ゼロ炭素ポート

カーボンニュートラルへの取り組みを解説!日本における目標や課題も紹介 

作成者: 大塚勝臣(おおつかかつおみ)|2025年01月17日

世界中でカーボンニュートラルが注目されている中、日本においても実現に向けた取り組みが進められています。しかし、具体的にどのような取り組みを行うとよいか、頭を抱えている企業の担当者もいるのではないでしょうか。 

本記事では、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みについて解説します。日本における目標や課題についても紹介するので、参考にしてください。 

カーボンニュートラルとは 

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させて、実質ゼロを目指すことです。温室効果ガスは地球温暖化の原因の1つとされており、排出量が削減できなければ気温のさらなる上昇や、異常気象が頻発するといわれています。 

しかし、温室効果ガスの排出量をゼロにするのは難しい企業もあるため、「できるだけ」削減できるように、企業への努力が求められています。削減できなかった温室効果ガスは、森林保全や植林などによって温室効果ガスの吸収量を増やし、実質的にゼロにするという仕組みです。 

※参考:カーボンニュートラルとは|環境省 

カーボンニュートラルが注目される背景 

カーボンニュートラルが世界的に注目される大きな背景には、気候変動が挙げられます。 

経済産業省が2021年に公表した「IPCC第6次評価報告書」では、温暖化対策をしなければ異常気象が増え続けることが報告されています。何も対策をしない場合、2081年~2100年には世界の平均気温が工業化前と比較して、3.3~5.7℃も上昇すると予測されています。 

温暖化対策以外にも、経済的なメリットも注目のポイントです。環境・社会・ガバナンスの観点で、企業を評価する投資家が増えていることも、取り組みが普及している背景として挙げられます。 

※参考:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第 6 次評価報告書第 1 作業部会報告書(自然科学的根拠)と従来の IPCC 報告書の政策決定者向け要約(SPM)における主な評価|経済産業省 

カーボンニュートラルにおける世界の動き 

カーボンニュートラルの実現に向けて、世界はどのように進んでいるのでしょうか。世界の動向を紹介します。 

国際枠組みの概要 

カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みは、1992年5月に「国連気候変動枠組条約(UNFCCC)」が採択されたときから、本格的に開始しました。地球温暖化防止に取り組むための枠組みが定められています。条約の規定により、1995年から毎年「気候変動枠組条約締約国会議(COP)」が開催されています。 

また2015年12月にパリで開催されたCOP21において、新たな枠組みとして「パリ協定」が採択されました。すべての国に対して、温室効果ガス排出量の削減をはじめとした取り組みが求められています。 

※参考:気候変動に関する国際枠組み|外務省 

諸外国の動き

2021年に開催されたCOP26において、154か国と1地域が、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを表明しています。一部の国が掲げた取り組みを紹介します。 

アメリカ  ・電力部門の2035年脱炭素化 ・産業分野は電化を進め、電化が難しい産業の場合は水素化 ・航空分野は持続可能な航空燃料(SAF)などに置き換える 
EU  ・建物エネルギー性能指令の改正案をグリーンディールの1つの柱として位置付け ・建物のエネルギー効率を高めるための省エネ改修投資を促す 
中国  ・消費者への購入助成措置や自動車メーカーへの導入割当制度などで電気自動車(EV)の急速な普及を促す ・石炭の消費量を徐々に減らす 
インド  ・州単位でのインフラ強化 ・非化石燃料の導入 ・「国家水素ミッション」を設定し、グリーン水素の生産量を増やす 

※参考:第1節 脱炭素を巡る世界の動向|経済産業省 

カーボンニュートラルに向けた日本の目標

世界的にカーボンニュートラル実現に向けた取り組みが進むなかで、日本においてもさまざまな取り組みが実施されています。 

2050年カーボンニュートラル宣言 

「2050年カーボンニュートラル宣言」とは、2020年10月に表明された、「2050年までにカーボンニュートラルを実現する」という内容の宣言です。日本国内では、温室効果ガス削減などの取り組みが実施されています。 

「暮らし」や「社会」の分野を中心に、宣言の実現に向けたロードマップを検討する議会が、定期的に開催されています。国民や消費者目線で目標達成ができるよう、関係各所における連携の在り方についても議論が重ねられています。 

※参考:2050年カーボンニュートラルの実現に向けて|環境省 
※参考:カーボンニュートラルとは|環境省 

2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略

2050年カーボンニュートラル宣言が表明されてから2か月後に、経済産業省が中心となって関係省庁と連携して「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が策定されました。 

2050年までに成長が期待されているエネルギー関連産業、輸送・製造関連産業、家庭・オフィス関連産業における14分野で高い目標を掲げ、より具体的に見通しを立てて実行する取り組みです。 

カーボンニュートラルの推進と同時に、経済成長を促すことを目指しています。税制や金融、国際連携など、目標の実現を目指す企業を後押しするための政策ツールを用意しています。 

※参考:2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略|経済産業省 

地球温暖化対策推進法 

地球温暖化対策推進法(以下地球温暖化対策の推進に関する法律という)は、社会経済活動による温室効果ガスの排出量の削減を促進する措置などで、地球温暖化対策の推進を図ることを目的としています。2024年3月に改正案が閣議決定され、一部を除き、2025年4月1日から施行されます。 

改正法案の内容は、以下の3点です。 

・二国間クレジット制度(JCM)の実施体制強化など:JCMのクレジット発行や、口座簿の管理などに関する手続きの規定が行われており、指定法人制度が創設される 
・地域脱炭素化促進事業制度の拡充も実施:都道府県・市町村が、共同で再生可能エネルギーの促進区域などを定めることができる 
・その他:原材料調達から廃棄までで排出量が少ない製品などの選択、ライフスタイルの転換を国民に促す規定の整備 

※参考:改正地球温暖化対策推進法の概要|環境省 
※参考:地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案の閣議決定について|環境省 

カーボンニュートラルに取り組むメリット

カーボンニュートラルに取り組むことで得られる、主な2つのメリットについて解説します。 

地球温暖化の抑制 

カーボンニュートラルに取り組むことにより、地球温暖化が原因となる問題の抑制につながります。温室効果ガスによって地球の気温が上昇することで、極地の氷が溶ける、海面上昇、異常気象などの問題が発生します。 

また、地球温暖化は生態系にも深刻な影響を与えており、世界中で対策に取り組まなければいけません。解決に近づけるためにはカーボンニュートラルへの取り組みが必須といえます。 

企業イメージの向上 

社会的責任や環境保護に率先して取り組むことにより、企業のイメージアップにつながることもメリットといえるでしょう。環境に配慮した商品・サービスの提供や運営は、ステークホルダーや消費者からの注目度も高く、支持を得やすくなります。 

さらに、他社と差別化も図れるうえ、消費者からも注目されることにより市場競争力の強化が期待できます。投資を受けやすくなる確率もアップするでしょう。 

カーボンニュートラルに取り組む日本の課題 

カーボンニュートラルに取り組む日本の抱える課題として、諸外国と比較した際に「発電コストが高い」という点が挙げられます。原因として日本の地理的な要素や、省エネ導入までの環境が整っていないことが挙げられます。 

発電コストは年々安くなりつつありますが、世界的に見るとまだ高額な傾向であり、国民への負担も高いのが現状です。2017年から、従来のFIT法(固定価格買取制度)を改正した法案が施行され、入札制度を取り入れたことによって、さらなるコスト減を目指しています。 

※参考:第3節 2050年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組|経済産業省 
※参考:第1節 固定価格買取制度(FIT)の適切な運用|経済産業省 
※参考:固定価格買取制度とは|経済産業省 

カーボンニュートラル実現に向けた取り組み例 

カーボンニュートラル実現に向けて、実際に行われている取り組み例を紹介します。 

再生可能エネルギーの活用 

発電時に、CO2排出量の少ない再生可能エネルギーの活用が推進されています。石炭や石油などによる発電は燃焼時にCO2を多く排出するため、太陽光発電や風力発電、地熱発電などの再生可能エネルギーに変更することで、カーボンニュートラルの実現を目指します。 

水素・アンモニアなどのCO2フリー電源や、CO2の貯留・利用、蓄電池などの技術も駆使して、火力発電から切り替えていく必要があると考えられています。 

※参考:再生可能エネルギーの特徴|経済産業省 
※参考:火力発電を“ゼロ・エミッション”に!日本が開発・実施事業に取り組む最新技術を世界へ発信|経済産業省 

省エネの推進 

2022年時点で火力発電は日本における発電の70%以上を占めています。火力発電の発電効率を向上させて、CO2の排出量削減を目指すことが可能です。火力発電所では、コンバインドサイクル発電など、省エネを実現するための技術が多く取り入れられています。 

非電力の分野においては、省エネ化の推進によりCO2排出量が減少しているため、さらなる省エネ化が期待できるでしょう。 

※参考:火力発電を“ゼロ・エミッション”に!日本が開発・実施事業に取り組む最新技術を世界へ発信|経済産業省 
※参考:コンバインドサイクル発電|電気事業連合会 

排出されたCO2の回収 

CCSやCCUSなどの新技術を使用して、火力発電や工場で製造する際に排出されるCO2を回収する動きが注目されています。 

「CCS」とは、CO2を回収し、貯留する技術のことです。CCSではCO2を他の気体から分離し、回収して地下深くに貯留・圧入します。 

「CCUS」はCCSに加えて、貯留したCO2を利用しようとする技術のことです。古い油田にCO2を注入して、油田内の原油を押し出します。押し出したところへCO2を貯留し、資源として利用します。CO2を回収して削減できるうえ、石油も確保可能です。 

※参考:CCS/CCUS とは?|国立研究開発法人産業技術総合研究所 

植林の実施 

光合成によりCO2を吸収する木々を植えて、CO2の吸収量を増やす植林も、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みとして実施されています。木々を植えることにより、排出したCO2の吸収率を上げることが目的です。 

樹木は吸収したCO2を酸素に変えて放出してくれるうえ、炭素として蓄えて成長する性質があり、カーボンニュートラルの実現を目指すうえで欠かせない存在です。 

※参考:森林は二酸化炭素を吸収し、地球温暖化の防止に貢献しています|林野庁 

カーボン・オフセット/J-クレジット制度の利用 

カーボン・オフセットやJ-クレジット制度の利用も、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みの1つです。 

カーボン・オフセットとは、温室効果ガスの排出削減に努めたうえで、削減できなかった量に合わせて削減活動に投資を行い、温室効果ガスの排出量を埋め合わせるという考え方のことです。2008年に国内の温室効果ガス排出削減活動や、森林整備による排出削減・吸収量を認証する、「オフセット・クレジット制度(J-VER)」を創設しました。 

J-クレジット制度とは、2013年に開始されたベースライン&クレジット制度のことを指します。環境省・経済産業省・農林水産省が運営しており、省エネ・再エネ設備の導入や、森林管理などによる温室効果ガスの排出削減・吸収量を認証しています。 

※参考:J-クレジット制度及びカーボン・オフセットについて|環境省 

まとめ 

世界中から注目されているカーボンニュートラル実現に向けて、日本でもさまざまな取り組みが行われています。取り組みの実施は、地球温暖化の抑制にもなるうえ、企業のイメージアップにもつながります。 

カーボンニュートラルや、脱炭素への取り組みを検討している場合は、「ゼロ炭素サポート」をご活用ください。自社のみならず、他社ソリューションとの協力により、お客さまのニーズに応えるWebサイトになっています。お気軽にご相談ください。 

執筆者プロフィール

部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA