパンが長い点もメリットです。
人感センサーや照度センサーなどの、省エネ制御システムを活用する方法もあります。
・人感センサー:人がいないときに自動で照明が消灯する
・照度センサー:外光に応じて照明の明るさを自動調整する
使っていない照明はこまめにオフにするよう、従業員の意識改革を促しましょう。時間帯や人数などに応じて、一定のルールを設けることもおすすめです。また、十分な明るさのある場所では、照明の間引きも有効です。照明機器の数を減らした分だけ、電力消費量も削減されます。
カーボンオフセットとは、CO2削減に取り組んだうえでどうしても排出されてしまうCO2を、温室効果ガスの削減活動への寄付や排出削減量の購入などを通じて埋め合わせることです。実際に自社のCO2排出量が削減されるわけではありませんが、削減活動に貢献することで、実質的にCO2排出量を減らしたと捉えます。
日本では、排出削減活動や排出削減・吸収量を認証する「オフセット・クレジット制度(J-VER制度)」を創設し、国内の資金循環を促しています。ただし、最終的にカーボンオフセットで帳尻を合わせればよい、という考え方は望ましくありません。きちんと施策を取り組んだうえで、どうしても削減しきれない分をカーボンオフセットで埋め合わせるようにしましょう。
最後は、CO2削減に取り組む国内企業の事例を紹介します。
イオングループでは、2025年までにイオンモール全店を100%再生エネ化するという目標を掲げており、グループ各社でさまざまな取り組みが実施されています。イオン銀行やイオンリテールでは、脱炭素ライフスタイルへの転換もサポートしています。
ヤマトホールディングスは、2030年までに温室効果ガスの自社排出量を48%削減、2050年までに実質ゼロを目指すという目標を掲げています。再生可能エネルギー由来の電力使用率向上を目標に、電気自動車を導入し、太陽光発電設備を整備しました。ほかにも輸送効率の向上など、多角的な取り組みを行っています。
株式会社セブン&アイ・ホールディングスでは、「GREEN CHALLENGE 2050」という環境宣言を掲げ、CO2排出量の削減をはじめ食品ロス対策やプラスチックの削減などを進めています。
CO2排出量については、2030年までに50%削減、2050年までに実質ゼロという目標が設定されました。目標の達成に向け、店舗への太陽光パネルの設置や、太陽光発電所からの電力調達などに取り組んでいます。
CO2削減は、世界が一致団結して取り組むべき重要な課題です。日本国内でも、企業の事業活動におけるCO2削減を進める動きが加速しており、各社がさまざまな取り組みを行っています。まずは、自社のCO2排出量を把握し、削減目標を立てるところから始めましょう。
CO2削減に取り組むなら、ぜひ「ゼロ炭素ポート」をご活用ください。ゼロ炭素ポートは、脱炭素の未来を作る人々をサポートすることを目的としたポータルサイトです。脱炭素に関するコラム記事やCO2排出量の計算ツールなど、さまざまなコンテンツを提供しています。自社のみならず他社ソリューションとも協力し、脱炭素に取り組むお客さまのニーズにお応えするサイトです。
脱炭素ソリューションの詳細資料のダウンロードやお問い合わせを承っています。
執筆者プロフィール
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA