企業が省エネに取り組む場合は空調に注目しましょう。空調は、消費電力が特に大きくなりがちだからです。例えば、業務用エアコンを買い替えたり稼働方法を工夫したりすると、効果を期待できます。
本記事では、省エネに役立つ業務用エアコンの知識について解説します。省エネの重要性や省エネに役立つ業務用エアコンの選び方も解説するため、ぜひ参考にしてください。
ここでは、企業における省エネの重要性について解説します。
近年、電気代が高騰しており、光熱費の負担の増加が社会問題になっています。多くの企業が光熱費の問題に直面している状況です。光熱費のコストを削減するには、積極的に省エネに取り組む必要があります。
なお、国内で電気代が高騰している背景には、世界における燃料価格の高騰が挙げられます。2022年9月には、燃料費調整額が上限に達しました。燃料費調整額とは、電力を調達するためにかかるコストです。市場や為替レートの変動に合わせて調整されています。規制料金には燃料費調整額の上限が設けられており、上限を超えた分は電力会社が負担する仕組みです。
ただし、燃料価格の高騰により大手電力会社が赤字になったため、規制料金について値上げが申請されています。
※参考:電気料金単価の推移|一般社団法人エネルギー情報センター
法人と一般家庭では、電力の契約区分が異なります。一般家庭に供給されている電力は、50kW未満の低圧電力です。法人には、50~2,000kWの高圧電力または2,000kW以上の特別高圧電力が供給されています。高圧電力と特別高圧電力の料金は、2022年から高騰が続いている状況です。
※参考:電気料金単価の推移|一般社団法人エネルギー情報センター
※参考:電力システムが目指すべき方向性について~電力システム改革の検証~|経済産業省
空調は、特に電力を多く消費する電化製品です。多くの業種で、空調の消費電力が最も高くなっています。経済産業省が公表した2023年の「夏季の省エネ節電メニュー」によれば、消費電力の割合のうち空調が48.6%と最も高い割合を占めていました。よって、企業が省エネに取り組む場合、空調を見直すと高い効果を期待できます。
※参考:夏季の省エネ・節電メニュー(事業者の皆様)|経済産業省
企業が空調の省エネに取り組む方法を大別すると、2通りあります。1つ目は、業務用エアコンを省エネ性能が高い製品に切り替える方法です。条件を満たせば、補助金を利用できる可能性もあります。
2つ目は、現在の空調について、環境や稼働方法などを見直すことです。詳細は後述しますが、設定や使い方を工夫すると、省エネについて一定の効果を期待できます。
業務用エアコンの省エネ基準は、どのようになっているのでしょうか。以下で、詳しく解説します。
COP値とは、一定の温度条件においてエアコンを運転する場合の効率を示す数値です。「Coefficient of Performance」を略して、COPと表現されています。具体的には、電力1kWあたりの効率を表しています。業務用エアコンを比較する際は、COP値が高いほど省エネ性能も高いと判断することが可能です。
※参考:通年エネルギー消費効率(APF)|一般社団法人エネルギー情報センター
COP値は「定格能力(kw)÷定格消費電力(kw)」で計算します。定格能力とは、JIS規格に基づく温度条件下の連続運転において、安定的に発揮できる能力のことです。一方、定格消費電力は、定格能力で運転する際に消費する電力を表しています。
※参考:エネルギー消費効率(COP)|一般社団法人エネルギー情報センター
APF値とは、特定の条件でエアコンを1年間稼働させた場合の、消費電力1kwあたりの性能です。「Annual Performance Factor」を略して、APFと表現されています。
2006年9月に行われた省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)の改正以降、業務用エアコンにAPF値が表示されるようになりました。APF値が高いほど省エネ性能も高いと判断できます。
※参考:通年エネルギー消費効率(APF)|一般社団法人エネルギー情報センター
APF値は、「1年に必要な冷暖房能力(kWh)÷機種毎の年間消費電力量(kWh)」で計算します。冷暖房能力については、新電力ネットで確認できます。新電力ネットとは、新電力についてビジネスに必要な情報を提供しているWebサイトです。
また、年間消費電力はJIS規格で電化製品ごとに決められています。記載されている主な電化製品は冷蔵庫・エアコン・テレビなどです。
※参考:通年エネルギー消費効率(APF)|一般社団法人エネルギー情報センター
COP値は、季節や温度の変化などの条件を加味しない業務用エアコンの性能を示しています。対してAPF値は、年間を通して実際の使用状況に近い運転効率を表しています。エアコンは、室温や外気温の影響を特に受けやすい電化製品です。そのため、業務用エアコンの省エネについて確認したい場合は、COP値よりAPF値を重視した方が正確な数値を得られます。
2006年9月に行われたエネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(省エネ法)の改正においても、省エネ指標の基準として、COP値の代わりにAPF値を用いられることになりました。
※参考:通年エネルギー消費効率(APF)|一般社団法人エネルギー情報センター
省エネに対応している業務用エアコンを導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、具体的なメリットについて解説します。
省エネ性能に優れた業務用エアコンを導入すれば、自社が負担すべきコストを削減できます。オフィスや飲食店などの環境を快適に保つには、空調を稼働させなければなりません。空調を頻繁に稼働させる場合、古いエアコンを使用し続けるよりも、省エネ性能が高いエアコンに買い替えた方が効率的な稼働を期待できます。
新しいエアコンを導入するには初期費用がかかるものの、ランニングコストの削減が可能です。結果として大幅なコストカットにつながります。
省エネのために新しい業務用エアコンを導入する際は、補助金を利用できる場合もあります。国も省エネを重視しており、企業を積極的にサポートしているためです。国や自治体の補助金の詳細については、公式Webサイトで確認できます。なかには、エアコンだけでなく換気設備も対象としている補助金も存在します。
ここでは、省エネを重視して業務用エアコンを選ぶ際の選び方を解説します。
省エネを重視して業務用エアコンを選ぶなら、省エネ基準のAPF値の高さを確認しましょう。すでに触れたとおり、APF値は実質的な運転効率を示しています。それぞれの業務用エアコンのAPF値はカタログで確認可能です。APF値が省エネ法の目標基準値以上になっている製品を選んでください。
APF値が表示されている業務用エアコンは、店舗・オフィス用エアコン、ビル用マルチエアコン、設備用エアコンのうち、定格冷房能力56kW以下の空冷式冷房専用形と空冷式冷房・暖房兼用(ヒートポンプ)形です。
なかにはAPF値が表示されていない業務用エアコンもあります。例えば、冷暖同時運転タイプや水冷式などの業務用エアコンは、APF値表示の対象外です。
※参考:業務用エアコンのAPF表示について|一般社団法人日本冷凍空調工業会
業務用エアコンは、機種ごとに適した部屋の広さがあります。オーバースペックな機種を選ぶと必要以上に電力を消費するため、注意が必要です。エアコンを設置する部屋の広さ・用途・人の出入りの頻度などを確認し、最適な機種を選択しましょう。
業務用エアコンのなかには、センサー機能が搭載されている製品もあります。センサー機能があれば、室内の温度や人の活動状況などを検知して最適な稼働を実現できます。検知したデータをもとに効率よく空調を調整できるため、消費電力を必要最小限に抑えることが可能です。
業務用エアコンは、どのタイミングで買い替えればよいのでしょうか。以下では、具体的な買い替え時期について解説します。
業務用エアコンは建物付属設備または器具備品に分類でき、どちらに該当するかによって耐用年数が異なります。耐用年数とは、減価償却資産(固定資産)を使用できる期間です。税法で定められており、設備や機器の寿命の目安となっています。業務用エアコンが建物と一体化している場合は、建物付属設備に該当します。後から設置した場合は、器具備品です。
業務用エアコンを買い替える目安の時期は、10年~15年です。ただし、実際の使用頻度やメンテナンスの状況によっても、エアコンの寿命は変化します。例えば、急激な温度変化に何度もさらされたり、長時間の連続運転を繰り返したりしていると、寿命が短くなります。
なお、新しい機種は省エネ性能も強化されているため、早めに買い替えるとコスト削減に役立つ可能性が高い傾向です。
業務用エアコンについて何か気になることが出てきたら、買い替えを検討しましょう。具体的には、以下の状況が当てはまります。
・空調の効きが悪くなった
・電気代が急激に高くなった
・機械音が大きくなった
・臭いが気になり、掃除しても消えない
・故障が増えた
省エネのためには、工夫も必要です。ここでは、取り入れやすい空調の工夫について解説します。
空調の省エネに取り組む際は、温度設定の見直しが重要です。最適な温度設定の目安は、冷房なら28度、暖房なら20度といわれています。また、冷房の温度を1度上げれば約13%、暖房の温度を1度下げると約10%の消費電力を削減できます。実際の環境を考慮し、可能な範囲で温度設定を調整しましょう。
※参考:エアコンの使い方について|環境省
省エネにおいては残熱の有効活用もおすすめです。エアコンを停めても、室温がすぐに変化するわけではありません。そのため、終業の15分~30分前にエアコンを停止して残熱を活用すると、その分だけエアコンの稼働時間を削減できます。1回の効果はそれほど大きくないものの、毎日取り組めば一定の省エネを実現できます。
エアコンを一斉起動するとピーク電力のタイミングが重なり、平均使用電力も上がります。その場合、電気の基本料金が高くなるため注意が必要です。エアコンは時間差で分散起動し、それぞれ別のタイミングでピーク電力に達するようにしましょう。
省エネのためにナイトパージが搭載されているエアコンもあります。ナイトパージとは、温度が低い空気を夜のうちに外から取り込み、室内を冷やすための機能です。ナイトパージの機能を利用すると効率よく室温を下げられるため、翌日の昼に冷房を使用する際の消費電力量を減らせます。
※参考:予冷予熱時の取入停止・ナイトパージ制御等の外気導入の適正な運用の実施|環境省
空調の省エネを実現するには、環境も重要です。ここでは、具体的なポイントを解説します。
エアコンの省エネに取り組むうえでは、掃除も重要です。エアコンのフィルターに汚れや埃がたまれば、空気を吸い込む力が弱くなります。その結果、空気を吸い込むためにより多くの電力を消費してしまいます。エアコンのフィルターはこまめに掃除すると、空調の効率を高められます。可能であれば、エアコンの状態に応じて熱交換器も掃除しましょう。
室外機は、エアコンから送られた空気を適温に調整する役割を果たします。効率的に空調を利用するには、室外機で空気がスムーズに流れるようにする必要があります。よって、室外機の周辺に物を置かないようにしましょう。また、夏は室外機が熱くなりやすいため、すだれなどを設置して直射日光が当たらないようにしてください。
空調の省エネのためには、遮光ブラインドやカーテンの設置もおすすめです。日光による室温の上昇を防止できます。また、窓にガラスフィルムを貼ると、窓からの熱を遮断する効果を期待できます。エアコンの負荷を抑えられるため、電力の消費量を削減可能です。
電気代の高騰が大きな問題になっており、企業がコスト削減を目指すには省エネの取り組みが特に重要です。省エネ性能が高い業務用エアコンを導入する際は、補助金を活用できる場合もあります。省エネ基準やAPF値などを確認し、電力の消費量を抑えつつ快適に利用できる業務用エアコンを選びましょう。
「ゼロ炭素ポート」では、脱炭素や省エネなどに関する幅広い情報を発信しています。複数の企業のソリューションを扱っており、さまざまなニーズに対応可能です。企業の省エネを実現するために役立つ豊富な情報をまとめているため、ぜひ参考にしてください。
会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA