太陽光発電には、出力抑制と電圧抑制という2つの課題があります。安全かつ適切に太陽光発電システムを稼働させるには、この2つの抑制を知ることが大切です。本記事では、太陽光発電の電圧抑制と出力抑制について解説します。2つの抑制の概要から必要な理由、対処法などを解説するため、ぜひ参考にしてください。
太陽光発電の出力抑制とは、一般送配電事業者が発電事業者に対して出力を抑制するように命じることです。出力抑制に対する補償はされないため、出力抑制を受けた時間帯に発電した電気分は売電利益を得られません。つまり、出力抑制をすると発電したエネルギーが無駄になることになります。
出力抑制は、むやみに実施されることはありませんが、必要な場合に命じられます。そのため、太陽光発電事業者には出力抑制機能付パワーコンディショナの設置が、義務付けられています。
出力抑制においては、優先給電ルールが定められています。優先給電ルールとは、出力抑制に対応する発電の優先順位を法的に定めたものです。送配電等業務指針に記載されている優先順位は、以下のとおりです。
1.火力発電
2.バイオマスの専焼電源
3.地域資源バイオマス電源
4.自然変動電源
5.長期固定電源
太陽光発電は、このなかの自然変動電源にあたります。また、長期固定電源とは水力発電や地熱発電、原子力発電のことです。これらの発電は、停止させると復旧まで時間がかかってしまうため、出力抑制の優先順位は低く設定されています。
太陽光発電で出力抑制が求められる理由は何なのでしょうか。ここでは、出力抑制が必要な2つの理由を解説します。
1つは、電気の需要と供給のバランスを適切に保つためです。電気の需給供給バランスが崩れてしまうと、周波数が乱れてしまい電気の供給が正しく行われなくなる可能性があります。そのため、需要と供給のバランスを常に保つことが求められます。
電気は貯めておけないため、需要よりも供給が多くなる場合には出力を抑制して、発電量を調整することが重要です。特に、電力需要が減る春や秋は出力抑制が起こりやすい傾向にあります。
電気は無限に送電できるわけではありません。送電線・変圧器に流せる電気の量は決められているため、上限を上回る量の送電はできなくなっています。過剰な電気が流れると、機器の故障や停電といったリスクが発生するため、注意が必要です。
太陽光発電の出力抑制に関する補償は、2024年現在で3つのルールが定められています。どのようなルールが適用されるのかは、電力会社や接続申込日、出力規模によって異なるため、確認しておくとよいでしょう。
まずは30日ルールです。出力が500kW以上の太陽光発電については、出力抑制の上限を年間30日にするというルールです。出力抑制を命じられる日数が31日を超える場合には、超過分の売電収入が補償されるという仕組みになっています。また、2022年4月以降は、出力が10~500kWまでの太陽光発電も対象です。
360時間ルールとは、30日ルールよりも後にできたルールです。出力抑制時間の上限を年間360時間にするというルールになっています。360時間を超えて出力抑制がされた場合は、超過分の売電収入が補償されるものです。出力抑制の対象となるのは、出力10kW以上の太陽光発電です。
無制限・無補償ルールとは、360時間ルールの後に作られたルールです。出力が10kW以上の太陽光発電を対象としており、出力が抑制された分については一切補償されません。
エリアによって、出力抑制の実施実績は異なります。2023年度のエリア別の出力抑制率は、以下のとおりです。
・北海道:0.01%
・東北:0.93%
・中部:0.26%
・北陸:0.55%
・関西:0.20%
・中国:3.8%
・四国:3.1%
・九州:6.7%
・沖縄:0.14%
出力抑制率は、以下の計算式で求められます。
・変動再エネ出力制御量[kWh]÷(変動再エネ出力制御量[kWh]+変動再エネ発電量[kWh])×100=出力制御率
上記のとおり、出力抑制率には差があり、東京エリアに関しては出力抑制が実施されませんでした。
※参照:050_01_00.pdf
出力抑制が命じられた際には、太陽光発電事業者はその指示に従わなければいけません。出力抑制機能付パワーコンディショナの種類によって、オンライン操作が可能なオンライン発電所と、手動で操作する必要のあるオフライン発電所に分けられ、対応が異なります。
細かい対処方法は電気会社によって異なる可能性があるため、注意しましょう。以下では、四国電力の例を挙げて、オンライン発電所とオフライン発電所の対処方法を解説します。
オンライン発電所の場合には、出力制限の操作自体は電力会社が対応することになります。そのため、太陽光発電事業者は発電所の操作などをする必要がありません。
現地での操作を要するオフライン発電所の場合には、電力会社から出力抑制の指示を伝えるメールが届きます。一般的には、実施前日に指示が出るようです。メールの記載に従って、対象となる太陽光発電の操作を実施することになります。指示内容に記載された時間帯を「発電していない」状態になるように、停止操作を行います。
出力抑制によって発電したエネルギーが無駄になってしまうため、出力抑制が多く実施されてしまう状況は再エネ導入を妨げかねません。そのため、出力抑制を抑える取り組みが必要です。ここでは、出力抑制を抑える主なルールや技術を紹介します。
まずは、オンライン代理制御です。オンライン代理制御とは、オフライン発電所が行う分の出力抑制をオンライン発電所が代理で実施する仕組みです。オンライン発電所が代理抑制した分は補償される仕組みとなっています。手動切り替えの手間を省くことができ、制御タイミングを最適化できるというメリットがあります。
また、ノンファーム型接続の導入も有効です。ノンファーム型接続とは、系統混雑時には出力制御を受け入れることを条件として、系統が空いている時間帯のみ新規の電源接続を認める仕組みです。これにより、既存の送電設備を最大限に活用できます。
蓄電池を普及させることも、出力抑制を抑えるための取り組みです。蓄電池とは電気を蓄えられる充電装置のことです。蓄電池を普及させることによって、出力抑制によって捨てられてしまう電力を貯めておけます。
また、揚水発電も余剰電力の活用に役立ちます。揚水発電とは発電のために使う水を汲み上げて水の力で水車を回して電気を作る仕組みです。太陽光で発電した電気を利用して揚水し、夜に発電するケースが多いようです。
電圧抑制とは、太陽光発電の電圧が抑制される現象です。パワーコンディショナには、電圧の制御機構が組み込まれており、パワーコンディショナ側で設定された上限値を超えた場合に電圧抑制が自動的に行われる仕組みになっています。電圧抑制が続いてしまうと、発電出力が低下します。売電できない時間も長くなってしまうため、売電による利益が減るでしょう。
太陽光発電において電圧抑制が必要な理由としては、電圧の基準があります。電力系統接続点における電圧は、安全性の面を考慮して電圧の基準が決められています。
たとえば、低圧電力家は標準電圧100Vとなっていますが、95~107Vの範囲内で維持することと定められています。低圧需要家とは、柱上トランスで200Vもしくは100V変圧されてから、建物に配電されるものです。
太陽光発電で電圧抑制が発生するのはなぜなのでしょうか。ここでは、主な原因を解説します。
まずは、自宅の配線の問題です。電気抵抗が大きい配線状態になっていると、電圧抑制が起こりやすくなります。たとえば、自宅のケーブルが細かったりケーブルが長すぎたりする場合には電気抵抗が大きくなってしまいます。電気抵抗が上がり電圧が高くなってしまうため、ケーブルの見直しを図るとよいでしょう。
配電線の電圧が高い状態にあると、家庭の電圧も上がりやすくなります。太陽光発電の電力を送電するには電線内の電圧を住宅の電圧より高める必要があります。そのため、配電線の電圧が高いと必然的に住宅の電圧も上がるため、電圧抑制が発生しやすくなるでしょう。
太陽光発電で電圧抑制が発生してしまった場合にはどうすればよいのでしょうか。ここでは、2つの対処方法を解説します。
パワーコンディショナの電圧設定値を変更する方法もあります。パワーコンディショナの電圧設定値は勝手に変更できないため、専門業者や電力会社に依頼してパワーコンディショナの電圧設定値を上げてもらいましょう。ただし、自宅で使用している電化製品の対応電圧が低い場合、電圧設定を上げると故障するリスクがあります。
配線を見直すこともよい方法です。前述したように、ケーブルが細すぎたり長すぎたりすると電圧が高くなってしまいます。そのため、ケーブルを太くする、配線ルートを短くする、新しい配線に交換するなどすると、電圧抑制を防ぎやすくなります。パワーコンディショナと分電盤などの配線は、可能な限り短くしましょう。
太陽光発電では、出力抑制や電圧抑制を受ける場合があります。出力抑制を抑えるには、オンライン代理制御やノンファーム型接続の導入、余剰電力の活用などが効果的です。電圧抑制を防ぐには、パワーコンディショナの電圧設定を変更したり配線を見直したりするとよいでしょう。
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会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA