モーターは多くの電力を消費する機器であり、高効率のモーターに更新することで大きな省エネ効果が見込めます。現在、省エネモーターへの更新を検討中の企業担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、モーターによる省エネ化の方法やメリット、高効率な「トップランナーモータ」の概要と導入における注意点、活用可能な補助金などを解説します。
モーターの省エネ化の方法は、大きく分けて省エネモーターへの更新と、インバータを取り付ける方法があります。
省エネモーター(高効率モーター)に更新することで、電力使用量を大幅に削減できます。一般社団法人日本電機工業会の資料によると、省エネモーターは従来のモーターと比較して、約35%の省エネ効果があるとされています。
従来のモーターでは、エネルギーの一部が熱として失われていましたが、省エネモーターでは熱損失が抑えられ、供給電力を効率的に動力に変換できるためです。
※参考:トップランナーモータ 2015年度スタート!|一般社団法人日本電機工業会
インバータは、モーターの回転速度を調整する装置です。ポンプやファンのモーターにインバータを取り付けると、必要な分だけの電力で稼働し、エネルギー消費が抑えられます。ただし、使用する機器の特性に合わせた設定が必要です。適切な設定を行わないと、省エネ効果が十分に得られない場合があります。
企業が省エネモーターを導入すると、コスト削減や高寿命化、脱炭素への貢献など、多くのメリットが期待できます。ここでは、省エネモーターを導入するメリットを解説します。
省エネモーターに更新することで、消費電力が大幅に削減され、電気代が抑えられます。一般社団法人日本電機工業会の試算を、以下に示します。
【試算条件】
・運転時間:4,000h/年
・電力条件:16円/kWh
・CO2排出係数:0.544kg-CO2/kWh
【省エネ効果】
・省エネ効果:4,666kWh/年
・節約金額:74,659円/年
・CO2排出削減量:2,585kg-CO2/年
・杉の木換算:333本/年
ライフサイクルコストの大部分を電力料金が占めるモーターの更新は、長期的にみると大きなコストダウンが可能です。日々の運転時間が長いほど、省エネ効果が累積し、初期費用の回収が早まります。長期間使用すれば、トータルコストが逆転し、より高い経済性を実現できるでしょう。
省エネモーターを導入すると、長寿命・動作安定性につながります。省エネモーターはエネルギー変換効率が高く、熱の発生が少ないことが特徴です。モーター内の部品(軸受のグリースや電子部品)が、熱により劣化しにくくなり、長期間にわたる安定稼働が可能です。
例えば、製造業の工場では、モーター故障による生産ライン停止時間が減り、稼働率が高まる効果を期待できます。また、メンテナンスの回数や部品交換の頻度も減少し、費用を削減可能です。
モーターの省エネは、企業の脱炭素施策の一環としても有効です。モーターは世界の消費電力全体の約40~50%を占めており、そのエネルギー使用量を削減することが、地球規模のエネルギー消費とCO2排出削減に直結するといわれています。
特に製造業の工場では、多数のモーターが稼働しているため、省エネモーターへの切り替えが有効です。省エネモーターの更新により、大幅な電力削減が可能となり、脱炭素社会の実現に貢献できます。
省エネ効果がとりわけ高いモーターを、「トップランナーモータ」といいます。ここでは、トップランナーモータを定義しているトップランナー制度や、対象範囲、適用範囲を解説します。
トップランナー制度は、日本独自の省エネ施策で、1999年に省エネ法(以下エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律という)の改正により導入されました。この制度では、エネルギー消費量が多い機器を「特定エネルギー消費機器」として定め、その中で最も高いエネルギー効率を基準に、目標基準値を設定しています。
基準を満たさない製品は目標年度までに改良が求められ、達成できなければ販売が禁止されます。これにより省エネ機器を普及させる狙いです。トップランナー制度の対象機器は乗用自動車、変圧器など32品目に及び、モーターは「交流電動機」として含まれています。
トップランナーモータは、省エネ法に基づくエネルギー消費効率の基準値をクリアしたモーターです。「トップランナーモータ」の対象範囲は、以下のとおりです。
① 定格周波数又は基底周波数が、50Hz ± 5%のもの、60Hz ± 5%のもの、又は 50Hz ± 5%及び 60Hz ±5%共用のもの
② 単一速度のもの
③ 定格電圧が 1,000 Ⅴ以下のもの
④ 定格出力が 0.75kW 以上 375kW 以下のもの
⑤ 極数が2極、4極又は6極のもの
⑥ 使用の種類が以下の(ア)又は(イ)の条件に該当するもの
(ア)電動機が熱的な平衡に達する時間以上に一定負荷で連続して運転する連続使用(記号:S1)のもの
(イ)電動機が熱的平衡に達する時間より短く、かつ、一定な負荷の運転期間及び停止期間を一周期として、反復する使用(記号:S3)で、一周期の運転期間が 80%以上の負荷時間率をもつもの
⑦商用電源で駆動するもの
上記の対象範囲は、企業が自社の設備に適したトップランナーモータを選ぶ際に役立ちます。
JIS C 4213は、トップランナーモータを規定している日本産業規格です。省エネ法に基づき、モーターのエネルギー消費効率の基準値を決め、対象となるモーターの特性や条件を定めています。
適用範囲の条件は、以下のとおりです。
| 項目 | 条件 |
| 定格電圧 | 600 V以下 |
| 定格出力 | 0.75 kW以上、375 kW以下 |
| 極数 | 2極、4極または6極 |
| 使用の形式 | S1(連続使用)または80 %以上の負荷時間率をもつS3(反復使用) |
| 駆動の種類 | 商用電源駆動 |
| 設置場所の条件 | JIS C 4213の箇条6で規定された環境条件 (標高、温度など) |
※参考:低圧三相かご形誘導電動機-低圧トップランナーモータ|日本産業規格
※参考:トップランナーモータ|一般社団法人日本電機工業会
トップランナーモータは省エネ機器ですが、運用条件によっては消費電力が増えたり、周辺機器の変更が必要になったりする場合があることに、注意が必要です。
省エネモーターは、熱損失を抑える設計となっているため、エネルギーの無駄がなく、定格回転速度が上がります。しかし、回転速度が速くなると、ポンプやファンなどの機器では仕事量が増加し、モーターの出力が上がります。
その結果、モーターの電力消費量が増加する場合があることに、注意が必要です。この増加を防ぐには、インバータ制御やダンパー・バルブ調整などの対策を行います。
省エネモーターは、エネルギー損失を抑える設計のため、始動電流が標準モーターよりも大きくなる傾向があります。これにより、過電流保護装置や配線用遮断器が想定外に作動する可能性に注意が必要です。
特に配線用遮断器やサーマルリレーなど、電流の制御や保護にかかわる機器に問題が生じないかを調べましょう。その他の周辺機器も、始動電流に対応できるように再設計・再配置が必要になる場合があります。
省エネモーターは設計上、効率よく電力を動力に変換できるため、従来の標準モーターよりも高いトルクを発生することがあります。トルクが大きくなると、機械の駆動部や連結されている減速機などに、過剰な負荷がかかることが想定されます。
結果として、部品の摩耗や故障のリスクが高まる可能性がある点に注意が必要です。特に減速機を直結する場合、十分な機械強度があるか確認する必要があります。
省エネモーターは、磁束密度を確保するためにモーターの構造が大型化していたり、固定子や回転子が大きくなったりしている場合があります。そのため、省エネモーターを据え付ける際、周辺機器との干渉が生じる可能性があります。特に狭い設置スペースでは、モーターベースの改造や、周辺設備の更新が必要になる可能性が高い点に注意しておきましょう。
高効率化の設計によって内部抵抗が低くなることで、低始動電流仕様のモーターの製作が難しくなります。このため、スターデルタ始動や減電圧始動など、別の始動方式への変更を検討する必要があります。
モーターの省エネ化には、「先進的省エネルギー投資促進支援事業費補助金」が活用できます。この補助金は、経済産業省資源エネルギー庁が所管する、「一般社団法人 環境共創イニシアチブ」が実施しています。省エネ性能の高い設備への更新を支援し、エネルギー使用の合理化を促進するための制度です。
超高効率モーターの導入においては、「(Ⅲ)設備単位型」での申請が可能です。この型では、型番ベースで補助対象設備が指定されており、補助金を得るには、該当するモーターへの更新が求められます。
ただし、2024年8月時点では、新規事業の公募や採択は実施されておらず、対象は2022年度以前に初年度採択された複数年度事業に限られています。最新の公募情報は、一般社団法人 環境共創イニシアチブのWebサイトで確認してください。
※参考:令和6年度 先進的省エネルギー投資促進支援事業|一般社団法人 環境共創イニシアチブ
※参考:省エネ関連情報 各種支援制度|経済産業省
※参考:『(Ⅲ)設備単位型』補助対象設備一覧|一般社団法人 環境共創イニシアチブ
モーターは企業のエネルギー使用の大部分を占めており、従来のモーターを高効率な「トップランナーモータ」に更新することで、省エネ効果を見込めます。自社に合った方法を選び、省エネ施策を進めていくとよいでしょう。
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会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA