ゼロ炭素ポート

省エネ法における定期報告書の記入要領は?注意点や開示制度についても解説

作成者: 大塚勝臣(おおつかかつおみ)|2024年12月20日

地球温暖化対策のために、世界中で省エネの取り組みが行われています。日本でも、エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律(以下省エネ法という)をもとに省エネ活動が行われ、2022年には省エネ法が改正されました。本記事では、省エネ法の内容をはじめ、省エネ法における定期報告書の目的や記入要領についてくわしく解説します。 

省エネ法とは? 

ここではまず、省エネ法の目的や背景、対象となる事業者について解説します。

省エネ法の目的と背景 

省エネ法とは、エネルギー消費量が多い事業者に対して、エネルギー使用の合理化(効率化)を求める法律です。オイルショックをきっかけに作られた法律で、1979年に施行された後、複数回の改正を経て現在に至っています。 

※参考:省エネ法の概要|経済産業省 

省エネ法の対象となる事業者 

省エネ法では、以下をはじめとする事業者を対象にしています。 

・工場や事業場 
・輸送事業者 
・荷主 
・機械器具などの製造・輸入している事業者 
・エネルギー小売事業者 

さらに、一定基準のエネルギーを使用している事業者は、年に1回エネルギー使用状況などの報告義務があります。 

省エネ法改正の目的

省エネ法は、以下の目的で2022年に改正されています。改正の施行は、2023年から2025年にかけて段階的に行われます。 

※参考:省エネ法の改正​|経済産業省 

カーボンニュートラルの達成 

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させ、実質的な排出量をゼロにすることを指します。温室効果ガスは気候変動の原因とされています。特に、二酸化炭素は地球温暖化の最も大きな原因と考えられている温室効果ガスです。2021年4月時点で、日本を含む世界125カ国・1地域が、2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指しています。 

※参考:第1部 エネルギーをめぐる状況と主な対策 第2章 2050年カーボンニュートラル実現に向けた課題と取組 第2節 諸外国における脱炭素化の動向|経済産業省 

電気需要の最適化 

電気需要の最適化は「デマンド・レスポンス(DR)」とも呼ばれています。電力の供給側の状況に応じて、電力の需要側である消費者が電力の使用量を調整する措置です。電力はあらかじめ貯めることができないので、電気需要の最適化によって電気の不足や余剰を防ぐことを目的としています。 

電気需要の最適化は、電力需要のピーク時に料金を値上げする方法、電力会社の呼びかけに対して消費者が使用量を制御する方法などにより、インセンティブを受け取る仕組みがあります。 

省エネ法改正の主な3つの変更点 

1.エネルギーの使用の合理化の対象範囲拡大​​​​​​​ 

これまでは、石油や石炭などの「化石燃料」のみが使用合理化の対象になっていました。改正後は、二酸化炭素を排出しない自然エネルギー源とする「非化石エネルギー」も使用合理化の対象になります。 

2.非化石エネルギーへの転換 

改正前も一定規模以上のエネルギーを使用する事業者は、エネルギーの使用状況に関する報告が義務づけられていました。改正後は、報告内容に「非化石エネルギー」への転換目標や使用状況などの報告も含まれています。 

3.電気需要の最適化 

エネルギーの使用状況に関する報告が義務づけられている事業者は、デマンド・レスポンス(DR)の報告も求められるようになりました。月別または時間帯別の電気使用量に「電気需要最適化評価原単位」の報告もしなければなりません。また、事業者は中期的に原単位(またはエネルギー消費原単位)を低減する努力も求められようになりました。 

省エネ法における定期報告書の目的 

自社の省エネに関する取り組みを把握するとともに、信ぴょう性のある結果として定期報告書を公表できます。また、定期報告書をもとに取り組みが評価され、改善点などのアドバイスが受けられるのもメリットです。定期報告書が高い評価を得ると、消費者や投資家からの信頼も向上するでしょう。 

省エネ法における定期報告書提出の対象者 

先に解説したとおり、省エネ法の対象者のうち、定期報告書提出の義務がある対象者は以下のとおりです。事業内容から3種類に区分されます。 

特定事業者・特定連鎖化事業者 

事業者・連鎖化事業者単位で、原油換算値として年度のエネルギー使用量が1,500キロリットル以上ある場合は、定期報告書の提出が必要です。事業者全体とエネルギー管理指定工場等ごとの義務があり、毎年度、定期報告書の提出が求められます。 

※参考:特定事業者向け情報|経済産業省 

特定貨物・旅客輸送事業者 

事業活動において、他人または自らの貨物を輸送する事業者および旅客を輸送している者のうち、以下のように輸送区分ごとの輸送能力が一定基準以上の事業者も該当します。 

・鉄道300両 
・トラック200台 
・バス200台 
・タクシー350台 
・船舶2万総トン(総船腹量) 
・航空9千トン(総最大離陸重量) 

※参考:荷主⁄輸送事業者Q&A|経済産業省 

特定荷主

特定荷主とは、事業のために貨物の輸送を物流事業者に依頼する事業者(荷主)を指します。すべての荷主は、貨物輸送量を把握して年間輸送量が3,000万トンキロ以上になると、「貨物の輸送量届出書」を提出しなければなりません。 

※参考:輸送の省エネ法規制|経済産業省 

省エネ法の定期報告書を提出する義務があるかどうかの調べ方 

省エネ法の定期報告書を提出する義務があるかどうかを調べたい場合は、年度間のエネルギー使用量を確認します。基準となる使用量は、事業者・連鎖化事業者単位で、原油換算値として1,500キロリットル以上です。 

エネルギー使用量を調べるには、本社を含む全ての工場・支店・営業所・店舗で使用した、燃料・熱・電気ごとの年度間の使用量を集計します。次に、経済産業省が提供する原油換算ツールに使用量を入力すると、算出できます。 

※参考:省エネポータルサイト|経済産業省 

省エネ法における定期報告書の記入要領 

ここでは、省エネ法における定期報告書の記入要領について、項目ごとにポイントを解説します。 

事業者の基本情報 

企業名、住所、事業所名、主要事業など、事業者を特定する情報を記載します。 

エネルギーの使用量 

自社で使用しているエネルギー量と種類を記載します。2022年度の省エネ法改正からは「非化石エネルギー」の使用量も含めるようになったので注意しましょう。 

省エネ活動の詳細 

「LED電球を使用して電力使用量が低減した」など、自社が実施している省エネ活動を記載します。非化石エネルギー使用量の証明書(非化石証書)も必要です。

今後の取り組みや計画 

以下が改善できない場合は、改善ができなかった理由や改善計画を記載しなければなりません。 

・原単位:1つの製品を作るのにどのくらいのエネルギー・時間が必要かを示す単位で、小さいほど効率的に行われていることを意味する。 
・電気需要平準化評価原単位:電気使用量の効率を測る指標で、電気の使用量が多い「電気需要平準化時間帯」は1.3倍の重みをつけて評価する。 

※参考:定期報告書・中期計画書|経済産業省 

省エネ法における定期報告書の注意点 

定期報告書の作成支援ツールとして、以前は資源エネルギー庁が「Excel版」「アプリ版」を提供していました。現在は、オンラインシステムの「EEGS(イーグス)」に変更されています。EEGSを初めて利用する際は、ID・パスワードの設定が事前に必要です。利用できるまでに1か月程度かかるので、スケジュールに余裕を持って早めに準備をしておきましょう。 

省エネ法における定期報告情報の開示制度 

省エネ法における定期報告情報の開示制度について、今後の見通しとメリットを解説します。 

2024年度から開始 

2024年度からは定期報告情報の任意開示制度が開始されます。任意開示制度とは、企業の定期報告書を資源エネルギー庁のホームページで公開する仕組みです。2023年度分から対象事業者を限定し、試行運用を実施しています。 

※参考:省エネ法定期報告情報の開示制度​|経済産業省 

開示制度のメリット 

近年は、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の注目度が高まっています。省エネ法における定期報告情報の開示制度は、企業のサステナビリティ情報開示に利用可能です。企業は、提出すべき定期報告書の情報が利用できるので、新たな資料を作る必要がありません。 

ESG投資家を含めたステークホルダーは、資源エネルギー庁のホームページを見れば情報収集できるので、効率的に情報を集められます。 

まとめ 

省エネ法の改正により、事業者はエネルギー使用の合理化や非化石エネルギーへの転換、電気需要の最適化など、取り組むべき課題が増えています。定期報告書の適切な記入と提出は、自社の省エネ活動を効果的に伝える手段であり、開示制度を活用することでステークホルダーからの信頼性も向上します。 

ゼロ炭素ポートは、脱炭素の情報発信をはじめ、脱炭素の悩みを気軽に相談できる「場」を目指しています。省エネ活動・対策に関する相談や資料のダウンロードも可能なので、ぜひご活用ください。 

執筆者プロフィール

会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA