ゼロ炭素ポート

ゼロエミッションとカーボンニュートラルの違いは?注目されている理由など解説

作成者: 大塚勝臣(おおつかかつおみ)|2025年02月12日

ゼロエミッションとは、産業活動や日常生活によって発生する廃棄物や排出物を可能な限りゼロに近づけることを目指す概念です。一方、カーボンニュートラルは、CO2などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを指し、特に排出と吸収のバランスを取ることに重点を置いています。 

本記事では、この2つの概念の違いに焦点を当て、詳しく解説します。 

ゼロエミッションとは、産業活動や日常生活から発生する廃棄物や排出物を可能な限りゼロに近づけることを目指す概念のことです。ゼロエミッションの取り組みにより、廃棄物をほかの産業の資源として再利用し、全体として廃棄物を出さない循環型社会の構築を目指しています。 

たとえば、工場で発生する副産物を別の業界で活用することで、廃棄物を減らしながら資源の有効活用を図る仕組みを構築することが可能です。 

カーボンニュートラルとの違い

ゼロエミッションとカーボンニュートラルは、環境問題へのアプローチという点では共通していますが、焦点や対象範囲に違いがあります。 

カーボンニュートラルは、CO2などの温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることを目指します。方法としては、排出量を削減すると同時に、植林やカーボンクレジットを活用して吸収量を増やし、排出と吸収のバランスを取ることに重点を置いています。 

一方、ゼロエミッションは温室効果ガスだけでなく、廃棄物全般を対象に、排出そのものをゼロに近づけることを目指しています。そのため、ゼロエミッションの対象範囲はカーボンニュートラルよりも広範囲に及びます。 

ゼロエミッションが注目される理由 

地球温暖化による気候変動は、洪水や干ばつ、異常気象など、世界各地で深刻な災害を引き起こしています。ゼロエミッションに取り組むことで、温室効果ガスの排出量削減や資源の循環が促進され、持続可能な社会の構築が期待されています。 

また、ゼロエミッションは企業にも多くのメリットをもたらします。廃棄物の削減や再利用を進めることで、コスト削減や新たな収益源の創出が可能となります。また、環境配慮への取り組みは、投資家や消費者からの評価を高め、企業の信頼性やブランド価値向上につながる重要なポイントにもなります。 

カーボンニュートラルの必要性 

気候変動の影響がますます深刻化する中、温室効果ガスの排出削減は地球規模で急務となっています。異常気象や海面上昇、生態系の変化など、地球温暖化による影響は、すでに多くの地域で現実の問題として私たちに迫っています。こうした課題に対応するためには、CO2などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現が必要不可欠です。 

ゼロエミッションとカーボンニュートラルが目指すゴールの共通点 

ゼロエミッションとカーボンニュートラルは、それぞれ異なる側面に焦点を当てていますが、どちらも環境負荷を最小限に抑え、持続可能な社会を実現することを目的としています。 

具体的には、ゼロエミッションは廃棄物全般の排出削減を目指し、資源を循環させることで廃棄物ゼロの社会を目指します。一方、カーボンニュートラルは温室効果ガス、特にCO2の排出削減と吸収のバランスを取ることで、気候変動の進行を抑えることに焦点を当てています。 

両者は取り組む対象は異なりますが、最終的には地球環境の保全と人類の持続可能な発展を追求するという共通のビジョンを持っています。 

ゼロエミッション・カーボンニュートラルの実現に向けた課題 

ゼロエミッションやカーボンニュートラルの実現は、持続可能な社会を目指すうえで重要な目標ですが、一方でさまざまな課題もあります。以下では、それぞれの課題を具体的に解説します。 

再生可能エネルギーの導入が進まない 

日本では、依然として化石燃料に大きく依存しており、再生可能エネルギーの導入が思うように進んでいません。太陽光発電や洋上風力発電の拡大には地理的な制約があり、適切な土地や海域が限られていることが課題です。 

また、発電効率や蓄電技術などの技術的な課題も解決が進んでおらず、コスト面でも導入のハードルが高いのが現状です。こうした要因が重なり、日本の再生可能エネルギー拡大のペースを鈍らせているといわれています。 

