2025年4月より、すべての建物に省エネ基準適合が義務付けられました。新築・増改築する建物が省エネ基準を満たすかを評価する際には、省エネ計算が必要となります。モデル建物法は、省エネ計算における手法の1つです。本記事では、モデル建物法を含む省エネ計算について解説します。
省エネ計算は、建築物の省エネ性能を具体的な数値で示す目的で用いられます。省エネ計算を実施すると、建物がどの程度エネルギー効率に優れているかを、客観的に把握することが可能です。2024年においては、床面積が300平方メートルを超える規模の非住宅建築物について、新築や増改築を行う際には省エネ基準への適合が必須となっています。
省エネ基準が定められている理由は、建築分野での温室効果ガス削減です。また、建物の省エネ性能の向上は、環境負荷の低減だけではなく、光熱費の削減による経済的なメリットにもつながります。持続可能な社会の実現に向け、建物の省エネ性能の向上は重要な施策といえるでしょう。
025年4月からは、建築物の省エネ対策が強化されます。新たな制度では、建物の規模や用途を問わず、原則としてすべての建築物において省エネ基準への適合が不可欠です。2025年4月以降に工事を始める予定がある場合、計画段階から省エネ基準を満たす設計を行っておく必要があります。
新たな制度は新築だけではなく、増改築工事にも適用されます。ただし、増改築の場合は、工事を実施する部分のみが基準適合の対象です。
省エネ計算の方法には、主にモデル建物法と標準入力法の2種類があります。それぞれの特徴や使い分けをくわしく解説します。
モデル建物法(通常版)は、非住宅建築物の省エネ性能を評価するための計算方法です。建物の大きさに関係なく利用できる手法として、モデル建物法(通常版)は広く採用されています。モデル建物法(通常版)の特徴は、入力する項目が簡略化されている点です。
簡略化により、詳細な入力作業の手間を軽減しながらも、一定の精度で省エネ性能を算出することが可能です。なお、計算を行う際は、事務所やビジネスホテルといった、建物用途別に用意された標準的なモデルを基準として使用します。
小規模版モデル建物法は、床面積が300平方メートル未満の非住宅建築物を対象とした、より簡易な計算方法です。通常版のモデル建物法をベースとしながら、入力が必要な項目をさらに減らすことで、計算の負担軽減を図っています。ただし、2025年4月に制度が変更され、小規模版モデル建物法は「モデル建物法(小規模版)」として改変される予定です。
標準入力法は、住宅・非住宅や床面積を問わず、すべての建築物に適用できる計算手法です。標準入力法の特徴は、建物内のすべての部屋について、壁や窓の仕様、照明器具の種類、空調設備の能力など、きめ細かな情報を入力する点にあります。
計算の手間はかかるものの正確な結果を得やすいため、高度な省エネ性能が求められる建築物の場合は、標準入力法が採用される傾向が見られます。
ここでは、建築物の省エネ性能を評価する2つの指標である、外皮性能を示す「BPI」とエネルギー消費量を示す「BEI」について解説します。
BPI(Building Palstar Index)は、建物の外皮性能を数値化して評価する指標で「BPI = 設計PAL / 基準PAL」で求められます。外皮は、壁や窓など建物の内外を区切る場所です。建物全体の省エネ性能に、外皮は大きく影響を及ぼします。
2024年現在、BPIには具体的な数値基準が設けられていません。あくまでも建物の外皮性能を把握するための参考値として、BPIは活用されています。なお、BPIは計算方法によって表記が異なり、モデル建物法で算出した場合は「BPIm」、標準入力法の場合は「BPI」と表されます。
BEI(Building Energy Index)は、建物の一次エネルギー消費性能を評価する指標で「BEI = 設計一次エネルギー消費量 / 基準一次エネルギー消費量」で求められます。一次エネルギー消費量は、建物で使用される電気やガスなどのエネルギーを、発電や送電などの損失を含めて換算した総量です。
2024年時点では、すべての建物用途でBEIを1.0以下にすることが求められています。しかし、2025年4月からは建物用途に応じて基準が厳格化されます。たとえば、工場などの用途の場合、新たな制度ではBPIを0.75以下に抑えなくてはなりません。
省エネ計算を実施する際は、モデル建物を以下の26種類から選定します。
・事務所
・ビジネスホテル
・シティホテル
・総合病院
・クリニック
・福祉施設
・大規模物販
・小規模物販
・学校
・幼稚園
・大学
・講堂
・飲食店
・集会所(アスレチック場)
・集会所(体育館)
・集会所(公衆浴場)
・集会所(映画館)
・集会所(図書館)
・集会所(博物館)
・集会所(劇場)
・集会所(カラオケボックス)
・集会所(ボーリング場)
・集会所(パチンコ屋)
・集会所(競馬場又は競輪場)
・集会所(社寺)
・工場
建物の棟別の用途区分コードに従って、モデル建物を選定してください。
※参考:エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)モデル建物法 入力マニュアル|国土交通省 国土技術政策総合研究所 国立研究開発法人 建築研究所
モデル建物によって、評価対象となる設備は決まっています。たとえば、モデル建物が「事務所」の場合は、以下が評価対象です。
・外皮
・空調
・換気
・事務室の照明
・給湯
・昇降機
・太陽光
・コージェネレーション
モデル建物の評価対象を正しく把握することは、適切な省エネ計算の第一歩となります。
※参考:エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)モデル建物法 入力マニュアル|国土交通省 国土技術政策総合研究所 国立研究開発法人 建築研究所
建築物の省エネ計画の届出は、法律で定められています。以下では、届出の期限や提出先、特例措置について解説します。
省エネ計画の届出は、建築工事の着手予定日より21日以上前に行う必要があります。提出先は各地域の所管行政庁となっており、「届出に係る省エネ計画」という書類を提出します。
省エネ計画に民間審査機関による省エネ基準適合評価書を添付する場合は、特例として工事着工の3日前までの提出が認められます。特例措置により、より柔軟な工事計画の立案が可能となります。
「BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)」は、建物の省エネ性能を星の数で示す評価制度です。BELSは、BEI値に基づいて5段階で判定され、より優れた省エネ性能を持つ建物ほど高い星数が与えられる傾向です。建築物の環境性能を対外的にアピールする手段として、BELSは広く活用されています。以下では、BELSの取得に適した省エネ計算について解説します。
BELSを取得する際は、基本的にモデル建物法で対応可能です。2025年4月からの制度変更により、すべての建物で省エネ計算が求められます。申請業務の負担増加が予想されますが、モデル建物法を活用すると効率的な対応が可能です。どのような用途の建物であってもモデル建物が割り当てられているため、比較的スムーズに省エネ計算を進められるでしょう。
モデル建物法で計算してBEIが基準値を上回ってしまった場合、より詳細な計算が可能な標準入力法での再評価が必要となります。BELSの取得は、建物の環境性能の高さをアピールできる重要な手段です。標準入力法は入力作業に多くの時間を要しますが、検討する価値は十分にあるといえます。
2025年4月より、すべての建物に省エネ基準適合が義務付けられます。モデル建物法は、入力する項目が簡略化されており、手間を抑えて省エネ計算できます。ただし、詳細な計算が必要な場合は、標準入力法も検討しましょう。
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会社名:東京瓦斯株式会社
部署名:ソリューション事業創造部
執筆者名:大塚勝臣(おおつかかつおみ)
執筆者の略歴(職務経歴、保有資格、受賞歴など):
1992 年入社以来、様々な形で省エネ・脱炭素ソリューションの導入に関わる。
一級建築士
一級管工事施工管理技士
MBA