産業の脱炭素化が困難 

鉄鋼や化学などのエネルギー集約型産業において、温室効果ガスの排出削減は特に困難とされています。こういった業界では、生産プロセス自体が大量のエネルギーを消費するため、抜本的な対策が求められます。 

しかし、水素利用やCCS(炭素回収貯留)といった新しい技術の開発が遅れており、技術のコストやインフラ整備も大きな障壁となっています。その結果、脱炭素化への道筋が明確にならないまま、取り組みが進みにくい状況が続いています。 

企業の取り組みが進んでいない 

多くの企業がカーボンニュートラルに向けた取り組みを進めている一方で、非上場企業では排出削減目標の設定が進んでいません。そのため、企業全体として意識改革が必要です。また、政府の支援や市民からの理解と協力も、企業が取り組みを進めるためには欠かせない要素です。 

ゼロエミッションとカーボンニュートラルを達成する方法 

ゼロエミッションとカーボンニュートラルを達成するには、多方面からのアプローチが必要です。以下では、ゼロエミッションとカーボンニュートラルを達成する具体的な方法について解説します。 

再生可能エネルギーの導入を進める 

太陽光や風力、バイオマスなどのクリーンなエネルギーを積極的に活用することは、温室効果ガスの排出を大幅に削減するために重要です。再生可能エネルギーは、CO2排出がほぼゼロであることから、電力供給における環境負荷を大幅に軽減します。 

また、地域ごとの特性を活かし、多様なエネルギー源を組み合わせることで、持続可能なエネルギー供給システムを構築することが可能です。 

省エネルギー技術でエネルギー効率を高める 

エネルギーの消費を最小限に抑えることも、目標達成に欠かせない取り組みです。高効率な機器の導入や建物の断熱性能向上により、エネルギー消費を削減することができます。また、企業ですぐに取り組める方法としては、照明をLEDに交換したり、空調設備の調整をしたりなどが挙げられます。また、従業員の省エネ意識を向上させることも大切です。 

カーボンオフセットで排出を補う

再生可能エネルギーや省エネルギー技術を活用しても、完全に排出をゼロにすることは難しいでしょう。こうした場合、植林や森林保護を通じて削減できない排出量を相殺する「カーボンオフセット」が重要な役割を果たします。最近では、カーボンオフセットは、企業や自治体が持続可能な活動を進めるうえで欠かせない手法として注目されています。 

世界のゼロエミッション・カーボンニュートラル政策 

ゼロエミッションやカーボンニュートラルの実現は、気候変動対策の中核として多くの国で進められています。以下では、EU、アメリカ、中国、日本をはじめとする各国の具体的な取り組み事例を紹介します。 

各国政府の取り組み事例:EU・アメリカ・中国など 

EUは「欧州グリーンディール」を策定し、2050年までにカーボンニュートラルを達成することを目指しています。この戦略には、再生可能エネルギーの拡大やエネルギー効率の向上など、2030年までに温室効果ガス排出量を1990年比で55%削減する中間目標が含まれています。 

アメリカでは、バイデン政権が2050年までのカーボンニュートラル実現を宣言し、2035年までに発電部門の温室効果ガス排出ゼロを達成する計画を発表しています。また、電気自動車(EV)の普及や再生可能エネルギーの導入を加速させ、国内外でのリーダーシップを目指しています。 

中国は、2060年までにカーボンニュートラルを達成する目標を掲げています。2030年までにCO2排出量のピークアウトを目指し、再生可能エネルギーの導入拡大や電気自動車の普及を進めています。 

参照:日本貿易振興機構「規制緩和策で米中に対抗 徹底解説:EUグリーン・ディール産業計画(1)」 
参照:日本貿易振興機構「脱炭素政策とともに注目度増す、北米グリーン市場(総論)」 
参照:資源エネルギー庁「第2節 諸外国における脱炭素化の動向」 

日本のゼロエミッション政策:2050年目標の達成に向けて 

日本政府は、2050年までにカーボンニュートラルを実現することを宣言し、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定しました。この戦略では、エネルギー関連産業や輸送・製造業など14の重要分野での成長を目指し、再生可能エネルギーの最大限の導入、省エネルギーの徹底、安全を最優先とした原子力政策の推進などを柱としています。 

また、地域レベルでは「国・地方脱炭素実現会議」を開催し、「地域脱炭素ロードマップ」を策定しています。「地域脱炭素ロードマップ」の策定により、国と地方が連携し、地域ごとの特性に合わせた脱炭素社会の構築を進めています。 

さらに、2024年5月には新たなエネルギー基本計画の策定に向けた議論が開始され、エネルギー安全保障と脱炭素化の両立を図る方針が示されています。具体的には、日本が国内外での持続可能な社会の実現に向けたリーダーシップを発揮することを目指しています。 

参照:経済産業省「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」 
参照:内閣官房ホームページ「地域脱炭素ロードマップ~地方からはじまる、次の時代への移行戦略~」 
参照:資源エネルギー庁「総合資源エネルギー調査会」 

企業のゼロエミッション・カーボンニュートラル実践例 

ゼロエミッションやカーボンニュートラルへの取り組みは、企業が持続可能な社会を構築し、環境への責任を果たすための重要な活動です。以下では、グローバル企業と日本企業の代表的な事例を紹介します。 

グローバル企業の成功事例 

世界をリードする企業の中には、ゼロエミッションやカーボンニュートラルを達成するための先進的な取り組みを行っている例が多くあります。以下では、GoogleとTeslaの取り組みについて紹介します。 

Googleの取り組み 

Googleは、2030年までに自社のオフィスや世界中のデータセンターで使用するエネルギーを100%カーボンフリーにすることを新たに発表しました。カーボンフリーとは、事業活動において炭素を排出しないクリーンなエネルギーを使用することを指します。 

グーグルはこれまでも、カーボンニュートラルの実現に積極的に取り組んでおり、2017年以降、すべてのオフィスとデータセンターで使用する電力を100%再生可能エネルギーに置き換えてきました。 

Teslaの取り組み 

Teslaは、電気自動車(EV)の普及を通じて温室効果ガスの排出削減を実現しています。2023年には、EVの販売により約3,400万トンの温室効果ガスクレジットを生成しました。また、テスラ パワーウォールやテスラ メガパックなど、再生可能エネルギーの発電や貯蔵を可能にするエネルギー製品を提供し、持続可能なエネルギーエコシステムの構築を目指しています。 

日本企業の最新事例 

日本企業もまた、地球環境問題に対して積極的な対応を進めています。トヨタ自動車や日立製作所などの企業は、独自の目標を掲げ、技術革新やエネルギー効率化を通じて脱炭素社会の実現を目指しています。 

トヨタ自動車の事例 

トヨタ自動車は「トヨタ環境チャレンジ2050」を掲げ、車両の環境負荷を限りなくゼロに近づけることを目標としています。具体的には、e-fuelやバイオ燃料、液体水素といった代替燃料を活用し、カーボンニュートラル燃料に対応した小型エンジンの開発を進めることで、内燃機関の脱炭素化を目指しています。 

日立製作所の事例 

日立製作所は「日立環境イノベーション2050」を策定し、2010年度比で、2030年度までにCO2の排出量を50%減、2050年度までに80%減を目指しています。 

また、環境行動計画として、長期目標を実現するために、3年ごとに環境活動項目と目標を設定している点も特徴です。バリューチェーン全体のCO2削減を図るため、「生産」だけでなく「使用」に伴う排出量の削減にも注力しています。 

まとめ 

ゼロエミッションとカーボンニュートラルは、いずれも環境負荷を抑え、持続可能な社会を目指すために不可欠な取り組みです。 

ゼロエミッションは廃棄物全般をゼロにすることを目指し、循環型社会の構築を重視している一方で、カーボンニュートラルは温室効果ガス排出の実質ゼロを目標に、地球温暖化の進行を抑えることに焦点を当てています。 

カーボンニュートラルのポイントがなかなか見つからないときは、参考情報を集めたWebサイト「ゼロ炭素ポート」をご覧ください。カーボンニュートラルのヒントや実例がたくさん掲載されており、企業がカーボンニュートラルに取り組む際の参考にしていただけます。 

また「ゼロ炭素ポート」では、他社とも協力して最適なソリューションをご提案しています。カーボンニュートラルで大きなメリットを得たいと考えるなら、個別のご相談もぜひご利用ください。 

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA